カッコウの子供

白い黒猫

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何かそこにいる?

見知らぬ名前

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 日曜日の夜、携帯が震えて余り楽しくない名前がディスプレイに表示されている。
 出たくはないが、ここで出なくても、また夜にかかってくるだけだから、俺は通話ボタンを押す。
 『孝之タカユキやっと出たわね!
  アンタのとこ、DS余ってるわよね?
  母さんから、3DS持ってたと聞いたの。だったら部屋で古いのは転がってるだけだと思って電話したの』
  挨拶もなく、いきなり要件を言ってくるのが、姉である静香の特長。
  名前とは真逆のマシンガントークが得意な威圧系。俺よりも男らしく、行動力と実行力ある。実質我が家の長男的存在である。
 「は?」
 『もしアンタがもう使っていなくて、まだ使えるようなら陽一にあげてくれない?
 実はさウチの壊れてしまって、それをあの子『バアバが壊したからなくなった。遊べない』って、ずっとしつこくお義母さんを責めて見てられないの。
 あの子がちゃんと片付けしなかったのが悪いのに。このままだと、お義母さんに買わせそうな勢いで』
  陽一というのは俺の甥っ子で、姉の息子。
 お義母さんから新品貰えるならば、それはそれで良いのでは? とも思う。
 孫に何か買って、喜ばす。ソレはお爺ちゃんお婆ちゃんの楽しみでもあるのではないか?
 「俺の古いぞ、それに旧タイプだから飛び出さないし、クリスマスプレゼントとして貰えば……」
  俺の言葉を最後まで聞かずに姉貴は『駄目よ!』と遮る。
 『アンタだって子供時代の事思い返せば分かるでしょう?
 壊れたからってホイホイ新しいの手に入った? あの子は、サンタさんと両お爺ちゃんズにしっかりプレゼントの依頼しているの。
 ソレはもう変更効かないから、クリスマスにソレ以上のプレゼントは必要ないの。
 それに壊したら新品貰えるなんて事、覚えたら教育上よくないし、四歳の子供に最新モデルは要らないわよ!
 絵が動いているだけで楽しめるんだから!』
  優しく甘い母になるタイプではないのは察していた。それどころか姉貴かなり厳しい母親のようだ。
 しかし甥っ子の陽一はなかなかのヤンチャ坊主でこの姉貴にガミガミ育てられても、俺とは異なりソレで萎縮するわけでもなく、元気に育っている所は凄いと思う。
 「まあ、動くかどうか確かめてみるよ」
  そう言って電話を切る。そして古いDSを何処にやったかな? と視線を部屋に巡らせると、本棚の下のほうの棚に懐かしい色を見付ける。
 ここに入れっぱなしだったようだ。流石に電池切れしてて電源は入らないだろうな?
 と思ってボタンを押すと意外な事にディスプレイが光り途中で放り出したロールプレイニングゲームのドラゴンサーガのオープニングムービーが流れる。
 買ったものの忙しくて殆ど出来なかったヤツである。ゲームを起動してみると、二つ残されているセーブデータの一つはレベル57となっていて、何処かのダンジョンの前にいるようだ。
  一年程放置していたから、ストーリーが殆ど思い出せない。
 意外に良さげな装備を着ている所から、自分が思うよりも進めていたらしい。恐らくは、一気にやりこんで、面倒なダンジョンで気力が尽きたのだろう。
 俺はダンジョンに入る訳でもなく、キャラをその付近でウロウロ動かしてから、問題なくDSが使えている事を確認してゲームを終了させる。
 「あとACケーブルも必用だよな?」
  DSの入っていた籠に視線をやると、ケーブルもシッカリそこに入っていた。陽一にあげるのに問題はなさそうだ。
  どうせなら、俺が使ってないゲームをついでにあげるかと、同じ棚にあるゲームのパッケージへと目をやる。
 流石にドラゴンサーガはまだ六歳には早いだろうし、俺もまだ終らせてないからあげられない。やわやわ脳トレはまだ六歳には要らないだろう。
  マルコカートというキャラが人気のレースゲームと殆ど遊んでないパズルゲームを付ける事にした 。
 そのパズルゲームはどんな感じなのゲームなのか試しに入れて見て首を傾げる。
 何故かセーブデータ既にあり『リュウキ』という名前がついている。
  誰だろうか? この名前に記憶がない。しかもかなりゲーム時間も長く結構やりこんでいるようだ。
 基本俺はゲームするときは何か名前を態々つけてセーブデーターを作らず、自分の名前を入れておく。
  コレ中古ではなく、たしかワゴンで安くなっていた新品を買った筈。俺は中古ではゲームは基本買わない。
 しかも俺の名前である「タカユキ」がない。このゲームを人に貸した記憶もない。
 若干の気持ち悪さを感じたものの、大したことはないと思い俺はそれらそ部屋に転がっていた紙袋に纏めてつっこんだ。
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