【BL】こじらせ馴れ初め(竜太×神楽メイン)

祈 -inori-

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きょうだいの話。②

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「あぁ、いいなぁ…この部屋で竜兄と過ごして、このベッドで竜兄に抱かれてるんだぁ…」
「…竜……にぃ…?」
「そっか、自己紹介がまだでしたね。僕は東儀 蘭獅ふじ。東儀 竜太の弟です」
「弟…」
    思わず男の言葉を反芻すると神楽は聞き慣れているはずのその言葉を上手く理解出来ず頭の中で何度も繰り返すと、そういえばこの前竜太が…と頭の片隅にあった記憶が甦ってきた。それは以前にお互いの兄弟の話をした時のものだった。
『弟はなぁ………………ちょぉーーーーーーーっとだけ、変わりもんなんよ』
『もし、万が一どっかでうても全力で逃げてや?あいつ、絶対アキに逢いにくるはずやから』
『絶対、気ぃ許したらあかんよ?』
    静かに回想を終わらせると神楽は意識を目の前に向ける。蘭獅は微笑みながら神楽の様子を窺っている。
「…いや、寝込みを襲われたら逃げるとか無理だろ?!ちょっと変わりもんどころじゃねぇぞっ?!」
    思わず過去の竜太に対するつっこみを声に出してしまうと言葉の意味を理解したのだろう蘭獅は再びくすくすと笑い出した。
「竜兄から僕の事を聞いてますか?」
「…あぁ…少しだけ…」
    つい叫んでしまったことに気まずい神楽だが、蘭獅はそんなことも気にせず両手の指を絡ませ薄暗い中でも頬が赤く色付いているように見えた。
「嬉しいなぁ…竜兄が僕の事を話してくれたなんて…やっぱり竜兄も僕の事愛してくれてる証拠ですよね!」
「愛…?え?なに…?」
「僕は竜兄を愛してるんです」
「…………………は?」
    先程から蘭獅の言っていることが理解出来ず頭が混乱する一方の神楽だが蘭獅は恥ずかしそうに頬の赤を濃く鮮やかにしている。
    竜太がこの人の事を愛してる?なに言ってるんだ…?
「竜兄って関西弁を話しているじゃないですかぁ。でも元々は東京のお祖父じいさんのところで両親と兄の兎太朗うたろう、そして僕。家族みんなと一緒に暮らしていたんです。でも僕が竜兄の事を愛してしまったから…。僕の気持ちに気付いた竜兄はすぐに大阪の親戚のところに行ってしまったんです。だけど、それはやっぱり僕のためだったんだぁ…」
「どうしてそれが貴方のためだと…?」
「だって兄弟でしかも男同士の恋なんて許されないでしょう?だから僕が非難を浴びないようにぃ、僕を守るために竜兄は離れていったんです…寂しかったですけど僕のためにしてくれた事だって分かってましたから僕も我慢したんです…」
「そ、そう…」
「それから僕も渡米したりして竜兄と距離を取っていたんですが……貴方との事を見ていたら我慢出来なくなっちゃったんですぅ…僕の代わりに竜兄の寵愛を受けている人がいると思ったら…」
「えっと…」
    いい加減に話を聞いてるのも適当に相槌を打つのも煩わしくなってきた神楽に気付いたのか、ずいっと鼻がぶつかる程に距離を詰め蘭獅は楽しそうに強くにこりと笑ってみせた。その瞬間、神楽の背筋にぞくりと悪寒が走るが身動ぎも出来ず蘭獅から目を離せずにいた。
「でも竜兄がそんなに僕の事を思ってくれているのに我が儘言えませんから貴方で間接的に満足しようと思ってます」
「…」
    もう何も言えねぇくらいこの人の言ってる事が理解できねぇ…間接的って…何?
    蘭獅の言葉が理解出来ず、ぐるぐると思考を巡らせているといつの間にか顎に添えられていた手に顔の角度を傾けられるとさらに近付いてくる蘭獅に神楽は慌ててその手から逃れると体を引きずり逃げるがすぐにヘッドボードにぶつかり顔を逸らした。
「ちょ、ちょっと待ってくれません…?俺、理解できなくて…」
    なんとか説得を試みるが蘭獅は笑みを湛えたままゆっくりと首だけを動かし神楽を追いかける。
「大丈夫ですよぉ、怖がらないで下さい。貴方はなにもせず体だけ貸していただければそれで問題ないですから」
「やっぱりそういう事なんですか?」
「この唇に竜兄がキスしてるんですよねぇ…」
「いっ!!やめっ!…っ、んっ…ゃ…」
    乱暴に肩をヘッドボードに押し付けられ、抵抗する間もなく唇を重ねられると二人の歯がぶつかりガチッと痛々しい音と衝撃が神楽を襲った。
「…ふ、っ…ん……はっ、竜兄と間接キスしちゃったぁ…」
    神楽の抵抗をおかまいなしに蘭獅はマイペースに自分の欲望のままに行為を進めていく。角度を変えながら啄むようなキスを繰り返すと蘭獅はゆっくり目を開き満足気に口元に笑みを浮かべながら神楽を見つめる。息継ぎもままならなかった神楽は呼吸を整えながら蘭獅を睨み付けるが、当の本人は我関せずとばかりに自身の唇に触れうっとりと長い瞬きを繰り返している。閉じた瞼の裏にはおそらく想い人である竜太の姿を浮かべているのだろう。好き勝手されている神楽にとって、蘭獅の表情は苛立ちを覚えるほど幸せそうに見えたのだった。
    どうにか逃げられないかと策を練る神楽に夢心地の蘭獅は再び神楽ににじり寄り距離を詰めてくる。
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