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出会い
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しおりを挟む「ああ、ようやく終わったね」
福部はその様子を見て、ふぅと一息つくように息を吐くと2人が戻ってくるのをその場から離れずに待っていた
3人が去ってから騒ぎを聞きつけた教授と警備員の遅いお出ましで、須田ともう1人は一連の出来事を簡単に伝え事後処理を済ませるとようやく福部と彰人達のが待つ道の端へ戻ってきた
「わり、思ったより時間かかったわ。山本くん、大丈夫?」
須田は福部に一言そういうとすぐに視線を彰人に移し、先ほどまで撫でていてくれた福部よりも少し大きな手で頭を撫でてくれた
「あ、あの……ありがとう、ございました」
Domに触れられることにビクビクしながら少し俯いてそういうと、優しく頭をぽんぽんと叩きながら須田は笑った
「お礼なんていらないからな?DomはSubを守る立場なんだし」
それが当然であると言わんばかりの真っ直ぐな言葉と声でそう言い切ると、撫でていてくれた手を頭から離して、にっと歯が見えるように笑ってくれた
今まで周りにいたDomから感じたことのない優しさに、安堵からなのか涙が溢れそうになるのをじっと俯いたまま堪えるしかなかった
気を逸らそうと横にいた彼女に目線を移すと、須田や福部と共に現れた赤髪の彼に優しく肩をあやす様に叩かれてぽろぽろと安堵の涙を流していた
「疲れたやろうし、もう帰った方がええで?」
先程までの低く強い口調ではなく、優しい声音で話す彼は第一印象の恐さは微塵もなく、柔らかい雰囲気を纏っていた
「友達、待たせていて……人混みではぐれちゃって……」
「そうやったんやな、なら待ち合わせてる場所まで送っていくわ。どこかわかっとるん?」
「は、い……図書館です」
「そっか、わかった。福部さん、須田さん俺この子送ってからサークル室戻りますね」
ゆっくりと彼女の言葉を促すように話をしてから、確認するように2人の方を振り向くと、そう言われた福部達もこくりと頷いて彼らを見送った
「山本くんは誰かと待ち合わせたりしてる?」
「あ、その……1人で来てたので……」
「お、じゃあさ少し俺らのサークル室で休んでいきな?この状態で人混みまた歩くの辛いっしょ」
福部の問いかけに答えると、須田は明るくそう言って彰人の頭を再び優しく撫でてくれた
特に理由もなく、2人の言葉に従い3人は元来た道を引き返すようにサークル室に向かって歩き始めた
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