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靴擦れ、おんぶ
しおりを挟むレイは朝からご機嫌だった。
タタタンッ! と小気味良いリズムを交えて私の周りで跳ね回る。普段からニコニコ微笑ましくて喧しいけど、今日はそれとは別の雰囲気を醸している。
何かあったのか……。
まぁ、どうせ嬉々として理由を私に語るはず。ただ、どうしたの? と声をかけた瞬間待ってましたと言わんばかりにドヤ顔で喋る姿は無駄に苛つく。可愛いけどね――。
「はぁ……サクラ」
放課後の帰り道──。
レイがくまたんについて語る最中、不意に私の名を呼ぶ。くまたんの新商品発表が答えね──と推察していたのに決め手となる情報が手に入らないわね……と考え中だったので「ふぇ?」と変な声を出してしまった。
「私の話聞いてないでしょ」
「訊いてるわよ。今度くまたんがカレー屋さんとコラボするんでしょ。でもコラボグッズなどは無しで、あくまで宣伝としてのコラボ。一ファンから見ると最近色々と生き急いでいる感があるのでもう少しどっしり構えて展開して欲しい。……うっわ、めんどくさいファン」
「くまたんは次なる段階へと大きく飛躍できるポテンシャルを秘めてるの。だからこんなところで焦って潰れてもらっちゃ困るんだよ。しかしそれでもコラボは嬉しい」
「そう。……で。この話題、今日だけで五回目なのでこれ以上広げなくていいわ」
くまたんの話題ではない、と。
レイは別に苛立っているわけじゃないけど、チラチラ私の反応を伺っている。嗚呼面倒くさい……と思いつつ「どうしたの? なんか今日テンション高いけど」と観念して訊いた。ここで消化しておかないと明日までもつれ込む。
「ふふっ、よくぞ訊いてくれました!」
「何かあったの?」
「……わからない?」
「うん」
「はぁ、観察力不足――。これだからサクラさんは──」
やれやれと憎たらしい顔で首を振る。
「くまたんの新商品が発売された」「違う」「今日茶柱が立った」「お茶買ったけどペットボトルに茶柱ない」「お金を拾った」「交番に届ける」「あら、いい子ね」「もしもそのままパクった姿を誰かに見られて脅されたらと思うと怖くてさ」「動機が不純!」
「ってか、ホントにわかんない?」
「……髪切った?」これは百%ありえない、と確信しながらも訊いた。だって私は毎日レイを見ている。レイの姿が常に瞳に浮かんでいる。もしも『美容院に行った』と言うだけのために前髪を数センチカットしたとしても、絶対に気づく自信がある。
「ううん……。ま、教えてあげよっかな――まだ考える?」「早く教えろ」
投げやりに答えると、レイは傷付いた顔を晒しながらも、人差し指で自分の足元を指差す。
その先を視線で追いかけるけど、もちろん地面だ。歩道をカラフルなアスファルトが覆っている。
「ごめん、わかんない」
「買ったの」
「何を?」「靴、ローファー」
あぁ、ホントだ、色が、変わっている、わね。
レイはそれを誇示するようにくるくると周り、たたたんッ! と足でリズムを刻んだ。
「ねぇ私お腹空いちゃって。ハンバーガー食べない?」
「リアクション無し!」
「だってたかが靴じゃない。色が違うけど、ベージュもいいんじゃない? 似合うわ。カワイイカワイイ」
「これほど感情の篭っていないカワイイは初めて訊いたよ」
可愛い、は本当だった。まぁ靴がってより、レイが、だけどね。絶対に言わないけど。調子乗るから。
「前のは? 汚れたの?」
「うん、雨の中履いてその後放置したらね……。ずっと買おう買おうと思ってて、でも家帰ると忘れてさ。ようやくどうにか購入できました」
「はいはい、おめでと。で、どこ行く? 駅前の新しいところでいいかしら? 綺麗で、この時間帯だったら余裕で座れそうじゃない」
「……無理」
普段ならいくいく! と返事するレイなのに、何故か神妙な面持ちで首を横に降った。
「なんか予定あるの?」
「ううん、別に無いけど」
「ハンバーガーが嫌? それなら駅前、あの地下のカラオケで……」
「それも無理」
先程までとは打って変わってレイは静かになり、私の提案を拒否する。むっと唇を結び、私を……睨んでいる。
何故? と困惑した。
ふざけているとは思えない。そういった雰囲気が感じ取れないから――。
「レイ?」
「サクラ、サクラ……こっち来て……」
レイは顔に脂汗を浮かべながら、私を手招きする。深刻そうな顔に――でもまた悪ふざけかもしれないわ、と警戒しながら近寄る。
「今日は、帰るの? ……体の具合でも悪いとか?」
「動けない」
「……は?」
「さっき、ジャンプしたじゃん……。その時に踵に張っていた絆創膏が取れちゃったみたいで……うぅぅ……」
「……えっと、ごめん意味不明なんだけど」
「つまり――」
靴を早く買わなければ……というストレスからも解放されて意気揚々のレイだったけど、新品の靴故に靴ずれが発生した。しかも両足の踵と親指に。午前中はどうにか我慢できたけど、午後からは歩くたびに踵の皮膚をスライスされるような痛みに襲われた。絆創膏を貼ったことでどうにか収まった。
が、先程ジャンプした衝撃で両足の踵に貼ってある絆創膏が剥がれてしまったらしい。
「動けないよぉ」
「大袈裟なんだから。とりあえず、私先行って席取ってるからね」
「酷い! 悪魔! 私を見捨てないで!」
「冗談よ。ってかホントに動けないの? ほら、レイ……」
私が手を掴んで歩かせると「ひぎぃ!」とレイは声を洩らす。反射的な声と、瞳に溜まる涙から本気で痛がっている。レイの小動物的な愛らしさに、ぞくっとした。可愛い……と思うと、レイは怯え、その表情が曇る。私は若干の悦びを覚えつつ、「とりあえず一旦あのベンチまで向かいましょう」と促した。レイは無理やり引きずろうとする私を恐れるような目つきで睨むも、素直に従う。
住宅街の一本道だけど、少し進むと小さな公園があった。人気は無く、古ぼけたベンチとブランコだけの寂しい公園だった。なんかノスタルジーな雰囲気を味わえる。私はレイを支えながら、一歩一歩踏みしめるようにしてベンチに辿り着いた。
「はぁぁ……。めっちゃ痛い……」
「とりあえず、脱いで」「……こ、ここで?」「靴をよ! 何で顔赤くなってんの!」「唐突だからちょっとびっくりしちゃった」
「馬鹿。……両足?」
「うん……いた……た……うへぇ……ぃえ……がっ、がっ、がっ!」
レイは顔を歪め、奇声を発しながらゆっくりと靴を脱ぎ捨て、これまた顔をしかめながら靴下をくるくると私を焦らすように丁寧にゆっくりと後少しもうちょっとで……早く脱げ。
「うわぁ、赤い、ねぇ、めっちゃ赤くない?」
「これは……想像以上」
その傷を見て、思わず声を失ってしまう。何度も擦れたことで皮膚が円状に削げ、剥き出しとなった部分がピンク色に変色していた。見ているだけでびりびり痺れるような痛みに襲われる。鮮やかな色合に、視線が剥がせない。何故か見入ってしまう。レイの傷のはずなのに、まるで私の――。
「サクラ……舐めろ。ほら、ペロペロして」
「アホか。自分で舐めろ」
「だって顔届かないもん」「もんじゃないわよ」「はぁ、サクラだったら喜んで舐めそうだと思ったのになぁ」
意味不明なことを言うな。
……と思ったけど、レイの言葉に触発されて、私がレイの足を舐めるシーンを悶々と思い浮かべてしまう。レイは、今みたいにふやけた顔じゃなくて、私を嘲笑うような――時折私を見下すあの表情を浮かべて、私に足を差し出す。私は、その艶やかな足を……。
「……何?」「ベンチお尻冷えるから、サクラの温度が欲しい」
すぐ手を握ってくる……。すりすりと、私の傷を擽るようにして。不快よ。レイ。……私はその手を振り払い、レイを拒絶するように腕を組み、「確かにこれじゃあ歩けないわね」と話を逸らすために話題を戻した。
「サクラ~」
「今度は何?」
「おんぶ~」
「無理」
「サクラならできるよ」「レイ、重いし」「軽いよ。サクラよりも……色々な意味で」「どいうこと?」「気にしないで。だけどいつまでもここに居るわけにもいかないし、ねぇ、コンビニまでお願い。そこで絆創膏買うからさ」
「まぁ、それなら……」
距離は百メートルほど。
途中に交差点も無く、平坦な住宅街を抜けた先にポツンと小さなコンビニがある。飲食ができる椅子とテーブルが備え付けられ、私たちはよくそこで時間を潰していた。
「え、いいの?」
「あのくらいなら……」「大丈夫?」「えぇ、全く感謝しなさいよ」「えへへ、ありがとサクラ」
私はレイの前にしゃがみこんだ。一拍間を置いて、そっと私の肩にレイの指がかかる。そのまま私の体に凭れる張り付いてきた。レイの、感触が背中に響き渡る。……レイの家に泊まり、一緒のベッドで眠る時、レイが背中に張り付いてくることがある。……いつもドキドキしちゃう。もちろん今も。──って、いやいやいくらなんでも節操無さ過ぎじゃない? なんか自分が滑稽で自己嫌悪。
レイに気づかれないように、私はふぅ……と深呼吸をして、落ち着けと自己暗示をする。私の両腰に当てられたレイの腕を挟むように押さえ込み、一、二の……三! で立ち上がる!
しかし、レイを背負った途端、ずっしりと背にのしかかる感触に「ふあっ」と不可思議な声が私の口から自然と漏れた。想像以上に、重い……というか、バランスが……保てないじゃない。
「ふらふらしてるよ。あ、足! もっとちゃんと持って」
「レイが動くからずり落ち……あっと!」
「──はぎゃっ!?」
「危なかった……」「こっちの台詞だよ! う、わ、わ、わ~! 落ちる落ちる降ろして~」「コンビニまで行くんでしょ」「いや無理! サクラぷるぷるしてるし、ダメ、ホント落ちてもっと酷い怪我負いたくないよぉ!」
「あ、暴れないでって……。もう~、人の善意を……」
せっかく背負って上げたのに、レイはぶつくさ文句垂れるので降ろした。私の背中から消えるレイの感触に後ろ髪を引かれる想いに駆られた。ぺりぺりと背中の表面の皮まで引き剥がされる感覚だった。レイはそのまま倒れるようにベンチに座る。
「サクラまで足捻って怪我したら申し訳ないし」
「もうコンビニまで踵踏んづけて向かったら?」
「イヤ! 買ったばかりだよ」
「じゃあ裸足」「足の裏ボロボロになる」「穴がいくつか開く程度よ」「私、傷に耐性ないから絶対に無理」
レイはてこでも動かない、と言った素振りを魅せる。
「じゃあ今度こそ置いてくわよ」
「サクラ、絆創膏……買ってきて、ください」レイは弱々しい表情で──見え透いた演技で懇願してくる。「もうサクラしか頼る人いないの……。せっかく購入したローファーの踵を見窄らしく凹ませて、サクラも何だか申し訳ないわ~と思うでしょ?」
「別に」
「嘘、サクラ顔にすーぐ出るから。あぁ、レイが可哀想で仕方ないじゃない。是非、レイのために私がひとっ走り買ってくるじゃない、ってうずうずしてる……あぁ~ウソウソ、サクラ様~帰らないでぇ~」
「うずうずしてないけど、これ以上付き合うの疲れるから、買ってきてあげるわ」
「ふふっ、ちょろいぜ」うひひ、と笑いながらレイは呟く。
「聴こえてるんだけど」
「あらら、心を読まれた? まさか、そういう能力持ち?」
「で、絆創膏でいいの?」
「イエス! サクラ~よろしくね~、あとコーンスープも、もちろん、ホット~! あとあと~」
私の背後で他にも無数に注文を投げている気がしたけど、聴こえなかったフリをしてコンビニへ向かった。そっと振り返ると、レイは満面の笑みで手を振ってる。まるで私が振り返るのを予想していたかのように。私の行動を見透かされていたことに対する若干の苛立ち、そして仄かな安心感を覚えて──いや、なんでよ! と自分に突っ込む。
コンビニに入り、絆創膏を見つけ、あと……コーンスープ、だっけ? を探した。なんか不思議な感じ。味気ないコンビニのはずなのに、妙な違和感を覚えて、……レイか、と答えに辿り着く。一人でこのコンビニに入るのは、初めてだった。いつもレイと一緒だから。もちろんレイが学校を休み、一人で下校することだってこの一年で一度や二度はある。けど、そういう時、私は道草を食わずに真っ直ぐ帰宅した。
ホット飲料水のコーナーを見つけ、そっとコーンスープを手に取る。じんわりと熱が指に伝わる。私よりも冷たいレイが触れたら、火傷しちゃいそうで、でもそんなことありえない、はず。最近理解してきたけど、実はそこまでレイは冷たくない。ただ触れると妙な寒気を感じてしまうだけ。
他に何か注文を受けていたような気がする。もっとしっかり訊いておけば良かった。レイを驚かせて、ありがとうサクラ! とレイの感謝で彩られる笑みを浮かべた。……可愛いのよ、レイは。認めるのはなんか腹立つけど、本当に……。
駄菓子コーナーでくまたんキーホルダーがオマケで付属するチョコを見つけた。他県のご当地ゆるキャラに押され気味……とレイは嘆いていたけど、意外と要領良く商品展開している気がする。すぐコラボするから一部でコラボ◯ッチなんて呼ばれてるとも訊いたわ。まぁグッズが増えるから嬉しいけど、ファン的には今後が不安だとか。……どうでもいい知識が増えてる。
コンビニを出て、私は早足でレイの下に向かった。途端に嫌な想像が脳裏を過ぎる。レイは今、一人で公園のベンチに座っている。――歩けない状態で。つまり、誰かに声をかけられても逃げることは不可能だった。あの姿、男の子だったらふと声をかけたくなるような愛らしさに満ち溢れているじゃない。どうして私はそのこと気付かず、早くレイの下に戻らなかったのよ、と後悔と自責の念に襲われた。
が、レイは公園のベンチに一人ポツンと座っていた。惚けた顔でスマホを眺めている。良かった、と胸をなでおろしながら、その美麗な容姿に思わず見惚れる。普段の飄々と私を小馬鹿にする愛嬌たっぷりの表情とは異なる、冷めた顔。……あんな顔もするのね、と私は私の知らないレイの姿に慄いた。早くレイの下に向かわなければならないのに、足が……動かない。レイを俯瞰して眺めてみたい、という不可思議な欲求が私の足を留める。
でも、ふとスマホから顔を上げたレイと目が合ってしまう。途端に、レイの表情がとろりと蕩けるように移り変わり、私に向かって手を大きく振る。普段のレイだ。サクラ~と喧しく叫ぶレイに戻り、安心感を覚えた。
「おまたせ」
「早く……ブツをよこせ……足が……限界……舐めて」
「舐めさせる件はもういいから」
「じゃあ貼ってください。私が足をこうして戻すと……その、パンツ見えちゃう。見たい?」
「……足、出して」
「は~い」
レイは片足をピンと伸ばす。しなやかな筋肉を纏う、運動とは無縁の私の足とは異なる形、だった。
「カモシカのよう?」「――カモシカって実物は結構太ましいのよ」「え、嘘! でも可愛ければいいかな」「とにかく、貼るからじっとして」「よろしく!」
絆創膏をレイの踵にそっと貼り付ける。「いっ」「ごめん」「たくなかった~。あわわわ、サクラ怖い目で睨まないでよ」「いちいち脅かすな。さ、残りの足も」「すまないねぇ」
もう片方も張り終えると、レイはいそいそとソックスを履き、靴に足を差し込んだ。そのまま立ち上がり――「痛くない!」「そう」「はぁ、サクラ助かったよ~。ありがとうね」
「わかったから抱きつくな」
くっついてくるレイを引き剥がすと、「あ、コーンスープは?」と問う。……問いながら袋から探し当て、「暖かい……。温もりを与えてくれながらも喉を潤してくれる、コーンスープは最高だよね」
「喉は潤わんでしょ」
「でも、あち……。少し覚ましてから飲もう」
レイはコートのポケットに無理やり突っ込むと、今度はまた私の手を握る。
「はいはい、なんですか」
「やっぱりサクラの温もりがちょうどいいの。ベスト! 癒される」
「人をホッカイロ代わりにしないでよ」
「ねぇ、他になんか……あ、うそ! これ買ってきてくれたの?」
渡そうと思ったのに、私の背後で隠すように持っていたビニール袋から、くまたんキーホルダー付きのチョコを奪われてしまった。本当は後で渡して驚かせようと思ったのに、まぁ喜んでいるからいいか。
「くまたんだったから、ついでにね」
「うわ、しかもこれ最近集めたばかりで……ね、ね開けていい?」「どうぞ」「誰が出るかな」「くまたんでしょ」「くまたんはそれぞれ別の個体があるんだよ」「……そうなの?」「適当に言った」「少し考えてから口開け」「やった! これまだ持ってない……嘘、しかもシークレット! 凄いすご~い! さすがサクラ!」
「そうやってジャンプすると」
レイはぴょんと飛び跳ね、着地した瞬間大きく目を見開いて硬直した。
「取れたの?」
「強く、押し込まれるように、擦れた、だけ……いたい……いたいよ……サクラ……」
「わかったから、さ、ハンバーガー食べに行きましょう」
「うん……」
レイはそっと手を伸ばしてくる。
「何?」「まだ上手く歩けないから、手をつないでいい?」「……肩を貸すとかなわかるけど、どうして手?」
「倒れた時にサクラを道連れにできるから……」
「先、行くわ」
「嘘! ゆっくり歩かないとまた取れちゃうから、私にペース合わせるため、だよ」
微笑みながらレイは答える。
ペースを合わせるため……は多分本当なんだろうけど、それ以上の企みが含まれている気がした。
けど、私はレイの手を握ることにした。
//終
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