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夏合宿
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しおりを挟む彰人がパニックになった日から、もともと周りから見て過保護気味だった2人の関係はより深くなり、本人同士も若干やりすぎなのでは、と思うような関係になった
「須田、最近山本のことずっと膝に乗っけてるね」
福部は、何やら動画を見ていた携帯から顔を開げ、須田の膝に乗っている彰人のことを見ながらそう笑った
「ほっとけぇ?いーっしょ、別に」
ぶっきらぼうに須田がそう返すと、緩く抱きしめていた腕に少し力が入るのがわかった
「暑くないんですか?もう7月入りましたけど」
年中気だるそうにしている上條は、いよいよ夏本番という気温により一層だるそうにソファで寛いでいた
「いやここエアコンかかってるしそんなにじゃね?あ、暑い?」
自分よりも彰人の意見という感じで、膝に乗る彰人にそう声をかけると、くっついてる安心感で眠気を誘われていた本人は驚いた猫のような丸い目で何事かと聞き返した
「暑くない?くっついてるの」
「ううん、暑くない。それより、重くない?」
「いんや?重くない」
出会って3ヶ月の間で急激に距離が近くなった2人のことを、他のサークルメンバーは多少の驚きもありつつ見守っていた
「おつかれっすー。まぁじで、今日暑い」
講義終わりの沢井がTシャツの襟元で仰ぎながら部屋に入ってきた
「上條ー、そこ貸してー」
エアコン直下の特等席であるソファに近寄りながらそういうと、上條は寝転んでいた体を起こして後から来たパートナーに席を譲った
「薄着でエアコン当たると風邪ひくで?」
そう言いながら自分の薄手のパーカーを沢井の肩に羽織らせると、かけられた本人は満足そうに上條の横に腰を落とした
少しすると河野も講義を終えてやってきて、お決まりの窓側の席に腰を据えると、読みかけの小説をカバンから出して読み始めた
「暑くなかった?」
「ん、寒いよりいいかな」
福部は横に座るパートナーに声をかけながら癖っ毛の髪に触れると、甘えるように手のひらに少しだけ頭を寄せた
「あ、ところでさ」
その後も何人かサークルメンバーが部屋を訪れ、ボードゲームに興じていると、ソファで休んで回復したのか沢井はどこからか出したお菓子を食べながら机のほうに寄ってきた
「今年も夏合宿やろうと思うんだけど、どう?」
「夏合宿?」
唐突に発表されたイベントに驚き須田の顔を見上げると、補足のために口を開いてくれた
「あー、去年の夏に民宿に希望者みんなで泊まって3泊4日で旅行に行ったんよ、去年天気良かったしBBQとか海とか結構楽しかったもんな」
須田のその言葉で、経験者たちは昨年のことを思い出し、新入部員たちは興味津々の様子だった
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