16 / 67
出会い
10
しおりを挟むしばらくゲームをするうちに、環境に慣れたからなのか緊張の糸が緩み始めると、Domの学生に無理やり従わされたCommandの反動が今更になって出始め、冷や汗が背中を伝い始めた
6年間体に染み込ませられた恐怖感と服従感がフラッシュバックして、少しずつ呼吸が乱れ手足が震え始める
「……っ……」
せっかく楽しい雰囲気になっているのに、壊すわけにはいかないと無理やり抑え込むため、膝の上でぎゅっと右手を掴み爪を立てようとすると、右側から白い手が伸びてきて左手を優しく捕まえた
「山本くん、大丈夫ですか?」
横に座っていた河野は薄い茶色の目を心配そうに揺らしていた
「だ、いじょうぶ、です!!」
焦った彰人はその手を振り払うように立ち上がると、家に帰ろうと荷物に手を伸ばした
「山本くん、落ち着いて大丈夫ですから」
SubDropと言われるパニック状態になっている彰人の様子を見て河野も同調するように少しずつ、動揺の色が見られ始めた
「拓哉、Come……そう、いい子だね」
「拓、Side、大丈夫ですよ」
離れた場所にいた沢井も、彰人と河野の様子を見てソワソワと落ち着かなさそうにしはじめたのを見かねて、福部と上條はそれぞれCommandを使った
「山本くん、落ち着いて……」
福部がCareをしようと近づくとパニック状態になった彰人はぶるぶると震えながらその場にしゃがみ込んでしまった
「……っ!!……ごめん、なさい…ごめんなさい……!」
訳もわからず恐怖に震え謝り続ける彰人の様子を見て、その場にいた全員が苦しそうな表情になる
過呼吸気味に咽せこむ彰人はしゃがんでもいることもできなくなり、その場に倒れ込んで蹲り荒い呼吸を繰り返していた
「……っ、山本くん!」
福部はなんとかしてCareをしようとしても、パニック状態の彰人には声が届かず触れることすら出来ずにいた
全員がどうすることもできずに、苦しそうに悶える彰人の傍に立ちすくんでいる時だった
「彰人、大丈夫だから……俺のこと見える?……」
先ほどまで沈黙を保っていた須田が彰人の傍に膝をついて、体を抱き起こし膝の上に抱え上げた
「う……っあ……や……ごめん、なさ……」
「大丈夫、なんも悪いことしてないから……」
小さい体を抱きしめながら、ゆっくりと背中を摩り始めると、初めのうちは腕から逃れようとジタバタしていた彰人が少しずつ動きを弱めていった
0
お気に入りに追加
219
あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。


ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。


ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる