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お兄ちゃんが変身した!(3)

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 しゅうた少年はこの場に入ってきた男の子の外見を見て、すぐに判断を下した。

「危ない! ここに爆弾があるんだ! すぐに離れて!!」

 しゅうた少年は咄嗟に嘘を言った。相手は小さな男の子、こんな幼稚な嘘でも信じると思った。案の定、男の子は騙されてドームをすぐに出た。しゅうた少年はこの間にズボンをはいた。

「お母さん! 大変! 爆弾あるよ!!」

 さっきの男の子の大きな声が聞こえてきた。

(保護者付きか~~!! やばい、どうやってもごまかそうか!!)

 しゅうた少年がとりあえずドームの外に出ると、保護者らしき女の人がこちらにやってきた。メガネをかけ、長い黒髪のぱっつんヘアー。いかにも真面目そうな感じであった。

「君かな、爆弾があるって言ったの?」

「えぇと、中に入ると危険ですので……」

「一応確認のために私も見せて貰うわ」

「駄目です! 本当に危険です!」

(まずい! 中にいるインキュバス状態のハル兄ちゃんを見せるわけにはいかない!)

「えっ? ここに爆弾あるの!」

 空気を読まずに日々乃ハルがドームの外に出てきた。予想通り、保護者のお母さんが日々乃ハルの姿に驚いた。

「えっ? あなた! 公園でなんて格好しているんですか! 素晴ら、げふん、いや、破廉恥な格好して!!」

(いまこの人何か言おうとしていたような……)

 しゅうた少年はもしやと思い、悪い考えを思いついた。

「ねぇねぇ綺麗なお姉さん、僕達Hな事していたの。お姉さんも見る?」

「なん……ですってっ!?」

 保護者のお母さんの反応を見て、しゅうた少年は確信した。

(この人は男の子同士の絡みに興味があるタイプとみた!)

「お姉さんが内緒にするなら見せて上げてもいいよぉ」

「……了解だわ……せい君……ママは大事な事をしなければいけないから、あっちで遊んでなさい…………」

「えぇ、僕もHな事見たい!」

「駄目よ! 大人はいいけど子供は駄目よ!」

 しゅうた少年は、二人が騒いでいる内に逃げだそうと考えた。

「奥さん、早い内にお子様にも性教育をちゃんとしてあげないといけないですよ」

 日々乃ハルがビキニをずらし、乳首を見せ付けた。しゅうた少年はどきっとしたが、すぐに態度を改めた。

「ハルお兄ちゃん! いいから大人しくしてて!」

 しゅうた少年は日々乃ハルを睨み付けた。一方親子二人組は日々乃ハルに見ほれていた。

「お母さん、なんか凄く見てみたい気持ちになった……」

「流石私の子ね……性教育なら仕方ないわ……いいわ!」

「何が良いものか! 駄目に決まっておるだろうが!」

 突如、公園にディルシアがやってきた。しゅうた少年達を追ってやってきたのだ。

「この世界は私が今後支配するのだ! そのために忠実な下部となる子供が必要だ! だが、男同士では子供が産まれずに少子化が加速するだろうが!! 同性愛教育など必要ない!」

「お母さん、この人変な格好をしているよ!」

「あの、あなたは一体?」

「申し遅れました。私は元魔王軍幹部、優秀なるディルシアでござい、って、ちょっと待てお前ら!!」

 どさくさに紛れて逃げだそうとしたしゅうた少年と日々乃ハルが止められた。しゅうた少年が舌打ちをする。

「ちっ、逃げられると思ったのに!」

「私は少子高齢化を心配し、魅惑的なサキュバスをつくりあげたというのに、そこのナチュラル失礼好青年ははなぜにインキュバスになっているのだ!」

「あの~~、僕には日々乃ハルという名前があるんだけど~~。ついでにこの子はしゅうた君です」

「とにかく! 同性愛、男同士の恋愛を私は認めぬっ!!」

 なかなかに面倒くさい状況になったなとしゅうた少年は困っていた。ディルシアを中途半端に動けない状態にするよりかは、思い切って殺しておいた方がよかったと物騒な事を考えていた。

「そうだ、そこにいるご婦人さんに男女同士の性教育をして貰おうか!」

「何を言っているのあなたは! 私は妻子持ちよ! この子達と淫らなことをしろというの!」

「そうとも、貴様がサキュバスになり、二人に男女同士の子作りの良さを教えるのだ! レナニキュサ!」」

 ディルシアはまたも魔力をこめたエネルギー弾を放った。ターゲットは保護者のお母さんだった。

「きゃああ!!」

「危ない!!」

 人の良い日々乃ハルは咄嗟に彼女をかばって、ディルシアの攻撃をくらった。

バババババ

「ああああ!!」

「ハル兄ちゃん!!」

「あれ?」

 日々乃ハルはきょとんとした表情をしていた。そして自分の格好を見て顔を赤らめた。

「な、な、なんで僕こんないやらしい格好のままでいるのっ!?」

 日々乃ハルは変身前の状態に戻ったのだ。正気を取り戻し、今更ながら恥じらいの感情が生まれていた。

「あぁ! 同じ変身魔法を二回食らうと元に戻ってしまうのだ! まぁこれはこれで良しとしよう! さぁご婦人よ、今度こそくらうがいい!」

 しゅうた少年は小型の機械をポケットから飛び出し、それをディルシアに向けた。機械から細く赤い光が飛び出した。その光がディルシアの目に入ると、彼は異常を訴えた。

「ぐあああ!! 目がああ!!」

 ディルシアは両目を押さえて苦しみだした。日々乃ハルがしゅうた少年の方を見る。

「しゅうた君、またおいたしちゃったの?」

「ただのレーザーポインタだよ。もっとも法定外の出力のレーザーを放つから目を潰す代物だけどね」

「そんなもの持っちゃいけないでしょ!」

「まぁまぁ、早くこの場から皆で逃げようよ」

 しゅうた少年達はすぐに公園から逃げ去った。幸いにも、公園で会った親子二人組が住むマンションが近くにあり、そこでかくまってもらうことになった。男の子の方は疲れたのか、すぐにお昼寝モードになった。お母さんの方は、日々乃ハルに男物の着替えを渡してくれた。

「私の旦那の着替えで良ければだけど。まぁそんな格好しているよりかはましでしょ?」

「あの奥さん、名前を聞いていなかったですね。聞いて大丈夫ですか?」

「私の名前? 木墨 遙香きずみ はるかよ。それがどうかしたの?」

「では木墨さん、旦那さんの着替え貸して貰って大丈夫なんですか?」

「いいのよ、あの浮気性の旦那のことなんか……」

 しゅうた少年はその様子を見て、悪い考えを思い浮かんだ。しかしこれだけで足りないと彼の頭の中にあった。

「ハルお兄ちゃん、やっぱり男女同士じゃなくて同性間が一番だよね。男こそが一番男の良さを分かっているし、女は女の良さを一番分かっている。つまり薔薇と百合こそ正義なんだよ」

「な、なにを突然に言うんだいしゅうた君。僕はその……」

 しゅうた少年の狙いは日々乃ハルではなかった。保護者のお母さんがこの会話に対しどう反応するかを見たかったのだ。

「そうよね! 男の子同士の恋もいいけど、女の子同士もいいのよ! 私は子供は欲しいなと思って今の夫と結婚したけど、男は無理だって分かったの! 本当は私は女の子が好きなのに! どうしてこの世は女同士で子作りができないの!」

 急に饒舌になった木墨婦人に対し、日々乃ハルはどん引きな態度をとった。しゅうた少年の方は、木墨婦人の態度で確信し、彼の持っていた悪い考えを実行することにした。

「木墨さん。実はですね。僕の方で浮気調査もできましてね。ドローンを使ったり、この近辺の監視カメラのシステムにハッキングして僕のパソコンの方でも録画できることができてですね……」

 日々乃ハルは、またしゅうた君の悪いところが出ているか……と思った。しかし彼を止められないことは自身がよく分かっている。こちらに変に飛び火しないように見守ることだけにしようと彼は思った。

「何……ですって!? いや……あの夫と縁を切れたら嬉しいんだけど、経済面的に夫の収入がなくなるのはちょっと……」

「大丈夫です! 僕は弁護士の方ともコネがあります。慰謝料はたっぷりとれます! 養育費を払わないのであれば取り立て屋の人も用意しますよ!」

「でもお高いんでしょう?」

「大丈夫です! 後々あなたがうまくいったことを宣伝してくれるのであれば料金も割り引きできますよ! さらに、もしも今後同性のパートナーが欲しいというのであれば、同性向けのお見合いサービスの方もやっておりまして……」

 日々乃ハルはしゅうた少年の商談の様子を見て非常に怖くなった。一度彼を見守ろうと思ったが、その考えを一端捨てることにした。

「しゅうた君、なんというか、怖いよ。君は一体何者なんだい?」

「何者って、僕はただの男の子だよ。商談の方に戻ってもいいかな?」

 しゅうた少年は日々乃ハルに無邪気な笑顔を向けた。



 後日談であるが、木墨婦人は旦那の浮気の証拠を掴んでめでたく離婚することとなった。もちろん子供もいっしょについてくる。途中、夫が金を払わないと駄々をこめたらしいが、その辺も弁護士や汚れ仕事専門の人材のおかげで、何とかなったとか。さらにその後、しゅうた少年のセッティングしたお見合いにより、素敵なパートナー♀と出会うことが出来たとか。



 ついでにもう一つの後日談がある。ある日、しゅうた少年は日々乃ハルの家に遊びに来ていた。ディルシアと会った日の彼の言動で、一つ引っかかる点があり、かまをかけてみようと思ったのだ。

「ハル兄ちゃん、もしかしてインキュバスだった時の記憶が残っているんじゃないかな?」

「な、なんでそのことがっ!?」

 しゅうた少年の勘は当たった。日々乃ハルは酷く動揺している。

「ハル兄ちゃん正直だな~~。あの時のハル兄ちゃん良かったよ。今度インキュバスのコスプレでまたやって貰おうかな~~」

「やりません!」

「やってよ~~、またぼくのおちんちん咥えてよ~~」

「だめ!」

「じゃあ仕方ない。無理矢理させちゃうか」

「え?」

 突然日々乃ハルの体に痺れが発生し、彼の体に力が入らなくなった。彼はゆっくりと尻餅をつく。

「ちょっとハル兄ちゃんの飲んでいたコーヒーにお薬を仕込みました。お薬が苦くて入っているのが分かりやすいものだったけど、ハル兄ちゃんがブラックコーヒー好きで助かったよ」

 日々乃ハルは尻餅をついた状態で、後ずさりする。


「しゅ、しゅうた君、な、何をするきなの?」

「何って? ナニを無理矢理咥えさせようかなって思ってね」

 しゅうた少年はズボンのチャックをおろし、固く勃起した性器を露わにした。

「いやあああああ!!」

 日々乃ハルの甲高い悲鳴が彼の住む家に響いた。
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