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Blue skinny cat
Theme
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それからミアのヤツは度々俺の前に現れては噛みついてきた。
その時期はレコーディングしていて俺の行動範囲が狭かった事もある。その作業していたスタジオが彼女のバイトしている喫茶店が近い事もあってやたら鉢合わせした。
俺が息抜きに散歩に出ていると、ミアが付きまとってくる。
チッコいのとガリガリの身体は相変わらずだが髪を伸ばし初めて見た目は女らしくはなっていた。と言ってもほんの少しだけ。
しかしその髪色は金髪にしたり、銀髪にしてみたりと短時間で色を変えている。
彼女なりにロイの言葉を考えての事だろうが、相変わらず彼女はバカで青いまま変わらない。
叶わなくとも夢を持つことが偉いかのように俺に喋り続ける。
俺はそれを、公園の鳥の囀り同様聞き流し、視界は、周りの人達の姿を目に映しているだけで何も見ていない。
頭では音を組み立てていた。そんな俺が気に食わないのか俺の手を引っ張り注目させようとする。そんな繰り返し。
「ホントウオマエ、アオイシ、メンドウクサイナ」
そう日本語で独り言をいうと、ミアは『なんて言ったの?』としつこくその意味を聞こうとしてくる。
「お前は青いと言ったんだ」
ミアはキョトンとする。
「日本では若くお前のような子をブルーと表現するんだ」
ミアの目が妙にキラキラしている。
「日本語ってクール! ブルーって日本語でなんて言うの?」
アメリカ人は日本語に妙な食いつき方してくるものだ。
「『アオ』だ。ア・オ!」
ミアは『アオ』と繰り返し言葉にして嬉しそうに笑っていた。
「私は『アオ』♪」
歌うように、その言葉を繰り返し俺の周りをグルグル回る。本当にガキだ。
「ねえ! アオって 漢字でどう書くの?」
俺はため息をつき、適当な紙がなかったので名刺を取り出す。自分の名前の横に『青』と書いてからミアに渡す。
何がそこまで彼女を『青』という言葉に夢中にさせたのか分からない。その文字を見つめニコニコしていた。
良い意味で言ったわけではないが、なるほどこの子は『青』そのものだとなんか俺も納得してしまった。
その後露店のアクセサリー売りの所にしゃがみ込み楽しそうに物色している。
「ねえ、ケンジー買ってよ! コレ♪」
安っぽい青いビーズのブレスレットを強請ってきた。俺が面倒臭い顔しても『いいでしょ! 稼いでいるんだからこれくらい!』 と図々しい事言ってきやがった。
俺は煩いからそれを買ってやる。
嬉しそうにすぐにそれを腕に着けて似合う? とガキっぽい顔で笑った。
その顔はお世辞にもカワイイとは思えない。
だから大して興味もなくチラッと見ただけだったが、その笑顔だけがやたら記憶に残ることになる。
青くて馬鹿丸出しの笑顔。世界中でありふれたどうってことないモノなはずなのに。
俺はミアに『じゃあ、仕事あるから』と言って振り返ることもしないでスタジオへと戻る。そしてミアの事はサッと追い出して音楽の世界に没入した。
ミアとそんな事のあった一週間程後、俺は家にロイを招き、ピアノを彼の為だけに演奏していた。
その様子をロイはカメラのレンズ越しではなく淡いブルーの瞳でジッと見つめている。
今日は口説いているわけでもプレイしている訳でもない。
純粋に音楽を聞かせ、ロイも恋人としてではなくカメラマンという仕事人の顔で曲を聞いている。
俺の演奏を聞き終わりロイは目をつむり、曲のイメージを頭の中で具象化しているようだ。
「どうだ? お前ならどんな絵を感じる?」
彼に新しいCDのジャケットの写真撮影の依頼をしていた。
やはり俺を理解しているだけに余計な打ち合わせをダラダラしなくてもいいモノを作ってくるからだ。
それにこういう打ち合わせしていても、ロイとの穏やかなこういう一時が俺にとっては癒しの時間。一石二鳥である。
「あんたの音、変わったな、何ていうのか……。
前は喧嘩腰というか、相手を圧倒させてやるという傲慢な音だったのに。こんな演奏するようになったなんて変な気分だ」
ロイは感覚が鋭いだけに、その言葉に不安になる。
「おい、どういう意味だよ。魅力が下がったっていうのか?」
俺がそう言うとロイは慌てて頭を横に振る。
「違うよ、前は聞く相手に刻み付けてやるという感じだった。
今は相手を引込んで行く感じというのかな……。
いい意味で円熟したというか」
褒めているというのに、なぜかロイは悲しそうな顔をしている。
「それはお前にとってガッカリする事か?」
ロイはニコリと笑い顔をまた横にふる。
「ファンとしては嬉しいよ、より色濃く魅力的な音になったのは………。
でもケンの音が面白くなった原因を考えると俺としては複雑だ」
俺はその言葉に首を傾げてしまう。ピアノを離れロイの横に座る。
「原因ってなんだよ」
「俺にそれを言わせるな」
ロイはプイと顔を逸らし溜め息をつく。
「それより、ジャケットのイメージだろ。今までモノトーンでクールな感じできたから少し変えた方が良くないか? 色つけたいというか」
その言葉で先日のミアとの会話を思い出す。
「お前は俺をどういう色を感じるんだ? まさか青とか言わないよな」
ロイは俺の言葉にキョトンとする。そこで俺は先日のミアとの出来事を話すとロイは面白そうに笑った。
「確かに日本のそういう感性は面白いな、他に何かあるのか」
俺は言葉で何かを現すというのは苦手だし、詩的な表現とかも苦手で悩む。
「ん~何故かベイビーを『アカチャン』と赤を現す言葉で呼ぶくらい?
若いヤツやその時代は青で表現したいるのは普通かな。そしてその時代の事を青春と呼ぶ」
ロイは目を細めて俺の言葉を聞いていた。彼なりの、青い春というイメージを心の中で作り出しているのだろう。
「いいね~その表現、青い春か~
で、お前は俺を何色だと感じるの?」
俺はそう聞かれ悩む。そして浮かんだのは色でなく情景。
「ワカタケイロ?」
「何? それ?」
俺はどう英語で表現するか一瞬悩む。いや、ロイを表現するのは色だけで表せない。
「バンブーグリーンでいいのかな? というより竹林の空気。お前のイメージは竹林が持つあの独自な空気。初めて会ったときお前に感じたんだ。
やらしい意味でなくそのお前の作る世界に惹かれ入りたくなる。そしてその世界に抱かれたくてお前に近付いた。そしてたまらなく欲しくなった」
ロイは俺の言葉に戸惑う表情を見せる。
「分り辛いか竹林なんて」
そういうとロイは、はにかんだように笑う。
「写真で見た事があるから分かるよ。素晴らしい竹林の写真。ああいう光景に例えてくれて嬉しい」
俺はロイの香りを感じたくて、顔を近づける。
グリーン系の香水がロイの体温に温められて俺の大好きな香りになっている。
俺が世界中で一番心が安らぐお気に入りの場所がロイのいる所。俺はロイの香りを楽しみたくて首を舐めるとロイは身体を震わせた。
「ケン、ふざけてないで、仕事に戻ろう」
叩かれて離れられてしまう。
「そうそうジャケットのイメージだけど、俺がどうではなくて、お前が何を出したいかだろ」
そう言葉でも突き放され俺はやれやれと思う。
「俺はどうもイメージをビジュアルや言葉で表現するのって苦手なんだ。知ってるだろ? 言葉とかキャンパスに描いて表現できているのなら、音楽家になってない」
そう言うと、ロイは苦笑いする。
「確かにケンは理論なんて全くなくて、行動するからね」
俺はその言葉に眉を寄せてしまう。
「俺がバカだって言いたいのか?」
ロイは笑って首を横にふる。
「違うよ極座標的な思考の持ち主だって言ってるんだ」
極座標? 俺は首を傾げる。
「途中の計算すっ飛ばして結論に飛ぶ」
「やっぱ、お前俺をバカだって言ってるだろ!」
そう返した時に電話のベルが鳴った。ロイはなぜ俺が怒っているのか理解できないという目をしている。
俺はもっと言いたい事があったがなり続ける電話に出ることにする。
電話の相手は警察だった。
「は? 身元確認?」
電話の向こうで何チャラ刑事とやらは訳わからない事を言う。
そんな暇はないと言うが、刑事はどこまでも協力を仰ぎたいとの一点張り。
俺は仕方がないから警察署に向かう事にする。
心配したロイも一緒についてきてくれた。そこで俺はとんでもないモノを見せられる事になる。
※ ※ ※
Theme=テーマ,主旋律
その時期はレコーディングしていて俺の行動範囲が狭かった事もある。その作業していたスタジオが彼女のバイトしている喫茶店が近い事もあってやたら鉢合わせした。
俺が息抜きに散歩に出ていると、ミアが付きまとってくる。
チッコいのとガリガリの身体は相変わらずだが髪を伸ばし初めて見た目は女らしくはなっていた。と言ってもほんの少しだけ。
しかしその髪色は金髪にしたり、銀髪にしてみたりと短時間で色を変えている。
彼女なりにロイの言葉を考えての事だろうが、相変わらず彼女はバカで青いまま変わらない。
叶わなくとも夢を持つことが偉いかのように俺に喋り続ける。
俺はそれを、公園の鳥の囀り同様聞き流し、視界は、周りの人達の姿を目に映しているだけで何も見ていない。
頭では音を組み立てていた。そんな俺が気に食わないのか俺の手を引っ張り注目させようとする。そんな繰り返し。
「ホントウオマエ、アオイシ、メンドウクサイナ」
そう日本語で独り言をいうと、ミアは『なんて言ったの?』としつこくその意味を聞こうとしてくる。
「お前は青いと言ったんだ」
ミアはキョトンとする。
「日本では若くお前のような子をブルーと表現するんだ」
ミアの目が妙にキラキラしている。
「日本語ってクール! ブルーって日本語でなんて言うの?」
アメリカ人は日本語に妙な食いつき方してくるものだ。
「『アオ』だ。ア・オ!」
ミアは『アオ』と繰り返し言葉にして嬉しそうに笑っていた。
「私は『アオ』♪」
歌うように、その言葉を繰り返し俺の周りをグルグル回る。本当にガキだ。
「ねえ! アオって 漢字でどう書くの?」
俺はため息をつき、適当な紙がなかったので名刺を取り出す。自分の名前の横に『青』と書いてからミアに渡す。
何がそこまで彼女を『青』という言葉に夢中にさせたのか分からない。その文字を見つめニコニコしていた。
良い意味で言ったわけではないが、なるほどこの子は『青』そのものだとなんか俺も納得してしまった。
その後露店のアクセサリー売りの所にしゃがみ込み楽しそうに物色している。
「ねえ、ケンジー買ってよ! コレ♪」
安っぽい青いビーズのブレスレットを強請ってきた。俺が面倒臭い顔しても『いいでしょ! 稼いでいるんだからこれくらい!』 と図々しい事言ってきやがった。
俺は煩いからそれを買ってやる。
嬉しそうにすぐにそれを腕に着けて似合う? とガキっぽい顔で笑った。
その顔はお世辞にもカワイイとは思えない。
だから大して興味もなくチラッと見ただけだったが、その笑顔だけがやたら記憶に残ることになる。
青くて馬鹿丸出しの笑顔。世界中でありふれたどうってことないモノなはずなのに。
俺はミアに『じゃあ、仕事あるから』と言って振り返ることもしないでスタジオへと戻る。そしてミアの事はサッと追い出して音楽の世界に没入した。
ミアとそんな事のあった一週間程後、俺は家にロイを招き、ピアノを彼の為だけに演奏していた。
その様子をロイはカメラのレンズ越しではなく淡いブルーの瞳でジッと見つめている。
今日は口説いているわけでもプレイしている訳でもない。
純粋に音楽を聞かせ、ロイも恋人としてではなくカメラマンという仕事人の顔で曲を聞いている。
俺の演奏を聞き終わりロイは目をつむり、曲のイメージを頭の中で具象化しているようだ。
「どうだ? お前ならどんな絵を感じる?」
彼に新しいCDのジャケットの写真撮影の依頼をしていた。
やはり俺を理解しているだけに余計な打ち合わせをダラダラしなくてもいいモノを作ってくるからだ。
それにこういう打ち合わせしていても、ロイとの穏やかなこういう一時が俺にとっては癒しの時間。一石二鳥である。
「あんたの音、変わったな、何ていうのか……。
前は喧嘩腰というか、相手を圧倒させてやるという傲慢な音だったのに。こんな演奏するようになったなんて変な気分だ」
ロイは感覚が鋭いだけに、その言葉に不安になる。
「おい、どういう意味だよ。魅力が下がったっていうのか?」
俺がそう言うとロイは慌てて頭を横に振る。
「違うよ、前は聞く相手に刻み付けてやるという感じだった。
今は相手を引込んで行く感じというのかな……。
いい意味で円熟したというか」
褒めているというのに、なぜかロイは悲しそうな顔をしている。
「それはお前にとってガッカリする事か?」
ロイはニコリと笑い顔をまた横にふる。
「ファンとしては嬉しいよ、より色濃く魅力的な音になったのは………。
でもケンの音が面白くなった原因を考えると俺としては複雑だ」
俺はその言葉に首を傾げてしまう。ピアノを離れロイの横に座る。
「原因ってなんだよ」
「俺にそれを言わせるな」
ロイはプイと顔を逸らし溜め息をつく。
「それより、ジャケットのイメージだろ。今までモノトーンでクールな感じできたから少し変えた方が良くないか? 色つけたいというか」
その言葉で先日のミアとの会話を思い出す。
「お前は俺をどういう色を感じるんだ? まさか青とか言わないよな」
ロイは俺の言葉にキョトンとする。そこで俺は先日のミアとの出来事を話すとロイは面白そうに笑った。
「確かに日本のそういう感性は面白いな、他に何かあるのか」
俺は言葉で何かを現すというのは苦手だし、詩的な表現とかも苦手で悩む。
「ん~何故かベイビーを『アカチャン』と赤を現す言葉で呼ぶくらい?
若いヤツやその時代は青で表現したいるのは普通かな。そしてその時代の事を青春と呼ぶ」
ロイは目を細めて俺の言葉を聞いていた。彼なりの、青い春というイメージを心の中で作り出しているのだろう。
「いいね~その表現、青い春か~
で、お前は俺を何色だと感じるの?」
俺はそう聞かれ悩む。そして浮かんだのは色でなく情景。
「ワカタケイロ?」
「何? それ?」
俺はどう英語で表現するか一瞬悩む。いや、ロイを表現するのは色だけで表せない。
「バンブーグリーンでいいのかな? というより竹林の空気。お前のイメージは竹林が持つあの独自な空気。初めて会ったときお前に感じたんだ。
やらしい意味でなくそのお前の作る世界に惹かれ入りたくなる。そしてその世界に抱かれたくてお前に近付いた。そしてたまらなく欲しくなった」
ロイは俺の言葉に戸惑う表情を見せる。
「分り辛いか竹林なんて」
そういうとロイは、はにかんだように笑う。
「写真で見た事があるから分かるよ。素晴らしい竹林の写真。ああいう光景に例えてくれて嬉しい」
俺はロイの香りを感じたくて、顔を近づける。
グリーン系の香水がロイの体温に温められて俺の大好きな香りになっている。
俺が世界中で一番心が安らぐお気に入りの場所がロイのいる所。俺はロイの香りを楽しみたくて首を舐めるとロイは身体を震わせた。
「ケン、ふざけてないで、仕事に戻ろう」
叩かれて離れられてしまう。
「そうそうジャケットのイメージだけど、俺がどうではなくて、お前が何を出したいかだろ」
そう言葉でも突き放され俺はやれやれと思う。
「俺はどうもイメージをビジュアルや言葉で表現するのって苦手なんだ。知ってるだろ? 言葉とかキャンパスに描いて表現できているのなら、音楽家になってない」
そう言うと、ロイは苦笑いする。
「確かにケンは理論なんて全くなくて、行動するからね」
俺はその言葉に眉を寄せてしまう。
「俺がバカだって言いたいのか?」
ロイは笑って首を横にふる。
「違うよ極座標的な思考の持ち主だって言ってるんだ」
極座標? 俺は首を傾げる。
「途中の計算すっ飛ばして結論に飛ぶ」
「やっぱ、お前俺をバカだって言ってるだろ!」
そう返した時に電話のベルが鳴った。ロイはなぜ俺が怒っているのか理解できないという目をしている。
俺はもっと言いたい事があったがなり続ける電話に出ることにする。
電話の相手は警察だった。
「は? 身元確認?」
電話の向こうで何チャラ刑事とやらは訳わからない事を言う。
そんな暇はないと言うが、刑事はどこまでも協力を仰ぎたいとの一点張り。
俺は仕方がないから警察署に向かう事にする。
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※ ※ ※
Theme=テーマ,主旋律
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