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南国男子と結婚することになrrr
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この世界にも慣れて中だるみしたせいか、うっかり朝寝坊してしまった。今日は顔なき母親が早くでかけた日で、起こす人がいなかったのだ。用意されていた食パンのトーストをくわえて学園まで全速力で走って行った。
(しまった。いつの間にかべたなことをやっていた! これ絶対十字路あたりで誰かにぶつかって恋に落ちる展開になるやつだ!)
僕は十字路に入る手前で両脚に急ブレーキをかけた。
「よし、これでフラグは回h」
どすん
後ろから誰かがぶつかってきた。そういえば後ろの方からも誰かが走っているような足音が聞こえたな。僕が急ブレーキかけたからその人がよけきれずぶつかってしまったか。
ゴロゴロ
思った以上にぶつかった衝撃が強くお互いの身体がもつれた。
BL展開を避けようと思ったら、それを読んだかのような展開が俺にやってきた。このBLゲー世界はどこまで意地が悪いんだろうか? まあまずは僕が悪いと思うし謝ろう。
もにゅ
右手で何か柔らかいものを掴んでいた。なんだろうと思い、何回か握ってみる。なんか、二つの球体と竿がついているな……って男の股間じゃんっ!?
起き上がると、僕を涙目で見つめる褐色の男の子がいた。異国の子だろうか? 身長は低めの自分よりちょっと大きいぐらいでかわいい美少年系の子だ。ん? 同じ学園の制服を着ている、ってことは、あっ(察し)
「どうして、俺の股間を握った?」
その子はやや片言も入りながらも、日本語は十分上手かった。
「ごめんなさい! 僕が急ブレーキかけたからぶつかったんだよね! あと、股間握ったのは条件反射で!」
とりあえず、謝ればなんとかなるだろうと、何回も頭を下げた。
「俺の国、パンパンって文化ある。股間を触るのが愛の告白、それされたら相手と結婚しなきゃいけない。どうしよ、俺、君の事全く知らないのに結婚しなきゃいけない」
「っ!?」
名も知らぬ異国の美少年が完全に泣いてしまった。
どうしてこのBLゲー世界はいつも斜め上の展開がやってくるんだ! こういう場合、スケベ・変態とかののしられて僕の頬が叩かれるんだったらまだ分かる! でもパンパンして結婚しなきゃいけないとか完全にあの漫画ネタじゃねえか! BLゲーム世界でこのネタやったら、T先生がぶちぎれちゃうぞ!
「ごめん、遅刻しちゃうから!!」
同じ学園内だけど、同じクラスではないし、会ってもスルーすればいずれこの問題もなかったことになる。そう思って、僕は学校へと走るのだった。
「え~~今日からこのクラスに転校生が来るから、皆仲良くしてやってくれ。南国のフィリップ島からやってきた男の子らしいんだ」
ハイソウデスヨネー(棒読み)
完全に朝に僕とトラブルを起こしたあの子だよね!
分かっていたよ。どうせこんな展開になるだろうなって事、でもこの瞬間まで頭の中で絶対こんな展開になってたまるか! と否定していたよ!
がらら
教室のドアが開くと、やっぱりあの子が教室に入ってきた。
「名前、レミリ・サンパギータです。よろしくおねがいします」
「ひょおおおお!!」
男子生徒達は予想通り、転校生の登場にテンションが上がっている。そりゃあ褐色っていいよね。
僕もこの世界に来る前は女の子は小麦色の肌の褐色肌に限ると思っていたよ。好きな人がいたら是非ともこの趣味を語り合いたい。
「じゃあ彼の席なんだが……」
「先生! 俺のとなり開いている!」
「金成、お前の隣は駄目だ」
「なんでですか!」
「お前は素行不良の態度が目立つからだ。そうだな、佐倉、お前の隣空けてくれ」
先生、なぜに唐突に危険因子を僕にふるのですか?
「えっ、でも佐伯が既にいますし面倒じゃないですか?」
「このクラス内でお前が一般的だからだ」
そんな理由でかいっ! 隣の佐伯も異国の可愛い子ちゃんのハートを射止めろよなんて余計な事を言いながら席を移動した。
「よ、よろしく」
きっ
レミリ・サンパギータは僕の挨拶に対し、怒りの睨み付けをした。いや、その顔で怒っても可愛いだけなんだけど、はっ! いかんいかん、僕の好きな褐色属性持ちだからってまた同性に対してこんな気持ちを持ってしまった!
その後の授業ではレミリ・サンパギータは高いポテンシャルを見せた。英語の授業では発音も良ければ、難しい翻訳もした。数学も万国共通か何回な応用問題もできている。流石に国語・社会といった日本色の強い教科だと、苦手そうなところを見せていたが、あの秀才の武田君でさえ一目おくほどだ。まあいつも通りレミリ・サンパギータにも「調子に乗るなよ、僕が勉強では一番だからな!」と言っていただけだけど。他、体育の授業でも、体力だけは自慢のクラスメートよりもはるかに高い身体能力と運動神経を見せた。
「レミリ君すげーな!」
おかげでレミリ・サンパギータの周りにはクラスメートが結構たかっていた。気をつかえよ、まあ、この年頃の馬鹿男子共に気をつかえというのは無理な話かもしれんが。
ぎゅっ
レミリ・サンパギータは不安そうに俺の制服の腕部分の裾をつかんだ。やばい、いちいちこの子の動作が可愛くて、ときめいてしまう。よし、なんだか猛烈なやる気がでてきた。
「男子共ストップ! 僕もこの世界、いやこの学校に初めて来た頃は何も知らずただただとても不安だった! だからこそ、こういう時はむしろ静かに扱ってやれ! レミリ君が慣れてきた頃に改めてスキンシップしてくれ」
ぶーぶー
正論言ってもブーイングで誰も聞いちゃあいねえ。さて、どうしたもんか。
「おい、佐倉の言うとおりだ。男子諸君、大人しく自分の席に帰りたまえ!」
おっ、珍しく武田君が僕をフォローしてくれた。武田君の一言が効いたか、皆席に帰って行った。
「おい、佐倉。一つ貸しだ。僕は慈善事業なんてキャラじゃないからな」
「……まあその方が武田君らしいか。いいよ、何かの機会にお礼は返すよ」
すると、武田君が耳元で僕にしか聞こえない内容に話した。
「そうだな、じゃあ保健の実技でも再度お願いしようか? まさかあんな破廉恥な場で君と初体験するなんて思いもしなかったし……」
「えっ?」
今の言葉どういうことだ。この言葉をもし武田君が言うとしたら、、前の世界の記憶、つまり僕と武田君がHをした世界線の記憶がなければでないはず!
「待って武田君! まさか君、覚えているの?」
「言葉の通りだ。ついでに君が飛び降りた記憶も、しきりに壁ドンの練習している記憶も、人骨の模型を抱いて危ない台詞を言っている記憶もある」
「そ、それは黒歴史だから忘れて!」
ていうか、僕だけだと思ったのに、まさか武田君が覚えているとは、まさか他の男子生徒も覚えているのか?
「さっきの記憶を僕なりに調べたが、僕と君と先生しか把握してないようだ。君ほどならこの程度のヒントでも分かるだろ?」
「いや、ちんぷんかんぷん……」
「まぁ、いい。今回はあのレミリとかいう褐色男子と仲良くしていい。僕は君ほど男には飢えていないからな」
なんかかちんとくる対応だ。そっちがその気なら絶対かまわないからな。
「……ただ、君がどうしても僕とHな事がしたいというなら、考えてやらんこともないがな……」
顔を赤らめてそういう事を言わんでくれ武田君。ナニデレだよその対応は。
まあ、そもそもすすんで男子と仲良くしたいわけではないが、無理矢理避けようとしてとんでもないエンドを二回も迎えたからな……。今回はあのレミリ・サンパギータ君と普通に仲良くするのが無難かもしれない。
さて、彼と仲良くしようかとは思ったが、何を話せば良いのか……。よく知っている友人なら話題とかポンポンでるけど、異国の男の子って一体何が好きなんだろうか……。
ぽんぽん
僕の肩を叩いたのはレミリ・サンパギータだった。
「お昼、いっしょに食べる。いいか?」
「あ、OKOK!」
とりあえず、レミリ・サンパギータと学園の裏庭で一緒にお昼を食べることになった。多分、その時に朝のエピソードも話されるだろうな……。
もぐ もぐ
しばらく僕もレミリ・サンパギータも無言で食べていた。都合良く誰も来ないで、静かに食べていられたが、すごい気まずい空気だ……。
「朝のこと話す。いいか?」
「あっ、そうだよね、その、結婚って話あったけど、ここだけの話にすれば大丈夫だと思うんだ! 誰もあの場面見たわけじゃないし! なかったことにしようよ!」
「だめ、俺、日本の男と結婚しなきゃいけない」
「いやいや、あの、なぜにそうなるの? 怒らせるかもしれないけど、パンパンって文化的、伝統的なものでしょ? 君が不幸になるならそんなもの無視してもいいと思うんだ!」
「駄目。俺の国、お金少ない。だから俺、裕福な日本人と結婚するためにきた。それで俺の家族、助かる」
そうか、レミリ・サンパギータは国の貧困が原因で異国の裕福な人と結婚せざるを得ない状況なのか。自分は全く何不自由なく育ってきたからそういう境遇だとどういう気持ちになるか全く想像できないけど、レミリ・サンパギータは嫌でもそうしなきゃいけない、と思っているのかも。
「それに、子供産める若い人とっても少ない。だから俺、お前と子作りして子供産む」
「ふぁっ!? き、君は男だよね?」
「男だよ。でも、若い男が孕めるようになる儀式受けた。これ受けると、男に股間触られた時に赤ちゃんの卵できるようになる。あとはセックスするだけ」
ま、まさか僕が不可抗力で股間を触ったばかりにそういう展開になってしまうとは、もう覚悟を決めてレミリ・サンパギータを抱くしかないのか。受けは何度も経験あるけど、攻めは初めてだ。まさか、異国の褐色男子で童貞を卒業になるとは。
「うぇ……ううぅ……」
レミリ・サンパギータの瞳から突然涙がこぼれた。
「嫌だった……俺、普通に女の子と恋したかった。幼なじみのマリアって女の子と結婚したかった。でも、マリアも俺と同じ理由で一足早く日本に来て、今日結婚式……でも俺行けない……マリアの幸せを素直に祈れない。式場で暴れて結婚式壊してしまう……」
僕はそれだけ聞いて、決心をした。
「いくぞレミリ君! 結婚式場まで案内して!」
「えっ、でも……」
「理解できるか分からないけど、自分が惚れた人の幸せを全力で祝える男はかっこいいものなんだ! 日本の言葉で言うなら漢気ってやつさ!」
「お・と・こ・ぎ?」
「何もせずここで泣くなら彼女の幸せな姿を見てうれし泣きした方がよっぽど良い気持ちになれるだろう! さぁいこう!」
レミリ・サンパギータは僕に言われるがまま結婚式場まで案内した。
昼休みに学校を抜けだし、僕達は自転車で結婚式場へと向かった。勢いで来ちゃったけど、誰の許可も得てないよなぁ。後で怒られること覚悟だな。そんなわけで結婚式場そばまで来たわけだが。
「佐倉! レミリ!」
げっ! この怒鳴り声はうちの担任の定野源先生じゃん! まずい! 戻されてしまう!
「俺が問題にしているのはお前らの格好だ! 正装で行け!」
「えっ? あの、学校へ連れ戻さないんですか?」
「……俺の心情に反する行為だ……だがな、蓮、お前は俺を救ってくれた……その借りは今返させて貰う」
もしかして、先生とセックスまでやった記憶が残っているんじゃ……そうとしか思えない台詞だよな……。
「いけ二人とも!」
そう言うと先生はちょうど二人にぴったりの制服を用意した。
「ただし、あとで二人ともげんこつだ」
先生が笑顔で拳を見せ、そばを後にした。早速、結婚式会場へ乗り込み、それとなくお客さんに混じって花嫁のマリアを待つことにした。
「あれ、なんか変なような……」
気がつけば世界そのものが早送りされているかのような感じだ。そしていつしかレミリと花嫁のマリアが笑顔で祝福されている。
「……これってレミリ君と僕が結婚しなくてもいいってこと……フラグを回避できた!! よし、またフラグが立つかも知れないけどこれd」
ドドドドド
突如大きな地震が発生した。
「な、なんだっ!?」
結婚式会場に阿鼻叫喚の悲鳴が響、やがて天井が崩れて人々が生き埋めになっていく。そして僕の真上にもいつしか天井が迫ってきていた。
「うわあああああ!!!!」
気がつけば僕はベッドの上にいた。アルバムにはGAME OVERの文字が出ていた。
「……つまり、僕がレミリ君とくっつかなかったからBADエンドってことなのか? つまり男とくっつかなければ死んでやり直しルートってことかこのゲームの世界観!?」
とりあえず、レミリ君自体は悪い子ではないが、遅刻しそうになって食パンをくわえるパターンはやめることにした。
(しまった。いつの間にかべたなことをやっていた! これ絶対十字路あたりで誰かにぶつかって恋に落ちる展開になるやつだ!)
僕は十字路に入る手前で両脚に急ブレーキをかけた。
「よし、これでフラグは回h」
どすん
後ろから誰かがぶつかってきた。そういえば後ろの方からも誰かが走っているような足音が聞こえたな。僕が急ブレーキかけたからその人がよけきれずぶつかってしまったか。
ゴロゴロ
思った以上にぶつかった衝撃が強くお互いの身体がもつれた。
BL展開を避けようと思ったら、それを読んだかのような展開が俺にやってきた。このBLゲー世界はどこまで意地が悪いんだろうか? まあまずは僕が悪いと思うし謝ろう。
もにゅ
右手で何か柔らかいものを掴んでいた。なんだろうと思い、何回か握ってみる。なんか、二つの球体と竿がついているな……って男の股間じゃんっ!?
起き上がると、僕を涙目で見つめる褐色の男の子がいた。異国の子だろうか? 身長は低めの自分よりちょっと大きいぐらいでかわいい美少年系の子だ。ん? 同じ学園の制服を着ている、ってことは、あっ(察し)
「どうして、俺の股間を握った?」
その子はやや片言も入りながらも、日本語は十分上手かった。
「ごめんなさい! 僕が急ブレーキかけたからぶつかったんだよね! あと、股間握ったのは条件反射で!」
とりあえず、謝ればなんとかなるだろうと、何回も頭を下げた。
「俺の国、パンパンって文化ある。股間を触るのが愛の告白、それされたら相手と結婚しなきゃいけない。どうしよ、俺、君の事全く知らないのに結婚しなきゃいけない」
「っ!?」
名も知らぬ異国の美少年が完全に泣いてしまった。
どうしてこのBLゲー世界はいつも斜め上の展開がやってくるんだ! こういう場合、スケベ・変態とかののしられて僕の頬が叩かれるんだったらまだ分かる! でもパンパンして結婚しなきゃいけないとか完全にあの漫画ネタじゃねえか! BLゲーム世界でこのネタやったら、T先生がぶちぎれちゃうぞ!
「ごめん、遅刻しちゃうから!!」
同じ学園内だけど、同じクラスではないし、会ってもスルーすればいずれこの問題もなかったことになる。そう思って、僕は学校へと走るのだった。
「え~~今日からこのクラスに転校生が来るから、皆仲良くしてやってくれ。南国のフィリップ島からやってきた男の子らしいんだ」
ハイソウデスヨネー(棒読み)
完全に朝に僕とトラブルを起こしたあの子だよね!
分かっていたよ。どうせこんな展開になるだろうなって事、でもこの瞬間まで頭の中で絶対こんな展開になってたまるか! と否定していたよ!
がらら
教室のドアが開くと、やっぱりあの子が教室に入ってきた。
「名前、レミリ・サンパギータです。よろしくおねがいします」
「ひょおおおお!!」
男子生徒達は予想通り、転校生の登場にテンションが上がっている。そりゃあ褐色っていいよね。
僕もこの世界に来る前は女の子は小麦色の肌の褐色肌に限ると思っていたよ。好きな人がいたら是非ともこの趣味を語り合いたい。
「じゃあ彼の席なんだが……」
「先生! 俺のとなり開いている!」
「金成、お前の隣は駄目だ」
「なんでですか!」
「お前は素行不良の態度が目立つからだ。そうだな、佐倉、お前の隣空けてくれ」
先生、なぜに唐突に危険因子を僕にふるのですか?
「えっ、でも佐伯が既にいますし面倒じゃないですか?」
「このクラス内でお前が一般的だからだ」
そんな理由でかいっ! 隣の佐伯も異国の可愛い子ちゃんのハートを射止めろよなんて余計な事を言いながら席を移動した。
「よ、よろしく」
きっ
レミリ・サンパギータは僕の挨拶に対し、怒りの睨み付けをした。いや、その顔で怒っても可愛いだけなんだけど、はっ! いかんいかん、僕の好きな褐色属性持ちだからってまた同性に対してこんな気持ちを持ってしまった!
その後の授業ではレミリ・サンパギータは高いポテンシャルを見せた。英語の授業では発音も良ければ、難しい翻訳もした。数学も万国共通か何回な応用問題もできている。流石に国語・社会といった日本色の強い教科だと、苦手そうなところを見せていたが、あの秀才の武田君でさえ一目おくほどだ。まあいつも通りレミリ・サンパギータにも「調子に乗るなよ、僕が勉強では一番だからな!」と言っていただけだけど。他、体育の授業でも、体力だけは自慢のクラスメートよりもはるかに高い身体能力と運動神経を見せた。
「レミリ君すげーな!」
おかげでレミリ・サンパギータの周りにはクラスメートが結構たかっていた。気をつかえよ、まあ、この年頃の馬鹿男子共に気をつかえというのは無理な話かもしれんが。
ぎゅっ
レミリ・サンパギータは不安そうに俺の制服の腕部分の裾をつかんだ。やばい、いちいちこの子の動作が可愛くて、ときめいてしまう。よし、なんだか猛烈なやる気がでてきた。
「男子共ストップ! 僕もこの世界、いやこの学校に初めて来た頃は何も知らずただただとても不安だった! だからこそ、こういう時はむしろ静かに扱ってやれ! レミリ君が慣れてきた頃に改めてスキンシップしてくれ」
ぶーぶー
正論言ってもブーイングで誰も聞いちゃあいねえ。さて、どうしたもんか。
「おい、佐倉の言うとおりだ。男子諸君、大人しく自分の席に帰りたまえ!」
おっ、珍しく武田君が僕をフォローしてくれた。武田君の一言が効いたか、皆席に帰って行った。
「おい、佐倉。一つ貸しだ。僕は慈善事業なんてキャラじゃないからな」
「……まあその方が武田君らしいか。いいよ、何かの機会にお礼は返すよ」
すると、武田君が耳元で僕にしか聞こえない内容に話した。
「そうだな、じゃあ保健の実技でも再度お願いしようか? まさかあんな破廉恥な場で君と初体験するなんて思いもしなかったし……」
「えっ?」
今の言葉どういうことだ。この言葉をもし武田君が言うとしたら、、前の世界の記憶、つまり僕と武田君がHをした世界線の記憶がなければでないはず!
「待って武田君! まさか君、覚えているの?」
「言葉の通りだ。ついでに君が飛び降りた記憶も、しきりに壁ドンの練習している記憶も、人骨の模型を抱いて危ない台詞を言っている記憶もある」
「そ、それは黒歴史だから忘れて!」
ていうか、僕だけだと思ったのに、まさか武田君が覚えているとは、まさか他の男子生徒も覚えているのか?
「さっきの記憶を僕なりに調べたが、僕と君と先生しか把握してないようだ。君ほどならこの程度のヒントでも分かるだろ?」
「いや、ちんぷんかんぷん……」
「まぁ、いい。今回はあのレミリとかいう褐色男子と仲良くしていい。僕は君ほど男には飢えていないからな」
なんかかちんとくる対応だ。そっちがその気なら絶対かまわないからな。
「……ただ、君がどうしても僕とHな事がしたいというなら、考えてやらんこともないがな……」
顔を赤らめてそういう事を言わんでくれ武田君。ナニデレだよその対応は。
まあ、そもそもすすんで男子と仲良くしたいわけではないが、無理矢理避けようとしてとんでもないエンドを二回も迎えたからな……。今回はあのレミリ・サンパギータ君と普通に仲良くするのが無難かもしれない。
さて、彼と仲良くしようかとは思ったが、何を話せば良いのか……。よく知っている友人なら話題とかポンポンでるけど、異国の男の子って一体何が好きなんだろうか……。
ぽんぽん
僕の肩を叩いたのはレミリ・サンパギータだった。
「お昼、いっしょに食べる。いいか?」
「あ、OKOK!」
とりあえず、レミリ・サンパギータと学園の裏庭で一緒にお昼を食べることになった。多分、その時に朝のエピソードも話されるだろうな……。
もぐ もぐ
しばらく僕もレミリ・サンパギータも無言で食べていた。都合良く誰も来ないで、静かに食べていられたが、すごい気まずい空気だ……。
「朝のこと話す。いいか?」
「あっ、そうだよね、その、結婚って話あったけど、ここだけの話にすれば大丈夫だと思うんだ! 誰もあの場面見たわけじゃないし! なかったことにしようよ!」
「だめ、俺、日本の男と結婚しなきゃいけない」
「いやいや、あの、なぜにそうなるの? 怒らせるかもしれないけど、パンパンって文化的、伝統的なものでしょ? 君が不幸になるならそんなもの無視してもいいと思うんだ!」
「駄目。俺の国、お金少ない。だから俺、裕福な日本人と結婚するためにきた。それで俺の家族、助かる」
そうか、レミリ・サンパギータは国の貧困が原因で異国の裕福な人と結婚せざるを得ない状況なのか。自分は全く何不自由なく育ってきたからそういう境遇だとどういう気持ちになるか全く想像できないけど、レミリ・サンパギータは嫌でもそうしなきゃいけない、と思っているのかも。
「それに、子供産める若い人とっても少ない。だから俺、お前と子作りして子供産む」
「ふぁっ!? き、君は男だよね?」
「男だよ。でも、若い男が孕めるようになる儀式受けた。これ受けると、男に股間触られた時に赤ちゃんの卵できるようになる。あとはセックスするだけ」
ま、まさか僕が不可抗力で股間を触ったばかりにそういう展開になってしまうとは、もう覚悟を決めてレミリ・サンパギータを抱くしかないのか。受けは何度も経験あるけど、攻めは初めてだ。まさか、異国の褐色男子で童貞を卒業になるとは。
「うぇ……ううぅ……」
レミリ・サンパギータの瞳から突然涙がこぼれた。
「嫌だった……俺、普通に女の子と恋したかった。幼なじみのマリアって女の子と結婚したかった。でも、マリアも俺と同じ理由で一足早く日本に来て、今日結婚式……でも俺行けない……マリアの幸せを素直に祈れない。式場で暴れて結婚式壊してしまう……」
僕はそれだけ聞いて、決心をした。
「いくぞレミリ君! 結婚式場まで案内して!」
「えっ、でも……」
「理解できるか分からないけど、自分が惚れた人の幸せを全力で祝える男はかっこいいものなんだ! 日本の言葉で言うなら漢気ってやつさ!」
「お・と・こ・ぎ?」
「何もせずここで泣くなら彼女の幸せな姿を見てうれし泣きした方がよっぽど良い気持ちになれるだろう! さぁいこう!」
レミリ・サンパギータは僕に言われるがまま結婚式場まで案内した。
昼休みに学校を抜けだし、僕達は自転車で結婚式場へと向かった。勢いで来ちゃったけど、誰の許可も得てないよなぁ。後で怒られること覚悟だな。そんなわけで結婚式場そばまで来たわけだが。
「佐倉! レミリ!」
げっ! この怒鳴り声はうちの担任の定野源先生じゃん! まずい! 戻されてしまう!
「俺が問題にしているのはお前らの格好だ! 正装で行け!」
「えっ? あの、学校へ連れ戻さないんですか?」
「……俺の心情に反する行為だ……だがな、蓮、お前は俺を救ってくれた……その借りは今返させて貰う」
もしかして、先生とセックスまでやった記憶が残っているんじゃ……そうとしか思えない台詞だよな……。
「いけ二人とも!」
そう言うと先生はちょうど二人にぴったりの制服を用意した。
「ただし、あとで二人ともげんこつだ」
先生が笑顔で拳を見せ、そばを後にした。早速、結婚式会場へ乗り込み、それとなくお客さんに混じって花嫁のマリアを待つことにした。
「あれ、なんか変なような……」
気がつけば世界そのものが早送りされているかのような感じだ。そしていつしかレミリと花嫁のマリアが笑顔で祝福されている。
「……これってレミリ君と僕が結婚しなくてもいいってこと……フラグを回避できた!! よし、またフラグが立つかも知れないけどこれd」
ドドドドド
突如大きな地震が発生した。
「な、なんだっ!?」
結婚式会場に阿鼻叫喚の悲鳴が響、やがて天井が崩れて人々が生き埋めになっていく。そして僕の真上にもいつしか天井が迫ってきていた。
「うわあああああ!!!!」
気がつけば僕はベッドの上にいた。アルバムにはGAME OVERの文字が出ていた。
「……つまり、僕がレミリ君とくっつかなかったからBADエンドってことなのか? つまり男とくっつかなければ死んでやり直しルートってことかこのゲームの世界観!?」
とりあえず、レミリ君自体は悪い子ではないが、遅刻しそうになって食パンをくわえるパターンはやめることにした。
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