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番外編:校医の不純同性交遊相談所
亡くなった彼女の弟を好きになってしまいました(1)
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保健室でエスプレッソの珈琲を飲んで落ち着いている弧ノ山紫織の元に、今日も一人相談者がやってきた。
「こんにちは弧ノ山先生」
「おっ、来たか」
男子生徒の名前は葉山秋《はやま しゅう》。彼は校内では真面目な子で成績も運動も顔も人並み以上で優等生寄りの子である。そんな彼に中原紫音《なかはら しおん》という彼女がいたのだが、先日、彼女を老人の暴走運転による交通事故で亡くしたことをニュースで弧ノ山紫織はたまたま知った。それから一ヶ月ほど、彼は学校へは来ていなかったが、今日は弧ノ山紫織と面談だけするということで保健室に来ている。
「まぁ、とりあえず珈琲でも飲みながらここでしばらくぼーっとしていろ。久々の学校だとなぜか緊張するだろう? 空気に慣れろ」
「は、はい、お気遣いどうも」
弧ノ山紫織が飲んでいたエスプレッソは、全国的にある某コーヒー豆販売店のものであり、安価ながら味の良い物である。葉山秋は珈琲を10分ほどかけてゆっくり飲み、外で体育をやっている生徒達を数分間見た後、口を開いた。
「では、そろそろ本題に。先生も知っているかと思いますが、僕の彼女が交通事故で亡くなりました。」
「あぁ、知っている。君の今の思いをそのまま話すと良い」
弧ノ山紫織の言葉に葉山秋はこくりとうなづいた。
「本当、紫音は俺にはもったいない彼女でした。そこいらの男よりも勇ましくて、自分らしさを出している姿がうらやましくて、いつしか俺は彼女に告白していました。デートの時間中も俺のどんなところも受け入れて、なんか、楽しくて良い時間を過ごせていたなと思います。」
「……いい彼女だったんだな。」
「はい……その、彼女が亡くなってから、何かする度に彼女を思い出して泣いてしまうような状況だったんです。でもある日出会ったんです……」
数週間前、都心の駅付近で、葉山秋がとぼとぼと歩いていると、ある人の姿が目に入り、意識が覚醒した。
「紫音?」
葉山秋は思わず、その人にそう声をかけた。その人の服装や背格好が生前の彼女そっくりだったのだ。
「あ、あの、僕のことですか?」
葉山秋は驚いた。彼が声をかけたのは彼女によく似た容姿の女装少年だったのだ。
「わ、悪い、人違いだった!」
「ま、待って下さい! もしかして、姉の中原紫音をご存じですか!」
「姉? もしかして、君は紫音の弟さん?」
「はい……」
彼の名前は中原玲音《なかはら れおん》。姉とそっくりの弟であった。二人は人通りの多い通りでしづらい立ち話と思い、近くの喫茶店に入った。最初は互いに緊張しており、良い会話が出せない二人だったが、中原紫音の話になると、互いに口数が多くなってきた。
「紫音は本当、俺よりも男らしかった。そんな彼女が好きだった……」
「僕も大好きでした。だから、お姉ちゃんみたいになりたいと思ったんですけど、玲音《れおん》らしくいればいいと言ってくれたんです」
「あの、本当に紫音そっくりだね。紫音が生き返ったかと思ったよ!」
「……昔からお姉ちゃんそっくりだねと言われてました。試しに、こんな格好してみたら、まるで僕がお姉ちゃんになった気分になって……気持ち悪いですよね?」
「いいや、可愛いよ。俺が断言する」
「ありがとうございます」
しばらく二人が喫茶店で話解散することになった。
「俺がおごるよ」
「そんな、悪いですよ!」
「俺の方が年上だから、良いところ見させてくれよ」
「で、でも……」
「じゃあかわりに、その、ま、また俺と会ってくれるかな?」
「は、はい!」
二人は連絡先を交換し、頻繁に会うようになった。ショッピングをしたり、ゲームセンターに行ったり、喫茶店に入ってなにげない日常の話をしたりと。。いつしか、お互いに友情から恋愛感情に近いものを抱くようになってきた。
「なぁ、玲音君、俺、君を好きになっちゃったみたいだ。男子を好きになるのって初めてだから、不慣れなところあるかもしれないけど、いいかな?」
「はい……」
そして二人は葉山秋の家の部屋のベッドにて、愛し合うことにした。葉山秋は玲音に優しく覆い被さるようにし、キスをした。
ちゅっ ちゅっ
はじめは互いに唇同士をふれあわせる程度であった。やがて、互いに唇を開き舌を絡め合わせていく。
「僕、これがファーストキスです……」
「その、俺、紫音とキス一度キスしてる……」
「駄目ですよ、ベッドの上で他の恋人の話したら」
「あっ、ゴメン!!」
「ゴメンと思うなら、その分……僕を、抱いて、下さい……」
「あぁ、分かった」
ちゅっ ちゅっぱ ちゅぱ
二人の唇から湿った絡み合いの音が響いてくる。それは二人の愛の気持ちに比例しているかのようだった。
(本当、紫音そっくりだな……)
そう思うと、彼は心にひっかかるものに気付いた。
「あ、あれ……?」
葉山秋は間近で見る中原玲音の顔を見て、かつて愛し合った姉の中原玲音を思い出した。どんな顔をしていたか、どんな匂いだったか、どんな感触の身体だったか。いつしか葉山秋は泣いていた。
「うっうっ……な、なんで……」
「やっぱりでしたか……」
中原玲音は冷めた表情をしていた。
「あなたは、姉の代役を僕に求めていたんですね」
「ち、違うっ!」
「あなたは嘘が下手な方です。いや、分かっているけど認めたくないんですかね?」
「お、俺は玲音君を……」
「そう悲観しないでください。僕も同罪です。数日間、お姉ちゃんが死んだことが受け入れられなかったけど、段々と、お姉ちゃんはこの世にいないんだって、ふとしたひょうしに思う時があって、あなた同様に泣いていました。だから、お姉ちゃんが生きていると自分自身に錯覚させるために、姉そっくりに女装していたんですよ。まさか、お姉ちゃんの彼氏さんだった方に会うのは想定外でしたが……互いに無くした物を補う合うために起きた奇跡と思いましたが、やはり、難しいようでしたね……」
「ははは、なんだろう、そうやって、何も言い返せない辛辣な言葉を飛ばしてくるあたりも、紫音そっくりだな……」
葉山秋はなんとか作った笑顔で乾いた笑いを飛ばしていた。
「……これで僕達、会うのを最後にしましょう。今日まで楽しかったですよ。」
葉山秋は家を去って行く中原玲音の背中を見ることしかできなかった。
「ということがあったんです……」
ばしぃん
弧ノ山紫織はどこからか取り出したはりせんで葉山秋の頭を思い切りはたいた。
「教師として暴力はいかんからな。はりせんで小突く程度にしておいた。お前の気持ちも分からなくもない、、だが、そのタイミングで彼女を思い出して泣いたら、弟君も傷つくだろうが」
「ですよね……」
葉山秋は一気に元気を無くした。
「お前はどうしたいと言うのだ?」
「分かりません……」
「では、その答えを見つけるきっかけをやろう」
弧ノ山紫織は一枚の紙を渡した。その紙はエクセルで作られた二列の表で、表の一番上の列には姉、弟とある。
「私からの宿題だ。姉と弟君を比較しながらそれを埋めなさい。なお、採点基準はない、質問も受け付けない、以上だ。帰れ。」
「あの……」
「なんだ?」
「噂で男子生徒は裸の写真を撮られると聞いたのですが……」
「今のお前は撮るに値しない。帰れ」
「はっ、はい……」
葉山秋はとぼとぼと帰って行った。
「さて、私の勘だと恐らく……」
弧ノ山紫織はラインで誰かに連絡していた。
数日後、某港区にて、中原玲音の姿があった。現在は夕方の時間帯、日も沈んで闇が入り込んできている。誰かを待っているかのようだった。
「やぁ、君だね、玲音ちゃんは」
彼に話しかけたのは、お世辞にも容姿が良いとは言えない中年男性であった。
「はい……」
「可愛いねぇ。色々とお高いんでしょう?」
「いえ、ご飯食べたり、ホテル代さえ出して貰えればそれ以上は望みません……」
「ほうほう、おじさんついてるねえ、今日はたっぷり愛し合ってあげるからねぇ」
「待ちなハゲデブ! 綺麗な坊や!」
私服姿の男子学生二人が二人を制止した。
「いけないぜ坊やぁ、春を売るのはぁ?」
「春を売るって死語じゃねえか?」
「じゃあ援交?」
「それも古いだろ、今はパパ活とか港区おじさんだろ」
二人の男子学生言い争っていると、中年男性も機嫌を悪くした。
「なんだお前ら! 関係ないだろ!」
「そ、そうですよ! 邪魔しないで貰えますか!」
「なに? 通報してもいいんだぜ? パパ活をしようとしていたおっさんと、おっさんに殺人未遂を仕掛けていた坊やと」
「ちょっと! 人聞きの悪いこと抜かさないでくださいよ!!」
男子学生の一人が中原玲音から鞄を取り上げた。その鞄にはナイフや睡眠薬が入っていた。
「坊や、どこで調べたか分からないが、そのおっさんがお前の姉さんを車で引いたじじいの息子だと分かっていたんだよな? 差し詰め、自分の家族を失う苦しみを、少年院に入るの覚悟で味わわせてやろうと思ったんだろ?」
「ちっ、くそったれが!!」
そう言って中年男性は闇夜へと走り去っていった。
「やれやれ、親が親なら子も子だな。まあ、あのおっさんがパパ活している姿は動画に撮ったから、後で坊やの顔だけモザイク加工してからどっかに流せば相応の天罰は下るだろう……」
「……なんなんですかあなた方は? 僕をどうしたいんですか?」
「そうだな、お前が危ないことをしようとしていたし、ばらしてもいいんだが、俺達に犯されるんだったら、秘密にしてやってもいいぜ、それにこんな可愛い男子犯したくなるってもんだろうぅ?」
ぐしゃ
男子学生の一人がもう一人の男子学生の足を思い切り踏みつぶした。何か察したのか小声で会話をする
(演技だよ、演技、やくなって)
(……ったく)
「まぁ、ホテル代払うならあなた方でも別にいいですけど……」
「ひょ――っ!! 話が分かるな嬢ちゃん、じゃなくて坊や、ラブホ行こうぜ!!」
二人の男子学生に中原玲音は連れられ、ラブホテルへと入った。三人が部屋に入ると、男子学生二人は手早く、ベッドの上に中原玲音を寝かせ、自転車のチェーンロックを使って両手首をベッドの上に固定した。さらにバイブレーター複数を上着や下着ごしに陰部に固定している。
「あの、これはどういうプレイのつもりで……」
「バイバイ♪」
がちゃん
二人の男子学生は部屋を出て行った。
「……最悪……まさか騙されてこのまま置いていかれるとは……払うお金ないし、バイブも地味にじらしプレイぎみだし……」
中原玲音が部屋に放置されて30分ほど経過し、ドアが開かれた。
「えっ!?」
中原玲音は驚いた。葉山秋が部屋に入ってきたからだ。部屋に入ってきた彼は大分息を切らしていた。
「こんにちは弧ノ山先生」
「おっ、来たか」
男子生徒の名前は葉山秋《はやま しゅう》。彼は校内では真面目な子で成績も運動も顔も人並み以上で優等生寄りの子である。そんな彼に中原紫音《なかはら しおん》という彼女がいたのだが、先日、彼女を老人の暴走運転による交通事故で亡くしたことをニュースで弧ノ山紫織はたまたま知った。それから一ヶ月ほど、彼は学校へは来ていなかったが、今日は弧ノ山紫織と面談だけするということで保健室に来ている。
「まぁ、とりあえず珈琲でも飲みながらここでしばらくぼーっとしていろ。久々の学校だとなぜか緊張するだろう? 空気に慣れろ」
「は、はい、お気遣いどうも」
弧ノ山紫織が飲んでいたエスプレッソは、全国的にある某コーヒー豆販売店のものであり、安価ながら味の良い物である。葉山秋は珈琲を10分ほどかけてゆっくり飲み、外で体育をやっている生徒達を数分間見た後、口を開いた。
「では、そろそろ本題に。先生も知っているかと思いますが、僕の彼女が交通事故で亡くなりました。」
「あぁ、知っている。君の今の思いをそのまま話すと良い」
弧ノ山紫織の言葉に葉山秋はこくりとうなづいた。
「本当、紫音は俺にはもったいない彼女でした。そこいらの男よりも勇ましくて、自分らしさを出している姿がうらやましくて、いつしか俺は彼女に告白していました。デートの時間中も俺のどんなところも受け入れて、なんか、楽しくて良い時間を過ごせていたなと思います。」
「……いい彼女だったんだな。」
「はい……その、彼女が亡くなってから、何かする度に彼女を思い出して泣いてしまうような状況だったんです。でもある日出会ったんです……」
数週間前、都心の駅付近で、葉山秋がとぼとぼと歩いていると、ある人の姿が目に入り、意識が覚醒した。
「紫音?」
葉山秋は思わず、その人にそう声をかけた。その人の服装や背格好が生前の彼女そっくりだったのだ。
「あ、あの、僕のことですか?」
葉山秋は驚いた。彼が声をかけたのは彼女によく似た容姿の女装少年だったのだ。
「わ、悪い、人違いだった!」
「ま、待って下さい! もしかして、姉の中原紫音をご存じですか!」
「姉? もしかして、君は紫音の弟さん?」
「はい……」
彼の名前は中原玲音《なかはら れおん》。姉とそっくりの弟であった。二人は人通りの多い通りでしづらい立ち話と思い、近くの喫茶店に入った。最初は互いに緊張しており、良い会話が出せない二人だったが、中原紫音の話になると、互いに口数が多くなってきた。
「紫音は本当、俺よりも男らしかった。そんな彼女が好きだった……」
「僕も大好きでした。だから、お姉ちゃんみたいになりたいと思ったんですけど、玲音《れおん》らしくいればいいと言ってくれたんです」
「あの、本当に紫音そっくりだね。紫音が生き返ったかと思ったよ!」
「……昔からお姉ちゃんそっくりだねと言われてました。試しに、こんな格好してみたら、まるで僕がお姉ちゃんになった気分になって……気持ち悪いですよね?」
「いいや、可愛いよ。俺が断言する」
「ありがとうございます」
しばらく二人が喫茶店で話解散することになった。
「俺がおごるよ」
「そんな、悪いですよ!」
「俺の方が年上だから、良いところ見させてくれよ」
「で、でも……」
「じゃあかわりに、その、ま、また俺と会ってくれるかな?」
「は、はい!」
二人は連絡先を交換し、頻繁に会うようになった。ショッピングをしたり、ゲームセンターに行ったり、喫茶店に入ってなにげない日常の話をしたりと。。いつしか、お互いに友情から恋愛感情に近いものを抱くようになってきた。
「なぁ、玲音君、俺、君を好きになっちゃったみたいだ。男子を好きになるのって初めてだから、不慣れなところあるかもしれないけど、いいかな?」
「はい……」
そして二人は葉山秋の家の部屋のベッドにて、愛し合うことにした。葉山秋は玲音に優しく覆い被さるようにし、キスをした。
ちゅっ ちゅっ
はじめは互いに唇同士をふれあわせる程度であった。やがて、互いに唇を開き舌を絡め合わせていく。
「僕、これがファーストキスです……」
「その、俺、紫音とキス一度キスしてる……」
「駄目ですよ、ベッドの上で他の恋人の話したら」
「あっ、ゴメン!!」
「ゴメンと思うなら、その分……僕を、抱いて、下さい……」
「あぁ、分かった」
ちゅっ ちゅっぱ ちゅぱ
二人の唇から湿った絡み合いの音が響いてくる。それは二人の愛の気持ちに比例しているかのようだった。
(本当、紫音そっくりだな……)
そう思うと、彼は心にひっかかるものに気付いた。
「あ、あれ……?」
葉山秋は間近で見る中原玲音の顔を見て、かつて愛し合った姉の中原玲音を思い出した。どんな顔をしていたか、どんな匂いだったか、どんな感触の身体だったか。いつしか葉山秋は泣いていた。
「うっうっ……な、なんで……」
「やっぱりでしたか……」
中原玲音は冷めた表情をしていた。
「あなたは、姉の代役を僕に求めていたんですね」
「ち、違うっ!」
「あなたは嘘が下手な方です。いや、分かっているけど認めたくないんですかね?」
「お、俺は玲音君を……」
「そう悲観しないでください。僕も同罪です。数日間、お姉ちゃんが死んだことが受け入れられなかったけど、段々と、お姉ちゃんはこの世にいないんだって、ふとしたひょうしに思う時があって、あなた同様に泣いていました。だから、お姉ちゃんが生きていると自分自身に錯覚させるために、姉そっくりに女装していたんですよ。まさか、お姉ちゃんの彼氏さんだった方に会うのは想定外でしたが……互いに無くした物を補う合うために起きた奇跡と思いましたが、やはり、難しいようでしたね……」
「ははは、なんだろう、そうやって、何も言い返せない辛辣な言葉を飛ばしてくるあたりも、紫音そっくりだな……」
葉山秋はなんとか作った笑顔で乾いた笑いを飛ばしていた。
「……これで僕達、会うのを最後にしましょう。今日まで楽しかったですよ。」
葉山秋は家を去って行く中原玲音の背中を見ることしかできなかった。
「ということがあったんです……」
ばしぃん
弧ノ山紫織はどこからか取り出したはりせんで葉山秋の頭を思い切りはたいた。
「教師として暴力はいかんからな。はりせんで小突く程度にしておいた。お前の気持ちも分からなくもない、、だが、そのタイミングで彼女を思い出して泣いたら、弟君も傷つくだろうが」
「ですよね……」
葉山秋は一気に元気を無くした。
「お前はどうしたいと言うのだ?」
「分かりません……」
「では、その答えを見つけるきっかけをやろう」
弧ノ山紫織は一枚の紙を渡した。その紙はエクセルで作られた二列の表で、表の一番上の列には姉、弟とある。
「私からの宿題だ。姉と弟君を比較しながらそれを埋めなさい。なお、採点基準はない、質問も受け付けない、以上だ。帰れ。」
「あの……」
「なんだ?」
「噂で男子生徒は裸の写真を撮られると聞いたのですが……」
「今のお前は撮るに値しない。帰れ」
「はっ、はい……」
葉山秋はとぼとぼと帰って行った。
「さて、私の勘だと恐らく……」
弧ノ山紫織はラインで誰かに連絡していた。
数日後、某港区にて、中原玲音の姿があった。現在は夕方の時間帯、日も沈んで闇が入り込んできている。誰かを待っているかのようだった。
「やぁ、君だね、玲音ちゃんは」
彼に話しかけたのは、お世辞にも容姿が良いとは言えない中年男性であった。
「はい……」
「可愛いねぇ。色々とお高いんでしょう?」
「いえ、ご飯食べたり、ホテル代さえ出して貰えればそれ以上は望みません……」
「ほうほう、おじさんついてるねえ、今日はたっぷり愛し合ってあげるからねぇ」
「待ちなハゲデブ! 綺麗な坊や!」
私服姿の男子学生二人が二人を制止した。
「いけないぜ坊やぁ、春を売るのはぁ?」
「春を売るって死語じゃねえか?」
「じゃあ援交?」
「それも古いだろ、今はパパ活とか港区おじさんだろ」
二人の男子学生言い争っていると、中年男性も機嫌を悪くした。
「なんだお前ら! 関係ないだろ!」
「そ、そうですよ! 邪魔しないで貰えますか!」
「なに? 通報してもいいんだぜ? パパ活をしようとしていたおっさんと、おっさんに殺人未遂を仕掛けていた坊やと」
「ちょっと! 人聞きの悪いこと抜かさないでくださいよ!!」
男子学生の一人が中原玲音から鞄を取り上げた。その鞄にはナイフや睡眠薬が入っていた。
「坊や、どこで調べたか分からないが、そのおっさんがお前の姉さんを車で引いたじじいの息子だと分かっていたんだよな? 差し詰め、自分の家族を失う苦しみを、少年院に入るの覚悟で味わわせてやろうと思ったんだろ?」
「ちっ、くそったれが!!」
そう言って中年男性は闇夜へと走り去っていった。
「やれやれ、親が親なら子も子だな。まあ、あのおっさんがパパ活している姿は動画に撮ったから、後で坊やの顔だけモザイク加工してからどっかに流せば相応の天罰は下るだろう……」
「……なんなんですかあなた方は? 僕をどうしたいんですか?」
「そうだな、お前が危ないことをしようとしていたし、ばらしてもいいんだが、俺達に犯されるんだったら、秘密にしてやってもいいぜ、それにこんな可愛い男子犯したくなるってもんだろうぅ?」
ぐしゃ
男子学生の一人がもう一人の男子学生の足を思い切り踏みつぶした。何か察したのか小声で会話をする
(演技だよ、演技、やくなって)
(……ったく)
「まぁ、ホテル代払うならあなた方でも別にいいですけど……」
「ひょ――っ!! 話が分かるな嬢ちゃん、じゃなくて坊や、ラブホ行こうぜ!!」
二人の男子学生に中原玲音は連れられ、ラブホテルへと入った。三人が部屋に入ると、男子学生二人は手早く、ベッドの上に中原玲音を寝かせ、自転車のチェーンロックを使って両手首をベッドの上に固定した。さらにバイブレーター複数を上着や下着ごしに陰部に固定している。
「あの、これはどういうプレイのつもりで……」
「バイバイ♪」
がちゃん
二人の男子学生は部屋を出て行った。
「……最悪……まさか騙されてこのまま置いていかれるとは……払うお金ないし、バイブも地味にじらしプレイぎみだし……」
中原玲音が部屋に放置されて30分ほど経過し、ドアが開かれた。
「えっ!?」
中原玲音は驚いた。葉山秋が部屋に入ってきたからだ。部屋に入ってきた彼は大分息を切らしていた。
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