Zazzy people

白い黒猫

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Prime lense man

stop doen metering

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 シャワーを浴びると気持ちも身体もサッパリする。流石にバスローブで二人の前に行くのは危うすぎるので洋服を着てからキッチンに行くことにした。
 陽光輝くアイランドのキッチンを挟んで二人は楽しそうに会話をしている。
 賢史が切った野菜を、イリーナが摘み食いして二人で微笑みあう。こうしてみると普通に良い夫婦に見えるが、その実情は節操なしの変態コンビ。
 俺の視線に気が付き賢史は笑顔で手招きしてきた。
 イリーナと三人分くらい間をあけてカウンターに座る。すると賢史が作り立てのフレッシュジュースの入ったコップを渡してくるのでお礼を言い受け取った。飲むと身体の細胞が生き返るように元気が出てくる。
 満足感から溜息をつき、空になったコップを置くと、俺の前に朝食の載った皿が置かれる。
 カリカリのベーコンに俺好みのサニーサイドの目玉焼きにベイクドビーンズにクランペット。それに焼きトマトとマッシュルームとサラダが添えられイングリッシュブレックファーストそのもの。
 傲慢で大ざっぱな男なのに、こういったところは妙にマメ。俺の為に甲斐甲斐しく料理をつくってくれる。
 日本人の賢史がクランペットとか知りもしなかった筈なのに、気が付くと時々作って出してくれるようになっていた。
 こみ上げる幸せに頬が緩んでしまう。
「可愛い。それに、こういう感じって楽しそうね」
 イリーナはそう言いながら紅茶の入ったカップを俺の前に置く。微笑ましそうに笑うイリーナの表情をどう受け取ってよいのか分からず、紅茶のお礼だけを返す。
「恋人の為に嬉しそうに朝食を作って。
 賢史がこんな普通のカップルみたいな事をして楽しんでいるなんて意外。本当にロイが可愛くてたまらないのね」
 夫とその恋人が、そういう事をしていることを微笑みながら語る妻も珍しい。
「賢史と結婚しているくせに。あんたもピロシキとかねだって作ってもらっているんじゃないか?」
 一口紅茶を飲み、そのアロマを楽しむ。
「貴方は分かっているでしょう?
 この人と私はそんな甘々な関係ではないって。だから一緒に暮らせるのよ。
 私に恋して執着している相手だったら、一緒に暮らしてないわ。
 四六時中イチャイチャベタベタされたら面倒臭いし醒めてしまう。
 あと私はニューヨーク生まれニューヨーク育ち。ロシア料理はそんなに恋しくもないわ。
 ピロシキやボルシチは好きだけど」
 どういう感覚なのか? 彼女にとって恋愛って何なのだろうか? とも思う。

 イリーナの事をいくら分析して考えても理解できる筈もないので、食事に集中することにする。
 熱々のクランペットを口に入れるとモチっとしていて、口の中に美味しさが広がった。また目玉焼きの焼き具合も絶妙な半熟。そこにも幸せと歓びを感じる。
 ナイフとフォークを動かし賢史が俺の為に作ってくれた朝食を三人で楽しむ。賢史は器用に箸を使って食べている。
 こっちから見ると大変そうに思えるが賢史からしてみたら箸での方が食べやすいらしい。
 こういう所をみると日本人なんだと思う。俺の思っていた日本人像からかなりかけ離れた男だが……。
 俺の視線に気が付いたのか、『どうした?』というら顔で笑ってくる。
 素敵な朝食に対する喜びと感謝を伝える為に賢史に微笑む。賢史はいつに無く柔らかく優しい笑みを返してくれて心も満たされる。
 他の人には見せない、最も彼が寛いでいる表情。その表情が見られた事が嬉しくて愛しくて見つめ合う。

「……相手の胃を満たして悦ばせるって、考えようによってはかなりエロい。
 二人もなかなか色々と高度なプレイを考えるわね♪」
 イリーナのからかうようで、かつ感心したような言葉に俺は咽せる。
 賢史は苦笑しながら俺にナプキンを渡してくれた。
「あんたの発想が歪んでいるだけだろ!」
 お茶を飲みようやく落ち着く事が出来てから、俺はイリーナを睨むがニコニコしているだけだ。
彼女の目に自分がどう映っているのか考えるだけで恐ろしい。
「まあ確かに、五感全てを悦ばせるというのは楽しいな。オレが作った物が咀嚼され喉を通り体内へと入っていき……ロイの内側までも全てを愛する。いいねぇ。
 その眼、舌、耳、鼻、肌全てを、五感全を俺で染め上げ感じさせたい。
 次は何処で感じたい? ロイ」
 その言葉に顔が赤く火照るのを感じる。
 賢史の言葉に感じたからでなく恥ずかしさからだ。
「良くないだろ! 普通に物事を考えてくれ! 全ての事をエロに変換するのは止めろ!」
 賢史は俺を見てニヤニヤしている。
「エロというなよ、愛だろ? 愛」
 愛を語るロマンチックさとは程遠い顔である。子供が態と下品な事言って、親に怒られて喜ぶ感じ。本当にコイツは俺より十歳以上も上の大人なのか? と思う。
「不純な心しか感じない笑みで愛を語るな!」
 俺が怒ると、案の定更に嬉しそうな顔をする。
「失礼な、寧ろピュア中のピュアで真っ直ぐお前だけを求める想いの気持ち。なのに、なぜ分かってくれないのかな~」
 そう言って少し寂しげな表情をしてくる。明らかに振りでしてる表情だ。俺に構われる為に。
 俺が、何かを言い返す前に横にいたイリーナが吹き出し笑い出す。
「もう、貴方達って最高。面白過ぎる。下手なコメディー映画観ているより笑えるわ。
 ロイ、こんな男捨てて、私とつき合わない?」
「俺はゲイだ! しかもタチ悪さはアンタとケンは変わらないだろ! いや、更にタチ悪い存在だ」
 愛する恋人と、ただ普通に穏やかで幸せな一時を過ごしたいだけ。なのに何故俺はこういう事になっているのだろうか? 惚れた相手が悪かったとしか言いようがない。

 俺は大きく溜息をつく。
 気分を落ち着ける為に紅茶を飲んでいると、賢史が真っ直ぐコチラを見つめていることに気がつく。
 決してご機嫌とは言い難い俺なのに、そんな俺を見ている表情は本当に無邪気で嬉しそう。
 俺が愛しくてたまらないという感じで……。それでいて明日にも他の奴と能天気にセックスを楽しむというのに。
 俺の前で無邪気に思える姿でいることを可愛いと思ってしまう。賢史に完全にやられてしまっているようだ。
 アーチストとして痺れる程クールな所。子供みたいに無邪気な所。それに加え困った程淫らな所ひっくるめて賢史だ。そんな全てを実は愛しいと思ってしまっている自分が一番愚かなのかも知れない。

 さてとこの後、このメンバーで時間をどう過ごすべきか? 部屋を見渡してから二人に視線を戻す。

「そうだイリーナ、貴女を撮影させてくれない? 今のそのキモノ姿の貴女はとても素敵だ」
 驚いたようにイリーナは目を見開くが直ぐに笑い『いいわよ』と快諾する。
 悪戯げに彼女の緑の眼が細められるのを見て俺は先に言いたいことをキッチリ伝える事にした。
「その前に、貴女との契約。内容を少し変更をさせて欲しい」
 以前二人の間で交わされたプライベート時のフォトに関する契約。
 互いに同意の上でないと撮影を行わない。その写真の所有権をどちらがもつかという事だけ決めたシンプルなもの。
 イリーナは首を傾げ、愉しそうに俺の言葉を待っている。
「あくまでも撮影。そこに口説きとかセックスといった余計な行動や茶化しは一切しないこと。
 俺の指示が無い限りケンを含む他の人物をそこに介入させない」
 案の定、その会話を聞いていた賢史が舌打ちをするが、ここは譲れない。
 イリーナは俺の目を暫く見つめていたがフワリと微笑む。
「素敵……。 仕事する男の真剣な眼差し。ゾクゾクする。
 いいわ! その条件をのみましょう。
 光と影の魔術師ギルバート レックス マーヴェル。貴方に請われて仕事に携われるなんて光栄。
 好きな様に私を撮影して頂戴。貴方の求めるままに」
 手を胸の前で合わせ俺に向かって敬うようなポーズをとるイリーナ。そして手を広げ俺の前に立ち微笑む。
 俺も立ち上がり、イリーナと向き合う。手を伸ばし柔らかい髪を軽く掴み捩じって上げてみたりと弄ってみる。髪をどうすれば、違った魅力が見えてくるかを考えた。

「緩く少し乱れた感じでアップにしてくれない? あと化粧は……」
 賢史は話をすすめる俺たちを見てつまらなそうである。
 イリーナはそんな賢史にフフっと笑いながら、メイクしにキッチンから去っていった。

「ずるいな、お前らだけ楽しみ、俺は放置かよ!」
 賢史は不満げな拗ねたような顔をしている。俺は肩を竦め、賢史に視線を向ける。
「ケンとはいつも撮影しやってるだろ? 今はイリーナを撮りたい。強烈に」
 さっきあれだけ刺激され煽られただけに、イリーナを撮らずに居られない心境なのだ。
 昨晩愛し合った事で性欲は満たされているし、食欲も満たされた。心が今求めるのは一つ。先ほどのイリーナの艶姿に疼いた創作意欲。ここで完全燃焼しなくてどうする?
 俺を見て賢史は大きく溜息をつき、苦笑する。
「ったく、本気マジの眼になってんな。完全にそっちのスイッチ入っていやがる」
 俺は軽く睨むような視線を賢史に向ける。
「ああ。だから余計な事するな、邪魔したら……」
 俺の視線を受け賢史は片方の口端を上げ笑う。
「分かった、そういう事なら、二人で思う存分楽しめ。前みたいに邪魔はしない。
 俺が手伝う事ないか?
 アシスタント代わりに働いてやるよ。取り敢えずカメラバックでもお持ちしましょうか?」
 プロのアーチスト同士だけに、互いに踏み込み邪魔したらダメな領域は理解している。だからこそ付き合いを続けられる。
 俺は頷き車に積んである機材を運ぶのを手伝って貰うことにした。
「了解! ボス」
 賢史は軽く手を挙げ気障にも見えるポーズをする。何やかんや言って賢史も楽しんでいるようだ。
 ガレージに行き俺の車から二人で使えそうな機材を持って家に戻る。
 メイクし終えて先程よりさらに艶やかさの増したイリーナが待っていた。
 プロのメイクによるものではないものの、イリーナは自分の見せ方をよく理解している人間。
 俺の意図を明確に理解し化粧をしてきてくれていた。
 寧ろプロのメイクではない事が乱れ爛れた色気というものを作り出している。
 俺はそのイリーナを見つめ、さて先ずはどう彼女を撮ってやるか? 俺は目を閉じ考える。

 今の時間、外の陽光の感じも良かった。
 庭で最初に撮って……。俺は次々と浮かんでくるアイデアを元に撮影スケジュールを素早く立ててから目を開ける。
 カメラを手に取ってイリーナに笑いかけた。最高に面白い被写体を楽しむ為に。


 ※   ※   ※

【stop doen metering】 絞り込み測光の意味
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