優しくて美しい世界

白い黒猫

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素敵な世界へのいざない

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 「君の絵、個性はあると思う。
 でも君の描く絵は主張だけが強くてチグハグだ。
 世界に対して無頓着過ぎる」
 そんな事言われて私は顔を上げる。眉を少し哀しげなセンセイの顔があった。
「絵描くというのも、対話だと俺は思っている。
 君は一方的に意志をぶつけているだけで、相手からの言葉を聞いていない。
 少し冷静になって目の前の世界や周りを見よう」
 ネットで絵師としてまあまあ人気もあり、最近ではラノベの表紙や挿絵の仕事も出来るようになっていた。絵にはそれなりに自信もあった。
 デッサン等の講義も頑張っていただけに、大好きなセンセイにそのように言われた事は少しショックだった。
 目の前にいるモデルさんを、私なりに綺麗に描いたつもりだった。センセイに素敵な絵だと褒めて貰えるとばかり思っていた。
「世界を見ようとしないなら、君の世界は目と鼻の先だけの狭い空間だけになる。
 君はそんな狭い窮屈な世界で良いのか?
 もっと広い世界で生きてみたくはない?」
 そう言って微笑んだセンセイの表情は優しく綺麗だった。

 確かに私は片田舎で生まれそして育ち狭い世界だけで生きてきた。センセイの言う通りちっぽけな世界の中で生きていて、私の知っている世界は狭くてつまらないモノなのだろう。
 そもそも自分という殻の外の世界興味もなく、矮小な場所で満足していた。
 そんな私に、もっと美しくもっと素敵な世界があることを気付かせてくれたのはセンセイだった。
 センセイと共にいれば、私は自由に羽ばたけ、美しく輝く素敵な場所へと辿り着ける。私にはそう思えた。
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