傷を舐め合うJK日常百合物語

八澤

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イカしたゲーム、負けられない戦い 02

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 まずは基礎練習。
 試し打ちモードでひたすら的に向かって攻撃を繰り返す。ゲーム内のキャラの動きを指に馴染ませ、意識せずとも思った通りに動かせるように体に教え込む。
 棒立ちからの攻撃に慣れたら今度は動きながら攻撃し、物陰から飛び出て攻撃する動作も織り交ぜる。独立した個々の動きが流動的に移行できるように何度も練習した。

 一日三〇分以上はみっちり基礎練習を行った。
 続いて、実際に試合に挑み、基礎練習の延長線な感じで対戦相手に向かって攻撃する。止まった的や一定のリズムで動く的と異なり、人間はこちらの狙い通りに動いてくれない。それでも私は攻撃を仕掛けながら、成功と失敗の理由をスマホのメモ帳にひたすら書き込んだ。何故、今攻撃を当てることができたのか、何故、今相手に避けられてしまったのか、その原因を次の場面で活かせるよう1つ1つ書き出して次で活かせるようにした。もちろんその理由が必ずしも正しいとは限らない。その度に試行錯誤の連続だった。

 スプラッシューンには様々な武器がある。色々武器を使いながら各武器の長所と短所を体で理解するよう努めた。例えば、近距離では無類の強さを誇る武器でも少し離れた距離からの攻撃には全く太刀打ちできない。遠距離から広い範囲に攻撃を散らして制圧できる反面、懐に入られるとあっという間にやられてしまう……。などの個性を実際に動かして理解する。すると、試合で相手側の立ち回りを予想できるようになる。この場面でこの武器を持っているとしたら、私ならどう動くか──。その意図を読み取り、有利に立ち回れるように意識する。

 他にも、ネットの動画サイトに無数に上がっている動画を漁り、細かなテクニックや試合での立ち回りを勉強した。いくら反射神経が凄くて精度の高い攻撃ができたとしても、ステージの物陰から襲われたり、仲間と協力して攻めらたりしたら対応できない。武器とステージの構成を考えつつ、立体的な機動で動けるように動画を繰り返し視聴した。また、試合の状況による撤退の判断、ルールによって異なる定石を踏まえつつ、時には果敢に攻めるなど、試合の流れを頭に叩き込む。勝利するために抑えておくべき技術を学び、そしてそれを自分の試合でも活かせるように練習を繰り返す。

 重要なのは、培った技術、知り得た情報を土台にして、自分で理論を構築すること。試合での立ち回りや、攻撃手段などを自分なりに準備した。そして試合を終えて、その理論がどこまで正しいのか、間違っているのかを洗い出し、再び戦術を組み立てた。繰り返すことで、正しい部分とまだ不明確な部分が明確に浮かび上がってくる。それを照らし合わせながら、私のスプラッシューンでの立ち回りを錬精する。

☆★☆★

「あっ、レイ! どうして飛んでくるのよ!」
「え~だってサクラがピンチだと思って」
「ダッシュ持ちの武器ならともかく、無防備に飛んできたら餌食になるだけでしょ! って、ほら~」
「あぅ……ごめんちゃい」

 レイが操るキャラクターはステージに大ジャンプして戻ってくるも、その位置を狙い撃ちしていた相手に狙撃され、またスタート地点に戻ってしまう。
 レイはテヘ♪ って舌を覗かせながら謝る。可愛い。許さな許すい~や許さないダメやっぱ許す! 可愛いは正義。

「レイが居ないから3対4の状況は変わらずなのよ」
「サクラ私の分も頑張って」
「いい、このゲームは4人で1つのチームなの。チームワークというより、戦力を四人で合計していると考えて……」
「四人で、合計?」
「例えば1人欠けただけで単純に考えて25%の戦力ダウン。3人では実力が拮抗したランク戦なんだからまず突破される。如何にして戦力を維持しながら相手を切り崩し、または崩れた戦力を立て直せるか、その判断が鍵なの」
「でも……今のサクラは私の分を補うみたいにバッタバッタと敵を倒してるよ」

 それは、相手が弱いから──。
 これみよがしに潜んでいる箇所にボムを投げる。慌てて飛び出てきた相手を追い詰め倒す。真横から攻撃されたのでカウンターでスペシャルを発動。咄嗟に避けられはしたけど、逃げる方向は1つだけよ。ダッシュで先回りして撃ち抜いた。その間にオブジェクトを味方に譲り、防御しながら道を切り開く。残った二匹が群がってくるけど、敢えてオブジェクトを持つ味方を餌にして、相手の動きを単純化させることで簡単に返り討ち。

「わぁ! すっごい! もう勝った!」
「ふぅ、今回は相手が体勢を立て直す隙を付けたからね。毎回こう簡単には勝てないわよ」

 重々しいため息と共に、コントローラーを床に置く。
 脱力しながら、今の試合での反省点を頭の中で並べた。特に、レイのフォローしながらの立ち回りは我ながら自画自賛したいけど、それ故に慎重に成らざるを得ないところが見受けられ、覚えているだけでも二回は確実に倒せる相手を取り逃がした。エイムのブレも焦ると出てきちゃう。相手と対面した瞬間に一番冷静になれるように。普段の練習なら絶対に外さない距離なんだから、練習と思って腕を締め、太ももにコントローラーを当て精度を高め「サクラ~~?」

「な……に?」
「急にブツブツ言い始めたから怖いよ」

 レイが目の前で私を覗き込んでいる。
 ──今になって、レイの匂いや仄かに漂う体温を感じた。こんなにも接近されてレイに気づかないなんて……と自らの集中力を呪うわ。
 ってかそんな独り言をしていたの?

「反省を、していたの」
「今の試合?」
「えぇ」
「レイの大活躍で大勝利できたじゃない! レイに大感謝! って?」
「……そう、です」
「ちょっとぉ、めんどうくせぇ……って顔して流すな~」
「ほら、次の試合しないの?」

 レイは「ううん」と首を横に振り、「疲れたからサクラの闘い眺めてるよ」
 床に座る私の足の間にレイは強引に入り込む。座椅子に座る感じで私にもたれる。
 私の両手を掴むと、レイの胸を交差する感じで前に引っ張られる。

「私の前に手を伸ばして、はいピコピコしていいよ」
「邪魔なんだけど」
「ほら、私のおっぱいに腕を置いていいから」「痴女」「だってサクラが触りたそうな顔してるんだもん」「してない! ってか自分のあるし」
「私の方が大きい!」
「いや……まぁそうだけど、うん……始まるから静かに……。邪魔したら、このまま背後から首締めるから」
「はーい」
「あら、素直ね」「サクラちゃんマジで締めてくるからな~」

 クッションを背当てにしながら、レイを受け入れる。レイはだらしなく足を投げ出し、ちょうど私の胸が後頭部に当たるような位置で私に体重を預けてきた。レイの皮膚ではない部分は普通に温かい。その温もりを感じながら、ソロでランク戦に挑む。
 当初はレイに遅れを取っていた私だったけど、地道な努力が実を結び、現在はレイと同等の実力がある。

「お、サクラ強い! む、今だスペシャル発射! ……しないの! あそこに敵隠れてるぞ!GOGOGO!」
「スペシャルは温存してるの。今こっちが有利なんだから相手が打開を図ってきた時の対抗策。隠れてるのも知ってるし……あ、きたきた」
「はぁ、私がせっかくアドバイスしてあげてるのに……」

 今後は黙り始めた。が、ぐるっと私の胸の中で体を反転させると、私を下から突き上げるようにじっと睨んでくる……。視界に入れなくても、雰囲気というか、レイの大きな瞳がギョロギョロと蠢いて私を観察しているのがわかってしまう。
 ……集中できない。

「何?」
「サクラがどんな顔しながらゲームしてるのか観察中」
「気が散るから辞めて」
「ふふっ、顔が赤くなってる……ぎゃっ」

 私はコントローラーを持つ両手でレイの顔をぐっと胸に押し付け、自らの胸に抑え込む。これでレイの卑しい視線から逃れられる──。

「苦しい~」
「終わるまで大人しくしてなさい」
「なんで? 私に見つめられるとドキドキしちゃう?」「集中できないの」「なるほど発情する、と」「ちげぇって──あぁ、もう、なんでやられてるの!」

 一瞬レイに気を取られ、横から忍び寄ってきた相手に倒されてしまった。集中できていれば反撃できたのに……。

「おぉ、ドッキン! って心臓が唸った」
「やられたから」
「凄い、サクラは心臓で実況してくれるんだね」

 今度はぎゅっと顔を私の胸に押し付けてくる。感触を楽しむように……。文句の一つでも言いたいところだけど、「だってサクラはいっつも私の胸に顔を押し付けてくるじゃん!」って反撃されてしまう。まぁ、一緒に寝る時は……偶然、たまたま、目の前に柔らかそうな物体あるので寝ぼけて感触を楽しんでしまうわけで……仕方ないの──。

 不意にレイの感触が脳裏に蘇る。匂いとか、ドキドキと胸を鳴らしながらレイを味わう記憶の再生が止まらない。私が胸に抱きつくと、レイは寝ぼけているのか、それとも全部わかっているのか、どちらかは知らないけど、ぎゅっと抱きしめてくれるのよ。それが、本当に気持ち良い──。

「おぉ、ドキドキが強くなってきた。今ヤバイ?」
「えぇ……押されてる、かも」
「ふうん」

 スカートから伸びる私の太ももをレイは撫でながらクスクスと笑う。スリスリと手のひらで擦られるとぴりっと感触が響く。この子、なんで指先は冷たいのよ。寒気とむず痒くなる感触に襲われながら、どうにかオブジェクトを移動しようとする相手を倒す。

「レイ、変なとこ触らないで」
「ねぇねぇ心臓が更にうるさくなってるよ!」
「今、いいところ……だから……うぅ」

 レイは完全に反転して、私に正面から抱きついてきた。レイの柔らかい四肢がずぶっと私の体に食い込む。ぎゅぅぅ……と腰に回された手が締め付けられ、レイとの密着が強まる。私の心臓の音を直に聴かれ、引き剥がしたいけど今コントローラーから手を離すわけにはいかない。

「あと、あと少し──」
「サクラ?」「ん?」「眠たくなったからこのまま寝ちゃうね……。終わったら起こして」
「ちょっと……もう」

 心臓の音がうるさいんじゃないの?
 って言いたいけど、こうしてレイに抱き着かれるのは正直……心地良い。
 すぅ~はぁ~とレイの寝息っぽい呼吸を聞いていると、私も眠くなってきたじゃない。今日はお泊りしない日なんだから、どちらかが起きていないといけないのに……。

 試合には勝った。
 脱力しながらクッションに倒れ込む。私の体が伸びると、レイは私のお腹に顔を預ける感じで眠っている。本当に眠ってるの? と頬を軽く抓るけど反応無しね。

 レイの幸せそうな寝顔をしばらく眺めた後、ゲーム画面を見やる。ランクは上がり、そろそろ中級から上級に入ろうとしている。さらなる強敵が私を待ち受けている。……けど、負けない。そして上級ランクから上位5%だけの強者だけが入ることを許されるX(エックス)ランクに入ってやる! と野望を抱いた。

 ……さて、試合も勝ったし、レイも寝ているから──と、私はレイを起こさないように体の位置を下げて、レイの胸に抱きつくような位置を取る。さっき散々いじられたんだから、そのお返しをしても許される気がする、と勝手に理屈が組み上がる。そっとレイを抱きしめる。柔らかいわ……。はぁ、と思わず深呼吸をしてしまう。レイの中に埋まりながら、勝利の余韻を味わっていた。

☆★☆★


//続く
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