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AFTRE
【商店街夏祭り企画】死角だらけのキーボくん
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この商店街は、四季折々のイベントを楽しみ盛り上がる所があるが、夏の花火大会と夏祭りは他のイベントとは別格の扱いであるようだ。準備の段階で皆の意気込みの違いを感じた。その二日間は『浴衣の夏』というテーマで商店街の住民はみな浴衣でお客さんを出迎え、浴衣でくる人は割引といったサービスも用意しているらしい。黒猫も店頭でビールとカクテルの販売を行う。そして俺は澄さんに作ってもらった浴衣を着用し挑むつもりだ。夕方だけはキーボくんで、商店街中央広場にて行われるイベントの手伝いをする予定。昼間にキーボくんで仕事は危険という事で、日中は舞台の上で二号さんの着ぐるみだけが浴衣を着て椅子に腰かけイベントを見守り、一号は夕方に商店街で行われた浴衣美人コンテストの入賞者へ商品の受け渡しのお手伝いがということになった。商店街だけでなく地域あげてのお祭りとなり警察の警備の人も必要なくらい集まってくる。商店街に来ている人の人数も違った。俺は浴衣でキメたキーボくんを着た状態で、いつも以上に賑わっている商店街を、お祭りのイベント本部となっている篠宮酒店の倉庫から上半身だけ出して観察していた。
「スゴイ人ですね~」
そう思わず呟く俺。
「まあ、花火見たい奴もワンさとくるから、この日は特別だな~」
燗さんはそう答えてくる。
ここから中央広場の舞台までは数十メートル。初めてキーボくんを見る人もいるだろうから、『よりキーボくんとこの商店街の素晴らしさを知ってもらうために頑張るぞ』と歩き出す。しかし一歩歩く毎に、だんだん戸惑いを深める。人が多すぎるのだ。なんとか半分まで来たときに何か足元に絡みついてくる。この感触は子供。良かったうっかり踏まないで済んだ。
「キーボくんだ~」
ドン
背後下方からも声が聞こえ、衝撃が軽くおこる。これは抱きつかれたらしい。
「キャー何、コレ、超ウケる~カワイイー」
浴衣のワリにシットリ感ゼロの高校生がコッチに携帯を手に近づいてくるのが見えた。横からも衝撃。どうやらさっきの高校生が横から抱きついてきたようだ。前には携帯カメラでコチラを撮影しているその友達が見えた。
「スッゴクカワイイんだけど、コレ~」
次々と衝動が起こり、俺は倒れないように踏ん張るしかに。皆好き勝手に突進してきているようだ。
「何々、こっから外みているの?」
キーボくんの正面に立っていた女の子が顔を近づけてくる。
そんな近づくと視界が!! お願いだから目の部分を塞がないで、外がまったく見えない。周囲に人に囲まれている気配だけがしてまったく動けない。動いたら確実に人をなぎ倒す。そういう状況で俺は立ち尽くすしかなかった。そっと手を引き抜き、ポケットの携帯を取り出す。小野くんにメールをだす。
『助けて!!! 中央広場東側でキーボくんの姿でいたら囲まれて身動きできない!!』
今黒猫前で仕事しているからすぐ来てもらえると思う。
「ーーさん!! 大丈夫ですか?」
小野くんが俺を呼ぶ声が聞こえる。その声が囲まれ揺さぶられている俺にとってどれほど心強いものに思えたか。明らかに感情のまま動いている衝撃とは違うガシッつとした振動が中に伝わる。小野くんがキーボくんを守るように抱きしめてくれたのだろう。
「みなさん少し離れて! キーボくん大変な事になっているから! ちょっと道開けて! キーボさん、いいですか移動しますよ」
(ありがとう、小野くん。君は命の恩人だよ)
俺は言葉にならない感謝の気持ちを心の中で呟く。小野くんが誘導してくれることで移動する事ができるようになった。連れていかれたのは、黒猫の前だったようだ。俺の姿を見て杜さん澄さん、そしてお隣の璃青さんと璃青さんのお母さんが目をまるくして俺を見ている。
「まあ、一号ちゃん、あられもない恰好になって」
「ユキくん 大丈夫? スゴい事になってるよ……」
「旅館に泊まった寝相の悪い奴みたいですユキさん」
四人が笑い出す。俺は相当ヒドイことになっていたようで恥ずかしい。杜さん澄さんや小野くんいいけど、璃青さんやお母さんにどえらい姿見せたようなのが気にかかる。マスコットが襲われるって、どんな商店街だ! って思われてないだろうか。
澄さんが近づき、浴衣の着付けを治してくれたから元通りにはなったようだ。しかしこの人混みで再びイベント広場を目指すのは怖い。ジッと根小山ビルヂングの引っ込んだ所から中央広場を伺う。コンテストも佳境に差し掛かっているそろそろ、終わりそうだ。それまでに行かないといけない。俺は振り返り、小野くんの方を見て協力を仰ごうとする。
「璃青さん、アテンダーお願いできないかかな? キーボくんこのままだとまたもみくちゃにされるから」
杜さんの声に『え?』って声を出してしまう。そんな、彼女はお店もある。申し訳ない。
「小野くんさっき、チョッと口調とかキツかったから。そういうにのは女性が優しく言った方が良いのかなと」
「すいません。でも、もう好き勝手されていたんで……」
小野くんが少し表情を暗くして謝る。
「謝らないでよ! 小野くんが来てくれて本当助かったから。本当にありがとう!」
俺は小野くんの手をとって改めて感謝の意を伝える。
「璃青! 今度はあんたがキーボくんを守る番よ!この商店街で散々皆さんにお世話になってるんだから、今こそ恩を返すチャンスじゃないの!」
小野くんが何か言葉を返す前に璃青さんのお母さんがそう力説してくる。小野くんから手を放しお母さんの方に向き直る。
どういう論理なのだろう? 同じように呆然とした璃青さんだったが、ニッコリ笑う。
「もう、お母さんたら……。分かったわ。それじゃ、ユ、キーボくん、行きましょう。逆にわたしじゃ心配かもしれないけど………」
そう言ってキーボくんの手をとってくる。そしてそのまま二人で歩き出す。
「ごめんね~、キーボくんこれからお仕事なんだー。
そこチョッと通してくれるかな~?」
確かに小野くんよりもソフトに誘導してくれている。俺はそんな璃青さんにただ大人しく導かれるだけ。
以前二号さんと手を繋いで歩いたけれど、その時にはなかった照れ臭さを覚える。なんか俺は保護された迷子の子供みたいだ。
無事舞台まで到着し、無邪気なマスコットを演じるのを、璃青さんが残って見守っているのが見えた。目があったら、璃青さんが小さく手をふってくる。なんかスゴく照れ臭い 。逆に今顔が見えてなくて良かったと思った。プレゼンターという仕事を終えた、二人でまた手を繋いで帰る。正体バレないように一旦小道から裏通りに回りと、遠回りのルートを二人で手を繋いだまま黙って歩く。チラリと璃青さんを見ると、何故かニコニコと楽しそうだ。浴衣というのもあるのか、いつもより大人に見える 。俺の視線を感じたのか、コチラを見つめ返す。そしてフワリと優しい笑みを浮かべてくる。 その表情の美しさにドキリとして足を止めてしまう。
「キーボくん 、どうかした?もしかして具合悪い?」
璃青さんは動きを止めた俺を不思議そうに見つめ顔を近づけてくる。
「璃青さんが、あまりにも綺麗だったので」
ポロリと思ったままの言葉を言って後悔する。璃青さんも呆気にとられている。
ップ
どうしようかと考えていると、璃青さんが吹き出し笑い始める。
「その顔でキザな台詞って!!………くっ、ダメだごめん、腹筋壊れる………っ!あはははははっ」
笑いだしたら止まらなかったのか繋いでいた手を放し、お腹抱えて笑い続ける。キザに聞こえる言葉を言ってしまった事と、それを間抜け顔のキーボくんで放ってしまったという事、二重の意味で恥ずかしくなり、頭抱えたくなる。そんな泣くほど笑わなくても……。
「ありがとう、キーボくん。涙が出るほど嬉しいよ!」
そう言ってナデナデされるのもどうなんだろうと思う。キーボくん着てなくても、彼女にとっては弟みたいな扱いなのだろう。俺はキーボくんの中で溜め息をつく。
根小山ビルヂング裏口に無事到着して、俺はペコリと璃青さんやお母さんにお辞儀して、杜さんには着替えてくる旨をジェスチャーで伝え部屋に戻る事にした。
キーボくんを脱いでベランダに吊るし、風呂場に行き、汗だくになった衣類を脱ぎ捨てシャワーを浴びる。汗を流しコロン着けて浴衣に着替える。サッパリしたのと、和装になったことで少し気分が切り替わる。俺はもう一度深呼吸してから下に戻る事にした。
「スゴイ人ですね~」
そう思わず呟く俺。
「まあ、花火見たい奴もワンさとくるから、この日は特別だな~」
燗さんはそう答えてくる。
ここから中央広場の舞台までは数十メートル。初めてキーボくんを見る人もいるだろうから、『よりキーボくんとこの商店街の素晴らしさを知ってもらうために頑張るぞ』と歩き出す。しかし一歩歩く毎に、だんだん戸惑いを深める。人が多すぎるのだ。なんとか半分まで来たときに何か足元に絡みついてくる。この感触は子供。良かったうっかり踏まないで済んだ。
「キーボくんだ~」
ドン
背後下方からも声が聞こえ、衝撃が軽くおこる。これは抱きつかれたらしい。
「キャー何、コレ、超ウケる~カワイイー」
浴衣のワリにシットリ感ゼロの高校生がコッチに携帯を手に近づいてくるのが見えた。横からも衝撃。どうやらさっきの高校生が横から抱きついてきたようだ。前には携帯カメラでコチラを撮影しているその友達が見えた。
「スッゴクカワイイんだけど、コレ~」
次々と衝動が起こり、俺は倒れないように踏ん張るしかに。皆好き勝手に突進してきているようだ。
「何々、こっから外みているの?」
キーボくんの正面に立っていた女の子が顔を近づけてくる。
そんな近づくと視界が!! お願いだから目の部分を塞がないで、外がまったく見えない。周囲に人に囲まれている気配だけがしてまったく動けない。動いたら確実に人をなぎ倒す。そういう状況で俺は立ち尽くすしかなかった。そっと手を引き抜き、ポケットの携帯を取り出す。小野くんにメールをだす。
『助けて!!! 中央広場東側でキーボくんの姿でいたら囲まれて身動きできない!!』
今黒猫前で仕事しているからすぐ来てもらえると思う。
「ーーさん!! 大丈夫ですか?」
小野くんが俺を呼ぶ声が聞こえる。その声が囲まれ揺さぶられている俺にとってどれほど心強いものに思えたか。明らかに感情のまま動いている衝撃とは違うガシッつとした振動が中に伝わる。小野くんがキーボくんを守るように抱きしめてくれたのだろう。
「みなさん少し離れて! キーボくん大変な事になっているから! ちょっと道開けて! キーボさん、いいですか移動しますよ」
(ありがとう、小野くん。君は命の恩人だよ)
俺は言葉にならない感謝の気持ちを心の中で呟く。小野くんが誘導してくれることで移動する事ができるようになった。連れていかれたのは、黒猫の前だったようだ。俺の姿を見て杜さん澄さん、そしてお隣の璃青さんと璃青さんのお母さんが目をまるくして俺を見ている。
「まあ、一号ちゃん、あられもない恰好になって」
「ユキくん 大丈夫? スゴい事になってるよ……」
「旅館に泊まった寝相の悪い奴みたいですユキさん」
四人が笑い出す。俺は相当ヒドイことになっていたようで恥ずかしい。杜さん澄さんや小野くんいいけど、璃青さんやお母さんにどえらい姿見せたようなのが気にかかる。マスコットが襲われるって、どんな商店街だ! って思われてないだろうか。
澄さんが近づき、浴衣の着付けを治してくれたから元通りにはなったようだ。しかしこの人混みで再びイベント広場を目指すのは怖い。ジッと根小山ビルヂングの引っ込んだ所から中央広場を伺う。コンテストも佳境に差し掛かっているそろそろ、終わりそうだ。それまでに行かないといけない。俺は振り返り、小野くんの方を見て協力を仰ごうとする。
「璃青さん、アテンダーお願いできないかかな? キーボくんこのままだとまたもみくちゃにされるから」
杜さんの声に『え?』って声を出してしまう。そんな、彼女はお店もある。申し訳ない。
「小野くんさっき、チョッと口調とかキツかったから。そういうにのは女性が優しく言った方が良いのかなと」
「すいません。でも、もう好き勝手されていたんで……」
小野くんが少し表情を暗くして謝る。
「謝らないでよ! 小野くんが来てくれて本当助かったから。本当にありがとう!」
俺は小野くんの手をとって改めて感謝の意を伝える。
「璃青! 今度はあんたがキーボくんを守る番よ!この商店街で散々皆さんにお世話になってるんだから、今こそ恩を返すチャンスじゃないの!」
小野くんが何か言葉を返す前に璃青さんのお母さんがそう力説してくる。小野くんから手を放しお母さんの方に向き直る。
どういう論理なのだろう? 同じように呆然とした璃青さんだったが、ニッコリ笑う。
「もう、お母さんたら……。分かったわ。それじゃ、ユ、キーボくん、行きましょう。逆にわたしじゃ心配かもしれないけど………」
そう言ってキーボくんの手をとってくる。そしてそのまま二人で歩き出す。
「ごめんね~、キーボくんこれからお仕事なんだー。
そこチョッと通してくれるかな~?」
確かに小野くんよりもソフトに誘導してくれている。俺はそんな璃青さんにただ大人しく導かれるだけ。
以前二号さんと手を繋いで歩いたけれど、その時にはなかった照れ臭さを覚える。なんか俺は保護された迷子の子供みたいだ。
無事舞台まで到着し、無邪気なマスコットを演じるのを、璃青さんが残って見守っているのが見えた。目があったら、璃青さんが小さく手をふってくる。なんかスゴく照れ臭い 。逆に今顔が見えてなくて良かったと思った。プレゼンターという仕事を終えた、二人でまた手を繋いで帰る。正体バレないように一旦小道から裏通りに回りと、遠回りのルートを二人で手を繋いだまま黙って歩く。チラリと璃青さんを見ると、何故かニコニコと楽しそうだ。浴衣というのもあるのか、いつもより大人に見える 。俺の視線を感じたのか、コチラを見つめ返す。そしてフワリと優しい笑みを浮かべてくる。 その表情の美しさにドキリとして足を止めてしまう。
「キーボくん 、どうかした?もしかして具合悪い?」
璃青さんは動きを止めた俺を不思議そうに見つめ顔を近づけてくる。
「璃青さんが、あまりにも綺麗だったので」
ポロリと思ったままの言葉を言って後悔する。璃青さんも呆気にとられている。
ップ
どうしようかと考えていると、璃青さんが吹き出し笑い始める。
「その顔でキザな台詞って!!………くっ、ダメだごめん、腹筋壊れる………っ!あはははははっ」
笑いだしたら止まらなかったのか繋いでいた手を放し、お腹抱えて笑い続ける。キザに聞こえる言葉を言ってしまった事と、それを間抜け顔のキーボくんで放ってしまったという事、二重の意味で恥ずかしくなり、頭抱えたくなる。そんな泣くほど笑わなくても……。
「ありがとう、キーボくん。涙が出るほど嬉しいよ!」
そう言ってナデナデされるのもどうなんだろうと思う。キーボくん着てなくても、彼女にとっては弟みたいな扱いなのだろう。俺はキーボくんの中で溜め息をつく。
根小山ビルヂング裏口に無事到着して、俺はペコリと璃青さんやお母さんにお辞儀して、杜さんには着替えてくる旨をジェスチャーで伝え部屋に戻る事にした。
キーボくんを脱いでベランダに吊るし、風呂場に行き、汗だくになった衣類を脱ぎ捨てシャワーを浴びる。汗を流しコロン着けて浴衣に着替える。サッパリしたのと、和装になったことで少し気分が切り替わる。俺はもう一度深呼吸してから下に戻る事にした。
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