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第一章
千隼(終) 挿絵有
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二人が再会して会話するのがメインです。一番下に聖奈さんが描いてくれた挿絵があります。
擽り/キス/甘
攻→桃瀬/視点
受→千隼
◇ ◆
Daisyに加入してすぐ、栗原さんは俺の指導係になった。
加入当時幼かった俺からしたら彼はとても大きく、立派に見えて。毎日の様に組織での生き方を教えられた。
指導係からペアとして任務するまでに時間はかからなかった。──それは俺が殆ど何も感じない体だったから。
任務に行く為に行われる拷問訓練で俺は一言も発さないままに終了し、栗原さんを驚かせた。完全な不感症ではないが、この体は組織内では一つの武器となり、すぐに栗原さんの隣に立つ存在として許された。
昔から危険視されていたscarに潜入する際、薬に力を入れていると聞いた時は必死にその分野を勉強し、力でも優位に立てる様に技も磨いた。
その結果、潜入して数ヶ月でscarの中で特に過激なチームのリーダーになる事が出来た。ここから終わりに向かうのはとても早くて。
Irisと合流するとあっさりと潰す事に成功した。
元々Irisとは友好関係とされているが、上下関係でいうと何倍もIrisが上を走っていた。しかも組織が出来た頃は、力の弱い俺達を支援してくれていた時期もあったらしく、俺達からしたら誇れるような存在で。
「何か、ずっと雲の上だと思ってたけど案外みんな俺達と一緒なんだな」
少しでも早く追いつきたくて、少しでも恩を返したくて必死だったけど、Irisの人達と接するようになってふと肩の荷が下りたような、そんな感覚になった。
任務が終わって自分の組織に帰る前にIrisへやってきたのは、風見さんの依頼でもある俺の作った拘束具を運ぶためでもあるが、一番の目的は──。
「久しぶり、千隼くん」
部屋を出て少し足を進めた所で待っていたのは、ずっと会いたかった子だった。
「…久しぶり。元気そうだな」
相変わらず、堕ちてない時のこの子は少し強気な感じで。それがまた可愛くて。
「千隼くんは、オークション任務終えた辺りでめちゃくちゃメンタルやられてたみたいだね?俺に落とされちゃったからかな?」
嫌味っぽく伝えて反応を見ると、千隼くんはむっと頬を膨らませたが、ふぅと溜息を吐くとすぐに強い眼差しを向けてきた。
「そうだな。けど、その経験のおかげで俺も少し強くなる事が出来たから、お前らには少しだけ感謝してる」
「へぇ。エッチに攻められて感謝してるの?」
「相変わらずうざいな。お前こそ、俺に随分会いたかったみたいじゃん。揶揄う気だったわけ?」
会いたかった理由は、純粋に「元気にしてるかな」という思いからだった。渚くんとは違って、この子は繊細だろうから何かあればポッキリ折れてしまうような、そんな感じがしたから。
「心配だったからだよ。からかうなんて、責めてる時にしかしないよ。本当は七彩さんにも渚くんにも、会うの止められたんだけどね」
「責めてる時もからかうなよ。──まぁご心配なく。おかげさまで、先輩達のおかげで俺はもうメンタル戻ったんで。実際、俺もお前に会ったらどんな気持ちになんのか心配だったけど、オークションに参加してた理由もざっくり教えてもらったし、Daisyの人って分かって安心したし。これからは、こうやってまた会いたい」
その言葉に目を丸くすると、千隼くんはこちらに近づいて来て、ぽすんと胸に顔を埋めてきた。
「…えぇ?なになに、デレたの?」
「──七彩先輩に聞いたけど、お前格好良かったみたいじゃん。俺、前にも伝えたけどお前のこと、嫌いじゃなかった。だから今回の任務もすごいって純粋に思ったし、またこうして会える関係性って分かって、本当に嬉しかった。俺の事も覚えてくれてて嬉しい。俺に会いたいって思ってくれた事も、こうして抱き締めてくれることも。全部、嬉しい」
(えー……可愛い)
きゅっと抱き締めて頭を撫でてみると、千隼くんは顔を擦り付けてきた。メンタルはしっかりしてるけど、前と違って少しだけ年相応になったような。不思議な成長を重ねた彼を見れて、俺も嬉しくて。
「千隼くんに会えて、俺も嬉しいよ」
「うん。今日はもう帰んの?」
「帰るよ。千隼くんに会うためにこっち来ただけだし」
体を離して優しく頭を撫でると、名残惜しそうにきゅっと袖を掴まれた。
「……長期任務で疲れてるのも分かるし、全然Daisyに帰れてないだろうけど。折角会えたしもう少しだけ一緒に居たい」
じっと上目遣いで見つめてくる表情に、不覚にもドキッとした。
「そんな可愛い事言ってさぁ。またいじめたくなっちゃうからやめてよ」
「いいよ、別に。俺の事いじめても。この前先輩に散々訓練させられたから耐性出来たし」
ニヤッと挑発的に笑う顔に、Irisの人は本当にバカだなと感じてしまった。
(感じ方なんて変わるわけないし、絶対また泣き喚くくせに)
それでも俺と一緒に居たいのか、それとも本当に耐性出来たと思ってるのか。どちらか分からないけど、この子をあの無情な機械で責めるのはなんとなく嫌で。
「……じゃあ、千隼くんの部屋で攻めてあげようか?」
クスッと笑いながらそう訊ねると「うん」と頷いた。
「相部屋だけど、同じ部屋の人が今日遠方に行ってるからいいよ。訓練部屋じゃなくていいの?」
「そんなにがっつり攻める理由もないしね。ただ少し千隼くんの耐性チェックするだけだし」
まぁ攻める理由はなかったけど、柚木さん達は暇つぶしと好奇心からいじめちゃったけど。
手を引っ張られて部屋に案内されると、布団が部屋の端に畳まれていたので、千隼くんはそれを引っ張り出した。
手伝う前に手際良く布団を敷いた千隼くんは、布団の上に腰掛けて「来て」と手招きした。
(布団ですると耐性チェックっぽくなくて何か緊張するな)
言われるがままに正面に座ると、千隼くんはゴロンと寝転んだ。
「まだくすぐりは克服してないけど、だいぶ我慢出来るようになったよ」
万歳して一番の弱点を晒すと、少し緊張したような表情を見せた。
「へぇ。どうかなぁ~」
少しだけ楽しくなってきたので、布団に寝転ぶ千隼くんのお腹辺りに体重をかけすぎないように跨り、手を伸ばすと、それだけで力が入ったのが分かる。
服の上から優しく撫でてみると、ビクンと大きく反応を示したが、前に比べると確かに少しだけ耐性がついたようにも見える。
5本の指を添えてサワサワと全体的に擽ってみると、「んんっ」と可愛い声が返ってきて、何だか違う感情が芽生えそうになった。
優しくなぞると笑い声というより甘い声が返ってきて、もっと見たいと思ってしまう。
(あー…やば。七彩さんとか柚木さんはいじめ抜く事しか考えてなかったけど、この子は気持ち良くさせたいかも)
脇から指をずらして、服の上から胸の突起を探すと、「ぁっ」と小さい声が返ってきた。
「んん……そこは、違う…っ」
「んー、可愛いから感じさせたくなっちゃった」
ぷくりと主張して、服の上からでも分かるようになると、人差し指の爪を使って優しく引っ掻くと、万歳のまま腰をくねり出した。
「んん……っ!」
真っ赤な顔をして、既に少し涙目になってるのが可愛くて優しくいじめてみると、抵抗はせずにされるがままに受け入れている。
「ねぇ。優しくいじめていい?」
今まで機械に頼ってきたのは、正直自分の手で愛撫するのが面倒だったから。でもこの子は前みたいに自分の手で善がらせたくて。
覆い被さり、顔を近付けると小さくコクンと頷いてくれた。
それを見て服の中へ手を差し込み、直接胸に触れた。少しだけ硬くなった乳首を指で挟み、優しく捏ねてやった。すると万歳していた手は、隠すように顔の前に移動し、隠れきっていない部分は更に赤く染まっていた。
(何してんだろ)
自ら「攻めさせてよ」と言ったものの、ノッてくるとは思わなかったし、素直に受け入れてくれる状況が理解出来なくて。
それでももう少し可愛い姿が見たくて両胸を捏ねると、恥ずかしそうな喘ぎ声が耳に届く。
暫く胸元を中心に愛撫しながら、快感を覚えるような手つきで肌を撫でると、腕を再度万歳に戻してこちらを見つめてきた。
「も、桃ちゃん」
久しぶりに呼ばれた名前に少し胸が高鳴った。組織の子供達には桃くんと呼ばれてるし、他は基本的に呼び捨て。俺をちゃん付けで呼ぶのは今はこの子だけ。
一度渚くんに呼んでもらったけど、千隼くんを思い出して調子が狂いそうになったので呼ぶのをやめさせた。
「桃ちゃん…っ」
「なぁに」
「会いたかったっ……」
恋人のような甘い言葉に勘違いさせられそうになる。蕩けた眼差しを向けられたので中へ入れていた手を頬に持って行って撫でた。
「俺も会いたかったよ。渚くんにも、千隼くんにも」
「…っ」
渚くんの名前を出したからか、少しだけ複雑そうな顔をしながらも背中に手を回してくれた。
「何でこんなに甘えてるのー?そんなに俺に会えて嬉しかった?」
「うんっ…だって、俺、お前のこと嫌いじゃないもん」
ぎゅうっと背中に回った手が強くなり、同じように抱き締めるととってもあたたかい気持ちになった。
「桃ちゃん、キスして」
「──いいよ」
体を離して軽く触れるだけのキスをすると、前と同じように千隼くんから舌を絡めてくれた。
今まで感覚が分からなかったけど、この子と前に初めてキスをした時とても気持ち良いと思った。
キス自体初めてだったのもあるだろうが、それでも誰かと何かをして気持ち良いと感じる事なんてなくて。俺にとっては新鮮だった。
(だから、俺はこの子のこと気になってたのかな)
入ってきた舌を絡ませると、積極的に舌を吸ってくるので、俺も同じように返した。
(何でこの子は俺にキスされたかったんだろ)
よく分からないけど、俺もこの子としかしたくないと思う辺り、同じような気持ちなのかもしれない。
結局その後は暫くキスをしながら肌を擽ると、力尽きた千隼くんは気を失ってしまった。
「──何が耐性ついた、だよ」
前程何もしてないのに意識を飛ばした千隼くんの頬を撫でながら、そう呟いた。
◇ ◆
「うわぁ!」
突然声がしたかと思えば、勢いよく千隼くんが起き上がった。
「あ、起きたの?」
「…っごめん、時間は…?帰らなくていいのか?」
「10分くらいしか経ってないよ。もうー俺のキスで気絶しちゃうとか笑えるー。そんなに俺が好きなのー?」
あはは、といつものからかう口調で告げると、千隼くんは俯いたまま、少し言葉を詰まらせた。
「好きじゃないけど、嫌いでもない。最初はもちろん大嫌いだったし、無意味に攻めてくるお前が許せなかったけど、暗闇で一人で薬に蝕まれてる時、助けてくれた時から。──あの後、シャワー室で優しく声をかけてくれてから、完全に"嫌い"から"嫌いじゃない"に変わった。今もそれは変わってない」
「そっかそっか。じゃあ嫌いから嫌いじゃないに変わったなら、次は好きに変えていってもらおうかな」
「……うん。好きに変えていくから、これからも俺の事見に来てよ。成長していく姿見てほしい」
「ふふ。分かった。じゃあIrisの人達と同じくらい好きになってもらえるまで、ここに通うよ。俺が今まで学んできたこと、全部千隼くんに教えてあげる。──だから、待っててね」
「うん……」
期待したような瞳は、前みたいに強気でツンとしたものは含まれていなくて。Daisyで俺を慕ってくれている子供達と同じ眼差しで心が癒された。
「じゃ、流石に報告とかもあるしそろそろ帰るね。次はもっともっとたくさん耐性チェックしてあげるから、鍛えといてね」
「うん」
千隼くんが無事に起きたのが確認出来たので立ち上がると、玄関まで送ってくれた。
一応千隼くんが声をかけてくれて七彩さん始め、渚くんまでみんなでお見送りに来てくれた。
「あはは~みなさんわざわざありがとうございます。無事に千隼くんとも会えたので帰ります。拘束台は好きに使って下さいね~」
「もう当分お前とは関わりたくないけど、今回は本当にお疲れ様。桃瀬さんのおかげでこんなにも早く任務終えれたよ」
「こちらこそ、七彩さんと由麗さんと渚くんが居たからスムーズに進めることが出来ました。──では、また」
去ろうとすると、最後に千隼くんが突進してきた。クシャッと服のポケットに何かが入れられると、千隼くんは「またね」と言った。
「またね」
最後にみんなに手を振って別れを告げ、Irisの組織を後にした。姿が見えなくなる程離れてから、ポケットに入れられた物を見ると、書かれていたのは千隼くんへ繋がる11桁の数字。
「普通に渡せばいいのに」
そう思いながら、ゆっくりと組織へ向かって歩いた。
end.
素敵なイラストありがとうございます!
凄く綺麗です( ⸝⸝•ᴗ•⸝⸝ )
擽り/キス/甘
攻→桃瀬/視点
受→千隼
◇ ◆
Daisyに加入してすぐ、栗原さんは俺の指導係になった。
加入当時幼かった俺からしたら彼はとても大きく、立派に見えて。毎日の様に組織での生き方を教えられた。
指導係からペアとして任務するまでに時間はかからなかった。──それは俺が殆ど何も感じない体だったから。
任務に行く為に行われる拷問訓練で俺は一言も発さないままに終了し、栗原さんを驚かせた。完全な不感症ではないが、この体は組織内では一つの武器となり、すぐに栗原さんの隣に立つ存在として許された。
昔から危険視されていたscarに潜入する際、薬に力を入れていると聞いた時は必死にその分野を勉強し、力でも優位に立てる様に技も磨いた。
その結果、潜入して数ヶ月でscarの中で特に過激なチームのリーダーになる事が出来た。ここから終わりに向かうのはとても早くて。
Irisと合流するとあっさりと潰す事に成功した。
元々Irisとは友好関係とされているが、上下関係でいうと何倍もIrisが上を走っていた。しかも組織が出来た頃は、力の弱い俺達を支援してくれていた時期もあったらしく、俺達からしたら誇れるような存在で。
「何か、ずっと雲の上だと思ってたけど案外みんな俺達と一緒なんだな」
少しでも早く追いつきたくて、少しでも恩を返したくて必死だったけど、Irisの人達と接するようになってふと肩の荷が下りたような、そんな感覚になった。
任務が終わって自分の組織に帰る前にIrisへやってきたのは、風見さんの依頼でもある俺の作った拘束具を運ぶためでもあるが、一番の目的は──。
「久しぶり、千隼くん」
部屋を出て少し足を進めた所で待っていたのは、ずっと会いたかった子だった。
「…久しぶり。元気そうだな」
相変わらず、堕ちてない時のこの子は少し強気な感じで。それがまた可愛くて。
「千隼くんは、オークション任務終えた辺りでめちゃくちゃメンタルやられてたみたいだね?俺に落とされちゃったからかな?」
嫌味っぽく伝えて反応を見ると、千隼くんはむっと頬を膨らませたが、ふぅと溜息を吐くとすぐに強い眼差しを向けてきた。
「そうだな。けど、その経験のおかげで俺も少し強くなる事が出来たから、お前らには少しだけ感謝してる」
「へぇ。エッチに攻められて感謝してるの?」
「相変わらずうざいな。お前こそ、俺に随分会いたかったみたいじゃん。揶揄う気だったわけ?」
会いたかった理由は、純粋に「元気にしてるかな」という思いからだった。渚くんとは違って、この子は繊細だろうから何かあればポッキリ折れてしまうような、そんな感じがしたから。
「心配だったからだよ。からかうなんて、責めてる時にしかしないよ。本当は七彩さんにも渚くんにも、会うの止められたんだけどね」
「責めてる時もからかうなよ。──まぁご心配なく。おかげさまで、先輩達のおかげで俺はもうメンタル戻ったんで。実際、俺もお前に会ったらどんな気持ちになんのか心配だったけど、オークションに参加してた理由もざっくり教えてもらったし、Daisyの人って分かって安心したし。これからは、こうやってまた会いたい」
その言葉に目を丸くすると、千隼くんはこちらに近づいて来て、ぽすんと胸に顔を埋めてきた。
「…えぇ?なになに、デレたの?」
「──七彩先輩に聞いたけど、お前格好良かったみたいじゃん。俺、前にも伝えたけどお前のこと、嫌いじゃなかった。だから今回の任務もすごいって純粋に思ったし、またこうして会える関係性って分かって、本当に嬉しかった。俺の事も覚えてくれてて嬉しい。俺に会いたいって思ってくれた事も、こうして抱き締めてくれることも。全部、嬉しい」
(えー……可愛い)
きゅっと抱き締めて頭を撫でてみると、千隼くんは顔を擦り付けてきた。メンタルはしっかりしてるけど、前と違って少しだけ年相応になったような。不思議な成長を重ねた彼を見れて、俺も嬉しくて。
「千隼くんに会えて、俺も嬉しいよ」
「うん。今日はもう帰んの?」
「帰るよ。千隼くんに会うためにこっち来ただけだし」
体を離して優しく頭を撫でると、名残惜しそうにきゅっと袖を掴まれた。
「……長期任務で疲れてるのも分かるし、全然Daisyに帰れてないだろうけど。折角会えたしもう少しだけ一緒に居たい」
じっと上目遣いで見つめてくる表情に、不覚にもドキッとした。
「そんな可愛い事言ってさぁ。またいじめたくなっちゃうからやめてよ」
「いいよ、別に。俺の事いじめても。この前先輩に散々訓練させられたから耐性出来たし」
ニヤッと挑発的に笑う顔に、Irisの人は本当にバカだなと感じてしまった。
(感じ方なんて変わるわけないし、絶対また泣き喚くくせに)
それでも俺と一緒に居たいのか、それとも本当に耐性出来たと思ってるのか。どちらか分からないけど、この子をあの無情な機械で責めるのはなんとなく嫌で。
「……じゃあ、千隼くんの部屋で攻めてあげようか?」
クスッと笑いながらそう訊ねると「うん」と頷いた。
「相部屋だけど、同じ部屋の人が今日遠方に行ってるからいいよ。訓練部屋じゃなくていいの?」
「そんなにがっつり攻める理由もないしね。ただ少し千隼くんの耐性チェックするだけだし」
まぁ攻める理由はなかったけど、柚木さん達は暇つぶしと好奇心からいじめちゃったけど。
手を引っ張られて部屋に案内されると、布団が部屋の端に畳まれていたので、千隼くんはそれを引っ張り出した。
手伝う前に手際良く布団を敷いた千隼くんは、布団の上に腰掛けて「来て」と手招きした。
(布団ですると耐性チェックっぽくなくて何か緊張するな)
言われるがままに正面に座ると、千隼くんはゴロンと寝転んだ。
「まだくすぐりは克服してないけど、だいぶ我慢出来るようになったよ」
万歳して一番の弱点を晒すと、少し緊張したような表情を見せた。
「へぇ。どうかなぁ~」
少しだけ楽しくなってきたので、布団に寝転ぶ千隼くんのお腹辺りに体重をかけすぎないように跨り、手を伸ばすと、それだけで力が入ったのが分かる。
服の上から優しく撫でてみると、ビクンと大きく反応を示したが、前に比べると確かに少しだけ耐性がついたようにも見える。
5本の指を添えてサワサワと全体的に擽ってみると、「んんっ」と可愛い声が返ってきて、何だか違う感情が芽生えそうになった。
優しくなぞると笑い声というより甘い声が返ってきて、もっと見たいと思ってしまう。
(あー…やば。七彩さんとか柚木さんはいじめ抜く事しか考えてなかったけど、この子は気持ち良くさせたいかも)
脇から指をずらして、服の上から胸の突起を探すと、「ぁっ」と小さい声が返ってきた。
「んん……そこは、違う…っ」
「んー、可愛いから感じさせたくなっちゃった」
ぷくりと主張して、服の上からでも分かるようになると、人差し指の爪を使って優しく引っ掻くと、万歳のまま腰をくねり出した。
「んん……っ!」
真っ赤な顔をして、既に少し涙目になってるのが可愛くて優しくいじめてみると、抵抗はせずにされるがままに受け入れている。
「ねぇ。優しくいじめていい?」
今まで機械に頼ってきたのは、正直自分の手で愛撫するのが面倒だったから。でもこの子は前みたいに自分の手で善がらせたくて。
覆い被さり、顔を近付けると小さくコクンと頷いてくれた。
それを見て服の中へ手を差し込み、直接胸に触れた。少しだけ硬くなった乳首を指で挟み、優しく捏ねてやった。すると万歳していた手は、隠すように顔の前に移動し、隠れきっていない部分は更に赤く染まっていた。
(何してんだろ)
自ら「攻めさせてよ」と言ったものの、ノッてくるとは思わなかったし、素直に受け入れてくれる状況が理解出来なくて。
それでももう少し可愛い姿が見たくて両胸を捏ねると、恥ずかしそうな喘ぎ声が耳に届く。
暫く胸元を中心に愛撫しながら、快感を覚えるような手つきで肌を撫でると、腕を再度万歳に戻してこちらを見つめてきた。
「も、桃ちゃん」
久しぶりに呼ばれた名前に少し胸が高鳴った。組織の子供達には桃くんと呼ばれてるし、他は基本的に呼び捨て。俺をちゃん付けで呼ぶのは今はこの子だけ。
一度渚くんに呼んでもらったけど、千隼くんを思い出して調子が狂いそうになったので呼ぶのをやめさせた。
「桃ちゃん…っ」
「なぁに」
「会いたかったっ……」
恋人のような甘い言葉に勘違いさせられそうになる。蕩けた眼差しを向けられたので中へ入れていた手を頬に持って行って撫でた。
「俺も会いたかったよ。渚くんにも、千隼くんにも」
「…っ」
渚くんの名前を出したからか、少しだけ複雑そうな顔をしながらも背中に手を回してくれた。
「何でこんなに甘えてるのー?そんなに俺に会えて嬉しかった?」
「うんっ…だって、俺、お前のこと嫌いじゃないもん」
ぎゅうっと背中に回った手が強くなり、同じように抱き締めるととってもあたたかい気持ちになった。
「桃ちゃん、キスして」
「──いいよ」
体を離して軽く触れるだけのキスをすると、前と同じように千隼くんから舌を絡めてくれた。
今まで感覚が分からなかったけど、この子と前に初めてキスをした時とても気持ち良いと思った。
キス自体初めてだったのもあるだろうが、それでも誰かと何かをして気持ち良いと感じる事なんてなくて。俺にとっては新鮮だった。
(だから、俺はこの子のこと気になってたのかな)
入ってきた舌を絡ませると、積極的に舌を吸ってくるので、俺も同じように返した。
(何でこの子は俺にキスされたかったんだろ)
よく分からないけど、俺もこの子としかしたくないと思う辺り、同じような気持ちなのかもしれない。
結局その後は暫くキスをしながら肌を擽ると、力尽きた千隼くんは気を失ってしまった。
「──何が耐性ついた、だよ」
前程何もしてないのに意識を飛ばした千隼くんの頬を撫でながら、そう呟いた。
◇ ◆
「うわぁ!」
突然声がしたかと思えば、勢いよく千隼くんが起き上がった。
「あ、起きたの?」
「…っごめん、時間は…?帰らなくていいのか?」
「10分くらいしか経ってないよ。もうー俺のキスで気絶しちゃうとか笑えるー。そんなに俺が好きなのー?」
あはは、といつものからかう口調で告げると、千隼くんは俯いたまま、少し言葉を詰まらせた。
「好きじゃないけど、嫌いでもない。最初はもちろん大嫌いだったし、無意味に攻めてくるお前が許せなかったけど、暗闇で一人で薬に蝕まれてる時、助けてくれた時から。──あの後、シャワー室で優しく声をかけてくれてから、完全に"嫌い"から"嫌いじゃない"に変わった。今もそれは変わってない」
「そっかそっか。じゃあ嫌いから嫌いじゃないに変わったなら、次は好きに変えていってもらおうかな」
「……うん。好きに変えていくから、これからも俺の事見に来てよ。成長していく姿見てほしい」
「ふふ。分かった。じゃあIrisの人達と同じくらい好きになってもらえるまで、ここに通うよ。俺が今まで学んできたこと、全部千隼くんに教えてあげる。──だから、待っててね」
「うん……」
期待したような瞳は、前みたいに強気でツンとしたものは含まれていなくて。Daisyで俺を慕ってくれている子供達と同じ眼差しで心が癒された。
「じゃ、流石に報告とかもあるしそろそろ帰るね。次はもっともっとたくさん耐性チェックしてあげるから、鍛えといてね」
「うん」
千隼くんが無事に起きたのが確認出来たので立ち上がると、玄関まで送ってくれた。
一応千隼くんが声をかけてくれて七彩さん始め、渚くんまでみんなでお見送りに来てくれた。
「あはは~みなさんわざわざありがとうございます。無事に千隼くんとも会えたので帰ります。拘束台は好きに使って下さいね~」
「もう当分お前とは関わりたくないけど、今回は本当にお疲れ様。桃瀬さんのおかげでこんなにも早く任務終えれたよ」
「こちらこそ、七彩さんと由麗さんと渚くんが居たからスムーズに進めることが出来ました。──では、また」
去ろうとすると、最後に千隼くんが突進してきた。クシャッと服のポケットに何かが入れられると、千隼くんは「またね」と言った。
「またね」
最後にみんなに手を振って別れを告げ、Irisの組織を後にした。姿が見えなくなる程離れてから、ポケットに入れられた物を見ると、書かれていたのは千隼くんへ繋がる11桁の数字。
「普通に渡せばいいのに」
そう思いながら、ゆっくりと組織へ向かって歩いた。
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素敵なイラストありがとうございます!
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