36 / 41
第36話 家族と書いてカオスと読む家族パーティー(前編)
しおりを挟む
「……どうぞ」
玄関の扉を開けて二人を招き入れる。ちなみにアンナは武装を解除して、白いワンピース姿だ。
「ただい──」
「どうも、辰巳の父の洋です。いつも息子がお世話になっています」
「母の美佐子です」
「妹の茜ですっ」
親父はなぜか玄関に正座して待っていた。母さんと茜もひょいっとリビングから現れる。三人ともやたら気合の入った服装だ。
「初めまして。一ノ瀬ヒカリと申します。辰巳さんにはいつもお世話になっています。これつまらないものですが……」
「あいあむアンナ。今日からタツミの世話をすることになった。よろしく」
一ノ瀬さんはこんな状況にも動じることなくスラスラと挨拶をして、そんなの持っていかなくていいのにと言ったのに、わざわざ途中で買った手土産を渡す。アンナはまぁ予想の範疇内なので放っておく。
「これはこれは、お気遣いありがとうございます。ささっ、さささささっ、一ノ瀬さん、アンナさん、狭い家ですが、どうぞお上がり下さい」
「「お邪魔します」」
ちなみにアンナのこともラインで説明してあるから家族は驚かない。
「ねー、お兄ちゃん、すごいね。二人とも綺麗でお人形さんみたいだよっ」
「まぁ、一方はお人形さんみたいというかお人形さんなんだけどな」
リビングに入っていく二人を見て、茜がボソっとそんなことを言ってくるのでボソッとそう返す。アンナがチラリと振り返ったが、俺はアンナに屈しない。
「さて、お腹も空いてるでしょうから、まずは乾杯してご飯にしましょ。ほら、タツミー、アカネー、早くこっちきなさーい」
「「はーい」」
うちの広くないリビングに六人も入ると、やはり狭い。そして広くないダイニングテーブルには所狭しと料理が並べてあった。
(これマジで一ノ瀬さんとアンナ来なかったらどうするつもりだったんだろう?)
そう思わせる程の気合の入りぶりと量であった。
「んじゃ、父さんはビールっ」
テーブルの上の飲み物を各自が取っていくスタイルらしい。
「母さんもビールっ」
「茜はオレンジぃ!」
「んじゃ、俺は麦茶で。一ノ瀬さんとアンナは何飲む?」
「では、私も麦茶で」
「私はサラダ油」
………………。
全員が『そういうものなのか?』と首を傾げ俺の方を見てくる。
「……まぁ、本人がそう言ってるならサラダ油でいいんだろ」
「アンナちゃん、ごめんね? サラダ油用意してなくて」
謝る母さん。飲み物として用意してたら逆に引くわ。俺はそんなことを思いながら立ち上がり、サラダ油を探しにキッチンへと向かう。
「ノンノンノン、いっつあオートマタジョーク。別にサラダ油も飲めるけどベトベトするからオレンジジュースがいい」
サラダ油をコップに注ごうとしたらアンナがそんなことを言ってきた。
「お前、ホント独特なハートの強さとギャグセンスだよな」
「それほどでもある。褒めても今はミサイル出せないから、目からレーザー出すね」
「出したらお前マジでアイテムボックス内に突っ込むからな?」
半日しか過ごしていないけど、大体アンナの扱いは慣れた。
「なーに、たっくんカリカリしてるんだよぉ~。アンナちゃんのちょっとしたオートマタギャグじゃんかぁ~」
だが、ここに親父が絡んでくると、また別問題だ。ウザさが二乗されてしまう。
「タツミ、ヒロシを見習え」
「そうだ、そうだ、辰巳よ、もっと父を尊敬するんだっ」
(うわー、思った以上にウザいぞ……)
俺は頭を抱えて、項垂れてしまう。
「はいはい、料理が冷めちゃうから続きは乾杯してからね? では、息子が女の子を初めて、しかも二人も家に連れてきたことにぃー、かんぱーいっ!」
「「「「乾杯っ」」」」
(こいつら……)
「えへへ~、でもヒカリお姉ちゃんもアンナちゃんも可愛いから嬉しいなっ」
茜はずっとニコニコしている。癒し系妹だ。本当にアンナみたいにひねくれずに育ってくれて良かった。
「ん? なに」
「なんでもない」
アンナは春巻きにケチャップをかけて食べているところだった。いや、美味しいけどもね。美味しいけども、こいつ本当に今日生まれたばかりか、と考えたくもなる。
「フフ、茜ちゃんの方こそすごく可愛いですよ。こんな可愛い妹さんがいて辰巳君が羨ましいです」
「ん、アカネは可愛い。私のグループに入れてやる」
「わっ、嬉しいですっ。アンナちゃんもグループ入れてくれてありがとうっ。茜頑張るね!」
(アンナのグループってなんだよ、初耳だし。つーか、茜は何のグループかも分からず頑張るとか言ってるんだろうな)
俺は骨付きチキンを頬張りながら、ツッコんだら負けな不思議ワールドを傍観する。
「ね、ね、母さん、タツミとヒカリちゃんの馴れ初め聞きたいわぁ」
馴れ初めて……。
「茜もー!!」
「アンナもー」
「じゃあ、パパもっ!!」
五十代でこのノリな父親を見させられる息子の気持ちを考えたことがあるのだろうか。いや、ないんだろうな。
「ハァ……。世田谷ダンジョンでパーティー募集していた一ノ瀬さんと少し話して、条件が合いそうだったから組んだ。以上」
間違って一ノ瀬さんが、俺を見た瞬間何かを感じました、とか言った日にはウチの家族がハシャギまくって面倒くさいことになることは間違いないので、代わりに説明する。
「フフ、そうですね。辰巳君を見た瞬間、私、これからこの人と歩んでいくんだなって分かったんです」
「「「「おぉ~~~」」」」
だが、一ノ瀬さんが意外にもエンターテイナーだということを計算には入れていなかった。今のは絶対、ウチの家族を喜ばせるためにわざと言ったものだ。
玄関の扉を開けて二人を招き入れる。ちなみにアンナは武装を解除して、白いワンピース姿だ。
「ただい──」
「どうも、辰巳の父の洋です。いつも息子がお世話になっています」
「母の美佐子です」
「妹の茜ですっ」
親父はなぜか玄関に正座して待っていた。母さんと茜もひょいっとリビングから現れる。三人ともやたら気合の入った服装だ。
「初めまして。一ノ瀬ヒカリと申します。辰巳さんにはいつもお世話になっています。これつまらないものですが……」
「あいあむアンナ。今日からタツミの世話をすることになった。よろしく」
一ノ瀬さんはこんな状況にも動じることなくスラスラと挨拶をして、そんなの持っていかなくていいのにと言ったのに、わざわざ途中で買った手土産を渡す。アンナはまぁ予想の範疇内なので放っておく。
「これはこれは、お気遣いありがとうございます。ささっ、さささささっ、一ノ瀬さん、アンナさん、狭い家ですが、どうぞお上がり下さい」
「「お邪魔します」」
ちなみにアンナのこともラインで説明してあるから家族は驚かない。
「ねー、お兄ちゃん、すごいね。二人とも綺麗でお人形さんみたいだよっ」
「まぁ、一方はお人形さんみたいというかお人形さんなんだけどな」
リビングに入っていく二人を見て、茜がボソっとそんなことを言ってくるのでボソッとそう返す。アンナがチラリと振り返ったが、俺はアンナに屈しない。
「さて、お腹も空いてるでしょうから、まずは乾杯してご飯にしましょ。ほら、タツミー、アカネー、早くこっちきなさーい」
「「はーい」」
うちの広くないリビングに六人も入ると、やはり狭い。そして広くないダイニングテーブルには所狭しと料理が並べてあった。
(これマジで一ノ瀬さんとアンナ来なかったらどうするつもりだったんだろう?)
そう思わせる程の気合の入りぶりと量であった。
「んじゃ、父さんはビールっ」
テーブルの上の飲み物を各自が取っていくスタイルらしい。
「母さんもビールっ」
「茜はオレンジぃ!」
「んじゃ、俺は麦茶で。一ノ瀬さんとアンナは何飲む?」
「では、私も麦茶で」
「私はサラダ油」
………………。
全員が『そういうものなのか?』と首を傾げ俺の方を見てくる。
「……まぁ、本人がそう言ってるならサラダ油でいいんだろ」
「アンナちゃん、ごめんね? サラダ油用意してなくて」
謝る母さん。飲み物として用意してたら逆に引くわ。俺はそんなことを思いながら立ち上がり、サラダ油を探しにキッチンへと向かう。
「ノンノンノン、いっつあオートマタジョーク。別にサラダ油も飲めるけどベトベトするからオレンジジュースがいい」
サラダ油をコップに注ごうとしたらアンナがそんなことを言ってきた。
「お前、ホント独特なハートの強さとギャグセンスだよな」
「それほどでもある。褒めても今はミサイル出せないから、目からレーザー出すね」
「出したらお前マジでアイテムボックス内に突っ込むからな?」
半日しか過ごしていないけど、大体アンナの扱いは慣れた。
「なーに、たっくんカリカリしてるんだよぉ~。アンナちゃんのちょっとしたオートマタギャグじゃんかぁ~」
だが、ここに親父が絡んでくると、また別問題だ。ウザさが二乗されてしまう。
「タツミ、ヒロシを見習え」
「そうだ、そうだ、辰巳よ、もっと父を尊敬するんだっ」
(うわー、思った以上にウザいぞ……)
俺は頭を抱えて、項垂れてしまう。
「はいはい、料理が冷めちゃうから続きは乾杯してからね? では、息子が女の子を初めて、しかも二人も家に連れてきたことにぃー、かんぱーいっ!」
「「「「乾杯っ」」」」
(こいつら……)
「えへへ~、でもヒカリお姉ちゃんもアンナちゃんも可愛いから嬉しいなっ」
茜はずっとニコニコしている。癒し系妹だ。本当にアンナみたいにひねくれずに育ってくれて良かった。
「ん? なに」
「なんでもない」
アンナは春巻きにケチャップをかけて食べているところだった。いや、美味しいけどもね。美味しいけども、こいつ本当に今日生まれたばかりか、と考えたくもなる。
「フフ、茜ちゃんの方こそすごく可愛いですよ。こんな可愛い妹さんがいて辰巳君が羨ましいです」
「ん、アカネは可愛い。私のグループに入れてやる」
「わっ、嬉しいですっ。アンナちゃんもグループ入れてくれてありがとうっ。茜頑張るね!」
(アンナのグループってなんだよ、初耳だし。つーか、茜は何のグループかも分からず頑張るとか言ってるんだろうな)
俺は骨付きチキンを頬張りながら、ツッコんだら負けな不思議ワールドを傍観する。
「ね、ね、母さん、タツミとヒカリちゃんの馴れ初め聞きたいわぁ」
馴れ初めて……。
「茜もー!!」
「アンナもー」
「じゃあ、パパもっ!!」
五十代でこのノリな父親を見させられる息子の気持ちを考えたことがあるのだろうか。いや、ないんだろうな。
「ハァ……。世田谷ダンジョンでパーティー募集していた一ノ瀬さんと少し話して、条件が合いそうだったから組んだ。以上」
間違って一ノ瀬さんが、俺を見た瞬間何かを感じました、とか言った日にはウチの家族がハシャギまくって面倒くさいことになることは間違いないので、代わりに説明する。
「フフ、そうですね。辰巳君を見た瞬間、私、これからこの人と歩んでいくんだなって分かったんです」
「「「「おぉ~~~」」」」
だが、一ノ瀬さんが意外にもエンターテイナーだということを計算には入れていなかった。今のは絶対、ウチの家族を喜ばせるためにわざと言ったものだ。
0
お気に入りに追加
32
あなたにおすすめの小説
異世界に転移した僕、外れスキルだと思っていた【互換】と【HP100】の組み合わせで最強になる
名無し
ファンタジー
突如、異世界へと召喚された来栖海翔。自分以外にも転移してきた者たちが数百人おり、神父と召喚士から並ぶように指示されてスキルを付与されるが、それはいずれもパッとしなさそうな【互換】と【HP100】という二つのスキルだった。召喚士から外れ認定され、当たりスキル持ちの右列ではなく、外れスキル持ちの左列のほうに並ばされる来栖。だが、それらは組み合わせることによって最強のスキルとなるものであり、来栖は何もない状態から見る見る成り上がっていくことになる。
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
「残念でした~。レベル1だしチートスキルなんてありませ~ん笑」と女神に言われ異世界転生させられましたが、転移先がレベルアップの実の宝庫でした
御浦祥太
ファンタジー
どこにでもいる高校生、朝比奈結人《あさひなゆいと》は修学旅行で京都を訪れた際に、突然清水寺から落下してしまう。不思議な空間にワープした結人は女神を名乗る女性に会い、自分がこれから異世界転生することを告げられる。
異世界と聞いて結人は、何かチートのような特別なスキルがもらえるのか女神に尋ねるが、返ってきたのは「残念でした~~。レベル1だしチートスキルなんてありませ~~ん(笑)」という強烈な言葉だった。
女神の言葉に落胆しつつも異世界に転生させられる結人。
――しかし、彼は知らなかった。
転移先がまさかの禁断のレベルアップの実の群生地であり、その実を食べることで自身のレベルが世界最高となることを――
異世界帰りの元勇者、日本に突然ダンジョンが出現したので「俺、バイト辞めますっ!」
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
俺、結城ミサオは異世界帰りの元勇者。
異世界では強大な力を持った魔王を倒しもてはやされていたのに、こっちの世界に戻ったら平凡なコンビニバイト。
せっかく強くなったっていうのにこれじゃ宝の持ち腐れだ。
そう思っていたら突然目の前にダンジョンが現れた。
これは天啓か。
俺は一も二もなくダンジョンへと向かっていくのだった。
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
辻ヒーラー、謎のもふもふを拾う。社畜俺、ダンジョンから出てきたソレに懐かれたので配信をはじめます。
月ノ@最強付与術師の成長革命/発売中
ファンタジー
ブラック企業で働く社畜の辻風ハヤテは、ある日超人気ダンジョン配信者のひかるんがイレギュラーモンスターに襲われているところに遭遇する。
ひかるんに辻ヒールをして助けたハヤテは、偶然にもひかるんの配信に顔が映り込んでしまう。
ひかるんを助けた英雄であるハヤテは、辻ヒールのおじさんとして有名になってしまう。
ダンジョンから帰宅したハヤテは、後ろから謎のもふもふがついてきていることに気づく。
なんと、謎のもふもふの正体はダンジョンから出てきたモンスターだった。
もふもふは怪我をしていて、ハヤテに助けを求めてきた。
もふもふの怪我を治すと、懐いてきたので飼うことに。
モンスターをペットにしている動画を配信するハヤテ。
なんとペット動画に自分の顔が映り込んでしまう。
顔バレしたことで、世間に辻ヒールのおじさんだとバレてしまい……。
辻ヒールのおじさんがペット動画を出しているということで、またたくまに動画はバズっていくのだった。
他のサイトにも掲載
なろう日間1位
カクヨムブクマ7000
フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!
チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい
616號
ファンタジー
不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる