【完結】stairs

まこ

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「君がカイくん?」

帰り道、人通りの少ない場所でスーツを着た複数の男性に声をかけられた。時間は遅く、辺りも暗いし周りには人が居ない。なんとなく不穏な空気に嫌な気持ちになった。

「そうですけど、あなた方は?」

「ある人に君を連れて来るように頼まれてね。悪いんだけど来てもらってもいいかな?」

「や…ちょっと難しいです。すみません」

強引に腕を掴んでくる男に恐怖を覚え、俺は手を振り解き、走って逃げようとしたら、背中に何かが押し付けられた。

「逃げると、無理矢理連れて行くことになるけど」

「…」

実際に見たことはなかったが、スタンガンのようなものだと理解した俺は、動きを止めて逃げることをやめた。

「いい子だね」

俺は抵抗する気力をなくしていると、後ろ手に縛られて目隠しをされ、車に乗せられた。


◇ ◆


到着すると、強引に腕を引かれて何処かに連れて行かれた俺は、部屋に押し込まれると動けないように椅子のようなものに座った状態で拘束された。その間男たちは何も発することなく、テキパキと作業を進めているようだった。

完全に動きを封じられると、気配で男たちが去って行くのが分かり、扉が閉まる音がした。目隠しも外されてない今の状況では、一旦自分がどんなところに居るかも分からない。

先程体に突きつけられたスタンガンの所為で抵抗する気力が湧かない俺は、助けを求める事もせずにただ混乱した頭で今後どうなるのかと不安に感じていた。

少し時間が経った頃、ガチャッと扉が開く音が聞こえると、大袈裟にビクッと体が跳ねた。

「こんばんは、そんなに怖がらなくても構いませんよ」

普通この状態で怖がらない方がおかしいだろう。聞こえた声は少し若さがあるような男性の声だった。

「…どちら様ですか」

「突然こんな形で連れて来て申し訳ない。怖かったでしょう、この前駅で君を見かけてからずっと探していたんだ。とても可愛くて俺のタイプでね、可愛がってあげたいと思ったんだよ」

「は?」

「俺は欲しいものは必ず手に入れるタイプでね。俺のモノになってもらうよ」

意味が分からない発言に俺は終始何も言うことが出来なかったが、声色が冗談ではなく本気だと物語る。

「ずっと俺が可愛がってあげる。痛いことはしないから安心して。たくさん気持ち良いことをしてあげるから。でも…いい子にしてくれないと躾のために少し苦手な事するかもしれないけど」

「あなたのモノになるって…俺は一体どうしたらいいんですか?」

「毎日俺を求めて、いい子に感じてくれるだけでいい」

やばい、これはどういうことだ?もしかしなくても犯されるパターンなのだろうか。昔から周りには童顔で可愛いと言われ続け、学生時代も何人もの友達から告白された。なので同性に好意を持たれること自体は経験済みだが、ここまでされたのはもちろん初めてだった。

「綺麗な肌…髪の毛もサラサラで綺麗だね」

どんな男か分からないが、荒い鼻息混じりで俺の頬や髪の毛に触れる男の手に、鳥肌が立った。気持ち悪すぎる。

「どんな声で鳴いてくれるのかな?」

耳元で聞こえた声に少しだけ違う種類の鳥肌が立ち、俺は今から来るであろう刺激に備えた。

「その前に、顔の見えない相手だと不安だよね」

男はそう言うと、俺の目隠しを外した。夜で少し薄暗いその部屋だが、目が慣れるのはすぐだった。

驚いたのは相手の男性は思った以上にイケメンだったこと。こんな事をする奴は気持ち悪い奴だと思い込んでいた俺は、目を丸くして相手を見つめた。背も高くてスラッとしていて、かなりモテるタイプだと思えた。

「君の好みではないかもしれないけど、これでも見た目には気を遣ってるから不快な思いはさせないよ」

いくら格好良くて清潔感があってもこの行為自体が不快すぎる。しかしある程度何をされるか理解したこの状況でそんな発言は出来ず、俺はキュッと口を結んだ。

「暫くはお洋服は必要ないからごめんね。脱ごうか」

スッとハサミを見せつけると、俺の服を切り始めた。今日はフラッと街を歩いていただけなので、ラフな服装をしていたが、気に入った服なら腹が立っていたところだ。まぁ実際そんな余裕ないだろうけど。

拘束されているため脱がすことが出来ないので切る事にしたんだろうけど、それなら拘束する前に脱がしておいて欲しかったな、なんてどうでもいい事を考えていると上半身に纏っていた衣類は肌から離れ、パサリと小さい音を立てて床へ落ちた。

俺の肌を見る男の視線には熱がこもり、ハァ…と興奮した小さな吐息が漏れた。

「下も脱ごうね」

興奮した表情の男は、先程と同じように下着まで切ると俺の体から引き剥がした。薄暗いとは言え全てを晒されると、俺の頬も熱を持った。

「可愛い、恥ずかしい?」

俺の頬をスリスリと触りながら顔を近付けられ、反射的にそっぽを向いた。

「耳まで赤い…可愛い、カイくん」

そっぽを向いたことで相手の目の前に差し出した耳に、軽くキスをされると俺はギュッと目と口を閉じる。

「カイくんは何処が弱いかな?」

スルッと肌を撫でながら、耳に舌先を突き出されると閉じたはずの口から小さく息が漏れた。

「…はぁ」

「お肌もスベスベ。何か手入れしてるの?」

「…っ」

少しでも声を漏らさないように必死に口を閉じ直すと、耳元で何やら訊ねてきた。

「ねぇ、質問してるから答えて?」

「ぁ…っ」

俺が口を閉じたままで居ると、舌先を耳の穴へ入れられてペロリと舐められた。

「はぁ…っ、えっと…なんて言いました?」

「お肌綺麗だけど何か手入れしてるの?」

「…別に、何もしてません」

「そっか、それでこんなに綺麗なんだね。これから俺の質問には必ず答えてね?」

「ふぁ…っ」

わざとらしく音が出るような舐め方で耳を責められると、間抜けな声が出てしまった。グッと腕や足に力を入れてしまい、改めて動けないと知らされる。

「あんまり動くと痛いからダメだよ。綺麗な肌に痕がついちゃう」

「んん…」

「カイくん、セックスの経験はある?」

「…っ、昔彼女と何回か…」

「今は彼女居るの?」

「ここ数年は…っずっと一人、です」

「それはどうして?」

「んん…はぁ…、束縛が激しいから…っ俺から別れようって、言ってから…面倒くさくなっちゃって」

質問の度に耳を責められ、俺は変な声がなるべく出ないように我慢しながら途切れ途切れに正直に答えた。

「そっか、じゃあここ数年どうしてたの?一人で抜いたりしてたの?」

性の質問ばかりに苛立ちながら、何をされるか分からない恐怖に、全て素直に答えた。

「あんまり…っしてない、」

「そうなんだ。耳でこれだけ感じるのに、性には興味なかったの?」

「…はいっ」

「でもたまにはしてたんだよね?何をオカズにしてたの?」

「んん…っはぁ、やめ…ちょっと待って…っ」

「待たないよ、はい。すぐに俺の質問には答える事」

執拗な耳責めに我慢が出来なくなり制止を求めると更に激しくなり、肌を撫で回す手も激しくなった。

「弟が…っ勝手に…見せてきたAVとか…見た時に、興奮しちゃって…してたっ」

「弟が居るんだね。弟にはオナニーしてるの見せてないの?」

「は…?見せるわけっ、ない…」

「へぇ、ありがと。ちゃんと答えてくれて」

「ひゃっ…はぁっ、」

ご褒美と言わんばかりに、耳への刺激で反応した自身を握られるとゆっくりと上下された。久しぶりの他人からの刺激に、ビクンと素直に体は反応した。

「いい子にしてたらこうやって気持ち良い所触ってあげるからね」

「…っはぁ、…はぁ」

全ての刺激が一旦止まると、俺は荒い息を繰り返した。男の表情も見ると満足気で、俺の事を大事そうに見つめていた。

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