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金木犀

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苦痛

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須田たちは上條の提案通りサークル員が遊んでいる場所に戻ると、それぞれ山本を見てないか聴き始めた

「見てないなぁ……」

「ごめん、ブルーシートのとこで見たっきりだ」

口々に見てないという部員たちを目にして、須田はいよいよ絶望感で思考が回らなくなる

「一旦落ち着こう、須田」

「落ち着いてられるかよ!!あいつ絶対危険な目に遭ってる!早く見つけてやらねぇと!!」

普段にこやかな須田からは考えられないほど大きな声で怒鳴ると、その場にいたSub全員が硬直したようにその場に立ちすくんだ

「須田!!」

福部も大きな声でそう名前を呼ぶと、その場から須田を離すために腕を掴み歩き始めた

残された上條や他のDomの学生でCareを行うとすぐに全員が元の状態に戻りはしたものの、DomのDefence防御姿勢は周りに与える影響が大きかった

「この場にいるSub全員をDropさせるつもり?」

離れた場所に移動した後、福部は唸るように須田にそう言った

「そんなつもりはねぇけど、悠長なこと言ってられる状況じゃねぇだろ?!」

須田も怒鳴り返すと、細身な福部からは想像しないほど強い力で肩を掴まれた

「山本のことを探さないなんて言ってない!須田が焦って周りDropさせたらCareするのに余計時間がかかるでしょう!クレバーになりなよ!」

敢えて福部は須田に対してGlare視線をぶつけると、焦りで周りが見えなくなっていたことに無理やり気付かされた

「この辺は車でもない限りそんな遠くには行けない、でも基本この海に来てるのは観光客だし近くの民宿に宿泊している人も多いから遠くにいってるとはあんまり思えない。警察に連絡とそれから俺たち自身での捜索、まずはこれをしないと」

焦りは滲んでいるが、冷静さを失わない福部の言葉で徐々にクールダウンし始め思考が回るようになるのを須田は感じた

落ち着きを取り戻したことを察してみんなのところに戻ろうとした時だった

「あのー……すみません」

突如声をかけてきたのは、須田たちと同じように遊びにきたであろう大学生くらいのカップルだった

「はい?」

かけられた声に応えると、彼氏の方が何やらパーカーを差し出してきた

「すみません、話聞こえちゃって……このパーカー来てた子と知り合いですか?」

そう言われて視線を下に向けると、一緒に海に入ったあの子が来ていたパーカーだった

「っ?!これどこで!」

「実は40分くらい前にあそこの海の家の脇で何人かDomの子に囲まれてるSubっぽい男の子が落として行って……西の方の案内所に一応届けたんすけど、さっき話聴こえて持ってきたんです」

「あ、あの!!その子たちあっちの民宿の方に歩いて行ったので……」

彼女の方が、指差した方向にあったのは、自分達が宿泊している場所だった

「っ……ありがとうございます!!」

須田はパーカーを受け取りそういうと、脇目も振らず民宿の方へ走って行った
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