55 / 67
愛撫
1
しおりを挟む警察署での事情聴取は、彰人の体調も鑑みて短時間で終わり6人はすぐに宿に戻れることになった
「おかえりなさい!!」
6人が宿に戻ると、福部により事前に連絡を受けていたサークル員が玄関に集まっていた
大勢に出迎えられた彰人は、再び植え付けられたトラウマのせいでびくりと震え須田の大きな背中に隠れるように捕まった
「大丈夫、俺がいる」
頭を撫でながらそう言われても、恐怖心は抜けず小さく縮こまっていた
「山本、疲れたでしょう……少し部屋で休んでおいで?」
福部が優しくそう声をかけても、Domである彼を怖がり喉の奥でひゅっと息を吸い込みぶるぶると震えていた
「山本?俺ら先に飯食ってるから少し休んだらおいでな?」
それならSubの俺がと沢井が声を掛けても、同じように震えるばかりで須田の背中から出てこようとはしなかった
須田は福部や沢井と顔を合わして首を振ると、その場に集まっていた学生達を引き連れて大広間の方へ移動していった
「もう大丈夫、俺らしかいないよ」
そう言って背中側にいる彰人を自分の体の前に移動させて抱き締めると、そろりと背中に腕を巻き付け返してくれた
「とりあえず、部屋行って風呂入ろっか」
宿の主人の計らいで1階にある露天風呂付きの部屋に2人だけ移動させてもらったことを聞いていたため、そのまま彰人のことを抱っこして玄関から移動した
「なぁ、彰人……一緒に入っていいか?俺も汗流したい」
なんとなく1人にするのが不安でそう声をかけると、左手についたままのベルトを服の上からぎゅっと掴むのが見えた
「彰人、Come」
優しくそう呼びかけると、訓練していた時と同じようにすぐに目の前に移動してきた
「GoodBoy、一緒に入っていい?」
抱きしめながら再びそう聞くと、腕の中でこくんと頷くのを感じた
そのまま2人で露天風呂の方に移動すると、小さな民宿とは思えないほど立派な温泉があった
「すげぇな」
「う、ん……」
思わず感嘆の声をあげると、横にいた彰人も小さく頷いていた
備え付きのシャワーで、汗や海水を流すためにお湯を浴びると日焼けをした肌にピリピリとお湯が染みた
横に座り同じようにシャワーを浴びる彰人を見ると、ボディーソープをタオルに出して、体を擦り始めたのが見えた
最初は弱い力だったものが、まるで翔達に触れられた皮を全て剥がそうとしているかのような強さで擦り始めたのを見て慌てて擦っていた腕を掴んだ
「彰人!そんなに強く擦んな!」
「……っ!!やだ!汚いもん!!」
震える声で叫ぶ彰人のことを須田は掴んだ腕を離さずにそのまま抱きしめた
0
お気に入りに追加
219
あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。


百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。


ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる