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◆ 果て無きパラレル・マトリクス 06 ◇
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◆◇◆◇
──05の続きです。
──【どうして、わかるの……】
──掴み取った指をぎゅっと握る。
──描写が省かれた『全年齢版』です。
◆◇◆◇
──コンクリートの匂い。
ふと顔を上げたら誰かが通り過ぎるような平坦な道の端で、私たちはキスを交わす。
サクラを咀嚼するようにキスを続けると、サクラは限界を迎えた。
「ぁっ……」
何かが途切れるようなサクラのか細い声が聴こえた。
まるで断末魔みたい。
サクラの全身から力が切れて、私にめり込むように落ちてくる。痙攣しながら。顔は見えないけど、もうなんかヤバそう。
「サクラ?」
「……」
「意識ある?」
「……」
「ねぇ、私たちの周りにゾンビたくさん居るよ!」
「……」
「嘘、誰もいません!」
「……」
多分生きているサクラの頭部をポンポンと撫でると、サクラは顔を揺らしながら私を見つめる。
サクラは流れるような動きでキスをする。
軽く。
さっきとは違う感覚。
僅かに触れ合っただけなのに、ゾクゾクと私は身悶えした。サクラの愛らしさが私の体に突き刺さる。続いてサクラからの感情がどばっと押し寄せてくる。
私はサクラを抱き寄せると、そっと耳元で囁いた。
「ねぇ、サクラ。私、サクラに触れると──」
それは、不意に思いついた。
なんか、もう言っても大丈夫な気がした。
どうせ、この世界には私たち以外誰もいないし。
だって、戻れるかわかんないし。
あと、このまま私だけが有利なのはフェアじゃない気がしたから。
サクラが私に曝け出しているように、私も──と思ったんだ。
しかし、その瞬間、私の耳に歌声が届いたことで、喋るのを辞めてしまった。
歌。
──私の歌。
私のデビュー曲になるはずだったメロディと歌詞が、あの人の声で聴こえた。
◇◆◇◆
「こっちの方法から、聴こえた」「歌が?」「うん……」「空耳とか?」「間違えるはずがない、だって──」
星屑ソラの声だもの。
私の耳に刻み込まれたあのファンタスティックで最凶の歌声。
サクラは不安げに私の手を握りながら、ついてきてくれる。また何かサクラが喋ろうと口を開きかけた時、今度ははっきりと声が聴こえた。サクラも「今の……」とゴクンと唾を飲み込んで、私の手を強く握り返す。
「でしょ?」
「うん」
「この中、小さな講堂?」
この街の小さな講堂の中から音が聞こてくる。
歌っている。
間違いなくあの人の声、だ。サクラはぎゅっと手を握るだけで何も言ってこない。【星屑、ソラ……】って、あのヘアアクセの一件から私とソラ先輩について色々探っているサクラは、その答えを探ろうとしている。別に、そんな大げさな話じゃないのにね。ただ私が歌手デビューする寸前まで行ったけど、突然現れた星屑ソラは私が進むはずだった歌手への道を全てもぎ取り、代わりに世に出ただけさ。私は、最後のオーディションでソラ先輩に勝利することでデビューできると信じたけど、実は私はソラ先輩に初めから勝てないと自分で理解していて、自ら願うように喉を壊した。で、私の夢はなんか終了しちゃったのでした、チャンチャンって物語にするには味気なくてどうでもよくて本当につまらない物語──。
「……レイ?」
「さ、中に入ってみよっか。ゾンビが飛び出てくるかもだから身構えて」「え、えぇ、そうね」【普段のレイと違う。なんか空元気というか……】
なんか察してるサクラに辟易しながら、扉を開いた。
安っぽいパイプ椅子が並ぶ空間。
小さなステージ。
その中心に、存在した。星──★☆★が! ☆★先輩はステージに背を向けて歌っていた。常人離れした180センチの高身長に、腰まで届く銀髪が歌うたびに靡いている。なんて……異様な、おかしな、狂った……変な、形してるんだろう……。
ドクン!
と心臓が大きく跳ね上がった。
続いて鳥肌がわっと総立ちし、体が震え始める。額から汗が吹き出ているのもわかる。ふー、ふー、って下手くそな深呼吸を繰り返しながら、もう一度☆★☆★をじっと見つめた。
え、
え、
え……待って、おかしい……。私は、☆★先輩を見慣れているはずなのに、長身で格好いい雰囲気の女性だなぁ~って感じで思っていたけど、でも身長が180センチ以上もあり、揺れる銀髪はギラギラと宝石のように不気味に輝いている。この世のモノとは思えない雰囲気を纏っている。銀髪とかそこだけCGの立体映像が映し出されたり、体の長さや存在感もなんか……おかしい。人の形をしているけど、私たち人間とは同じ種族とは到底思えない異型だった。
異様な光景、だった。
この世のモノとは思えない雰囲気を感じ取る。人間離れした細い体躯も、デザインの間違った人形みたいで、歪だ。そんなはずがない。メディアでも☆★先輩の外見は常人離れしたプロポーションと褒め称えられ、誰もが憧れ、真似しようとしていた。私以外。
体が裂かれるような恐怖を覚えた。
私の全身がビービーと強い警告音を鳴らしている。本能がヤバイ、逃げろ、──殺されるって唸ってる。【流石にいくらなんでも殺しはしないわ】
「……サクラ?」
歌が止まっていた。
いつの間にか、☆★先輩は真っ赤な杖を(これも血液が絡まりあった瞬間を形にしたようなフォルムで気持ちわるっ!!!!)をコツン、コツンと鳴らす。
【どうやらあの道を通り抜けてしまったようね。普段は閉鎖しているのだけど、閉じるのを忘れてしまったのか、それとも引き寄せられたのか──】
「サクラ?」サクラはじっと私を見つめている。けど、さっきまでのような表情は消え失せて、瞳もなんかギラギラと不気味に輝いている。なんだろう、何、これは……サクラじゃない? サクラの想いが伝わってくるはずなのに、そこには私の知らない──まるでノイズのような何かが混じっている。
【ノイズって、非道いわね】
……嘘。
──私の思っていることを、読まれた?【あらあら、これはいつも君がしてることじゃない】
思わずサクラから離れようとしたけど、サクラはぎゅっと私の手を力強く握っているため、逃げられない。
【少しだけ、僅かにこの子を借りたのよ。あたし、音声での意思疎通手段は苦手でね、現環境では整えていないの。それに、君は他人の思考を自身の中で複製できるのだから、こんな便利な機能を使わなきゃ損じゃない】
「あ、あの……え?」
【ここは練習に最適な環境なのよ。遥か昔、世界を模したけど中途半端な状態で残ってしまい、そのまま破棄され、崩壊する最中の何故か狭間に漂っているだけのシンプルな世界。邪魔な生物は君たち以外は存在しない──】
「ってことは、やっぱり私たちを殺す、殺害、抹消──するんだ! せめて私だけでも……うっそ、サクラもお願いします!」
【言ったでしょう、殺しはしないと。そもそもそんな能力持ち合わせていない。ただ、これ以上邪魔されるのも面白くないので、君たちを元の世界に戻してあげる】
「えぇ、そんな急に……。展開が早いです。もう少しこの世界について教えてください、☆★先輩」
【あたしは暇じゃないの。この世界に関して、それとあたしに出会った記憶は全て消去させて貰うわね】
「う、うわぁ……なんか記憶消すとか元の世界に戻すとか軽々しく話すの恐い。はぁ、やっぱり☆★先輩は人間じゃなかったんですね」【さぁ……】「いやいやそうでしょ! 人間離れした感じだって前々から思ってたけど、まさかその通りとは──。あ、だからあの時も──」
【あたしに敗北したのは、君が──レイちゃんが自らそう求めたのでしょう。人のせいにしないで頂戴──】
「すみません」
その通りだった。
喉が潰れて、ステージに立てないと知った時、私は心の底から安堵した。
淡い記憶のはずなのに、くっきり鮮明如実に浮かび上がる記憶が忌々しい……。
サクラがふわっと体を揺らし、私に凭れかかってくる。まるで糸の途切れた操り人形のようで、……その比喩の通りの状態、なんだろう。なんか変な後遺症とか残らないか不安。
コツン、コツン──と☆★先輩が杖を打ち鳴らす。
すると、その音がぐわ~んと一定の質量を持つような感じで広がり始めた。私の視界がぐにゃぐにゃとゆがみ始め、目眩を覚えるほど足元がふらついた。
サクラの手だけを、しっかりと握りしめていた。
離さないように、
離れないように……。
サクラも強く握り返してくれる。
◆◇◆◇
ep.果て無きパラレル・マトリクス
06
終
◆◇◆◇
──05の続きです。
──【どうして、わかるの……】
──掴み取った指をぎゅっと握る。
──描写が省かれた『全年齢版』です。
◆◇◆◇
──コンクリートの匂い。
ふと顔を上げたら誰かが通り過ぎるような平坦な道の端で、私たちはキスを交わす。
サクラを咀嚼するようにキスを続けると、サクラは限界を迎えた。
「ぁっ……」
何かが途切れるようなサクラのか細い声が聴こえた。
まるで断末魔みたい。
サクラの全身から力が切れて、私にめり込むように落ちてくる。痙攣しながら。顔は見えないけど、もうなんかヤバそう。
「サクラ?」
「……」
「意識ある?」
「……」
「ねぇ、私たちの周りにゾンビたくさん居るよ!」
「……」
「嘘、誰もいません!」
「……」
多分生きているサクラの頭部をポンポンと撫でると、サクラは顔を揺らしながら私を見つめる。
サクラは流れるような動きでキスをする。
軽く。
さっきとは違う感覚。
僅かに触れ合っただけなのに、ゾクゾクと私は身悶えした。サクラの愛らしさが私の体に突き刺さる。続いてサクラからの感情がどばっと押し寄せてくる。
私はサクラを抱き寄せると、そっと耳元で囁いた。
「ねぇ、サクラ。私、サクラに触れると──」
それは、不意に思いついた。
なんか、もう言っても大丈夫な気がした。
どうせ、この世界には私たち以外誰もいないし。
だって、戻れるかわかんないし。
あと、このまま私だけが有利なのはフェアじゃない気がしたから。
サクラが私に曝け出しているように、私も──と思ったんだ。
しかし、その瞬間、私の耳に歌声が届いたことで、喋るのを辞めてしまった。
歌。
──私の歌。
私のデビュー曲になるはずだったメロディと歌詞が、あの人の声で聴こえた。
◇◆◇◆
「こっちの方法から、聴こえた」「歌が?」「うん……」「空耳とか?」「間違えるはずがない、だって──」
星屑ソラの声だもの。
私の耳に刻み込まれたあのファンタスティックで最凶の歌声。
サクラは不安げに私の手を握りながら、ついてきてくれる。また何かサクラが喋ろうと口を開きかけた時、今度ははっきりと声が聴こえた。サクラも「今の……」とゴクンと唾を飲み込んで、私の手を強く握り返す。
「でしょ?」
「うん」
「この中、小さな講堂?」
この街の小さな講堂の中から音が聞こてくる。
歌っている。
間違いなくあの人の声、だ。サクラはぎゅっと手を握るだけで何も言ってこない。【星屑、ソラ……】って、あのヘアアクセの一件から私とソラ先輩について色々探っているサクラは、その答えを探ろうとしている。別に、そんな大げさな話じゃないのにね。ただ私が歌手デビューする寸前まで行ったけど、突然現れた星屑ソラは私が進むはずだった歌手への道を全てもぎ取り、代わりに世に出ただけさ。私は、最後のオーディションでソラ先輩に勝利することでデビューできると信じたけど、実は私はソラ先輩に初めから勝てないと自分で理解していて、自ら願うように喉を壊した。で、私の夢はなんか終了しちゃったのでした、チャンチャンって物語にするには味気なくてどうでもよくて本当につまらない物語──。
「……レイ?」
「さ、中に入ってみよっか。ゾンビが飛び出てくるかもだから身構えて」「え、えぇ、そうね」【普段のレイと違う。なんか空元気というか……】
なんか察してるサクラに辟易しながら、扉を開いた。
安っぽいパイプ椅子が並ぶ空間。
小さなステージ。
その中心に、存在した。星──★☆★が! ☆★先輩はステージに背を向けて歌っていた。常人離れした180センチの高身長に、腰まで届く銀髪が歌うたびに靡いている。なんて……異様な、おかしな、狂った……変な、形してるんだろう……。
ドクン!
と心臓が大きく跳ね上がった。
続いて鳥肌がわっと総立ちし、体が震え始める。額から汗が吹き出ているのもわかる。ふー、ふー、って下手くそな深呼吸を繰り返しながら、もう一度☆★☆★をじっと見つめた。
え、
え、
え……待って、おかしい……。私は、☆★先輩を見慣れているはずなのに、長身で格好いい雰囲気の女性だなぁ~って感じで思っていたけど、でも身長が180センチ以上もあり、揺れる銀髪はギラギラと宝石のように不気味に輝いている。この世のモノとは思えない雰囲気を纏っている。銀髪とかそこだけCGの立体映像が映し出されたり、体の長さや存在感もなんか……おかしい。人の形をしているけど、私たち人間とは同じ種族とは到底思えない異型だった。
異様な光景、だった。
この世のモノとは思えない雰囲気を感じ取る。人間離れした細い体躯も、デザインの間違った人形みたいで、歪だ。そんなはずがない。メディアでも☆★先輩の外見は常人離れしたプロポーションと褒め称えられ、誰もが憧れ、真似しようとしていた。私以外。
体が裂かれるような恐怖を覚えた。
私の全身がビービーと強い警告音を鳴らしている。本能がヤバイ、逃げろ、──殺されるって唸ってる。【流石にいくらなんでも殺しはしないわ】
「……サクラ?」
歌が止まっていた。
いつの間にか、☆★先輩は真っ赤な杖を(これも血液が絡まりあった瞬間を形にしたようなフォルムで気持ちわるっ!!!!)をコツン、コツンと鳴らす。
【どうやらあの道を通り抜けてしまったようね。普段は閉鎖しているのだけど、閉じるのを忘れてしまったのか、それとも引き寄せられたのか──】
「サクラ?」サクラはじっと私を見つめている。けど、さっきまでのような表情は消え失せて、瞳もなんかギラギラと不気味に輝いている。なんだろう、何、これは……サクラじゃない? サクラの想いが伝わってくるはずなのに、そこには私の知らない──まるでノイズのような何かが混じっている。
【ノイズって、非道いわね】
……嘘。
──私の思っていることを、読まれた?【あらあら、これはいつも君がしてることじゃない】
思わずサクラから離れようとしたけど、サクラはぎゅっと私の手を力強く握っているため、逃げられない。
【少しだけ、僅かにこの子を借りたのよ。あたし、音声での意思疎通手段は苦手でね、現環境では整えていないの。それに、君は他人の思考を自身の中で複製できるのだから、こんな便利な機能を使わなきゃ損じゃない】
「あ、あの……え?」
【ここは練習に最適な環境なのよ。遥か昔、世界を模したけど中途半端な状態で残ってしまい、そのまま破棄され、崩壊する最中の何故か狭間に漂っているだけのシンプルな世界。邪魔な生物は君たち以外は存在しない──】
「ってことは、やっぱり私たちを殺す、殺害、抹消──するんだ! せめて私だけでも……うっそ、サクラもお願いします!」
【言ったでしょう、殺しはしないと。そもそもそんな能力持ち合わせていない。ただ、これ以上邪魔されるのも面白くないので、君たちを元の世界に戻してあげる】
「えぇ、そんな急に……。展開が早いです。もう少しこの世界について教えてください、☆★先輩」
【あたしは暇じゃないの。この世界に関して、それとあたしに出会った記憶は全て消去させて貰うわね】
「う、うわぁ……なんか記憶消すとか元の世界に戻すとか軽々しく話すの恐い。はぁ、やっぱり☆★先輩は人間じゃなかったんですね」【さぁ……】「いやいやそうでしょ! 人間離れした感じだって前々から思ってたけど、まさかその通りとは──。あ、だからあの時も──」
【あたしに敗北したのは、君が──レイちゃんが自らそう求めたのでしょう。人のせいにしないで頂戴──】
「すみません」
その通りだった。
喉が潰れて、ステージに立てないと知った時、私は心の底から安堵した。
淡い記憶のはずなのに、くっきり鮮明如実に浮かび上がる記憶が忌々しい……。
サクラがふわっと体を揺らし、私に凭れかかってくる。まるで糸の途切れた操り人形のようで、……その比喩の通りの状態、なんだろう。なんか変な後遺症とか残らないか不安。
コツン、コツン──と☆★先輩が杖を打ち鳴らす。
すると、その音がぐわ~んと一定の質量を持つような感じで広がり始めた。私の視界がぐにゃぐにゃとゆがみ始め、目眩を覚えるほど足元がふらついた。
サクラの手だけを、しっかりと握りしめていた。
離さないように、
離れないように……。
サクラも強く握り返してくれる。
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ep.果て無きパラレル・マトリクス
06
終
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