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そろそろ本気出すとき
何かの予感
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バタバタと仕事に追われている間に三月となった。週末の午前中は友人とフットサルを楽しみ、午後は野郎だけで食事会とかカラオケ。
「トモ! お前のその買い物は俺に対する嫌味か?」
一緒に買い物していた友人がブーブー言い出す。
「違うって、仕事柄義理チョコが多いんだよ! 俺がモテないのは知っているだろ!」
俺はかわいいパッケージのクッキーを一杯入れた買い物袋を下げながら、そう言葉を返す。そう、コレは職場や客先で頂いた義理チョコのお返し。
甘い物は好きなだけに、チョコを貰えるのは嬉しいが、人として貰いっ放しという訳には行かない。そこはお礼というモノが必要になる。
社内は課ごとにおやつの時間にシェアして楽しめるものといった事などを考えなければならない。それがチョット面倒なのが困った所。そこでホワイトデーの前の週末にこうして買い出しをしていたのである。
「と言いつつ、お前いつもチャッカリ彼女作ってきたじゃん!」
失礼な奴である。
「お前と違って、俺は努力してんの! 格好良い男になる事と、人に誠実である事を!」
友人は溜め息つく。
「でも、俺がお前みたいに女子に構うとキモいって言われるんだよ。お前のキャラは何でも許されるから」
俺はチロリと友人を睨む。そんなに女の子に対してチャラチャラしている訳ではなく、普通にお話しているだけである。
「お前は必死な感じで、下心見え過ぎなんだよ!」
そう、友人の女性を前にした時のテンションは異様に高く、男の俺でもコワいものがある。
そう言いながらマシュマロの試食を楽しむ。スゴくシットリしていて、ウマい!
面倒とはいいつつも、普段あまり訪れないこういうファッションビルを歩くのも意外と楽しい。
男二人でというのは何だが、この季節だからこそ堂々と歩けるというものである。なんとかお返しのお菓子を買い終わり、ホワイトデー専門会場を後にした。
ふとある店を通り過ぎた時に、フワリと心地よい薫りがする。見てみると綺麗なガラスの瓶に白っぽい造花が生けられているというモノが並んでいた。その造花は、綺麗だけど厚みのある花弁で、どこか素朴な感じ。なんか落ち着いた雰囲気を持っていて、見ていてなんかホッとする。
別にそれに特別興味があったという訳ではない。それが何だろうとジッと見ていたからか、店員さんがニコニコと近づいてくる。
「コチラ、可愛いでしょ? ソイフラワーと言いましてタイの豆科の木で、一つ一つハンドメイドで作られたお花なのですよ。このようにフレグランスリキッドに刺しておくと、ほんのり花に色がつくの。また違った味わいになるのよ。そしてルームフレグランスとして使えるの♪」
パッケージに入っているソイフラワーは真っ白のアイボリーホワイト。しかしサンプルを見ると淡い黄色とか、ブルーとか、ピンクに染まっている。色がつくとまた違う雰囲気になってカワイイ。
「コチラは可愛いだけでなく、香りに癒し効果もあるのですよ。私も使っています。疲れて帰った時にこの香りに迎えられるとホッとするのよ! 幸せな気分になるというか」
ニコニコ笑っているその店員さんの顔をチラリと見る。この人がこうして笑顔で頑張った後、家でこの花を前に寛いでいる姿を想像した。その頭の中の女性が別の女性の姿へと変化する。
彼女もこうやって仕事を必死で頑張って毎日を過ごしている。その暮らしに、こんな香りと花ががあったら、癒されてもっと頑張れるのだろうか? なんて事を突然考えてしまう。
「コレ、一番癒される香りってどれですか?」
俺の質問に友人は驚くが、店員さんはさっきより明るさの増したニッコリとした笑顔を返す。
「ラベンダーベースの『月の夜』。グリーン系の香りで構成された『森の妖精』が良いかと思いますよ!」
ジックリと両方の香りを吟味して、『森の妖精』を買うことにした。『月の夜』は若干花の香りが強すぎて、逆に落ち着かない気がした。逆に『森の妖精』の方香りにアイツっぽさを感じがする。
「お前、マジで買うの?」
友人が驚いた顔をするが、プレゼント用のラッピングをお願いして買ってしまった。
「何? お前、やっぱり彼女いるの?」
妙な高揚感を覚えながら、紙袋を下げて歩いていると友人がそう聞いてきた。その言葉に俺は首を横に振るしかない。
「違うよ! 友達にだよ。色々大変なのに頑張っているから」
そうあえて平静を装いつつ答えたが、内心はドキドキしていた。突然こんなモノを俺から贈られて彼女はビックリしないだろうかと。
「『コレで疲れを癒して!』とかいう感じで渡してしまうんだろうな。お前って、そういう一見キザな事を普通にしでかすんだよ」
俺は友人をチラリと見上げ唇を突き出す。
「そんな事ないよ……」
別にいつも平然としている訳ではない。ただ突然衝動的にこういう事をしたくなる事がある。純粋に、相手に喜んで貰いたいそれだけの事なのだが。
それに買っちゃたモノは仕方がない。もう渡すしかないではないか。別にそんな特別な事ではない。バレンタインも友チョコがある世界である。それにバレンタインには彼女から友チョコではあるけれど貰っている。そのお礼というので変ではない。そう言い聞かせて、俺は『よし!』と小さくつぶやき、大きく深呼吸した。
何だろう、久しぶりのこのドキドキ。不安もあるけどなんだか楽しい。テンションもすごく上がってきた。
「今日は買い物付き合わせて悪かったな、喉乾いただろ、喫茶店でも行かない? 奢るから!」
俺は友人にそう声かける。友人に奢ってやろうなんて言うなんて、なんだか気も大きくなっているようだ。苦笑していた友人も、その言葉にニヤリとする。
まずは一旦珈琲を飲んで落ち着こう。俺は友人をつれて喫茶店に向かって歩き出すことにした。
「トモ! お前のその買い物は俺に対する嫌味か?」
一緒に買い物していた友人がブーブー言い出す。
「違うって、仕事柄義理チョコが多いんだよ! 俺がモテないのは知っているだろ!」
俺はかわいいパッケージのクッキーを一杯入れた買い物袋を下げながら、そう言葉を返す。そう、コレは職場や客先で頂いた義理チョコのお返し。
甘い物は好きなだけに、チョコを貰えるのは嬉しいが、人として貰いっ放しという訳には行かない。そこはお礼というモノが必要になる。
社内は課ごとにおやつの時間にシェアして楽しめるものといった事などを考えなければならない。それがチョット面倒なのが困った所。そこでホワイトデーの前の週末にこうして買い出しをしていたのである。
「と言いつつ、お前いつもチャッカリ彼女作ってきたじゃん!」
失礼な奴である。
「お前と違って、俺は努力してんの! 格好良い男になる事と、人に誠実である事を!」
友人は溜め息つく。
「でも、俺がお前みたいに女子に構うとキモいって言われるんだよ。お前のキャラは何でも許されるから」
俺はチロリと友人を睨む。そんなに女の子に対してチャラチャラしている訳ではなく、普通にお話しているだけである。
「お前は必死な感じで、下心見え過ぎなんだよ!」
そう、友人の女性を前にした時のテンションは異様に高く、男の俺でもコワいものがある。
そう言いながらマシュマロの試食を楽しむ。スゴくシットリしていて、ウマい!
面倒とはいいつつも、普段あまり訪れないこういうファッションビルを歩くのも意外と楽しい。
男二人でというのは何だが、この季節だからこそ堂々と歩けるというものである。なんとかお返しのお菓子を買い終わり、ホワイトデー専門会場を後にした。
ふとある店を通り過ぎた時に、フワリと心地よい薫りがする。見てみると綺麗なガラスの瓶に白っぽい造花が生けられているというモノが並んでいた。その造花は、綺麗だけど厚みのある花弁で、どこか素朴な感じ。なんか落ち着いた雰囲気を持っていて、見ていてなんかホッとする。
別にそれに特別興味があったという訳ではない。それが何だろうとジッと見ていたからか、店員さんがニコニコと近づいてくる。
「コチラ、可愛いでしょ? ソイフラワーと言いましてタイの豆科の木で、一つ一つハンドメイドで作られたお花なのですよ。このようにフレグランスリキッドに刺しておくと、ほんのり花に色がつくの。また違った味わいになるのよ。そしてルームフレグランスとして使えるの♪」
パッケージに入っているソイフラワーは真っ白のアイボリーホワイト。しかしサンプルを見ると淡い黄色とか、ブルーとか、ピンクに染まっている。色がつくとまた違う雰囲気になってカワイイ。
「コチラは可愛いだけでなく、香りに癒し効果もあるのですよ。私も使っています。疲れて帰った時にこの香りに迎えられるとホッとするのよ! 幸せな気分になるというか」
ニコニコ笑っているその店員さんの顔をチラリと見る。この人がこうして笑顔で頑張った後、家でこの花を前に寛いでいる姿を想像した。その頭の中の女性が別の女性の姿へと変化する。
彼女もこうやって仕事を必死で頑張って毎日を過ごしている。その暮らしに、こんな香りと花ががあったら、癒されてもっと頑張れるのだろうか? なんて事を突然考えてしまう。
「コレ、一番癒される香りってどれですか?」
俺の質問に友人は驚くが、店員さんはさっきより明るさの増したニッコリとした笑顔を返す。
「ラベンダーベースの『月の夜』。グリーン系の香りで構成された『森の妖精』が良いかと思いますよ!」
ジックリと両方の香りを吟味して、『森の妖精』を買うことにした。『月の夜』は若干花の香りが強すぎて、逆に落ち着かない気がした。逆に『森の妖精』の方香りにアイツっぽさを感じがする。
「お前、マジで買うの?」
友人が驚いた顔をするが、プレゼント用のラッピングをお願いして買ってしまった。
「何? お前、やっぱり彼女いるの?」
妙な高揚感を覚えながら、紙袋を下げて歩いていると友人がそう聞いてきた。その言葉に俺は首を横に振るしかない。
「違うよ! 友達にだよ。色々大変なのに頑張っているから」
そうあえて平静を装いつつ答えたが、内心はドキドキしていた。突然こんなモノを俺から贈られて彼女はビックリしないだろうかと。
「『コレで疲れを癒して!』とかいう感じで渡してしまうんだろうな。お前って、そういう一見キザな事を普通にしでかすんだよ」
俺は友人をチラリと見上げ唇を突き出す。
「そんな事ないよ……」
別にいつも平然としている訳ではない。ただ突然衝動的にこういう事をしたくなる事がある。純粋に、相手に喜んで貰いたいそれだけの事なのだが。
それに買っちゃたモノは仕方がない。もう渡すしかないではないか。別にそんな特別な事ではない。バレンタインも友チョコがある世界である。それにバレンタインには彼女から友チョコではあるけれど貰っている。そのお礼というので変ではない。そう言い聞かせて、俺は『よし!』と小さくつぶやき、大きく深呼吸した。
何だろう、久しぶりのこのドキドキ。不安もあるけどなんだか楽しい。テンションもすごく上がってきた。
「今日は買い物付き合わせて悪かったな、喉乾いただろ、喫茶店でも行かない? 奢るから!」
俺は友人にそう声かける。友人に奢ってやろうなんて言うなんて、なんだか気も大きくなっているようだ。苦笑していた友人も、その言葉にニヤリとする。
まずは一旦珈琲を飲んで落ち着こう。俺は友人をつれて喫茶店に向かって歩き出すことにした。
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