くっころ勇者は魔王の子供を産むことになりました

あさきりゆうた

文字の大きさ
上 下
1 / 5

おのれよくもこんな辱しめを!

しおりを挟む
 俺は死を覚悟していた。
 目の前にいる魔王の強さは俺の強さをはるかに上回るものだったからだ。
 俺はこの男を倒すために人生を……そして仲間の命をも捧げた……それでも奴に対し何も出来なかったのだ……今は大の字で寝ている状態……指一本すら動かす力は無い……。

「くくく、久々に楽しめたぞ勇者よ。俺様の顔に傷をつけた男はお前くらいなものだ」

「そりゃあどうもな……俺からすれば全力を出したのに……お前にかすり傷一つつけるのがやっとでよ……おまけにここまでたどり着くのに大事な仲間も失ったし……凄い落ち込んでいるんだがな……」

「落ち込むことはない。我が魔王軍の幹部を全滅させたお前と仲間の強さ、称賛に値するものだ。敗北者とはいえ、敬意を表し、お前を生かしたいと考えている。とりあえず今のお前の心からの本音を言ってみろ。それ次第で対応を考えよう」

「慈悲深いこった……いいだろう……まず俺は負けず嫌いだ……もし生き残れるなら、この怪我を治して、お前を必ず倒したいと考えているぜ!」

ぐぐ

 俺は立ち上がろうと思って体に残っているパワーを出し切ろうとする。しかし、体が重い。四つん這い状態になるのがやっとだ。

「ほう、素直に命乞いをしないあたりは流石は勇者と呼ばれるだけあるな。いい答えだ、生かすに値する」

 魔王め、完全に油断してやがる。いくら敗者とはいえ、腹が立ってきやがるぜ。

「いいのか? 俺をここで殺さなきゃ、今後、確実にお前は死ぬぜ……」

「退屈しのぎにちょうど良い! 怪我が治り次第、遠慮無く俺様の命を狙うが良い!」

 器のでかい奴だ。流石は魔王を名乗ることだけのことはある。

「お言葉に甘えさせて貰うとするか……それと図々しいようだがもう一つ心からの本音がある……」

「いいだろう、言え」

「俺は故郷に結婚を約束した幼なじみの女がいる……もし魔王との闘いに勝利したら結婚をすると誓った仲だ……まぁ、この通り無様に敗北し、本当に生かして貰えるかどうか疑問なところだがな……」

「お前は死ぬ前に婚約を約束した女の顔を見たいというのか?」

「ただ言いたかっただけさ……それだけで心がすっとするもんさ……そしてこれが最後だ……俺を殺すなら極力苦しませて殺してくれ……多くの人達の期待を裏切ってきたけじめをつけたい……そして亡くなった仲間にあの世で顔向けするためにもな……」

ぽつ ぽつ

 俺の眼から自然と涙が出てきた。はは、俺の体ぼろぼろなのに、泣く気力ぐらいはあるんだな。

「分かった。お前への措置は決まった」

がちゃん がちゃん

 重そうな装束を身につけた魔王が俺のもとに歩み寄ってきた。とどめを刺すのだろうか? とどめの刺し方は、じわじわと苦しめて殺す事なのだろうか? それとも屈辱的な生かし方をするのだろうか? 様々な予想が頭の中でよぎり、俺の心臓に不安を与えた。

すっ

 俺の体は魔王の両腕で持ち上げられた。魔王の右腕が俺の肩の後ろを支え、左腕は太ももの後ろを支えている。つまり俗に言うお姫様抱っこだ。

「おい……何の真似だ魔王? 俺はお姫様抱っこされるようなキャラでもないぞ」

「お前をお姫様と同等の扱いをしてやっているだけだ。不満か?」

「おいおい、俺はお姫様なんて柄じゃあないぜ……」

「いずれはそういう柄になる」

「はっ? それはどういうことだ?」

しゅうううううん

 魔王が何やら魔術を発動させた。今まで色んな魔術を見てきた経験から、それが転移魔法だと理解した。どこかへ飛んでいく感覚が体に伝わってきた。



 転移先は自然に囲まれた村であった。そしてこの村は非常に見覚えのある場所だった。

「ここはもしや、俺の故郷のハルンデル村かっ!?」

「そうだ、お前の記憶を探りながら、この場所に転移してきたのだ」

「一体俺をこんなところまで連れてきて何をしようってんだ? まさか俺の前で許嫁を殺すか? もしくは俺を許嫁の前で処刑か?」

「まぁ、お前の選択次第によってはそうなることもあるなぁ。だから素直に従った方が利口だと言っておく」

 次第に村の人達が転移した俺達の存在に気付き、集まってきた。そしてその中には俺との結婚を約束した幼なじみのキャンシーもいる。彼女は俺に視線を向けて驚いた顔をした。

「クルトス! どうしたのその傷はっ!?」

「今俺を抱きかかえているのは魔王様だ……無様に負けて、屈辱的帰還を果たしたってところだな……」

 村人達が一斉に魔王に敵意の視線を向けた。

「こいつめ! よくもクルトスを!」

ぎぃん

 魔王が村人達を睨み付けると、全員震え上がりその場から動けなくなった。中には失禁をするものや、気絶したものまでいた。恐らく今のは恐怖効果付きの睨み付けだろう。俺も雑魚モンスターとの戦闘を避けるためによくやったものだが、魔王がやるともはや別次元のものだった。俺でさえも心臓を冷たい手で鷲掴みされるような感覚を覚えた。

「勇者、いや、確かそこの娘がお前の名前を教えたな。クルトスよ、選択肢を与えてやる。この場で俺に犯されるか? もしくはお前を犯さない代わりに俺様が村人全員を抹殺するか? さぁどちらを選ぶ?」

「犯す? それはどういうことだ魔王?」

「お前は性教育を受けていないのか? この場でお前と性交を交わすということだ!」

「けっ、俺は男色趣味はないし、魔王に犯されるなんざまっぴらゴメンだ……だからといって村人達の命も粗末にはできねえ……だから俺の命をここで奪う選択肢を与えてくれよ……」

「お前ごときに選択肢を増やす権利はない! まぁ、はなっからこの場でお前を犯す選択肢以外選ばせない気だったがな」

「なにぃ!! 本気で言っているのかっ!?」

 魔王は俺の防具に魔力を加えた。

ぱきぃん

 俺の下半身の装備が魔力によってばらばらに壊れ、俺の性器が露出した状態となった。咄嗟に俺は太ももを閉じて、性器が村人に極力見えないようにした。

「俺は本気だ。さぁその卑猥なる性器を俺に堂々と見せるが良い」

「くっ、殺せ! こんな屈辱的な思いをするぐらいなら俺をとことん苦しめてから殺してくれ!!」

「おいおい、俺様をそんな野蛮人と誤解されるような言い方をするなよ?」

ぽん

 魔王が何もない場所を見つめると、ベッドが出現した。寝心地は良さそうで、大きさも二人寝ても余裕があるくらいの大きさだ。ご丁寧に雨よけの屋根までついている。

「俺様からの大サービスだ。良いベッドの上で性交しようではないか」

「本気か魔王! やめろ! やめてくれ!!」

 俺の必死の声など魔王の気持ちに届くはずもない。俺はベッドの上で寝かされ、魔王が上に覆い被さった。抵抗しようにも魔王との戦闘で体をまともに動かせる状況ではなかった。

ぱきぃぃん

 魔王の解き放った魔術により、俺の装備品は完全に粉微塵と化し、ついに丸裸の状態とされた。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

俺は触手の巣でママをしている!〜卵をいっぱい産んじゃうよ!〜

ミクリ21
BL
触手の巣で、触手達の卵を産卵する青年の話。

臣下が王の乳首を吸って服従の意を示す儀式の話

八億児
BL
架空の国と儀式の、真面目騎士×どスケベビッチ王。 古代アイルランドには臣下が王の乳首を吸って服従の意を示す儀式があったそうで、それはよいものだと思いましたので古代アイルランドとは特に関係なく王の乳首を吸ってもらいました。

幽閉王子は最強皇子に包まれる

皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。 表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。

ハッピーエンドのために妹に代わって惚れ薬を飲んだ悪役兄の101回目

カギカッコ「」
BL
ヤられて不幸になる妹のハッピーエンドのため、リバース転生し続けている兄は我が身を犠牲にする。妹が飲むはずだった惚れ薬を代わりに飲んで。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

アルバイトで実験台

夏向りん
BL
給料いいバイトあるよ、と教えてもらったバイト先は大人用玩具実験台だった! ローター、オナホ、フェラ、玩具責め、放置、等々の要素有り

第二王子の僕は総受けってやつらしい

もずく
BL
ファンタジーな世界で第二王子が総受けな話。 ボーイズラブ BL 趣味詰め込みました。 苦手な方はブラウザバックでお願いします。

博愛主義の成れの果て

135
BL
子宮持ちで子供が産める侯爵家嫡男の俺の婚約者は、博愛主義者だ。 俺と同じように子宮持ちの令息にだって優しくしてしまう男。 そんな婚約を白紙にしたところ、元婚約者がおかしくなりはじめた……。

処理中です...