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お兄ちゃん女装したのっ!?

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 日比野ハルは自分の通っている学校の保健室前に来ていた。人の噂で聞いただけなのだが、保健室の先生がどんな相談にも対応してくれるということなのだ。日比野ハルは引き戸をコンコンとノックし、保健室へと入った。

「失礼します」

すぴー

 白衣を着た女の人が机で居眠りをしていた。日比野ハルの目から見て、若くて綺麗な人に見えた。もしやこの先生かなと思い、声をかけようと思った。

「疲れているのかな。起こすのがもうしわけなくなるな……」

 日比野ハルは気を遣い、改めて保健室に訪れた方が良いかと思った。

「んあっ!」

 保健室の先生が変な声を出し、起き上がった。

「良かった。誰にも見られてない……」

 保健室の先生が日比野ハルと視線を合わせた。彼女が起きた直後の目は死んだ魚の目そのものだったが、今は睨みをきかせたものとなっている。

「私の昼寝姿を見たのか貴様?」

「その、相談したいなと思って来たら、たまたまそういうタイミングだったもので……」

「……相談には無料でのってやる。そしてこの事は他言無用だ、いいね?」

「は、はい」

 日比野ハルは無料でというワードにひっかかったが、その事を突っ込むのは地雷だなと口には出さなかった。保健室の先生は保健室入り口に“相談対応中”と書かれた札をかけた。

「すまないが君の名前を知らない。教えてくれ」

「日比野ハルです」

「ふむ、ではハル君と呼ばせて貰う。私は弧ノ山紫織このやましおりだ。呼び方は適当で良い」

「では、弧ノ山先生。その、ちょっと変わった恋愛相談になるのですが、大丈夫ですか?」

「ほう、さては同性間か?」

(なぜ分かったんだっ!?)

「正直な表情をしているな。君が男受けしそうな見た目しているからだ。心配ない、私はその手の相談も多くのって解決している」

「で、では、ここだけの話です。僕は近所の男の子に好かれています」

「なんだ、ショタに好かれているなら良いじゃないか? それとも君はショタは嫌いなのか? 私は好きだぞ」

「そうじゃないんです! その子、ちょっと異常な愛情を持っているところがあって……その……」

 日比野ハルは、これまでしゅうた少年にされたことを正直に言えなかった。まさかレイプされたり、フェラチオされたり、さらに危害を加えるものを殺しかけたり……

「なんだ、その子にレイプでもされたのか?」

(なぜこの人は分かるんだっ!?)

「レイプされるって事は深く愛されている証拠だ。それで良いじゃないか? はい、相談おしまいだ」

「良くありません! この状況を変えたいんです!」


「変える? ふむ、レイプぐらいでは物足りないから、もっと過激でよりハードなプレイをして欲しいと?」


「誰がそんなことを言いましたか! 例えば、その子が弧ノ山先生のような綺麗な女の人を好きになるように教えるとか!」

 弧ノ山先生の動きが一瞬止まった。日比野ハルは彼女のそんな様子を不思議に思った。

「どうしましたか?」

「いや、不意打ち的に君のような子に褒められたもんだからな……。君がその子に好かれる気持ちが何となく分かった気がする。そこいらの女では君に劣る。女を好きになれというのは難しいかもしれない」

「じゃあどうすれば……」

「こういうのはどうだ? 君の印象が思い切り変わるようなことをすれば良い。そうすればその子に嫌われるかもしれないだろう」

「なるほど……イメチェンって奴ですね」

「ただし、生半可な変化では効果はない。白が黒に変わるくらいの変化をつけなければな」

 日比野ハルは、自分なりにしゅうた少年に嫌われる変化を考えてみた。

「ヤンキー化するとかですか?」

「一応先生として、それはオススメはできないな。問題が解決しても、君にとってマイナスになる面が多い。しかし、私なりに君の印象を思い切り変えつつ、君自身のイメージも良くする方法がある」

「本当ですかっ!?」

「残念だが、今日すぐには出来ない。休日になったら、私の住んでいるマンションの方まで来て欲しい。そこでイメチェン用の道具を調える。っと、その前にちょっと下準備が必要だ。まずは君の体をはからせて貰うよ」

 弧ノ山先生はメジャーを持って、日比野ハルのスリーサイズをはかった。時折、肩、胸、お尻ときわどいところを触っていたが、日比野ハルはこれも問題解決のためと思い我慢した。



 休日、日比野ハルは弧ノ山先生の住むマンションの部屋に来ていた。

「悪いな、休日に呼んで。さぁ上がれ」

 弧ノ山先生が室内に案内すると、何やら女性ものの着替えが用意されている。日比野ハルは悪い予感がした。

「まさか、僕が女装なんてこと言わないですよね?」


「それで当たりだ」

「すいません、帰ります」

「そうか、今この場でお前に性的に襲われたと大声でご近所に公言するが大丈夫か? このご時世、女が嘘をついていると思う人は少ない方だろうなぁ」

 日比野ハルは既に背中を向けていたが、再度弧ノ山先生の方を向いた。

「分かりました。でも用が済んだらすぐに帰りますからね」

「ふむ、ではこいつらを装着しようか。ほれ脱げ」

 日比野ハルはとりあえず上半身だけすっぽんぽんの状態になった。

「男と女の体の違いについてだ。女性に比べて男性は肩幅が広い、胸がない、ヒップまわりが小さいといった違いがある。つまり、体のラインの違いを女性に近づけることが大事だ。ということでブラジャーと乳用のシリコンパッドだ。君はスリムな方だから体とおっぱいサイズのバランスも考えて、ブラジャーのサイズはAにしといた」

 日比野ハルは白をベースにしたブラジャーとぷるんぷるんとしたシリコンパッドを手にし、動きが止まった。

「こ、これをつけたら越えてはいけない一線を越えてしまうような……」

「ぐだぐだいわんでさっさとやる!」

「はい!」

 日比野ハルは弧ノ山先生にサポートを受けながら、ブラジャーをつけた。

「ほう、良いじゃないか」

 弧ノ山先生は日比野ハルの姿を見て感心した。当の本人は姿鏡を見てとまどっている。

「こ、こんなの僕じゃない」

「そう、僕じゃないと思えるからこそイメチェンの効果がある。その子は男の君を好きになっているんだ。だったら女の子らしくなれば、その子もきっと興味を持たなくなる」

「そっ、そういうもんですか……」

 次に日比野ハルは下半身すっぽんぽんの状態となった。彼は下半身を両手で隠している。

「私は男の体を見慣れているから安心しろ。むしろ君のような美しい子なら大歓迎だ。もっと見せろ」

「僕は女性に見られるのに慣れていません!」

 日比野ハルは下半身を隠したいと思い、すぐに白ベースデザインのパンティをはいた。

「これもはくように。お尻まわりを大きく見せるパッドが入ったガードルだ。君だけなく、男性だと女性よりもお尻まわりが小さいから体のラインがおかしくなるんだ。ついでに私の好みで黒のストッキングだ」

「こ、好みですか?」
 
「生足より黒のストッキング越しの脚にエロスを感じないか?」

 とりあえず日比野ハルは、弧ノ山先生の指示に素直に従った。着る物を全部着て、さらにお化粧や、髪にアクセサリーもつけてもらった。
 そして、日々乃ハルの女装が完了した。

「ほう、いい女装子ができたな」

 日比野ハルが姿鏡で自分の姿を確かめ、驚いた。目の前の綺麗な子は一体誰なんだと思った。

「すごい……弧ノ山先生すごいです……」

「いや、素材の良さもあるな。見ての通り、君の印象はがらりと変わった。誰も君だなんて分からないだろう。さぁ、君を愛している男の子のもとにいきたまえ」

ぱん

 弧ノ山先生が自信づけのために、日比野ハルの背中を強く叩いた。

「出来れば、先生も来て貰いたいんですが……」

「しょうがないな。まあ、おもしろそ、いや、生徒の頼みとあれば聞いてやるか」

 日比野ハルと弧ノ山先生は近所の公園までやってきた。近くにいるであろうしゅうた少年を携帯で呼び出した。しばらくしてしゅうた少年が公園の入り口にやって来た。

「ほう、ハル君を愛しているのはあの子か」

「そうです。しゅうた君僕のこと分かるかな?」

 しゅうた少年は真っ直ぐに全力疾走で日比野ハルのもとへと向かってきた。

「ハルお姉ちゃん・・・・・!!」

 しゅうた少年は迷わず、女装した日比野ハルの胸元に飛び込んできた。

「僕のためにサービスで女装してくれたのっ!? 嬉しい~~!!」

「え、え、えぇっ!? なんで分かったの!?」

「勘だよ」

 しゅうた少年は無邪気な笑顔をふるまいて答えた。
弧ノ山先生はその様子を見て頷いた。

「もう私は必要ないな」

「先生! 必要です!」

「それ以上私の前でいちゃつくなバカップル。私は空気を読んで去るぞ」

「名も知らぬ綺麗なお姉さん! 分かっていますね!」

「先生! そもそも僕の目的はしゅうた少年から興味を持たれないようにすることであってですね!」

「実を言うとな、こういう展開は予想できていた」

「へっ?」

 日比野ハルは呆気にとられた。

「一番の解決の選択肢は君が少年の愛を素直に受け入れることだ。しかし君は頑なに聞こうとしなかった。故に、一番面白くなりそうな選択肢を選んでみた。どうだね、しゅうた君とやら?」

「最高です!」

 しゅうた少年は弧ノ山先生に親指を立てた。弧ノ山先生も同じポーズで応じた。

「じゃっ、後は適当にいちゃつけよお前ら」

 日比野ハルが呼び戻す声など聞こえないかのように、弧ノ山先生は去って行った。
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