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訓練
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しおりを挟む「なーに彰人、顔真っ赤にして。恥ずかしかったん?お子ちゃまだなぁ!」
少しだけ暗い雰囲気を紛らわすように、須田は赤みの取れない顔をする彰人のこと茶化すと
「……っ!だって!」
お子様扱いに憤慨して頬を膨らましながら抗議すると、けらけらと笑い声を上げながら頭を撫でられた
「ちょっと!須田さん、子ども扱いしないでってば!」
抗議後もなお続ける須田に噛み付くようにそういうと、少しだけ驚いた表情を見せた
「そっちの方がいいな」
「え?」
「ん?いやー、彰人ずっと敬語で俺たちと話すからさ、今みたいに砕けた感じで話してくれた方がいいなーって」
先程までの茶化すための笑みではなく、純粋に嬉しそうに笑う須田の顔を見て今度は別の意味で照れて顔が赤くなる
「あの、えっと……がんばりま……頑張るね?」
敬語を使わないは使わないで緊張して何故か疑問系になりつつも返事をすると笑いながら再び撫でてくれた
「……ん、あれ?みんな来てたの?」
話し声に気がついたのか、河野も起き上がって少しだけ寝癖のついた髪のまま眠そうに目を擦っていた
「あれ、起きたの拓哉」
福部が膝から起き上がったパートナーに声をかけると河野は小さくあくびを漏らしながら頷いた
「ふぁ……うん」
少しだけぼんやりとしながら座っている河野に、福部は須田から受け取った飲み物を渡した
「須田達が買ってくれたんだよ」
「あれ……ありがとう、ごめんね」
福部から受け取りながら河野は礼を述べると、早速蓋を開けてお茶を飲み、再び福部の膝に戻っていった
「みんな疲れてそうだし今日はのんびりして解散しよっか」
河野や沢井がCareを受けた直後ということもあり、休ませるためにと福部が提案をするとその場にいた全員が頷いた
沢井も起こしていた体を上條の膝に横にすると、静かに目を閉じた
「しんどかったら一緒に帰るで?」
頭を撫でながら上條がそういうと、沢井は目を閉じたまま膝の上で首を振った
「ん……」
その様子に上條は短く返事をすると、そのままスマホを取り出し枕となっていた
彰人はその様子を見ていて、信頼し合うパートナーがいる羨ましさのようなものを感じた
須田は常に彰人に気を遣ってくれており、何かあればすぐに護ってくれる存在ではあるものの、どうしてもまだ心の底から信頼しているかと言われると引っかかるものがあった
「彰人?」
「なん……なぁに?」
「こっちおいで」
須田から声をかけられて振り向くと、彼は自分の膝を軽く叩きながら手招きした
前みたいに抱っこするのかと思って近寄って行き膝に座ると少しだけ驚いた顔をしたため、意図していたのが違った行動なのだと気が付き慌てて降りようとしたが、一度乗ってしまった体を抱きしめられ動けなくなる
「膝枕俺もしてぇなって思ったけどこっちの方がいいわ」
口角を緩ませながらそういうと彰人の肩に顔を埋めるように抱きしめられ、首に触れる須田の髪の毛がくすぐったくあったがそのまま体重を預けるように目を閉じた
全員が静かに過ごすサークル室には、誰かが持ってきた風鈴の音と一緒に、6月中旬の初夏の風が流れていた
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