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     太陽の力で、月は輝いている?

零距離になる瞬間

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  決死の覚悟? の告白から一ヶ月経った。
  けれど私と大陽くんとの関係は、全く変わらず。毎日メールや電話で会話し、毎週出かけて仲はかなり良い方だと思うけど、愛の言葉を交わすなんて事はまったくない。
  映画の話、読んだ本の事、ネットで見付けてきた面白ネタ、他愛ない日常の面白話そんな事で盛り上がり、ただ平和に時間は過ぎていく。
  それはそれで、私にとっては愛しい幸せな時間ではあるので、大陽くんとの時間を楽しんでいる。

  最近は季節感というものがあまり関係なくなってきたのか、ホラー映画とかスリラー映画って、年中を通して公開されるようになってきたものだ。
  今日、大陽くんに誘われて観に来たのは、 スリラー映画? サスペンス映画? ジャンルは何になるんだろうか? 独自の持論をもつ殺人鬼から仕掛けられる死を賭けたゲームを仕掛けられる恐怖を描いた物語の第二弾。
  人体破壊を伴う残虐なゲームも見所の一つだが、ミステリーとしてもなかなか良く出来ていて、脚本も凝っている事で私も注目している映画ではあるが、一つ問題がある。
 「今回は、映画観ながら飛び跳ねないでよ」
  大陽くんはニヤ~と意地悪な笑みを浮かべる。
  そう、私は残虐なシーンというか、痛いシーンが苦手。そして突然の大きな音や、何かが飛び出してくるという状況もダメで、身体がビクッっと激しく反応してしまうのだ。
  このシリーズの一作目を一緒に観に行ったとき、激しく身体を過剰に反応させ、大陽くんに大笑いされてしまった。そりゃ派手に身体が動いたのは確かだけど、それは周りも同じ事。ホラー映画鑑賞の最中に爆笑するというのも大陽くんくらいだろう。
 「ん~、無理! あれは反射運動だから、理性でどうこう出来るものではないしね」
  私は拗ねたように答える。
 「でも、いい加減この後何かくるな、というのも分かるでしょうに。ベタだからね、ああいう演出は」
  ダメだよね~という感じで言われてしまうが、分かっていても、慣れないから仕方が無い。
 「あとさ、このシリーズ、尖端恐怖症の私には、結構辛いよ! 尖った物はコチラに向かってくる演出はもういいって感じ」
  大陽くんは、ゲンナリとしている私を、楽しそうに見ている。完璧に映画だけでなく、私の反応を笑いに来ているようだ。
  そんな会話をして映画館にいくと、もう開場になっていた。
  私達は、まず席に行くことにする。そして、シートに荷物とコートを置いて身軽になる。
 「じゃあ、パンフレットと飲み物買ってくるね」
  私がそう言って、席から離れようとすると、大陽くんが慌てて呼び止める。
 「あのさ……」
 「ん?」 
  今日は、何か食べ物も欲しいのかな? と私は振り返る。
  妙に真剣な顔をした、大陽くんの顔が不思議。ついシゲシゲと見上げて、次の言葉を待つ。
 「もうさ、二人で二冊パンフレット買うの止めない? 一冊で良いよね?」
  これが、スッゴク分かりにくい大陽くんののプロポーズだった。
  彼にとっては、緊張していたらしいプロポーズ。私は初めての告白だと解釈して、大きく一回頷く。
  大陽くんが、珍しく照れたように笑う。その表情がすごく可愛いくてキュンとしてしまう。
 「……そうだね。では珈琲の方は二杯? 一杯?」
  思わずヘラヘラしてしまう。照れ隠すように、戯けた感じでそんな風な言葉で誤魔化してしまう。 
 「いや、俺は、コーラがいいな」
  大陽くんも恥ずかしそうに目を反らし、ぽつりと答える。
 「オッケー!」
  なんか嬉しくて、ニヤニヤが止まらない。私はそんな自分が恥ずかしくて走り出す。
  多分、世界中の数いる映画ファンカップルでも、この映画でプロポーズなんてしてきたのは、大陽くんくらいだろう。

  大陽くんというのは、やる事は豪快でストレートなくせに、恋愛表現は妙に婉曲。その後、彼とのチョットした言葉のやり取りで判明したことだけど、私は知らない内に彼の告白をうけ、それに応えていた事になっていたようだ。彼の中では、二人は当の昔付き合っていたようだ。
  そして私はプロポーズを、私は告白と捉え、彼の最終意思確認をプロポーズと判断した。いろんな意味でズレている二人だけど、それでも根っこの所ではちゃんと噛み合って繋がっているだから、面白いのかもしれない。
  この恐怖を生み出すはずの映画館が、私のハッピーエンドの舞台となった。いや、二人が互いをチャンと正しく認識したという事で、スタート地点というべきか。
  スクリーンから流れる、悲鳴が、二人のラブストーリーの始まりを告げた。

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