『手のひら。』

日向理

文字の大きさ
上 下
36 / 64

Episode.40

しおりを挟む


ガ‥カチャッ

キィ~


バタンッ


             「あなた、お帰りなさい」




「…ただいま。」

     「今日も遅かったんですね」



「…時計を見れば分かるだろ。」
「分かり切った事、いちいち聞かないでくれ。」

 「せめて遅くなるときは連絡してくださると…」



「…ふぅ。」


「…わかった、次からは連絡するよ。」

 「それと次のお休みはいつ取れるんですか?」
 「たまにはあの子の相手をしてあげてください」


「…こないだ遊園地行っただろ。」

 「もう3ヶ月も前です、遊園地に行ったのは」


 「もう少し父親らしく
「無理だ。」

 「え?」

「もう君には飽きた。いやもう随分前から飽きてた。」

 「突然なにを…」


「漆塗りでもしてあったんだろうね、
 君の入ってた箱は。」
「世間知らずもいいとこだよ。」

「さっき、「遅くなるなら連絡しろ」とか
 言ってたよね。」
「セックスの最中に、
 連絡なんてできるわけないだろ。」

 「な!?」

「僕にとって君は単なる女中、世話係なんだ。」
「いちいち干渉しないでくれ。」

 「女中って…」

「あ、別れるなんて言わないでくれよ。」
「君のお父様は僕にとって
 大切なスポンサーなんだから。」

 「何を言ってるの!」
「それと、お父様は君より僕を信用してくれてる。
 上等な女も今まで随分と紹介してきたからね。」

 「!?」

「君が社会に出られるとは到底思えないし、
 さなえもいるからね。」

 「!!」

「大丈夫、さなえの前ではちゃんと
『いいパパ』でいるから。」


 「・・・」



    「今日は疲れてるんだ。」
 「・・・」         

         「風呂は入ってきたから。」

               「もう寝るよ。」

                      カチャ

                  「おやすみ。」
 「・・・」


                     パタンッ





 「・・・」





 すとんっ




 「・・・」





 わな わな わな
 「・・・」


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

注意欠陥多動性障害(ADHD)の日常

春秋花壇
現代文学
注意欠陥多動性障害(ADHD)の日常

溺愛ダーリンと逆シークレットベビー

葉月とに
恋愛
同棲している婚約者のモラハラに悩む優月は、ある日、通院している病院で大学時代の同級生の頼久と再会する。 立派な社会人となっていた彼に見惚れる優月だったが、彼は一児の父になっていた。しかも優月との子どもを一人で育てるシングルファザー。 優月はモラハラから抜け出すことができるのか、そして子どもっていったいどういうことなのか!?

人生懺悔

株馬きち
現代文学
長年生きてきた中での、思い出すたびに胸が痛む罪な出来事行動について個別に懺悔します

三条美玲の炎上

中岡 始
現代文学
SNSで100万人以上のフォロワーを持つ美しきインフルエンサー・三条美玲が、「青海の宿」という洗練された温泉リゾートを訪れます。そこで出会ったのは、誠実で冷静なフロントスタッフ・佐々木隼人。完璧なホスピタリティと端正な容姿に魅了された美玲は、隼人との「特別な関係」を妄想し始め、やがてSNSで彼との関係を匂わせた投稿を繰り返すようになります。 一方で、青海の宿では美玲の要望が次第にエスカレートしていく中、プロフェッショナリズムを重んじる総支配人・松永やマーケティングディレクター・田村綾子が慎重に対応を進めます。しかし、ついに美玲が不満をSNSでぶつけたことで、事態は炎上騒動へと発展し、美玲の影響力が予想外の形で試されることに。 彼女のフォロワーたちが彼女を支持するのか、それとも…。ホテル側が守り抜こうとする「真のホスピタリティ」とは何か。そして、果たして美玲はこの騒動から何を学ぶのか?ホテルとインフルエンサーの複雑な駆け引きと成長を描く物語が、いよいよ幕を開けます。

これも何かの縁(短編連作)

ハヤシ
現代文学
児童養護施設育ちの若夫婦を中心に、日本文化や風習を話題にしながら四季を巡っていく短編連作集。基本コメディ、たまにシリアス。前半はほのぼのハートフルな話が続きますが、所々『人間の悪意』が混ざってます。 テーマは生き方――差別と偏見、家族、夫婦、子育て、恋愛・婚活、イジメ、ぼっち、オタク、コンプレックス、コミュ障――それぞれのキャラが自ら抱えるコンプレックス・呪いからの解放が物語の軸となります。でも、きれいごとはなし。 プロローグ的番外編5編、本編第一部24編、第二部28編の構成で、第二部よりキャラたちの縁が関連し合い、どんどんつながっていきます。

微熱の午後 l’aprés-midi(ラプレミディ)

犬束
現代文学
 夢見心地にさせるきらびやかな世界、優しくリードしてくれる年上の男性。最初から別れの定められた、遊びの恋のはずだった…。  夏の終わり。大学生になってはじめての長期休暇の後半をもてあます葉《よう》のもとに知らせが届く。  “大祖父の残した洋館に、映画の撮影クルーがやって来た”  好奇心に駆られて訪れたそこで、葉は十歳年上の脚本家、田坂佳思《けいし》から、ここに軟禁されているあいだ、恋人になって幸福な気分で過ごさないか、と提案される。  《第11回BL小説大賞にエントリーしています。》☜ 10月15日にキャンセルしました。  読んでいただけるだけでも、エールを送って下さるなら尚のこと、お腹をさらして喜びます🐕🐾

ダブル シークレットベビー ~御曹司の献身~

菱沼あゆ
恋愛
念願のランプのショップを開いた鞠宮あかり。 だが、開店早々、植え込みに猫とおばあさんを避けた車が突っ込んでくる。 車に乗っていたイケメン、木南青葉はインテリアや雑貨などを輸入している会社の社長で、あかりの店に出入りするようになるが。 あかりには実は、年の離れた弟ということになっている息子がいて――。

俺がカノジョに寝取られた理由

下城米雪
ライト文芸
その夜、知らない男の上に半裸で跨る幼馴染の姿を見た俺は…… ※完結。予約投稿済。最終話は6月27日公開

処理中です...