優しくて美しい世界

白い黒猫

文字の大きさ
上 下
7 / 24
センセイに逢いに

読めない状況

しおりを挟む
 私は拘置所の中の畳に座り呆然としていた。

 センセイと想いが通じあい恋人となったものの、それからか苦難の日々の始まりだった。
 センセイの周囲の人は、私とセンセイとの関係を一切認めなかった。
 センセイは大学でも人気のあったことで、妬みもあったのだろう、学生から嫌がらせを受けるようになる。
 そしてセンセイの親しい人も一斉に私と引き離そうとし邪魔をしてきた。
 
 その筆頭はさっき神社にもいた眞邉樹里と、名前を言うのも嫌になるあの男の二人。
 眞邉樹里はセンセイの秘書。客員教授の助手ではなく何故秘書? と思ったけどセンセイはプロの画家だけでなく、実家の営む会社の役員や、ギャラリーカフェのオーナーなど様々な副業をしている事で、仕事全般をフォローする為に彼女が付いているようだ。

 年齢は二十代後半位でバスケ部などにいそうなショートヘアーでいつもスーツ姿を着こなしていて仕事の出来る女という感じ。
 華やかというより凛とした美しさのある女性で、まぁ美人だとは思う。

 ラウンジなどで二人きりで話している時は名前で呼びあっていたりしている。
 学生の間では婚約者なのではないかと噂されていたが、センセイは幼馴染だと言っていた。 

 しかしこの眞邉は私とセンセイのお付き合いを悉く邪魔してきた。
 まぁ一緒にいる時のセンセイへの献身ぶりを見ていると分かる。
 単なる部下を超えた感情が透けて見えていたので私という存在が邪魔に思えたのは当然なのかもしれない。
 そのため執拗に妨害してきた。
 話しかけようとすると身体を入れてまで妨害する。研究室に会いに行っても、明らかに中にセンセイがいるのに居ないと嘘をつくという事を平気でしてきた。

 もう一人は……私はあの男を思い出そうとするだけで身体が震えてくるのを感じた。突然私の前に現れ私をズタズタにした。
 センセイの従兄弟とか親戚だというあの男はとんでもなかった……。
 人からあそこまでの殺意を孕んだ悪意を向けられたのは初めてだった。
 私は顔をブルブルと横に振る。

 この二人の事を考えていると精神的にどんどんまいってしまう。今は拘置所にいるということでただでさえ困った状況。
 人生の拘置所。
 今回は同居人なしで一人と言うことで前よりマシではある。
 大きく深呼吸するが、状況が分からない上に読めない。
 私は今度はどんな罪を犯したとして収監されているのだろうか?

 も何も分からない。私は壁にもたれた格好で座った体制で目を閉じた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

世界終わりで、西向く士

白い黒猫
ホラー
 ある事故をきっかけに土岐野 廻の世界はすっかり終わってしまう。  その為、引きこもりのような孤独な生活を何年も続けていた。  暇を持て余し、暇潰しのにネットで配信されているコンテンツを漁る毎日。  色々やって飽きた廻が、次に目をつけたのはウェブラジオだった。  適当な番組を選んで聞いた事により、ギリギリの平和を保っていた廻の世界は動き出す……  11:11:11シリーズ第二弾   他の作品と世界は同じなだけなので単体で楽しめます。  小説家になろうでも公開しています。

「鳥葬」-Bird Strike-

我破破
ホラー
突如として世界中の鳥たちが凶暴化して人喰い鳥になってしまう事件が発生。両親を喰われた少年は、復讐の為に立ち上がる。その時少年が手に入れたのは、「鳥葬」の能力だった……・

本を喰む子

凪司工房
ホラー
約6000字のホラー短編。よく利用している本屋である日、あなたは店主から奇妙な子どもの話を聞かされるが

11:11:11 世界の真ん中で……

白い黒猫
ホラー
それは何でもない日常の延長の筈だった。 いつものように朝起きて、いつものように会社にいって、何事もなく一日を終え明日を迎える筈が……。 七月十一日という日に閉じ込められた二人の男と一人の女。 サトウヒロシはこの事態の打開を図り足掻くが、世界はどんどん嫌な方向へと狂っていく。サトウヒロシはこの異常な状況から無事抜け出せるのか?

無能な陰陽師

もちっぱち
ホラー
警視庁の詛呪対策本部に所属する無能な陰陽師と呼ばれる土御門迅はある仕事を任せられていた。 スマホ名前登録『鬼』の上司とともに 次々と起こる事件を解決していく物語 ※とてもグロテスク表現入れております お食事中や苦手な方はご遠慮ください こちらの作品は、 実在する名前と人物とは 一切関係ありません すべてフィクションとなっております。 ※R指定※ 表紙イラスト:名無死 様

KOWABANA

華岡光
ホラー
身の毛もよだつ厳選した様々な怖い話しをご紹介〜

不労の家

千年砂漠
ホラー
高校を卒業したばかりの隆志は母を急な病で亡くした数日後、訳も分からず母に連れられて夜逃げして以来八年間全く会わなかった父も亡くし、父の実家の世久家を継ぐことになった。  世久家はかなりの資産家で、古くから続く名家だったが、当主には絶対守らなければならない奇妙なしきたりがあった。  それは「一生働かないこと」。  世久の家には富をもたらす神が住んでおり、その神との約束で代々の世久家の当主は働かずに暮らしていた。  初めは戸惑っていた隆志も裕福に暮らせる楽しさを覚え、昔一年だけこの土地に住んでいたときの同級生と遊び回っていたが、やがて恐ろしい出来事が隆志の周りで起こり始める。  経済的に豊かであっても、心まで満たされるとは限らない。  望んでもいないのに生まれたときから背負わされた宿命に、流されるか。抗うか。  彼の最後の選択を見て欲しい。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...