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本編①

14 家でまったり過ごす時間①

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「ん~…」

ゴロンと寝返りを打ってふかふかの毛布に顔を埋めると、とても安心する良い香りがした。

「あ、起きたの?」

「んぇ?」

誰かの声がして驚いて顔を上げると、いつもの細身の服ではなく、ダボッとした部屋着を見に纏ったお風呂上がりと思われる響くんと目が合った。

「あれ…?俺…」

「ショーが終わって先輩に俺の家まで送ってもらったんだよ。寝てたからソファに運んだよ」

「…ん、ごめん…」

「あれだけ激しいと疲れただろうし当然だよ。改めてお疲れ様。動けるようになったらシャワー浴びておいでね」

「…うん」

未だに寝起きの頭でぼんやりしているが、汗もかいているので案内してもらった浴室へ向かった。

浴室へ入るとお湯が張られており、とても良い香りの入浴剤が入っているのが分かった。

「響くーん。俺もお湯浸かりたい。体洗ってから入っても良い?」

「あ、そうそう一応残しておいたから入って良いよ。俺の浸かった後だけどごめんね。明日洗うから終わったらお湯だけ抜いてて欲しい」

「うい」

少し温めに設定し、ぼんやりとした頭を起こす様にシャワーを頭から被った。体を動かすと暴れた体が少しだけ痛むが、今日も優勝出来るとは思わなかった。

実際に賞金がいくらなのか分からないが、二回分の賞金が入れば旅行に行けるくらいあるんだろうか。

色々聞きたいことがあったが、とりあえず早く響くんの残り湯に浸かりたくて体を洗った。

湯船に浸かるとぶるっと身震いし、腹の底からはぁぁ~~と溜息が溢れた。気持ち良すぎる。

「あぁぁ…気持ちいい……」

丁度いい温度と良い香りの入浴剤はとても体に沁みる。普段はシャワー派なので湯船に浸かったのも久しぶりでとても癒された。

するとコンコンと扉がノックされた。

「詩、お腹はどんな感じ?何か食べたいものある?俺はあったかいうどん食べたいんだけど」

「あ、俺何でもいい。うどん食べたい」

「分かった。じゃあドライヤーしてる時位に作っとくね。ゆっくりどうぞ」

「なぁー、一緒に入りたいんだけど」

「また今度ね」

「ちぇ」

少しだけ甘えたかったが恥ずかしがり屋な響くんの返事は想定内だった。パシャパシャと意味もなく音を弾かせながらのんびり体を温めた後、お風呂から上がった。

浴室から出ると新品の下着と洋服が置かれており、袖を通すとふわりと響くんの香りがした。

「服は着た事あるやつだけどごめんね。下着はちゃんと新品だから安心して」

服を着て響くんの前に行くと、言葉通りテーブルにはうどんが置かれていた。

「ん、服ありがと。パンツも響くんので良かったのに。寧ろさっきまではいてたやつでも」

「何でそんな変態みたいな発言してくんの。ほら、食べるよ」

作ってくれたうどんを食べると、優しい出汁の味が体に沁み渡る。

「美味しい………」

「冷凍だよ。そういえば詩って普段何食べてるの?」

「…コンビニ弁当とか?」

「コンビニのお弁当も美味しいよね。…けどそれ毎日食べてるとか?」

「…うん」

「料理しないの?」

「…うん、出来ない。作ってよ」

「ん、いいよ」

うどんを啜りながらお願いすると、軽いノリで了承された。

「本気にすんぞバカ」

「していいよ」

クスッと微笑む響くんは本音が見えない。そこからは特に何の会話もせず、二人でのんびりとうどんを啜った後、後片付けをして歯を磨いてベッドに寝転んだ。

「なぁ」

「んー?」

「次レベル3出る?」

「詩が出れるなら出ようか。今日は激しかったけどどうだった?次は玩具だし、無理しないでね」

響くんはまだソファでゴロゴロしながら会話をした。次は早くもレベル3。鬼畜な元彼に縛り付けられて何度か使われた事はあったが、流石に連続でイカされるとか寸止めとかの経験はなかった。

なので玩具で今日みたいな攻めをされると体はどうなってしまうか分からない。けども。

「玩具めっちゃ気になる。今度使ってよ、今日は流石にもうこのまま寝たいからさ」

「いいよ。一応使用していい玩具の種類は限られてるから、先輩に用意してもらうよ。練習して出来そうなら出ようか」

「うん。…響くんって恋人とか居んの?」

「突然だね。居ないよ」

「良かった」

「…詩はあれから連絡とかきてないの?」

「きてないよ。理央先輩紹介してよ、イケメンと付き合いたい」

反応を見る為にわざと嫌な事を言ってやると、案の定響くんは眉を顰めた。これはヤキモチなのか、自分の顔へのコンプレックスなのかは分からないが。

「ダメだよ、絶対。ショー出てる内は恋人作んないでね。流石に恋人持ちに意地悪しにくいから」

「……」

俺に恋人を作ってほしくない理由を聞いて少しモヤっとした。まぁまだたった二回しか会ってないから響くんが俺に惚れる事なんてないのは分かってるけども。

「…響くんも作んなよ。俺だけ見てて」

枕に顔を埋めて小さくそう告げると、響くんはソファから立ち上がってこちらへやってきた。

「…何で?」

「…あ?何でって…俺もあんたと同じ理由だよ」

「ふぅん。お腹落ち着いたし寝ようか。電気消すね」

「…ん」

照明を暗くして同じベッドへ寝転ぶと、さっきの言葉がどうしてもモヤモヤした。

「……さっきの嘘。俺、響くんの事…気になり始めたから、他の人と…そういう関係になってほしく……え?」

隣を見るとスヤスヤと寝息を立てる響くん。

「…早すぎない?俺今すっげー恥ずかしい事言ったのに…。でも響くんもずっと俺の体の様子見てなきゃダメだったし疲れたよね。ありがとね」

無防備な寝顔はいつも以上に幼くて可愛らしい。寝ているのを良い事に軽くキスすると、ん、と可愛い声が漏れた。

「……やば、可愛い。俺、響くんの事好きになりそう」

小さく呟いた言葉は、俺の本音。惚れやすい性格でもないはずなのに、何でこんな気持ちになるのか分からない。

けど、確かに今この人の事が気になって仕方ない。

何度か触れるだけのキスを繰り返した後、響くんにしがみついて、俺も疲れ切った体を癒す為に目を閉じた。

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