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白い黒猫

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Arrogant man

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 ライブのリハーサルを終え、家ではなくマンションの方へとタクシーを走らせる。結婚して家をニューヨーク郊外に買ったが、俺がそれまで借りていたマンションも手放さず残しておいた。何故って? ブルックリンという場所も気に入っていたし、コチラはコチラで色々使えて便利だからだ。
 ギィ・シャルボペルの瓶とフルーツの入った紙袋を持ち、コンシェルジェに挨拶してエントランスを通折りすぎた。奥にあるエレベータに乗り込む。
 チンという音と共に扉が開き、俺は赤い絨毯の引き詰められた廊下を歩く。そして一番奥にある部屋の鍵を開けた。
 部屋に入ると、暖色系の間接照明の明かりとクスクスした男女の笑い声が俺を迎えた。
 リビングにいくとソファーに二人の人影が見える。金髪のグラマラスな女性が上半身裸の白人男性を押し倒した形でキスをしている。
 女はシンプルなブラックのドレスを纏っている。シンプルだからこそ肉感的な唆るボディーが良く分かるというもの。
 男は俺の登場に驚き一瞬慌てるが、すぐに俺を品定めするような視線を向けニヤリと笑う。その笑みを見て、俺はその男が自信家でプライドがやたら高い、いけ好かない野郎だと察する。
 覆いかぶさっていた女性はjazz界で最もホットな歌姫、そして俺の奥さん。
 輝くブロンドヘアーを掻きあげ濃い緑の瞳を細めて、妖艶に笑い起き上がった。
 俺は男を無視し妻に笑みを返す。リビングのテーブルでアイスがセットされていたワインクーラーにシャンパンの瓶を差し込む。そしてフルーツの入った紙袋を置く。
 近付いてくる妻を腕を広げ迎える。彼女は背中に腕を回して抱きついてくる。
賢史ケンジ、待ってたわ」
「イーラただいま。
 お前の好きなシャンパンを買ってきたぞ。
 しかし先に楽しんでいるなんてズルいだろ」
 イーラはフフフと笑い俺に真っ赤な唇を近づけキスをしかけてきた。
 俺も舌を絡めそのキスに応えることにする。相変わらず股間にガツンと刺激してくるキス。イーラは少し身体を離して緑の目を細めて猫のように笑う。
「貴方がくる前に、余熱処理していたんじゃない」
 チラリと向けられた視線とその言葉に男の顔がエッという表情になりソファーから起き上がる。
 この男はイーラが日本人である俺とのセックスに物足りなさを感じていると勘違いしたのだろう。欲求不満だから誘ってきたと思っていたようだ。
 だからこそさっきあんなシーンを見られても、俺に蔑んだような笑みを向けてきた。『俺がお前の妻を楽しませるからお前は尻尾まいて出て行け』くらい思っていたのだろう。
「しかし、少し冷めてしまったか?」
 視線を男の方に向けると、男は立ち上がりやや顔を青ざめさせオロオロしている。
「温め直せばよいのよ」
 イーラは逃げようと部屋の出口に視線だけ走らせた男の背後に回り込み、身体を摺り寄せる。

 カチャッ

 小さいそんな音が部屋に響く。男はもがくように慌てるが腕が動かせなくなったようだ。近づき男の正面から身体を寄せるようにして肩ごしに背中を伺うと、男の両手は手錠で繋がれている。
「お前、こういう趣味もあったのか?」
 問いかけると、イーラは心外だと言わんばかりに目を見開き、頭を横に振る。
「違うわよ! これはこの人の持ち物。使ってもらいたくて持ってきたみたいだから」
「ま、待ってくれ、これには少し行き違いが……」
 慌てて言い訳する男を無視して俺と妻は会話を続ける。
 イーラの長い舌が男の首筋を舐め上げ、男は「ヒッ」と声を出し身体を震わせる。撫でつけた髪に、ジムで鍛えあげてきたであろう身体。
 俺を見て蔑んだ高慢な雰囲気の笑みから、コイツは自尊心が高く相手を支配する事に喜びを感じるタイプ。
 使われるのではなく、イーラに対して手錠を使って屈服させ責めたてるつもりだったのだろう。
 その為隠し持っていたが、イーラにはシッカリバレていた。イーラの指が裸の男の身体を滑るように動き、エロい唇がその背中を愛撫していく。
「そうか、だったら仕方がない。俺はそういうプレイは好きではないが、今夜はコイツの趣味にジックリ付き合ってやるか」
 俺は男に、人がよく見えるであろう笑みで笑いかけてやる。しかし男を寛がせる効果はなかったようだ。 




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