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訓練
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しおりを挟むゲームサークルのメンバーと出会ってから2ヶ月が経った
ほぼ毎日講義室とサークル室を行き来する生活にも慣れ、人と関わることが少しずつ怖く無くなってきた彰人は、学科の人たちとも入学当初に比べると話せるようになってきた
「へぇ、山本ってゲームサークルなんだ!」
「人数多い割にサークル費ないって聞いたんだけど何してるの?」
講義が始まるまで近くに座っていた同級生たちと、自分が入っているサークルについて話していると、興味を持った何人かにそう質問された
「んー、名前の通りゲームしてることが多いかも、ボードゲームとかたまにクイズもしてるよ」
講義のないほとんどの時間をそこで費やしている彰人は、日々の活動を思い出しながらそう答えた
「マジでそれだけ?退屈しない?」
「全然しないかも、みんな好きなことやってるし、ゲームしないで本読んでる先輩もいるしね」
日当たりのいい席でいつものんびりと本を読んでる河野のことを思い出しながらそう話すと、自然と頬が緩むのを感じた
「わ……」
突然そう声を上げる同級生に驚いて首を傾げると、彼は焦ったようになんでもないと首を振った
「なぁにー?」
急に声を上げた同級生の様子が気になり小首を傾げながら再度訊ねると、ごめんと口籠もりながら彼は何かを言い淀んだ
「あ、ごめん……大したことじゃないんだけど、山本ってそういうふうに笑うんだなって」
「え……?」
「あ、ごめん……!変な意味じゃなくて!!山本ってずっと暗い顔してること多かった気がしてさ」
「あ……」
同級生たちに言われて少し前の自分のことを思い出してみる
中高時代の経験から人と関わるのが怖くなって、DomだけではなくSubやNormalの学生とも距離をとって、どう関わっていいかわからなくなっていた
目の前で話している同級生たちもSubとNormalの学生だが、サークルの人たちと出会ってなければ関わろうとすらしなかったことを思うと、彼らと出会えたことに幾度となく感じた感謝の念が再び湧いた
「ごめんね、僕人見知りすごくて」
彰人はそう言ってはにかむとその場にいた同級生たちも釣られるように笑い穏やかな空気が流れた
「皆さん揃ってますか」
気恥ずかしいような微妙な空気感になったタイミングで教授が講義室に入ってきて全員が前を向くと、教授の後に続いてよく知った顔が入ってきた
「あれ……」
「どうしたの?」
「あ、ううん……補助の先輩サークルの人だったから驚いただけ」
「へぇ!」
須田の姿に驚いて声を漏らすと、隣に座る同級生に聞かれ視線を前方に留めながらそう返す
「学生補助の須田です、よろしくお願いします」
簡単な挨拶を済ませた須田も彰人の姿に気が付き口元だけで笑って見せた
その表情に照れて少しだけ視線を下げたため、そのあと須田が満足そうに笑う表情まで彰人が見ることはなかった
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