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甘エロ
◇ ◆
結局催眠術をかけられて気持ちを全て伝えた後も、俺が溜まった時には何も変わらずに処理をしてくれていた陽太。
俺を傷つけない為か、それとも本当に何にも考えてないのか。俺達の関係は変わらないまま。
自分の気持ちに気付いた後、もしアイツ以外で勃つようになったとしても今までの様に遊べないと理解した俺は、全てのセフレに別れを告げた。
元々割り切った関係だった事と、最近の俺の様子がおかしかったからか変に揉める事はなく、すんなりとお別れする事が出来た。
今まで使っていた女の子との時間は全て自分の好きな事に回し、街でウインドーショッピングを楽しんでいると、見慣れた奴が見えた。
女と歩く陽太だった。
別にあの後もそれなりに遊んでいると伝えられていたので覚悟はしていたが、流石に実際に見ると辛いものがある。
しかし持ち前の性格で動じない自分を演じて、目が合ってしまったので話しかける事にした。
「あれ陽太。可愛い子連れてんね」
思いっきり陽太の顔が引き攣ったのが分かったが、声をかけてしまった以上少しだけ会話する事にした。
「初めまして、香織って言います」
ニコッと微笑む女の子は可愛くて、とても清楚系だった。陽太はこういうタイプが好きなのか。
「どーも、千紘でーす。陽太の彼女?」
「いや違いまーす。今日好きな人が出来たとかでフラれちゃって~」
「うわ最低な男だな~」
好きな人が出来たのに会うなよ、とか、好きな人って誰だよと思いながらも軽いノリで女の子と話していると、突然陽太が声を上げた。
「…あんま俺以外と楽しそうに喋んなよ」
「は?」
「え?」
二人の声が揃うと更に陽太の表情が歪み、バシッと俺の手首が掴まれて思いっきり引っ張られた。すると、香織と名乗った女の子は頬を染めて、はわわわわと目を輝かせた。
「じゃあ、ごめん。俺コイツと帰るから」
陽太が女の子にそう告げると、香織からは"ご馳走様です!!"と謎の声が聞こえた。そしてそれからは何も発する事はなく手は引っ張られたまま陽太の家の方角へ歩く事になった。
「なんだよ、陽太。どーしたの」
「…用事ある?このまま家に連れて行きたいんだけど」
「いや、ブラブラしてただけだからいーけど。ヤんの?それなら声気になるしホテルの方がいーんだけど」
「俺の家来て」
「あ? うん、いーよ。でも、手は離せよ」
まだ明るい昼間。しかも人通りがある中でこの状況で歩くのは恥ずかしくて手を振り解くと、陽太の隣へ移動して同じ歩幅で歩いた。
「お前さ。独占欲やばくね?」
「…そんなんじゃねーよ」
「はぁ~?そーですかそーですか」
その言葉を最後にお互い何も話す事なく家へ到着した。いつも通りベッドを背もたれにして床に座った俺は、何か言いたげな陽太の言葉を待った。
「お前は俺が女の子と歩いてても嫌じゃないの?」
「実際歩いといて何聞いてんだよ」
「全然普通だったからどう思ってんだろうと思って」
「俺がお前でしか勃たなくなってんのに遊ばれたらそりゃ嫌だよ」
「そういう嫌じゃなくて」
「…何、陽太は俺に何を言わせたいの?」
「自分でもわかんね」
珍しく混乱している様子の陽太に少しの期待を感じゆっくりと聞き出していく事に決めた。例え自分が傷ついたとしても、もうこれ以上期待したくなかった。
「…言いたい事一つずつ言ってみ。聞いてやるから」
「俺の事好きなくせに、何で女と居ても嫌がらないの。何で付き合おうとかそう言う事言わないの。とか、色々思ってた」
「うん」
「俺も俺で、今まで誰に対しても思った事ない気持ちが出てきて分かんなくなった。キスしたいと思ったのはヒロが初めてだし、毎回抜いてやる意味も正直ないのに、お前が来るたびに楽しみにしてた自分も居て。ヒロとこう言う事するようになって、誰とも会ってなかったんだけど、きっかけになった擽りフェチのあの子に誘われたから久しぶりに会った。俺は女の子でもまだ勃つのか気になったから」
「うん」
「…あんなに可愛いと思った反応も全く興奮しなくて、お礼だけ伝えてもう会わないって伝えた。そしたら好きな人でも出来た?って言われて。一番にヒロが思い浮かんだ。…お前が前に他の奴に印付けられた時異常にムカついて。お前に変な催眠術かけて気持ちを聞き出して満足して。女の子に言われて初めて……その、気持ち…が見えてきた」
珍しくたくさん話す陽太に驚きつつも、頬を赤らめて言葉を詰まらせる新鮮な姿を見て胸がぎゅっと締め付けられる様な気持ちになった。
「…今話しててまとまった。俺、ヒロが好き」
「うん」
「俺と付き合って下さい」
「…はい」
「…待ってあんま見ないで恥ずかしいんだけど」
「…俺も恥ずかしいんだよ。つーか遅い。俺ずっと…お前の気持ち知りたかった」
「待たせてごめん。正直ヒロが俺の事好きって事に満足して、今までと変わりないから安心しきってたんだけど、今日会った子にちゃんとしないと取られちゃうよって言われて…ちょっと焦った。…俺以外と会わないで。男も女も。誰にも触れさせないで」
「…俺、セフレ全員お別れした。連絡先も男も女も友達と会社関係しか居ない」
「え」
「お前に振られても、こんな気持ちで女の子抱く事なんて出来ないって理解したから。…だから、みんなとお別れした」
「…嬉しい、かも」
「かも?」
「すげー嬉しい」
陽太の表情は本当に安心しきった顔をしていて。グイッと腕を引かれて抱き締められた。
「…好き。ヒロ」
「俺も」
「好き。好き好き好き。誰よりも大事にする」
「お前自覚したらすげーな…こっちが恥ずいわ」
「ちょっと待って。俺も女の子と全員お別れしてくる」
「え?今?ちょ…」
思い立ったら突っ走るコイツは相変わらずで甘々展開になると思っていた俺は突然のお預けをくらう羽目になった。
でもきちんと清算してくれる事も嬉しくて、俺は陽太の部屋で漫画を読みながら待つ事にした。
部屋を出て行って数十分後、陽太がスッキリした表情で帰ってきた。
「みんな祝福してくれた」
「良かったな」
「さっきの女の子…名前忘れてけど、あの子にだけヒロと付き合った事言った。何処の子かも忘れたけど」
さっき名乗ってくれた俺でも覚えてる香織を少し不憫に思いながら、俺は待たされた分堪らなくなってしがみついた。
「…ん、ありがと」
「ヒロ可愛い。やばい、好き。…お前こんな可愛かったっけ。顔見せて」
「はぁ?…ちょ、何…待て待て」
ぎゅっと一度抱き締められた後、すぐにベッドに押し倒されてじっと見つめられた。
「…っ、待…!待って」
熱っぽい顔で見つめられると無性に恥ずかしくてフイと顔を逸らすとクイッと顎を持たれて顔を向けさせられた。
「…可愛い。すげー好き、ヒロ。大好き」
「お前…っ本当、自覚した途端すげーな…」
「耳まで真っ赤。恥ずかしい?嬉しい?」
「~~ッッ」
「ほら、言って。好きだよヒロ」
「…嬉しい、し…むちゃくちゃ恥ずかしい!!!」
「…可愛い」
終始うっとりとした表情を向けられると耐えられなくてぎゅっと目を閉じてキスをした。
「ん…」
すると陽太も目を閉じて深いキスを返してくれた。初めて気持ちが通じ合ったキスはいつも以上に興奮してしまう。
「…するなら、やっぱりホテル行けば良かったな」
唇が離れた時に俺がポツリとそう言うと、陽太は首を振った。
「俺ホテルは嫌だった」
「え?」
「付き合うってなったら最初は家が良かった。俺の家で初めてそういう事したし思い出あんだよ」
「へぇ、可愛いところあるじゃん」
「…だけど隣人に怒られたから、声は抑えろよ?」
「…」
怒られたなんて知らなかったのと、聞かれていた恥ずかしさに一気にまた顔が熱くなる。
「そんな照れなくていいよ。声出そうになったら俺がキスして塞いでやるから。…もうヒロの可愛い声、誰にも聞かせたくない」
本当に好きだと自覚した途端甘々な言葉を吐いてくる陽太に更に体が熱くなると、陽太の手が俺は伸びてきてゆっくりと服を脱がせ始めた。
「明るいから綺麗な肌がよく見えるな」
「…恥ずかしいからそういうのやめろ」
「ごめんごめん。でも照れてるヒロ可愛いからめちゃくちゃいじめるね」
「いじめんな!」
「好きなくせに。でも今日は…ごめん普通に余裕ないから激しいかも」
「…ま、それはいいよ。俺も…限界」
「…うん」
お互いが服を脱ぎ終えると、ゆっくりと体を重ねた。今までのゆっくりと慣らしてくれる陽太は何処へやら。いつもより何倍も早く終わる前戯に、進んでくる指。
「…ごめん入れたい」
「…いいよ」
当てがわれた自身は今までの最短記録じゃないだろうか。でも自分も余裕が一切なくて、早く入れてほしくて堪らない。
「ヒロ、大好き」
「…っ」
その言葉が一番の媚薬。ぎゅっとしがみつくと、進んでくる陽太は少しの痛みと苦しさがあるが、それ以上に快感で。
「…俺も、好き…」
「もっと言って」
「…陽太、好き。大好き…」
「俺も好き」
余裕がないとは言え相変わらず的確に俺の好きな箇所を突いてくるコイツは流石遊び人と言える程。
「あっ…ぁ、…んんっ」
「声可愛いけど、聞かせたくない」
腰を動かしながら深くキスされるとビクンと体が跳ねた。
「……締め付けやば。やっぱキス好きなんだ」
クスッと微笑む顔に羞恥が芽生えるも、悔しくて舌を絡めたキスをした。
「…っん、陽太ぁ…い、くっ」
「千紘」
「えっ」
「…千紘、凄く好きです。ずっと傍に居て下さい」
「な、…っに、えっ、…待っ」
初めての本名呼びに今までにない位の羞恥が襲った。
「…んっ、やば、」
おそらく名前を呼ばれてかなり締め付けたんだろうが、俺があわあわとしている内に陽太は俺の中で達した。
「…っ陽太…?」
「……やば、ごめん…ヒロが可愛すぎて我慢出来なかった」
息を荒くして自身を引き抜いた陽太はクタリと俺の横に倒れ込んだ。もちろんイケていない俺はまたもやお預け状態。
「え…」
「ヒロ。気持ち良かった。ありがと、大好き」
ちゅっと軽くキスされるとつい流されてしまいそうになるが。
「いや待て!!一人でスッキリすんな!俺まだイケてない!!」
「……ごめん、疲れた。見ててやるから一人でイケよ」
「うおい!!大事にしてくれるんじゃねーのかよ!!」
バシッと体を叩くと相変わらずグッタリとして動かない陽太。賢者タイムがどれだけか知っているがこれはひどい。
「お、覚えとけよてめー!!」
「…ん、覚えとく。ほら、一人でやれ。俺の前で」
「んな…っアホか!!」
結局マイペースな陽太はドSを発揮して無理矢理オナニーを強要すると、満足そうに眺めていた。
◇ ◆
「…何で付き合ったその日の初エッチがオナニーなんだよ!!」
俺も賢者タイムに突入して隣でしがみついて寝転ぶと、満足気に笑う陽太。
「可愛すぎた。俺の事好き好き言いながらイクの可愛すぎ」
「…好きなんだからしゃーねーだろ!!」
「…可愛い。もっかいする?」
「しねーよ!!つーかそんな元気あるならさっき一人でさせてんじゃねーよ!!」
正直何処が好きなのか分からない位マイペースで、鬼畜で。でも好きで堪らなくて。
「後でご飯食べに行こ」
「…ん、何処行こっか」
「ヒロが好きなとこ行こ」
「うん」
特に何も変わらない俺達が恋人になった日。
それは偶然なのか初めて陽太にいじめられた日の丁度一年後だと気付いたのは帰ってからの事だった。
end.
◇ ◆
結局催眠術をかけられて気持ちを全て伝えた後も、俺が溜まった時には何も変わらずに処理をしてくれていた陽太。
俺を傷つけない為か、それとも本当に何にも考えてないのか。俺達の関係は変わらないまま。
自分の気持ちに気付いた後、もしアイツ以外で勃つようになったとしても今までの様に遊べないと理解した俺は、全てのセフレに別れを告げた。
元々割り切った関係だった事と、最近の俺の様子がおかしかったからか変に揉める事はなく、すんなりとお別れする事が出来た。
今まで使っていた女の子との時間は全て自分の好きな事に回し、街でウインドーショッピングを楽しんでいると、見慣れた奴が見えた。
女と歩く陽太だった。
別にあの後もそれなりに遊んでいると伝えられていたので覚悟はしていたが、流石に実際に見ると辛いものがある。
しかし持ち前の性格で動じない自分を演じて、目が合ってしまったので話しかける事にした。
「あれ陽太。可愛い子連れてんね」
思いっきり陽太の顔が引き攣ったのが分かったが、声をかけてしまった以上少しだけ会話する事にした。
「初めまして、香織って言います」
ニコッと微笑む女の子は可愛くて、とても清楚系だった。陽太はこういうタイプが好きなのか。
「どーも、千紘でーす。陽太の彼女?」
「いや違いまーす。今日好きな人が出来たとかでフラれちゃって~」
「うわ最低な男だな~」
好きな人が出来たのに会うなよ、とか、好きな人って誰だよと思いながらも軽いノリで女の子と話していると、突然陽太が声を上げた。
「…あんま俺以外と楽しそうに喋んなよ」
「は?」
「え?」
二人の声が揃うと更に陽太の表情が歪み、バシッと俺の手首が掴まれて思いっきり引っ張られた。すると、香織と名乗った女の子は頬を染めて、はわわわわと目を輝かせた。
「じゃあ、ごめん。俺コイツと帰るから」
陽太が女の子にそう告げると、香織からは"ご馳走様です!!"と謎の声が聞こえた。そしてそれからは何も発する事はなく手は引っ張られたまま陽太の家の方角へ歩く事になった。
「なんだよ、陽太。どーしたの」
「…用事ある?このまま家に連れて行きたいんだけど」
「いや、ブラブラしてただけだからいーけど。ヤんの?それなら声気になるしホテルの方がいーんだけど」
「俺の家来て」
「あ? うん、いーよ。でも、手は離せよ」
まだ明るい昼間。しかも人通りがある中でこの状況で歩くのは恥ずかしくて手を振り解くと、陽太の隣へ移動して同じ歩幅で歩いた。
「お前さ。独占欲やばくね?」
「…そんなんじゃねーよ」
「はぁ~?そーですかそーですか」
その言葉を最後にお互い何も話す事なく家へ到着した。いつも通りベッドを背もたれにして床に座った俺は、何か言いたげな陽太の言葉を待った。
「お前は俺が女の子と歩いてても嫌じゃないの?」
「実際歩いといて何聞いてんだよ」
「全然普通だったからどう思ってんだろうと思って」
「俺がお前でしか勃たなくなってんのに遊ばれたらそりゃ嫌だよ」
「そういう嫌じゃなくて」
「…何、陽太は俺に何を言わせたいの?」
「自分でもわかんね」
珍しく混乱している様子の陽太に少しの期待を感じゆっくりと聞き出していく事に決めた。例え自分が傷ついたとしても、もうこれ以上期待したくなかった。
「…言いたい事一つずつ言ってみ。聞いてやるから」
「俺の事好きなくせに、何で女と居ても嫌がらないの。何で付き合おうとかそう言う事言わないの。とか、色々思ってた」
「うん」
「俺も俺で、今まで誰に対しても思った事ない気持ちが出てきて分かんなくなった。キスしたいと思ったのはヒロが初めてだし、毎回抜いてやる意味も正直ないのに、お前が来るたびに楽しみにしてた自分も居て。ヒロとこう言う事するようになって、誰とも会ってなかったんだけど、きっかけになった擽りフェチのあの子に誘われたから久しぶりに会った。俺は女の子でもまだ勃つのか気になったから」
「うん」
「…あんなに可愛いと思った反応も全く興奮しなくて、お礼だけ伝えてもう会わないって伝えた。そしたら好きな人でも出来た?って言われて。一番にヒロが思い浮かんだ。…お前が前に他の奴に印付けられた時異常にムカついて。お前に変な催眠術かけて気持ちを聞き出して満足して。女の子に言われて初めて……その、気持ち…が見えてきた」
珍しくたくさん話す陽太に驚きつつも、頬を赤らめて言葉を詰まらせる新鮮な姿を見て胸がぎゅっと締め付けられる様な気持ちになった。
「…今話しててまとまった。俺、ヒロが好き」
「うん」
「俺と付き合って下さい」
「…はい」
「…待ってあんま見ないで恥ずかしいんだけど」
「…俺も恥ずかしいんだよ。つーか遅い。俺ずっと…お前の気持ち知りたかった」
「待たせてごめん。正直ヒロが俺の事好きって事に満足して、今までと変わりないから安心しきってたんだけど、今日会った子にちゃんとしないと取られちゃうよって言われて…ちょっと焦った。…俺以外と会わないで。男も女も。誰にも触れさせないで」
「…俺、セフレ全員お別れした。連絡先も男も女も友達と会社関係しか居ない」
「え」
「お前に振られても、こんな気持ちで女の子抱く事なんて出来ないって理解したから。…だから、みんなとお別れした」
「…嬉しい、かも」
「かも?」
「すげー嬉しい」
陽太の表情は本当に安心しきった顔をしていて。グイッと腕を引かれて抱き締められた。
「…好き。ヒロ」
「俺も」
「好き。好き好き好き。誰よりも大事にする」
「お前自覚したらすげーな…こっちが恥ずいわ」
「ちょっと待って。俺も女の子と全員お別れしてくる」
「え?今?ちょ…」
思い立ったら突っ走るコイツは相変わらずで甘々展開になると思っていた俺は突然のお預けをくらう羽目になった。
でもきちんと清算してくれる事も嬉しくて、俺は陽太の部屋で漫画を読みながら待つ事にした。
部屋を出て行って数十分後、陽太がスッキリした表情で帰ってきた。
「みんな祝福してくれた」
「良かったな」
「さっきの女の子…名前忘れてけど、あの子にだけヒロと付き合った事言った。何処の子かも忘れたけど」
さっき名乗ってくれた俺でも覚えてる香織を少し不憫に思いながら、俺は待たされた分堪らなくなってしがみついた。
「…ん、ありがと」
「ヒロ可愛い。やばい、好き。…お前こんな可愛かったっけ。顔見せて」
「はぁ?…ちょ、何…待て待て」
ぎゅっと一度抱き締められた後、すぐにベッドに押し倒されてじっと見つめられた。
「…っ、待…!待って」
熱っぽい顔で見つめられると無性に恥ずかしくてフイと顔を逸らすとクイッと顎を持たれて顔を向けさせられた。
「…可愛い。すげー好き、ヒロ。大好き」
「お前…っ本当、自覚した途端すげーな…」
「耳まで真っ赤。恥ずかしい?嬉しい?」
「~~ッッ」
「ほら、言って。好きだよヒロ」
「…嬉しい、し…むちゃくちゃ恥ずかしい!!!」
「…可愛い」
終始うっとりとした表情を向けられると耐えられなくてぎゅっと目を閉じてキスをした。
「ん…」
すると陽太も目を閉じて深いキスを返してくれた。初めて気持ちが通じ合ったキスはいつも以上に興奮してしまう。
「…するなら、やっぱりホテル行けば良かったな」
唇が離れた時に俺がポツリとそう言うと、陽太は首を振った。
「俺ホテルは嫌だった」
「え?」
「付き合うってなったら最初は家が良かった。俺の家で初めてそういう事したし思い出あんだよ」
「へぇ、可愛いところあるじゃん」
「…だけど隣人に怒られたから、声は抑えろよ?」
「…」
怒られたなんて知らなかったのと、聞かれていた恥ずかしさに一気にまた顔が熱くなる。
「そんな照れなくていいよ。声出そうになったら俺がキスして塞いでやるから。…もうヒロの可愛い声、誰にも聞かせたくない」
本当に好きだと自覚した途端甘々な言葉を吐いてくる陽太に更に体が熱くなると、陽太の手が俺は伸びてきてゆっくりと服を脱がせ始めた。
「明るいから綺麗な肌がよく見えるな」
「…恥ずかしいからそういうのやめろ」
「ごめんごめん。でも照れてるヒロ可愛いからめちゃくちゃいじめるね」
「いじめんな!」
「好きなくせに。でも今日は…ごめん普通に余裕ないから激しいかも」
「…ま、それはいいよ。俺も…限界」
「…うん」
お互いが服を脱ぎ終えると、ゆっくりと体を重ねた。今までのゆっくりと慣らしてくれる陽太は何処へやら。いつもより何倍も早く終わる前戯に、進んでくる指。
「…ごめん入れたい」
「…いいよ」
当てがわれた自身は今までの最短記録じゃないだろうか。でも自分も余裕が一切なくて、早く入れてほしくて堪らない。
「ヒロ、大好き」
「…っ」
その言葉が一番の媚薬。ぎゅっとしがみつくと、進んでくる陽太は少しの痛みと苦しさがあるが、それ以上に快感で。
「…俺も、好き…」
「もっと言って」
「…陽太、好き。大好き…」
「俺も好き」
余裕がないとは言え相変わらず的確に俺の好きな箇所を突いてくるコイツは流石遊び人と言える程。
「あっ…ぁ、…んんっ」
「声可愛いけど、聞かせたくない」
腰を動かしながら深くキスされるとビクンと体が跳ねた。
「……締め付けやば。やっぱキス好きなんだ」
クスッと微笑む顔に羞恥が芽生えるも、悔しくて舌を絡めたキスをした。
「…っん、陽太ぁ…い、くっ」
「千紘」
「えっ」
「…千紘、凄く好きです。ずっと傍に居て下さい」
「な、…っに、えっ、…待っ」
初めての本名呼びに今までにない位の羞恥が襲った。
「…んっ、やば、」
おそらく名前を呼ばれてかなり締め付けたんだろうが、俺があわあわとしている内に陽太は俺の中で達した。
「…っ陽太…?」
「……やば、ごめん…ヒロが可愛すぎて我慢出来なかった」
息を荒くして自身を引き抜いた陽太はクタリと俺の横に倒れ込んだ。もちろんイケていない俺はまたもやお預け状態。
「え…」
「ヒロ。気持ち良かった。ありがと、大好き」
ちゅっと軽くキスされるとつい流されてしまいそうになるが。
「いや待て!!一人でスッキリすんな!俺まだイケてない!!」
「……ごめん、疲れた。見ててやるから一人でイケよ」
「うおい!!大事にしてくれるんじゃねーのかよ!!」
バシッと体を叩くと相変わらずグッタリとして動かない陽太。賢者タイムがどれだけか知っているがこれはひどい。
「お、覚えとけよてめー!!」
「…ん、覚えとく。ほら、一人でやれ。俺の前で」
「んな…っアホか!!」
結局マイペースな陽太はドSを発揮して無理矢理オナニーを強要すると、満足そうに眺めていた。
◇ ◆
「…何で付き合ったその日の初エッチがオナニーなんだよ!!」
俺も賢者タイムに突入して隣でしがみついて寝転ぶと、満足気に笑う陽太。
「可愛すぎた。俺の事好き好き言いながらイクの可愛すぎ」
「…好きなんだからしゃーねーだろ!!」
「…可愛い。もっかいする?」
「しねーよ!!つーかそんな元気あるならさっき一人でさせてんじゃねーよ!!」
正直何処が好きなのか分からない位マイペースで、鬼畜で。でも好きで堪らなくて。
「後でご飯食べに行こ」
「…ん、何処行こっか」
「ヒロが好きなとこ行こ」
「うん」
特に何も変わらない俺達が恋人になった日。
それは偶然なのか初めて陽太にいじめられた日の丁度一年後だと気付いたのは帰ってからの事だった。
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