3 / 20
相方募集中
そんな相方は遠慮いたします
しおりを挟む
三件の客先を周り会社に戻った俺は、パソコンに向かい報告書を書いていた。まもなくして同じグループの鬼熊さんも営業部に戻ってくる。スーツに眼鏡、長めの髪をシンプルに纏め、コツコツとヒールで颯爽と歩く。いかにも出来るキャリアウーマンという出で立ち。実際そうなのだが、何でだかこの方からは女を感じない。
背丈が百七十超えている筋肉の固さ思わせるカッチリした身体。四角くくいかついフェイスライン。そういった要素のせいで女装した男に見える。性同一障害で女性になった人なのかな? とも最初思ったが、生粋の女性だとか。
「お疲れさまです!」
俺の挨拶に、ニカリと明るい笑顔を返しサッと手をあげ「ただいま!」と返す。こういう男前な行動と動作も、女性らしさを下げているのかもしれない。
しばらくそれぞれの仕事に勤しんでいたが、鬼熊さんが伸びをして肩を回し始める。俺はそれを見て、席を立ち、珈琲サーバーの所に行き、珈琲を二ついれて席に戻る。珈琲豆のメーカーな為に、職場で珈琲を気軽に楽しめるのがこの会社の良い所。
「サンキュー」
鬼熊さんは俺がもってきた珈琲を嬉しそうに受け取った。二人で珈琲を飲んで、一休みすることにする。そうしていると昼間の仲間との会話を思い出す。
「そういえばさ、清酒さんって彼女とかいるのかな」
俺のつぶやきのような質問に鬼熊さんは『ん?』と答える。
「まあ、それなりには遊んでいるのでは? 今はどうなのだろう、最近はそういう会話をしにくくなったからな~」
何だろうこの、思わせぶりな言葉は、俺は突っ込むべきかどうか悩む。でも思い切って聞いてみよう。口を開いたときに「ただ今戻りました」という清酒さんの声が聞こえて、慌ててしまう。
「どうした? 相方。俺の悪口でも言っていたのか?」
清酒さんは、挙動不審の俺が気になったのだろう、そう聞いてくる。俺は首をブルブル横にふり必至に否定。
「それはないわよ! 相方くんなんやかんや言って、清酒くんラブだから」
その言葉に、俺は『え!』と思わず声をあげ、清酒さんは思いっきり顔を顰める。
「相方くん、いま清酒くんに彼女がいるのか気になってしょうがないみたいよ」
そういう話をしにくくなったのではないですか? 鬼熊さん、なんでそうストレートに聞くのか? と俺は心の中で突っ込む。清酒さんは目を一瞬見開き、鬼熊さんとしばらく見つめ合い目をそらした。俺の視線に気が付いたのか、俺の方をじっと見て今度は何故かニヤリと笑う。
「ああ、そういえば、社内で随分面白い噂が流れているらしいぞ!
………俺はお前と付き合っているとかいった感じの」
とんでもない話をしてくる。俺はその言葉にフリーズしてしまうが、鬼熊さんが豪快に笑う。確かに社内では一緒にいる事は多いけれど、何故そうなるのか? どちらも男だというのに!
「何、清酒くんとうとう男に走ったの?!」
清酒さんは苦笑して首を横にふる。
「な、わけないだろ! お前がやたらまとわりついているから!
すっげー迷惑だよ」
その言葉に俺も反論したくなる。
「俺だって迷惑ですよ! それで女の子がよってこなくなったら困りますよ!」
「まあまあ、最近そういう風に、人間関係をみるのが流行りなのでしょ? BLとか言って。でもその話、傑作!」
鬼熊さんだけは、無関係で楽しそうだ。
「こうなったら、速攻彼女を作らないと! って清酒さんが彼女がいる事を公開したらいいだけでは?」
清酒さんは眉をクイっと上げる。なんかいかにもいる事が前提で話をしてしまった事に、俺も「あ」と思う。清酒さんは鬼熊さんをチラリと見るけれど、鬼熊さんも困ったように首を横にふった。しかし、何かを期待するような目で鬼熊さんは清酒さんを見つめている。何なのだろうこの二人の視線の会話は……。
「仕事するか」
結局答えはいわず、そう言い清酒さんは本当に仕事を始めてしまった。微妙な空気とモヤモヤだけが残る。俺に気にするなと鬼熊さんはニコリと笑う。気にするなというのが無理な話である。
※ ※ ※
鬼熊さんは日本人苗字ランキング32454位の名前です。全国で24世帯といかなりのレア苗字。オニクマさん、キグマさんとかいう読み方をされています。
このシリーズで一番のレアな名前の方となっています。
背丈が百七十超えている筋肉の固さ思わせるカッチリした身体。四角くくいかついフェイスライン。そういった要素のせいで女装した男に見える。性同一障害で女性になった人なのかな? とも最初思ったが、生粋の女性だとか。
「お疲れさまです!」
俺の挨拶に、ニカリと明るい笑顔を返しサッと手をあげ「ただいま!」と返す。こういう男前な行動と動作も、女性らしさを下げているのかもしれない。
しばらくそれぞれの仕事に勤しんでいたが、鬼熊さんが伸びをして肩を回し始める。俺はそれを見て、席を立ち、珈琲サーバーの所に行き、珈琲を二ついれて席に戻る。珈琲豆のメーカーな為に、職場で珈琲を気軽に楽しめるのがこの会社の良い所。
「サンキュー」
鬼熊さんは俺がもってきた珈琲を嬉しそうに受け取った。二人で珈琲を飲んで、一休みすることにする。そうしていると昼間の仲間との会話を思い出す。
「そういえばさ、清酒さんって彼女とかいるのかな」
俺のつぶやきのような質問に鬼熊さんは『ん?』と答える。
「まあ、それなりには遊んでいるのでは? 今はどうなのだろう、最近はそういう会話をしにくくなったからな~」
何だろうこの、思わせぶりな言葉は、俺は突っ込むべきかどうか悩む。でも思い切って聞いてみよう。口を開いたときに「ただ今戻りました」という清酒さんの声が聞こえて、慌ててしまう。
「どうした? 相方。俺の悪口でも言っていたのか?」
清酒さんは、挙動不審の俺が気になったのだろう、そう聞いてくる。俺は首をブルブル横にふり必至に否定。
「それはないわよ! 相方くんなんやかんや言って、清酒くんラブだから」
その言葉に、俺は『え!』と思わず声をあげ、清酒さんは思いっきり顔を顰める。
「相方くん、いま清酒くんに彼女がいるのか気になってしょうがないみたいよ」
そういう話をしにくくなったのではないですか? 鬼熊さん、なんでそうストレートに聞くのか? と俺は心の中で突っ込む。清酒さんは目を一瞬見開き、鬼熊さんとしばらく見つめ合い目をそらした。俺の視線に気が付いたのか、俺の方をじっと見て今度は何故かニヤリと笑う。
「ああ、そういえば、社内で随分面白い噂が流れているらしいぞ!
………俺はお前と付き合っているとかいった感じの」
とんでもない話をしてくる。俺はその言葉にフリーズしてしまうが、鬼熊さんが豪快に笑う。確かに社内では一緒にいる事は多いけれど、何故そうなるのか? どちらも男だというのに!
「何、清酒くんとうとう男に走ったの?!」
清酒さんは苦笑して首を横にふる。
「な、わけないだろ! お前がやたらまとわりついているから!
すっげー迷惑だよ」
その言葉に俺も反論したくなる。
「俺だって迷惑ですよ! それで女の子がよってこなくなったら困りますよ!」
「まあまあ、最近そういう風に、人間関係をみるのが流行りなのでしょ? BLとか言って。でもその話、傑作!」
鬼熊さんだけは、無関係で楽しそうだ。
「こうなったら、速攻彼女を作らないと! って清酒さんが彼女がいる事を公開したらいいだけでは?」
清酒さんは眉をクイっと上げる。なんかいかにもいる事が前提で話をしてしまった事に、俺も「あ」と思う。清酒さんは鬼熊さんをチラリと見るけれど、鬼熊さんも困ったように首を横にふった。しかし、何かを期待するような目で鬼熊さんは清酒さんを見つめている。何なのだろうこの二人の視線の会話は……。
「仕事するか」
結局答えはいわず、そう言い清酒さんは本当に仕事を始めてしまった。微妙な空気とモヤモヤだけが残る。俺に気にするなと鬼熊さんはニコリと笑う。気にするなというのが無理な話である。
※ ※ ※
鬼熊さんは日本人苗字ランキング32454位の名前です。全国で24世帯といかなりのレア苗字。オニクマさん、キグマさんとかいう読み方をされています。
このシリーズで一番のレアな名前の方となっています。
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
ずぶ濡れで帰ったら彼氏が浮気してました
宵闇 月
恋愛
突然の雨にずぶ濡れになって帰ったら彼氏が知らない女の子とお風呂に入ってました。
ーーそれではお幸せに。
以前書いていたお話です。
投稿するか悩んでそのままにしていたお話ですが、折角書いたのでやはり投稿しようかと…
十話完結で既に書き終えてます。
家に帰ると夫が不倫していたので、両家の家族を呼んで大復讐をしたいと思います。
春木ハル
恋愛
私は夫と共働きで生活している人間なのですが、出張から帰ると夫が不倫の痕跡を残したまま寝ていました。
それに腹が立った私は法律で定められている罰なんかじゃ物足りず、自分自身でも復讐をすることにしました。その結果、思っていた通りの修羅場に…。その時のお話を聞いてください。
にちゃんねる風創作小説をお楽しみください。
ずぶ濡れで帰ったら置き手紙がありました
宵闇 月
恋愛
雨に降られてずぶ濡れで帰ったら同棲していた彼氏からの置き手紙がありーー
私の何がダメだったの?
ずぶ濡れシリーズ第二弾です。
※ 最後まで書き終えてます。
腹黒上司が実は激甘だった件について。
あさの紅茶
恋愛
私の上司、坪内さん。
彼はヤバいです。
サラサラヘアに甘いマスクで笑った顔はまさに王子様。
まわりからキャーキャー言われてるけど、仕事中の彼は腹黒悪魔だよ。
本当に厳しいんだから。
ことごとく女子を振って泣かせてきたくせに、ここにきて何故か私のことを好きだと言う。
マジで?
意味不明なんだけど。
めっちゃ意地悪なのに、かいま見える優しさにいつしか胸がぎゅっとなってしまうようになった。
素直に甘えたいとさえ思った。
だけど、私はその想いに応えられないよ。
どうしたらいいかわからない…。
**********
この作品は、他のサイトにも掲載しています。
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。
スタジオ.T
青春
幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。
そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。
ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる