カッコウの子供

白い黒猫

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カッコウの子供

怪奇現象

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 もう一つ家の中で変わった出来事があった。インフルエンザで倒れていた時に聞こえていた足跡が、その後も聞こえるのだ。
 最初は陽一がまた走り回っていると思っていたのだが。陽一が幼稚園いっている時間や、陽一が一階でお姑さんと遊んでいるのに三階で子供が遊んでいる気配することがある。
 気になり覗いてみても誰もいないという事が起こるようになった。
 気持ち悪いが、そのドタドタとした足音は前に陽一が散々してきたものに似ていて何故か怖いとは思わなかった。
 そして一方陽一があんな音をたてて歩く事が無くなった事にも気が付いていた。

  始めはその謎の現象は気のせい? というレベルのものだったが、だんだんとエスカレートしていった。
 私のすぐ近くでバタバタ地団駄を踏むような音がしたり、いきなり近くの壁がドンドンと激しい音がしたりするようになった。
 さらには水道の水が突然流れだしたり、リビングのモノが散乱していたりと、玩具が家中にちりばめられたりと言うことが起こる。家の中で色々な異常が見られるようになった。舅は陽一がしたとして、激しく叱った。
 それに陽一は震え泣きながら謝っていた。確かにその行動は陽一が拗ねた時に良くする行動ではあるものの、それを陽一がやったとするにはオカシナ点があった。
 陽一がそこにいないタイミングで起こっている事が多く、幼稚園から二人で帰ってくると台所が滅茶苦茶になっていた。
 二人で洗濯物を取り入れて一階に降りるとリビングが汚されていたりした。それを舅に指摘すると舅は困った顔をする。
 「陽一はやっていないのか?」
  その舅の質問に陽一は困ったように黙り込む。その目が何かを追うように動いているのを感じ私はそれを追っていたがそこには何もいなかった。
 「やった事は謝らないとダメだけど、やっていない事を謝るものではない!」
  舅のその言葉には、陽一はコクリと頷く。そして『ボクじゃない』と小さい声で言って、部屋のある一点を睨みつけていた。

  その後も似たような事件が起こるが、陽一がそれから常に誰かといるような行動をしていた為に、その犯人が陽一の所為ではないというのはハッキリしてきた。
 となると、誰なのか? 舅と姑は野良猫の所為として無理やり結論をつけたようだったが私にはそう納得できなかった。そして家にいると常に感じる子供の気配。
 何かしていると私を呼ぶようにコンコン何かを叩く音がする。時々誰もいないところで小さい何かが抱き付いてくるような感覚がする

 コンコン

 家計簿をつけていたら、テーブルを叩く音がする。
 「陽ちゃん?」

  コンコンコンコンコンコン

 そんな音が帰ってくる。

 「陽ちゃんそこにいるの?」

  コンコンコンコンコンコン
 コンコンコンコンコンコン
 コンコンコンコンコンコン

 何故だろうか? 陽一がやっていないと証明された悪戯、そしてこういった音。それなのに何故かその気配に陽一を感じる。
 「ママ! どうしたの?」
  突然陽一の声がして顔をあげると、今日はお姑さんのお迎えで幼稚園から帰ってきた所らしい陽一が立っていた。その表情がいつになく硬い。というか怖い。 らしくない険しい顔でコチラをみている。
 「おかえりなさい、陽ちゃんどうしたの? そんな顔をして」
  陽一はハッとした顔をして慌てて笑顔をつくる。
 「ただいま、ママ」
  そういって私に抱き付いてくる。その力の強さに驚く。
 「どうしたの陽ちゃん。幼稚園で何かあったの?」
  私に顔を押し付けたまま顔を横に振る。
 「ううん? ただ寒かったから。ママに早く会いたかったの。ママあたたかいね」
  そう陽一が言ったとたんに、壁が激しく叩かれる音がする。
 「煩い!! そういう悪戯するから、みんなから嫌われるんだよ!」
  陽一は私から離れて音のする壁に向かって怒鳴りつける。最近そのように叫んだり怒鳴ったりする事がなかったから私も驚く。その途端にその音は聞こえなくなる。
 「陽ちゃん? そこに誰かいるの?」
  私がそう聞くと、陽一は慌てたように頭を横にふる。
 「ママを困らせている奴から、ボク守るから! 怖がらないで」
  陽一はそう言って笑い、その後ある一点を睨みつけた。
  その後、陽一の姿が見えないと思っていたら三階にいたようだ。そっと覗くとロフトの所にいて一人でおしゃべりしている。
 「なんで、君はそんなに悪い子なの? 悪戯ばっかりして人を困らせて楽しい? みんなすごく怖がっているし、君の事を気持ち悪いと思っているよ。そんなことして嬉しい?」
  陽一が誰かを叱っている音がする。声をかけるとその声はピタリと止む。
 「お友達と遊んでいるの?」
  そう声をかけると陽一は顔を出して顔を横にふる。
 「ううん、一人でゲームして遊んでいるの!」
  作り笑いと分かるその顔は、明らかに彼が嘘をついているのを示していた。梯子を上り覗き込んでも誰もいないのでそれを信じるしかない。しかしDSの電源も入っておらず遊んでいた感じはない。
 「もうすぐご飯だから、そうしたらやめなさいよ!」
  陽一は良い子のお返事をして頷く。
 「だったら、お手伝いする~」
  ニコニコと笑い、ロフトから出て私についてくる。
 「今日のご飯はなに?」
 「おでんよ!」
  そう答えながら、後ろで聞こえた小さな物音に振り返る。しかしそこには暗い電気の消えたロフトが見えるだけだった。
 「ママ! 作ろう! おでん作ろ!」
  陽一に促されて部屋を出ることにする。出る瞬間、名前を呼ばれた気がして振り返ったがやはりそこには誰もいなかった。
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