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親慶と義経のはなし。

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「……悪い……俺また…余裕なくなってた…」
    頭を抱え、冷静になるため義経から離れようとした瞬間、弱々しく伸ばされた腕が親慶の腕を掴んだ。
「やめ、る…な、よ……少し、だけ…待!って…」
「え…?」
    思わずきょとんとしてしまう親慶に義経は腕を離し重力に身を任せぼすんっと体をベッドに沈めた。
    義経の次の出方を待ちながらその様子を窺っていると親慶は強い罪悪感に襲われた。上気した赤い肌はその範囲を肩まで広げ、自分の暴走に義経がどれだけ必死に耐えていたのかをありありと見せつけられ、親慶は小さく「ごめん」と呟く。
「…優、しくする…って、言っ、た…」
「…はい。たしかに言いました…」
    腕で顔を隠してしまっているため表情は親慶から見えなかったが、短く繰り返される息継ぎがダメージの大きさを伝えてくる。親慶は正座をしつつ義経を見つめると腕の隙間から鋭い視線が突き刺さった。
「反省してます…」
「もう…落ち着いた?」
「はい…」
「…じゃあ……続き……し、たい…」
「っ!!お前って本当に…っ!!」
「なに…?」
    無意識に煽ってくるなっ!!
    そう叫びそうになるのをぐっと堪えた親慶は浅ましくもやる気に頭を擡げる自身をなんとか腕で隠しながら反対の手で頭を抱える。
    そもそも俺が暴走したのはこいつのこういう無意識な仕草に煽られて……俺の精神力の無さが原因か…。
    今なら悟りの境地を開けそうな親慶は義経の両腕を掴みベッドに押し付けると鋭かった視線は怯えを含んだ。
「俺、多分…また義経に優しく出来ないと思う…」
「ん……」
「でも義経が望むなら……違う!俺が義経とシたいから……ごめん、また暴走すると思う…」
「うん…」
「ごめん……許して…?」
    縫い留めた両手の力を緩めると義経の手が親慶の腕に頼りなく縋りつく。
「チカって…オレのこと好きすぎて気持ちわりぃ…」
    ぐさりと胸に突き刺さる言葉に親慶の頭は冷静を通り越しもうなにもかも萎えてしまったが、致命傷を負わされたはずの言葉の矢は滲んだ視界に映った義経の表情によって大したダメージを与えることもなく胸を擦り抜けていった。
「そんなチカも…す、き……って思うオレも…気持ち悪ぃ、ょな…」
    口調はいつも通り可愛くないが…その表情は柔らかく、細められた目が言葉通り親慶のこと「愛しい」と物語っている。
「っ…!!」
    義経がこんなにキラキラして見えんのは俺の目、いや俺の脳がおかしくなってるんだろう…。
    義経に好きだなんて言われてしまったら背中に羽根が生えたのかと思うほど体が軽く浮き上がっているように感じたが、義経の腕に繋ぎ止められているのを確認して親慶は再び顔を緩ませた。
「気持ちわりぃ…」
「俺…今、すっげぇ幸せ…」
「…そう…」
「……キスしていい?」
「…んっ…っ、ん……ふっ…」
    義経の返事を待つ前に一気に距離を詰めて何度も角度を変えながら啄むキスを繰り返し、熱い吐息を溢して近距離で見つめ合うと義経は気恥ずかしそうに目を伏せた。
「続き……してもいい?」
    かっこ悪い、と自己嫌悪に陥りながら許しを請うように義経の頬に触れると猫のように擦り寄せてくれた。それを合図に義経自身に指を絡め上下に扱き先走りを纏わせると先ほど無理やりに暴いた後腔に今度は優しく指を突き立てる。
「んっ!!ぁ……」
    挿入はいった瞬間、体が強張ったが、義経はゆっくり大きく呼吸を繰り返し親慶の指を受け入れようとしていた。自分よりもよっぽど余裕のある義経に軽く焦りを感じながら、義経と同様に色々と調べていた親慶は反応を窺いながら内側を探る。
「うー…っ、ん…くっ、う、ぅぅ…」
「…口開けて、さっきみたいにちゃんと息しろって…」
    義経の中で指を動かし始めると先程までの余裕はどこへいったのか、義経は奥歯を噛み締め圧し殺した声を漏らしていた。親慶は左手の親指で歯列を割り開くと義経は苦しそうに、はっはっと短く息を上げ眉を顰めた。
「っぅ、あっ!や、ぁ……」
    無理やりに開かれた口が苦しいのだろう義経は恨めしげに睨み付けるが、親慶はそれを気にすることなどなく丁寧に義経の体を暴いていく。
「うー………ん、ぁ、はっ…あ、あっ…」
    嬌声が混ざり始めた吐息にギリギリのところでとどまっていた親慶の理性は煽られるように擦り減らされていくが、自分を受け入れようと必死な義経の姿に下唇を強く噛み行為に集中することで理性を繋ぎ止めていた。
   男でも感じるところがあるはずなんだけど……全然分からねぇ…。
    義経と交際を始めたことで親慶もまたいつか訪れるだろうこの時に備えて色々と下調べをしていた─前回は簡単に理性を吹き飛ばして下調べの意味がなかったが…─。どうしたって負担が大きい義経の体を少しでも労るために、そしてなにより自己満足ではなく二人でちゃんと気持ち良くなりたいと思っていた─前回はそんなことを考える余裕すらなかったが…─。
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