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◆ 狭間のスマイル・モーメント 01 ◇
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◆◇◆◇
──現在、私は教室の掃除用具が詰まったキャビネットの中におります。
──放課後です。
──何故そんなところに居るのか回想中です。
◆◇◆◇
一日休んだ時に数学の宿題があったらしく、まぁ君は休んでいたから後日提出してね、と期限を伸ばされていたんだけど、なんとその期日が今日の放課後までだった。なにそれ初耳……じゃないけど、そんな馬鹿な! って口があんぐり空いた。驚き通り越して冷静になる。私は自分でも驚くほど冷血に鋼鉄みたいな意志で宿題に手をつけた。けど、そう安々宿題を打ち倒せるわけでもなく、渋るサクラに足を舐める勢いで頭を下げ、トドメにぎゅうぎゅう抱きついてどうにか教えて貰いながら仕上げ、そして提出に向かったんだ。
で、放課後。
私は抜き足差し足で職員室まで向かい、無事先生に宿題を届けることができた。
一人で……。
サクラは居なかった。
──喧嘩とかしたわけじゃない。サクラが私に黙ってシニカルに笑うメイドのアルバイトを始めたわけでもない。それはもう終わった話。
一緒に行こう! って誘ったら「トイレ」とか言い出して、じゃあその時ついでに宿題出してよぉ、とお願いしたらわかった、と頷きかけてやんの。途中で気づいて自分で行け! と脅された。……恐かった。サクラは顔のパーツのバランス良くてさ、怒る時とか眉間に皺を寄せるとゾクゾクしちゃうような圧力を秘めてるんだよね。
スマホが震えた。
ポケットから取り出すとサクラからのメッセージ。教室に向かってるとのこと。
その瞬間、私は放たれた矢の如く駆けていた。
──疾走。
風切音がひゅんひゅん! と耳を通り抜ける。
ぎゅんぎゅんと視界が加速する。
宙に閃光のような軌跡を残しつつ、教室にたどり着いた。
誰も居ない。
まだサクラは来ていない。
よし! と私は内心ガッツポーツを作る。
ふふふっ、また驚かしちゃおう……。サクラちゃんは反応が素晴らしいの。悪戯すると120%のリアクションを返してくれる。もうついちょっかいかけちゃう。しかもやられて嫌がるどころか、実は──。
どこか隠れられる場所──教卓は……駄目だ、サクラが座るであろう自席の目の前。驚かすために教卓から出た瞬間視界に入っちゃう。
どうしようどうしましょうって視線を散らしていると──目に入る、ちょうど良い物体が。
私たちの教室には掃除道具が詰まっているキャビネットが教室の隅っこに備えられている。
近づき、中を開く。数本の箒やチリトリが無造作に放り込んであった。私一人が余裕で忍び込めるスペースあり!
私は体を押し込み、扉を閉める。
その時、教室の入口付近から音が聞こえた。サクラ来たの? しかしやれやれうふふ残念無念、もう私は準備完了しちゃったよ。この後はサクラが椅子に座り、ぼけ~~っとアホ面かましている時にそっと後ろから忍び寄って「サ~クラ!」と肩を叩く。ビビクンっ! って驚きつつも平静を装うサクラ可愛んだよね~。肩に当てた指を伸ばして頬に突き刺し何考えているのか読み取っちゃおうかな。どうせ私のこと考えているのでしょう。
ひっひっひっ、と声を出さないようにして笑い、キャビネットの僅かな隙間から中を観察してると、教室の中に表れたクラスメイト──男子の姿を目の当たりにして笑みが止まる。
三人の男子がヘラヘラと談笑しながら入ってきやがった。
え、えぇ……予定と違うんですが。さっさと出て行け! と願うも……どかっと椅子に座り、べらべらと喋り始めた。
おっと……。
コイツは困ったぞ。
どうしよ。
ここでどじゃ~ん! と登場してもいいけど、え、なんで隠れてるの? と頭おかしい子に思われる可能性大だよ。まぁ私はギリそういうことをしても許される地位をクラス内で築いているけど、いや、ギリギリアウト、かな……。某サクラさんの最初の音楽の授業よろしく天彩さんも変な子とレッテル貼られちゃう。かといってずっとここで忍んでいるもなぁ。
キャビネットの中は真っ暗なので、明かり……とスマホを取り出した瞬間、画面にメッセージが表示される。
ひゅんッ!
と冷静に指先でスワイプし、バイブ音が響くのを寸前で抑えた。
あ、危なかった……。
はぁ、はぁ……と息が上がる。メッセージは、サクラか。もう教室? ってはいはいそうだよ。でも今ここで戻ってきたら男子たちが居るので私が出られない。サクラに事実を伝えるのも癪なので、教室から正反対の場所にある購買にしか売っていないジュースを買ってくるようお願いした。サクラは文句を垂れつつ了承してくれた。よし、少しは時間が稼げる。
──天彩さん
ドキンッ! と心臓が跳ね上がる。
急に私の名前が呼ばれたので焦った。
気づかれたの?
どうして?
もしや空間を司る能力者おる? そんな現実離れした設定ありえん! って思った時、彼等は同じクラスメイトの女子たちの名前を出しているだけだった。
ほっと安心するも束の間、これはなんか余計出て行きづらくなったことに気づく。
何故なら──
###
## 男子たちの会話
## -うちのクラス、可愛い子多いよな-
###
──やっぱ天彩さんは初めて見た時焦ったな。
──わかる。
──芸能界の子が紛れ込んでるのかと思ったよ。
──わかる。
──ただあそこまでヤバイと逆に手が出せないというか。
──高値の花。
──それ。付き合っても隣歩ける自信ない。
──そもそも付き合うことが……。
──うるせぇな。夢くらい見させろ。
──あ~じゃあ柊さんは?
あはは、そんな私って可愛いのか参ったなこりゃ、たはは……と照れてると再びドッキン! と心臓が跳ね上がる。
だって──サクラの名前が登場したから!
いやね、気になります。
サクラが、男子にどのような評価を受けているのか。
ゴクリ……と唾を飲み込んだ。
なんか私のこと以上にドキドキしながら息を潜めて聞き耳を立てる。
──天彩さんといつも一緒にいる?
──あの「お断りします」の人。
──あれ凄いよな、凄味のあるキレ方。この人おっかねぇ……ってマジびびった。
──でも案外普通の人っぽい。
──そうそう会話したことあるけど普通だった。
──言うほど普通か?
──ってかさ、実は結構というか、かなり……。
──可愛い。
一瞬の静けさ。
ね!!!
ですよねぇ!
思わずバンッ! と扉を開いて参加したい衝動に駆られたけど堪えた。
──天彩さんが常に隣に居るからあまり目立たないけど、負けず劣らずというか……可愛いよな。
──天彩さんと会話すると結構笑ってさ。
──時々一人で居るの見かけると、え、めっちゃ可愛い……って焦る。
──美人というか、目や口のバランスが凄いというか、顔の作りがこう……いいよな。
──ハーフ?
──違うんじゃない。でも親が有名な人なんだっけ?
──やめろ、その話すると鍵盤に顔叩きつけられる。
──他クラスで広がってるあの噂非道い……。
──ってか天彩さんと柊さん、二人で並ぶと……いいよね。
──わかる。
──な。
男子たちは皆うんうん頷いてる。
私も。
あ~~~中に入りたい。一緒にサクラについて語り合いたいよ……。
──ただ柊さんは、天彩さんと会話してる時も素の感じが出ていいけど、個人的なイチオシは、一瞬だけ見せる笑顔……。
──あれだろ、天彩さんが柊さんにふざけてじゃれた後、ふっと一瞬緩む表情……。
──そうそれ! あの……ほんの少しだけ頬が緩んで、儚い触れたら壊れちゃいそうな顔……。
──めっちゃ尊い。
──でもあれきっと天彩さんにだけ向けられる表情だよな。俺たちじゃ無理だ。
──ほーん、じゃあ諦める?
──だからそのための……そうそう……。
####
男子たちはスマホの画面を見せ合い、何かしら会話はしてるけどコソコソと内緒話みたいに声を潜めて聞き取れないじゃん。
……それよりも、なに──え、そんな顔、するの?
──儚い表情。
私に?
サクラの表情を思い浮かべる。出会った当初はムスっとしているというか、何人たりとも近づけないわ! ってオーラをプンプン撒き散らしてた。けど、手をぎゅっと握ってサクラ~! と抱き着いたらあっさり氷解してしまった。今ではちょっと手を握れば【はぁぁぁぁ……レイの指超気持ちいいじゃない~~(*´Д`*)~~!!!!!!】って若干気持ち悪くエクスタシー感じてる。あと、私が意地悪く睨むと負けじと強烈な視線で睨んでくる。もちろん笑顔も知ってる。
喜怒
哀楽
もうサクラの表情なんて全部知っていると思っていたけど、儚い──なんじゃそりゃ。
触れたら壊れちゃいそうな?
ガラス細工、的な表情?
ってか壊れそうって、サクラはもう一度壊れてるでしょ……。だから傷口なぞってあげるとぎゃあぎゃあ内心悲鳴上げながら愉悦感じちゃう子なの。
そうじゃないって。
それは今は置いとこ。
私はもう一度記憶に刻まれたサクラの表情を一つ一つ思い出す。しかし思い当たらない。一体どんな表情なのか──。
男子たちはいつの間にかどうでもいいような会話を繰り広げて馬鹿笑いをしている。私やサクラも登場しない。と、その時ガララ……と扉が開く音が響き、男子たちは硬直した。一瞬みんなペコリと頭を下げて、アイコンタクトで意思疎通した後、そそくさと教室から出て行ってしまった。
誰?
……果たせるかな、サクラだった。
◆◇◆◇
ep.狭間のスマイル・モーメント
01
続く
◆◇◆◇
──現在、私は教室の掃除用具が詰まったキャビネットの中におります。
──放課後です。
──何故そんなところに居るのか回想中です。
◆◇◆◇
一日休んだ時に数学の宿題があったらしく、まぁ君は休んでいたから後日提出してね、と期限を伸ばされていたんだけど、なんとその期日が今日の放課後までだった。なにそれ初耳……じゃないけど、そんな馬鹿な! って口があんぐり空いた。驚き通り越して冷静になる。私は自分でも驚くほど冷血に鋼鉄みたいな意志で宿題に手をつけた。けど、そう安々宿題を打ち倒せるわけでもなく、渋るサクラに足を舐める勢いで頭を下げ、トドメにぎゅうぎゅう抱きついてどうにか教えて貰いながら仕上げ、そして提出に向かったんだ。
で、放課後。
私は抜き足差し足で職員室まで向かい、無事先生に宿題を届けることができた。
一人で……。
サクラは居なかった。
──喧嘩とかしたわけじゃない。サクラが私に黙ってシニカルに笑うメイドのアルバイトを始めたわけでもない。それはもう終わった話。
一緒に行こう! って誘ったら「トイレ」とか言い出して、じゃあその時ついでに宿題出してよぉ、とお願いしたらわかった、と頷きかけてやんの。途中で気づいて自分で行け! と脅された。……恐かった。サクラは顔のパーツのバランス良くてさ、怒る時とか眉間に皺を寄せるとゾクゾクしちゃうような圧力を秘めてるんだよね。
スマホが震えた。
ポケットから取り出すとサクラからのメッセージ。教室に向かってるとのこと。
その瞬間、私は放たれた矢の如く駆けていた。
──疾走。
風切音がひゅんひゅん! と耳を通り抜ける。
ぎゅんぎゅんと視界が加速する。
宙に閃光のような軌跡を残しつつ、教室にたどり着いた。
誰も居ない。
まだサクラは来ていない。
よし! と私は内心ガッツポーツを作る。
ふふふっ、また驚かしちゃおう……。サクラちゃんは反応が素晴らしいの。悪戯すると120%のリアクションを返してくれる。もうついちょっかいかけちゃう。しかもやられて嫌がるどころか、実は──。
どこか隠れられる場所──教卓は……駄目だ、サクラが座るであろう自席の目の前。驚かすために教卓から出た瞬間視界に入っちゃう。
どうしようどうしましょうって視線を散らしていると──目に入る、ちょうど良い物体が。
私たちの教室には掃除道具が詰まっているキャビネットが教室の隅っこに備えられている。
近づき、中を開く。数本の箒やチリトリが無造作に放り込んであった。私一人が余裕で忍び込めるスペースあり!
私は体を押し込み、扉を閉める。
その時、教室の入口付近から音が聞こえた。サクラ来たの? しかしやれやれうふふ残念無念、もう私は準備完了しちゃったよ。この後はサクラが椅子に座り、ぼけ~~っとアホ面かましている時にそっと後ろから忍び寄って「サ~クラ!」と肩を叩く。ビビクンっ! って驚きつつも平静を装うサクラ可愛んだよね~。肩に当てた指を伸ばして頬に突き刺し何考えているのか読み取っちゃおうかな。どうせ私のこと考えているのでしょう。
ひっひっひっ、と声を出さないようにして笑い、キャビネットの僅かな隙間から中を観察してると、教室の中に表れたクラスメイト──男子の姿を目の当たりにして笑みが止まる。
三人の男子がヘラヘラと談笑しながら入ってきやがった。
え、えぇ……予定と違うんですが。さっさと出て行け! と願うも……どかっと椅子に座り、べらべらと喋り始めた。
おっと……。
コイツは困ったぞ。
どうしよ。
ここでどじゃ~ん! と登場してもいいけど、え、なんで隠れてるの? と頭おかしい子に思われる可能性大だよ。まぁ私はギリそういうことをしても許される地位をクラス内で築いているけど、いや、ギリギリアウト、かな……。某サクラさんの最初の音楽の授業よろしく天彩さんも変な子とレッテル貼られちゃう。かといってずっとここで忍んでいるもなぁ。
キャビネットの中は真っ暗なので、明かり……とスマホを取り出した瞬間、画面にメッセージが表示される。
ひゅんッ!
と冷静に指先でスワイプし、バイブ音が響くのを寸前で抑えた。
あ、危なかった……。
はぁ、はぁ……と息が上がる。メッセージは、サクラか。もう教室? ってはいはいそうだよ。でも今ここで戻ってきたら男子たちが居るので私が出られない。サクラに事実を伝えるのも癪なので、教室から正反対の場所にある購買にしか売っていないジュースを買ってくるようお願いした。サクラは文句を垂れつつ了承してくれた。よし、少しは時間が稼げる。
──天彩さん
ドキンッ! と心臓が跳ね上がる。
急に私の名前が呼ばれたので焦った。
気づかれたの?
どうして?
もしや空間を司る能力者おる? そんな現実離れした設定ありえん! って思った時、彼等は同じクラスメイトの女子たちの名前を出しているだけだった。
ほっと安心するも束の間、これはなんか余計出て行きづらくなったことに気づく。
何故なら──
###
## 男子たちの会話
## -うちのクラス、可愛い子多いよな-
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──やっぱ天彩さんは初めて見た時焦ったな。
──わかる。
──芸能界の子が紛れ込んでるのかと思ったよ。
──わかる。
──ただあそこまでヤバイと逆に手が出せないというか。
──高値の花。
──それ。付き合っても隣歩ける自信ない。
──そもそも付き合うことが……。
──うるせぇな。夢くらい見させろ。
──あ~じゃあ柊さんは?
あはは、そんな私って可愛いのか参ったなこりゃ、たはは……と照れてると再びドッキン! と心臓が跳ね上がる。
だって──サクラの名前が登場したから!
いやね、気になります。
サクラが、男子にどのような評価を受けているのか。
ゴクリ……と唾を飲み込んだ。
なんか私のこと以上にドキドキしながら息を潜めて聞き耳を立てる。
──天彩さんといつも一緒にいる?
──あの「お断りします」の人。
──あれ凄いよな、凄味のあるキレ方。この人おっかねぇ……ってマジびびった。
──でも案外普通の人っぽい。
──そうそう会話したことあるけど普通だった。
──言うほど普通か?
──ってかさ、実は結構というか、かなり……。
──可愛い。
一瞬の静けさ。
ね!!!
ですよねぇ!
思わずバンッ! と扉を開いて参加したい衝動に駆られたけど堪えた。
──天彩さんが常に隣に居るからあまり目立たないけど、負けず劣らずというか……可愛いよな。
──天彩さんと会話すると結構笑ってさ。
──時々一人で居るの見かけると、え、めっちゃ可愛い……って焦る。
──美人というか、目や口のバランスが凄いというか、顔の作りがこう……いいよな。
──ハーフ?
──違うんじゃない。でも親が有名な人なんだっけ?
──やめろ、その話すると鍵盤に顔叩きつけられる。
──他クラスで広がってるあの噂非道い……。
──ってか天彩さんと柊さん、二人で並ぶと……いいよね。
──わかる。
──な。
男子たちは皆うんうん頷いてる。
私も。
あ~~~中に入りたい。一緒にサクラについて語り合いたいよ……。
──ただ柊さんは、天彩さんと会話してる時も素の感じが出ていいけど、個人的なイチオシは、一瞬だけ見せる笑顔……。
──あれだろ、天彩さんが柊さんにふざけてじゃれた後、ふっと一瞬緩む表情……。
──そうそれ! あの……ほんの少しだけ頬が緩んで、儚い触れたら壊れちゃいそうな顔……。
──めっちゃ尊い。
──でもあれきっと天彩さんにだけ向けられる表情だよな。俺たちじゃ無理だ。
──ほーん、じゃあ諦める?
──だからそのための……そうそう……。
####
男子たちはスマホの画面を見せ合い、何かしら会話はしてるけどコソコソと内緒話みたいに声を潜めて聞き取れないじゃん。
……それよりも、なに──え、そんな顔、するの?
──儚い表情。
私に?
サクラの表情を思い浮かべる。出会った当初はムスっとしているというか、何人たりとも近づけないわ! ってオーラをプンプン撒き散らしてた。けど、手をぎゅっと握ってサクラ~! と抱き着いたらあっさり氷解してしまった。今ではちょっと手を握れば【はぁぁぁぁ……レイの指超気持ちいいじゃない~~(*´Д`*)~~!!!!!!】って若干気持ち悪くエクスタシー感じてる。あと、私が意地悪く睨むと負けじと強烈な視線で睨んでくる。もちろん笑顔も知ってる。
喜怒
哀楽
もうサクラの表情なんて全部知っていると思っていたけど、儚い──なんじゃそりゃ。
触れたら壊れちゃいそうな?
ガラス細工、的な表情?
ってか壊れそうって、サクラはもう一度壊れてるでしょ……。だから傷口なぞってあげるとぎゃあぎゃあ内心悲鳴上げながら愉悦感じちゃう子なの。
そうじゃないって。
それは今は置いとこ。
私はもう一度記憶に刻まれたサクラの表情を一つ一つ思い出す。しかし思い当たらない。一体どんな表情なのか──。
男子たちはいつの間にかどうでもいいような会話を繰り広げて馬鹿笑いをしている。私やサクラも登場しない。と、その時ガララ……と扉が開く音が響き、男子たちは硬直した。一瞬みんなペコリと頭を下げて、アイコンタクトで意思疎通した後、そそくさと教室から出て行ってしまった。
誰?
……果たせるかな、サクラだった。
◆◇◆◇
ep.狭間のスマイル・モーメント
01
続く
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