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トロール

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「…でか」
「…そうだね」
「こんなものじゃないかのぅ」
ポヨン…。

楓たちは、大きな扉の前まで来ていた。

「おそらくこの部屋が最後じゃ。道中までの魔物とは違う気配を感じる」

ここまで来る途中は、ゴブリンやオーク、それにゴーレムだった。
襲い来る魔物たちを全て倒し、たどり着いたのがこの扉だった。
ソフィアが言うには、この扉の先にある部屋が最後のようだ。

「出た!!気配を感じるやつ!!。俺も欲しいなぁ」
「鑑定みたいに、何か言ったら使えるんじゃない?例えば、気配察知!!とか」
「そんなバカな…」
「使えた!?」
「はぁ!?」

有咲はの目には、扉の向こうに居る魔物のシルエットが見えていた。

「なんか大きいの居る!!」
「俺も使えるのか…?。気配察知」
「どう?」
「使えた!?」
「でしょ!!」

楓も有咲に続き、『気配察知』を使用する。
そこで、2人が見たものは、シルエットだけだが大きな魔物の影が見えていた。

「かなり大きそうだな」
「そうだね」
「この先に踏み込むかは、お主らに任せるぞい」

楓と有咲は、考える。
この世界に来て、魔物と戦うのは日常となって来たが、ダンジョンの主と戦うのは初めてだ。
ソフィアと同レベルの魔物がいるかもしれない。
それを考えただけで、脚が動かなくなっていた。

「ねぇ楓」
「何だ有咲」
「私ね、ローズの為に戦いたいの」
「そうか」
「うん。もうあの町を襲わせたくないの」
「そうだな」
「もしかしたら死ぬかもしれない」
「ああ」
「だけど、私と戦ってくれないかな?」
「良いよ。あの時に有咲を失いそうになって気付いたからな」
「何を?」
「俺はどうしようもないほど、有咲が好きだ」
「ふぇ!?」

突然の告白に、驚きと恥ずかしさで有咲の顔が赤くなる。

「と、突然の不意打ちはだめだよ!!」
「ははっ、そういう所が好きだぞ」
「どうしてこういう時に素直になるの!!」
「こういう男なんでな」
「もう!!」
「こんな俺は嫌いか?」
「好きに決まってるじゃない!!」

2人がイチャイチャしているのを静かに見つめるソフィアとレイナは、気まずそうにしていた。

「なぁレイナ」
ポヨン…。
「妾たち…空気みたいじゃ」
ポヨン…。







「じゃあ行くぞ」
「うん!!」
「うむ」
ポヨンッ…。

楓たちは、大きな扉を押し開く。
扉の先には、巨大な魔物トロールがいた。

「鑑定」

『トロールLv.100』

「なるほどな」
「レベル100だね」
「ふむ。まあ妾にとっては、敵では無いが油断はするでないぞ」
「分かった」
「うん」

ソフィアのレベルは200であるため、80レベルのトロールは格下である。
そして、楓と有咲は、レベルはMAXとなっている。

「じゃあ基本的な動きは、今までと一緒で問題無いな?」
「うん、私は大丈夫だよ」
「妾もじゃ」
ポヨンッ…。
「ごめん、危険な役目を任せてしまって」
「ううん、大丈夫だから」
「そうじゃぞ楓殿。有咲殿は妾が守る」
「頼む」

楓とレイナは後衛、有咲とソフィアは前衛。

「じゃあ最初の一撃は、俺が引き受ける。3カウントの後、あいつの頭を狙撃する」
「分かった」
「任せるぞい」
ポヨンッ…。

楓は、スナイパーライフルを構え、スコープを覗く。

「じゃあ行くぞ。3,2,1!!」

バンッ!!
赤い弾道がトロールの頭を貫く。

『グァァァァァァァ!!』

攻撃を受けたトロールの咆哮が部屋中に響き渡る。

「流石に一撃じゃ死なないか…」
「次はこっちよ!!」

ズドンッ!!
有咲も楓に続き、グレネードランチャーを放つ。
赤色の弾丸は、トロールの頭に当たる。

『アァァァァァァ!!』

2度の攻撃により、トロールの怒りは限界を越していた。

「はぁぁぁぁ!!」

有咲の撃ったグレネード爆煙から、空を舞うソフィアが現れ、刀を振るう。

スパッ!!

「レイナ!!今じゃ!!」

ソフィアの合図を聞き、レイナは雷の魔法を放つ。

『アァァァァ!!』

トロールは、握っていた棍棒を有咲とソフィアを目掛けて振り払う。

「ふっ、残念じゃったな」

ブンッ!!

振り払われた棍棒は空を切る。
その後も、棍棒を有咲とソフィアに向け、振り回すも当たらない。

「それは幻覚じゃ」
「楓!!今だよ!!」
「あぁ!!」

レイナの幻術にトロールは惑わされていて、その隙に楓は次なる弾を放つ。

バンッ!!

緑色の弾丸は、トロールに当たり爆発する。

「まだまだ!!」

緑色の次は、橙色、黄色と放つ。

『ガァァァァァ!』

トロールは、楓を目掛けて走ってくる。

「さてと、ヘイトは俺が維持しよう。レイナ!!サポートを頼む!!」
ポヨンッ…!!

楓は、レイナの幻術に紛れて走る。

「私たちも居るよ!!」
「そうじゃ!!」

有咲は、トロールの股下をスライディングしながら引き金を引き、ソフィアは、トロールの頭を狙い刀を振る。

『アァァァァ!!』

トロールは、楓を倒すも幻術だった。

「レイナ!!」
ポヨンッ…。

楓は、レイナの名前を呼ぶ。
それに応えるかのように、風魔法を使い楓を上空に飛ばす。

「じゃあな…」

トロールは、上空に浮かぶ楓を捉え、棍棒を振った。
しかし、それさえも幻術だった。

「こっちだよ」

本物の楓は、トロールの背後を飛んでいた。

バンッ!!

赤色の弾丸は、トロールの頭を破壊した。








「…って着地どうしよ!!」
「楓!?」
「まったく世話のかかる奴じゃの~」
ポヨンッ…。

レイナの風魔法により、宙に飛ばされた楓をソフィアが空を飛びキャッチする。

「えっと、お騒がせしました」
「まったくじゃ」

楓は、ソフィアにお姫様抱っこされ着地した。

「楓!!」
「有咲」
「最後のびっくりしたんだから!!本物の楓が攻撃されたと思ったんだからね!!」
「いや、幻術だから。俺もそれをレイナにお願いしたから」
「だとしても!!それを先に言っておいてよ!!。心臓に悪いじゃない!!」
「申し訳ない」
「もう!!」
「まあ有咲殿。皆、無事なのじゃ。それだけでも良かろう」
「むぅ…」
「仕方ない。なんでも有咲の言う事を一つだけ聞くから」
「本当!?じゃあ…」
「いや、反応早いな…」
「ふっ。とりあえず、このダンジョンから脱出しようではないか」
「そうだな」
「そうね」
「うむ。では帰る前に…」

ソフィアは、おもむろに部屋の奥に進む。

「あったこれじゃ」
「なんだそれ?」
「宝箱…?」

ソフィアは、部屋の奥で宝箱を見つけていた。

「この宝箱には、お宝が入っておるのじゃ。まあ宝箱じゃからな」
「そうなのか?」
「何が入ってるの?」
「ふむ、今開けてみる」

ソフィアは、箱のカギを破壊し中を確認する。

「これは指輪じゃな。それもペアの」
「指輪?」
「ペアリングって事?」
「そのようじゃ」

宝箱の中には、黒のペアリングだった。

「お主らの鑑定で見てみると良かろう」
「そうだな」
「じゃあ鑑定」

『ミスリルリング』

「ミスリルか」
「高価なのかな?」
「せっかくのペアリングなのじゃ。2人がつけると良かろう」
「そうだな」
「そうだね。なんだかんだ言って私たち、この世界に来てから結婚指輪は、着けてなかったというか無くなっていたからね」

楓と有咲は、転生前では結婚指輪を肌身離さず着けていただが、転生すると左薬指には指輪がなかったのだ。

「じゃあ丁度良かったではないか」
「ああ」
「ねぇ楓…」
「ん?」
「着けて…もらえる?」

有咲は、少し恥ずかしそうに左手を差し出していた。

「喜んで」

楓は、それに応えるかのように有咲の左薬指に指輪を通す。

「ありがとう…。楓のは私がするから」
「はいよ」

今度は、楓が左手を差し出す。

「楓」
「何だ?」
「私をお嫁さんにしてください」
「っ…!!」
「ふふっ。あの時と同じだね」
「ああ…。そうだな」
「全く草食系な旦那さんには困ったものね」
「返す言葉もありません」
「絶対に離さないから」
「俺からは離れないよ」
「離れそうになってもしがみつくから」
「もう少しお手柔らかにお願いします」
「ふふっ」
「ははっ」

有咲は、転生前の世界にて楓に対し、逆プロポーズを行っていた。
その時の言葉を、有咲は楓にもう一度伝えたのだ。

「また妾たち空気じゃな」
ポヨンッ…。
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