上 下
54 / 77
竜太と神楽のむかしのはなし。

7.はにかむ神楽さんもめっちゃ綺麗やんっ!!

しおりを挟む

 翌日。
 一弥の姿は地下駐車場にあった。昨日の反省を経て竜太の様子に変化がなかったらその場で回れ右して車に押し込んで帰らせようと鬼の形相で意気込んでいた。
 来た!!
「………って、あれ?」
 しかし一弥の予想に反して竜太はいつもどおりアイロンのかかったスーツにきちんと整えられた身なりで現れた。
 一弥は肩透かしをくらい呆然としながら竜太を見つめ何度も瞬きを繰り返した。
「なに変な顔してんねん」
「え?ぁ、いや…やって、ボンがちゃんとしとるから…」
「あ?こんなんいつもどおりやろ」
「せや!いつもどおりやからおかしいねん!!昨日、自分がどんだけボロボロやったか分かっとるん?!」
 声を荒げる一弥を一瞥した竜太は冷たく一言
「知らん」
と言い捨てると一弥を置き去りにしてすたすたと一人で歩いていってしまった。
「…なんやのあの俺様っぷりはぁっ!!」
 もう見えなくなってしまった竜太に怒りを露にするが視界の隅に見慣れた車が通ったことで一瞬にして我に還った一弥はパニックになりながらオロオロと右往左往しながらなにか説明をしなければと頭をフル回転させるが必要な言葉は出てこず車を降りてきた神楽に絶望した。
「…おはようご……おはよう、一弥…」
「おはようございます、神楽さん!!」
 狼狽える一弥に対し神楽はいつもどおり爽やかに現れ、撤廃したばかりの敬語に足を掬われつつはにかみながら微笑んだ。
 はにかむ神楽さんもめっちゃ綺麗やんっ!!
 危うく恋に落ちてしまいそうな自分を戒めると一弥ははっとした。
 えっと…さっきの訳分からん俺様ボンの状況をどう説明したら…。
「…今日は…あの人体調悪くない?」
「へっ?…あ、うん!!今日は平気そうなんやけど…その…」
 ごにょごにょと言い澱む一弥を察してか神楽は小さく頷いた。
「昨日、一弥に言われたとおりあの人が話してくるまで俺からは、キ、キスの事、聞かないでおくから…」
「え、あ…た、助かります!!」
「もし…俺から聞いた方がいいタイミングになった時は教えてもらっていいか?」
「もちろんです!そん時はご迷惑お掛けしますがよろしくお願いします!!」
「うん。こちらこそよろしく…」
 最後にまた少しだけはにかんでからロッカーに向かう神楽を見送ると一弥は胸を押さえるとその場にしゃがみこんだ。
「キスってゆう時どもるし…あのはにかみ笑顔ほんま可愛すぎやろっ!!」
 不覚にもときめいてしまった一弥は竜太と神楽を二人きりにするのは不安だったが、熱い顔と早過ぎる心拍数が落ち着くまでこの場に留まることを決めた。
 こういう時はの顔を考えとけば早く落ち着くな…。
 必死に落ち着かせようとしていると聞き慣れた声が頭上から降ってきた。
「…イチ?どうしたの、こんな所に座り込んで…」
「ミオ…」
 心配そうに駆け寄るミオの顔を見た瞬間、一弥の中で仕事モードに切りかわるためのスイッチが押された気がした。
 やっぱり、僕にとって一番効果的や。
「なんでもないよ。はよボンのとこ行こう」
「うん…」
 一弥に違和感を感じたミオだったがいつもどおり颯爽と歩く姿に小首を傾げてからその背中を追いかけていった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

放課後教室

Kokonuca.
BL
ある放課後の教室で彼に起こった凶事からすべて始まる

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

初体験

nano ひにゃ
BL
23才性体験ゼロの好一朗が、友人のすすめで年上で優しい男と付き合い始める。

お客様と商品

あかまロケ
BL
馬鹿で、不細工で、性格最悪…なオレが、衣食住提供と引き換えに体を売る相手は高校時代一度も面識の無かったエリートモテモテイケメン御曹司で。オレは商品で、相手はお客様。そう思って毎日せっせとお客様に尽くす涙ぐましい努力のオレの物語。(*ムーンライトノベルズ・pixivにも投稿してます。)

目が覚めたら囲まれてました

るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。 燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。 そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。 チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。 不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で! 独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。

同僚に密室に連れ込まれてイケナイ状況です

暗黒神ゼブラ
BL
今日僕は同僚にごはんに誘われました

初夜の翌朝失踪する受けの話

春野ひより
BL
家の事情で8歳年上の男と結婚することになった直巳。婚約者の恵はカッコいいうえに優しくて直巳は彼に恋をしている。けれど彼には別に好きな人がいて…? タイトル通り初夜の翌朝攻めの前から姿を消して、案の定攻めに連れ戻される話。 歳上穏やか執着攻め×頑固な健気受け

【連載再開】絶対支配×快楽耐性ゼロすぎる受けの短編集

あかさたな!
BL
※全話おとな向けな内容です。 こちらの短編集は 絶対支配な攻めが、 快楽耐性ゼロな受けと楽しい一晩を過ごす 1話完結のハッピーエンドなお話の詰め合わせです。 不定期更新ですが、 1話ごと読切なので、サクッと楽しめるように作っていくつもりです。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー 書きかけの長編が止まってますが、 短編集から久々に、肩慣らししていく予定です。 よろしくお願いします!

処理中です...