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いい声しているな、一緒にやらないか?(6)
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「おい! クレッシェ!」
ノクターンの呼び声にクレッシェは意識が戻った。
「どうしたんだ! 急に魂が抜けたかのような状態になっちまって!!」
クレッシェは何も言わずに、持っていた回復薬をホワイトベアーのルナードに使った。
「一応聞くが、なんのつもりだクレッシェ?」
「僕はこのホワイトベアーのルナードの記憶を覗いてしまったんです……」
クレッシェはノクターン・ベースとピアッソ・アルトにルナードの事情を説明した。
「なるほど、難しい問題ね」
「このクマの事は正直可哀想ではある。だがこいつを助けたらクエストの報酬も単位もパーだ。お前はそれでいいのか?」
「いいんです! 自分のためだけに動いたら僕の心が傷を負います!」
その言葉を聞いてノクターン・ベースとピアッソ・アルトが安心したような笑みを浮かべた。
(全く、オスティナートの元へいければ良かったと思ったのに生きながらえさせやがって……)
「あれ?」
クレッシェ・ソプラはルバートの声が聞こえた。しかし他の二人には聞こえいない。
(ほう、俺の声が聞こえるか小僧。なかなかに酷い奴だお前は。人様の知られたくない愛の営みまで覗きやがってよ)
ぼふん
クレッシェ・ソプラは湯気を出して顔を赤らめた。
「あら、顔が真っ赤ね、どうしたの?」
「その、覗きたくて覗いたわけじゃなくて……というか愛の営みを見るのも初めてなわけで……おまけにそれが雄のクマ同士で……」
「クレッシェ、もしかしてお前のさっき唱えた歌術は、どんな相手の記憶を覗き込め、おまけにその相手が異種族・意言語でも話を聞けるというものか?」
ノクターン・ベースの指摘にクレッシェ・ソプラはこくりと頷いた。
「このままお前を助けても俺達にメリットはない。よし……ちょっと村長と掛け合いにいくか。」
ばたん
クレッシェ・ソプラが突然倒れ込んだ。
「あれ、体が動かない」
ピアッソ・アルトはクレッシェ・ソプラを笑って肩車した。
「基礎の不足が原因よ。はじめてにしてはなかなか凄い歌術を使っていたけど、歌術に対し体が追いついていないのよ。今後、肺活量とかも鍛えないと長くは戦闘で闘えないわね」
「す、すいません……」
「じゃあノクターンはルバートをお願いね。彼からの言葉も必要だからね」
「おい、こいつを担げって言うのか?」
「だってぇ、私の華奢な体じゃ担げないし、それに今日一番役に立たなかった人がこういう仕事を率先してやるべきじゃないかな?」
「にゃろう、覚えてやがれ!」
ノクターン・ベースは傷ついたルバートを渋々と背負った。
一行は村長の家へとたどり着いた。早速、村長や村の権力者も交えてノクターン・ベースが事情の説明に入った。
「まず、人間側の方で何もしていないホワイトベアーを殺した実績があると聞いた。だから敵意をむかれている。ついでにそのホワイトベアーはこいつのダチだ。こうやって同席しているが今は大人しくして貰っている」
ルナードは村長を鋭い眼光で見ている。
「そうでしたか。それは誠に申し訳ないことをした。後日、村の方でその者達を厳重に処罰いたします……。そして、できれば平和にこの村を発展させたいと思うのだが……」
「分かっている。村の発展のためにあんたは山を開発したい。一方、ホワイトベアー側としては自分達の住処を壊さないで欲しいということだ」
「つまり、どちらかにひけと言うのですかな?」
「それも解決策の一つである。まぁどちらもひく気がないなら、村の代表とホワイトベアー同士で戦争して勝った方が正義ってことになるな」
「ノクターン! もう少し平和的な解決策を出しなさいよ!」
「分かってる! 口を出すなピアッソ! そこでだ、俺は両者に互いの共存を提案したい!」
ノクターン・ベースの言葉に一同がざわついた。ノクターン・ベースは両手を合わせるように叩いて、静まりかえらせる。
「このホワイトベアーは強い。俺がそれを保証する」
クレッシェ・ソプラとピアッソ・アルトはこみあがえる笑いを抑えた。
「村の警備として使うのはどうだ。この村に賊が襲ってくる可能性も0ではない」
「なるほど、この辺は国の警備も行き届いていない辺境の村ですから、それで賊にこの村の食料を奪われることが多々ありました」
「他にもこいつらは体力もあるし知性もそこそこある。雪かきぐらいも出来ると思うぜ。他にもどこかの地方で雪で大きなアートを創る文化もある。それで冬場に観光客を呼び寄せるのも手だ。まぁタダで使うのもなんだし、ホワイトベアーの住処や食料も提供した方がいいだろ。いわゆる労働の対価というやつだ。どうだ?」
「私も提案♪ ホワイトベアーの子供って可愛いのよ。ホワイトベアー牧場なんかつくって観光客を呼ぶのも悪くないわよ」
村長や村の権力者の顔色が明るくなった。村長が周りに是非を問うと、全員が賛成の意見を示した。
「……よろしいです。しかし、そちらのホワイトベアーさんが」
ルバートはそれに対し、頷いた。
「OKみたいか。ちなみにお前の賛成だけで仲間は動くか?」
ルバートは右腕に力こぶをつくって、腕力を自慢するポーズをとった。
「えっと、俺が一番強いから言うことを聞かせるぐらい訳ないぜ、といった感じかな?」
ノクターン・ベースのデタラメな翻訳にルバートは頷いた。
「よし! これで良い感じで話はまとまった! 村長さん! クエストの報酬!」
「多少、依頼内容とは違いますが、あなた方は良い結果を出してくれました。私の方でブレイブと手続きをしましょう……」
その言葉を聞いて、一行が笑顔となった。
ブレイブにポリフォニック村の村長を含めた一行が戻った。村長を交えながら、クエストの受付と手続きを進めた。クエスト受付担当者は校長に魔術を使った通信手段で相談をした。
「分かりました。クエストの内容は『ホワイトベアーの討伐』でしたが、その内容を『ホワイトベアーとの和解』に変更することを認めました。では、ご依頼通りの報酬と単位を学生にお与えします」
三人の学生手帳に魔術で単位認定の判子が捺印された。また、報酬の入った金貨袋が三人に渡された。
「うぅ、久々に高額の報酬、そして多く単位が貰えた……」
クレッシェ・ソプラは喜びをかみしめていた。
「おい、喜んでいる暇はねえぞ。練習だ」
「へっ?」
「そうね、クレッシェ君鍛えないと今後のクエストがやばそうだしね」
「安心しろ、お兄さん達が素晴らしい指導をしてあげるからな」
「主に彼はムチ担当よ。ちなみに私もムチ担当」
ノクターン・ベースとピアッソ・アルトの笑顔に、クレッシェ・ソプラは恐怖を感じた。
「あの、僕もう疲れて……」
「お前に拒否権はない、いくぞ」
ノクターン・ベースとピアッソ。アルトはクレッシェ・ソプラの手を引っ張って強引に部室へと引っ張っていくのであった。
ノクターンの呼び声にクレッシェは意識が戻った。
「どうしたんだ! 急に魂が抜けたかのような状態になっちまって!!」
クレッシェは何も言わずに、持っていた回復薬をホワイトベアーのルナードに使った。
「一応聞くが、なんのつもりだクレッシェ?」
「僕はこのホワイトベアーのルナードの記憶を覗いてしまったんです……」
クレッシェはノクターン・ベースとピアッソ・アルトにルナードの事情を説明した。
「なるほど、難しい問題ね」
「このクマの事は正直可哀想ではある。だがこいつを助けたらクエストの報酬も単位もパーだ。お前はそれでいいのか?」
「いいんです! 自分のためだけに動いたら僕の心が傷を負います!」
その言葉を聞いてノクターン・ベースとピアッソ・アルトが安心したような笑みを浮かべた。
(全く、オスティナートの元へいければ良かったと思ったのに生きながらえさせやがって……)
「あれ?」
クレッシェ・ソプラはルバートの声が聞こえた。しかし他の二人には聞こえいない。
(ほう、俺の声が聞こえるか小僧。なかなかに酷い奴だお前は。人様の知られたくない愛の営みまで覗きやがってよ)
ぼふん
クレッシェ・ソプラは湯気を出して顔を赤らめた。
「あら、顔が真っ赤ね、どうしたの?」
「その、覗きたくて覗いたわけじゃなくて……というか愛の営みを見るのも初めてなわけで……おまけにそれが雄のクマ同士で……」
「クレッシェ、もしかしてお前のさっき唱えた歌術は、どんな相手の記憶を覗き込め、おまけにその相手が異種族・意言語でも話を聞けるというものか?」
ノクターン・ベースの指摘にクレッシェ・ソプラはこくりと頷いた。
「このままお前を助けても俺達にメリットはない。よし……ちょっと村長と掛け合いにいくか。」
ばたん
クレッシェ・ソプラが突然倒れ込んだ。
「あれ、体が動かない」
ピアッソ・アルトはクレッシェ・ソプラを笑って肩車した。
「基礎の不足が原因よ。はじめてにしてはなかなか凄い歌術を使っていたけど、歌術に対し体が追いついていないのよ。今後、肺活量とかも鍛えないと長くは戦闘で闘えないわね」
「す、すいません……」
「じゃあノクターンはルバートをお願いね。彼からの言葉も必要だからね」
「おい、こいつを担げって言うのか?」
「だってぇ、私の華奢な体じゃ担げないし、それに今日一番役に立たなかった人がこういう仕事を率先してやるべきじゃないかな?」
「にゃろう、覚えてやがれ!」
ノクターン・ベースは傷ついたルバートを渋々と背負った。
一行は村長の家へとたどり着いた。早速、村長や村の権力者も交えてノクターン・ベースが事情の説明に入った。
「まず、人間側の方で何もしていないホワイトベアーを殺した実績があると聞いた。だから敵意をむかれている。ついでにそのホワイトベアーはこいつのダチだ。こうやって同席しているが今は大人しくして貰っている」
ルナードは村長を鋭い眼光で見ている。
「そうでしたか。それは誠に申し訳ないことをした。後日、村の方でその者達を厳重に処罰いたします……。そして、できれば平和にこの村を発展させたいと思うのだが……」
「分かっている。村の発展のためにあんたは山を開発したい。一方、ホワイトベアー側としては自分達の住処を壊さないで欲しいということだ」
「つまり、どちらかにひけと言うのですかな?」
「それも解決策の一つである。まぁどちらもひく気がないなら、村の代表とホワイトベアー同士で戦争して勝った方が正義ってことになるな」
「ノクターン! もう少し平和的な解決策を出しなさいよ!」
「分かってる! 口を出すなピアッソ! そこでだ、俺は両者に互いの共存を提案したい!」
ノクターン・ベースの言葉に一同がざわついた。ノクターン・ベースは両手を合わせるように叩いて、静まりかえらせる。
「このホワイトベアーは強い。俺がそれを保証する」
クレッシェ・ソプラとピアッソ・アルトはこみあがえる笑いを抑えた。
「村の警備として使うのはどうだ。この村に賊が襲ってくる可能性も0ではない」
「なるほど、この辺は国の警備も行き届いていない辺境の村ですから、それで賊にこの村の食料を奪われることが多々ありました」
「他にもこいつらは体力もあるし知性もそこそこある。雪かきぐらいも出来ると思うぜ。他にもどこかの地方で雪で大きなアートを創る文化もある。それで冬場に観光客を呼び寄せるのも手だ。まぁタダで使うのもなんだし、ホワイトベアーの住処や食料も提供した方がいいだろ。いわゆる労働の対価というやつだ。どうだ?」
「私も提案♪ ホワイトベアーの子供って可愛いのよ。ホワイトベアー牧場なんかつくって観光客を呼ぶのも悪くないわよ」
村長や村の権力者の顔色が明るくなった。村長が周りに是非を問うと、全員が賛成の意見を示した。
「……よろしいです。しかし、そちらのホワイトベアーさんが」
ルバートはそれに対し、頷いた。
「OKみたいか。ちなみにお前の賛成だけで仲間は動くか?」
ルバートは右腕に力こぶをつくって、腕力を自慢するポーズをとった。
「えっと、俺が一番強いから言うことを聞かせるぐらい訳ないぜ、といった感じかな?」
ノクターン・ベースのデタラメな翻訳にルバートは頷いた。
「よし! これで良い感じで話はまとまった! 村長さん! クエストの報酬!」
「多少、依頼内容とは違いますが、あなた方は良い結果を出してくれました。私の方でブレイブと手続きをしましょう……」
その言葉を聞いて、一行が笑顔となった。
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「分かりました。クエストの内容は『ホワイトベアーの討伐』でしたが、その内容を『ホワイトベアーとの和解』に変更することを認めました。では、ご依頼通りの報酬と単位を学生にお与えします」
三人の学生手帳に魔術で単位認定の判子が捺印された。また、報酬の入った金貨袋が三人に渡された。
「うぅ、久々に高額の報酬、そして多く単位が貰えた……」
クレッシェ・ソプラは喜びをかみしめていた。
「おい、喜んでいる暇はねえぞ。練習だ」
「へっ?」
「そうね、クレッシェ君鍛えないと今後のクエストがやばそうだしね」
「安心しろ、お兄さん達が素晴らしい指導をしてあげるからな」
「主に彼はムチ担当よ。ちなみに私もムチ担当」
ノクターン・ベースとピアッソ・アルトの笑顔に、クレッシェ・ソプラは恐怖を感じた。
「あの、僕もう疲れて……」
「お前に拒否権はない、いくぞ」
ノクターン・ベースとピアッソ。アルトはクレッシェ・ソプラの手を引っ張って強引に部室へと引っ張っていくのであった。
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