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脱出の為の破壊
短い一日
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見つめていた明日香の顔が突然消え、次に感じたのは闇。突然テレビを消したかのような唐突な変化。
アラームの音がする。俺はゆっくり目を開けると見慣れた俺の部屋の天井。俺は首を横に向けるがそこには明日香はいない。アラームも鳴りっぱなしのスマフォを手に取る。手には包帯どころか火傷もない。一瞬前まで俺を苦しめていた身体中の痛みはどこにもない。気持ちを落ち着かせるためにしばらくそこで深呼吸する。
アラームを止めてディスプレイを見ると【7/11 06:03】の文字。
モンドの交差点の破壊が事態を変えてくれていたのでないかという期待と、やはり変わらずまた七月十一日が来るという予感。半々の気持ちだった為に衝撃も半分。かといって虚しさは変わらない。
スズタンのTwitterを調べると存在していた。昨日の呟きまではいつも通りあり、今日の動きはない。
すっかり覚えてしまった高橋のスマフォに電話をかける。
「もしもし……佐藤さん……」
何故か遠慮しがちな高橋の声。
「高橋、おはよう。調子はどうだ?」
「……いつも通りです。変わらない十一日の朝。佐藤さんは身体の具合は如何ですか? 火傷は……残っていませんか? 痛みとか……」
「治ったみたいだ。というかリセットされて火傷なんてしてなかった事にされたというのかな。だから元気だ。ピンピンしている」
フーと溜息が聞こえる。
「良かったです……今……お一人ですか?」
「あぁ。
朝起きたら一人さ。彼女は自分の部屋に戻ってしまったようだ」
「そうですか……」
今日彼女がいつものようにかけて来なかったのは、明日香に遠慮しての事だったようだ。
「どうしますか? 今日は」
「鈴木天史の動きを探る」
俺の言葉に高橋は悩むように黙り込む。
『どうやって? あの人がどう動くか読めませんよ。それにマトモじゃない!
あんな事をしでかしてから平然と珈琲なんて飲んでられます?!
狂ってますよ!』
「しかし、アイツのする事を放っておけない」
高橋は黙り込む。
「だから君には、今日は午前中のメビウスライフさんとの打ち合わせの方を頼む! もう散々打ち合わせしているから、一人でも問題なく出来るだろ?」
『チョット待って下さい。あの男と接触するのは危険です!
あの男は繰り返す今日の記憶を恐らく持っています』
「大丈夫だ。現場を見て怪しい動きしていたら警察に通報する。直には関わらない」
平気にあんな事を起こした人間だけに、さすがに俺も声をかけるのは躊躇うものがある。
「私も行きます!」
「君は仕事をしろ!」
俺はキツめの口調でそう返しておく。
「佐藤さんはズル休みするじゃないですか!」
「溜まっている代休をそのままにしておくと人事が煩い。
だから半休と細かく消化して行かないといけない。午後からちゃんと仕事をするから」
あえて軽い感じで答える。
何が原因で起こったのか分からないだけに、何が原因で戻るかも分からない。だからこそ今日という日を疎かに出来ない。高橋にはシッカリ日常を過ごして貰わないといけない。
「また後で連絡する。
メビウスライフの事は頼んだぞ!」『あっ』
俺はそう言って電話を切る。
テレビを試しに付けてみるが、一言一句変わらず同じ内容を流し続けている。少しは変わったのかと思うが何も変わってないようだ。
スマフォには変わらないメッセージが送られて来ており俺は変わらない返事を返す。初日と変わったのは母親にもちゃんと返事を返している事。
俺としては、真面目に彼女との関係を考えている。今は二人とも大変な状況だから落ち着いたらちゃんと進めるつもりだと返事をしている。
毎日同じ内容を送るのは面倒だと言えばそうだが、母親にはきちんと気持ちを伝えなければならない。繰り返しの日々のなかでそう感じた。
それと、俺たちとは違って明日に辿り着けているであろう親しい人との繋がりを感じたい。
そんな気持ちからこのルーティンを繰り返していた。
さて、どう鈴木を見張るのが良いのか?
離れたホテルのスカイラウンジから見張るのが一番安全なのだろうが死角があり一部見えない場所がある。また歩道橋の下の部分もよく見えない。
やはりモンド周辺に行く方が確実なようだ。
地下鉄で向かいながらネットでモンド付近を検索する。モンドのタワーマンションの関係で本当上手く見張れる場所というのは少ない。
モンドの店は殆どが十一時オープンで高橋とよく行った喫茶店だけが八時半オープン。
あの周辺ではタクシー運転手が利用しているあの喫茶店windlessだけが七時にオープン。
モンドのマンションは空き部屋が無いために中に見学で入ることも出来ない。そもそもそういう見学するには時間が早すぎる。
windlessは交差点から少し離れていることと間口は狭いので外を見張るには向いていない。モンドの喫茶店は歩道橋の様子はよく見えるが下の状況は全く見えない。
もし鈴木が同じ方法を取るのならモンドの喫茶店で見張れば作業を始める段階で直ぐに気が付け、警察に通報出来る。直ぐに捕らえてもらえるだろう。
しかし他の方法を取ればどうする? 悩ましい。
鈴木は繰り返す今日をどう認識しているのかは謎だが、自由に動ける。それだけに行動も思考も読めない。ただ分かるのはMedio Del Mondoという場所に執着しているということ。
地下鉄の駅からモンドに1番近い【B11】出口から階段上り外に出ると、七時半だと言うのにギラついた太陽に襲われ思わず目を瞑る。この後あのゲリラ豪雨がきて、更に竜巻が来るようには見えない天気。
辺りを見渡したが鈴木の姿は確認出来なかったのでモンドに向かう。
今日お世話になった医療施設のある棟から入り消火器の場所等を確認する。消火器と書かれた棚がありそこに赤い消火器が普通にある。二階に階段を使い登るとその廊下にも当たり前のように消火器が隅に置かれたている。なんで前回の時コレに気が付かなかったのか……俺は溜息をつく。建物から外に出る時一瞬身体が竦む。しかしそこには灼熱地獄ではあるものの平和な歩道橋があるのみ。燃えているサラリーマンは今日はいない。
見渡すが鈴木の姿は見えなかった。その事にもホッとする。
深呼吸して歩道橋へと踏み出す。異常がないか調べるが手摺に何が挟まれているということはない。一周してみてふと道路を見下ろし俺は舌打ちをする。
地下鉄の出口から出てくる人物を見えたからだ。それを見て俺は階段を駆け下りる。俺を見て相手はヘラりと笑ってきた。
「こんな時間にここで何している!」
高橋に、俺はそうキツめの言葉で声をかける。
時間は八時二十七分。会社はもう始まっている。
「お休みしちゃいました! 部長も今日休めって勧めてくれましたし」
「休めと言ったのは明日のことだろ! 今日では無い」
高橋は俺の叱りなどまるで気にならないといった様子で笑っている。
今日アレだけ大変な目にあった。ここに来るのは怖かった筈。なのに何故こんなに明るく笑っているのか? いやいつも以上につよい感情を秘めた目で察する。無理しているのだと。
高橋は俺の顔を見て目を細め微笑む。
「よかったです。佐藤さん怪我が治って。元気そうな姿見て安心しました」
その言葉で、高橋が俺をどれ程心配してきたのか察してそれ以上何も言えなくなる。
「もう遅いです! 休みにしてしまいましたので! 今日は何します?」
「お前な~ 俺に午後一人で仕事をしろと?」
その言葉に高橋はハッとした顔をする。
「午後、情報収集お願いして良いか? 午後お前の分も俺が仕事するから」
高橋は『了解です』と何故か敬礼して答える。任務のようなノリになっているのだろう。
さて、高橋に何処にいてもらうのが一番安全なのか?
「あと三分で上のカフェがオープンする。そこで見張ってくれないか? ここの構造だと上と下を同時に見張るのは難しい」
高橋は真面目な顔で頷く。そしてLINEとアドレス交換することにする。声を出さずに連絡取り合うためだ。
「席はいつもの場所ではなく内側に座ってくれ。万が一何かが爆発するような事になったらガラスの側にいるのは危険だ。
何かあった時は、自分で動くな。警備の人呼んでもらうか、警察に連絡しろ」
そう注意を促してから別行動をすることにする。高橋を怪我させる訳にはいかない。
俺はクリニックが開くの待つ人のふりをして、地上部分を見張ることにする。
【高橋、定位置に着きました! 奥めの観葉植物の後ろ辺りにて待機】
スマフォに高橋から、連絡か入る。
敬礼している、よく分からないゆるい感じの猫のスタンプに少し気が抜ける。しかし、次のコメントで笑えなくなる。
【スズタンのTwitterが消えました! 退会したみたいです】
見てみるとさっきまであったアカウントが消滅していた。鈴木の動きがコレで全く見えなくなった。
ゆっくりと進む時間。もう少しで九時という時に俺は北側の道路の地下鉄の出口から上がってきた男を見て緊張する。鈴木だ。無地の黒いTシャツとチノパンという格好で、大きなリュックをしょっている。
俺はスマフォを見ているふりをして鈴木を観察する。
最近モンドの調査をしていた時と格好そのものは変わらないが、一つ違っていたのはリュックにガチャガチャついていたアイドルグッズが全て取り払われていた事。
Twitterのアカウントの消去。彼の個性でもあった装飾の排除。特定されにくくする為?
【アイツがきた!
地下鉄の【B17】出口、北の出口からモンドに向かってる】
高橋に連絡を入れる。そうしている間に鈴木は俺の近くを通りタワー前にあるエレベーターに乗り込んだ。
【北東タワー前のエレベーターに乗った!】
鈴木がエレベーターに乗り込むのを見て俺は更に送信する。
【了解です】
【あら? エレベーター二階に昇って来たみたいですが降りて来ません。様子見にいきましょうか?】
エレベーターのボタンは二階で停止しているのに鈴木はうごいていないようだ。
俺は鈴木が、何をしているのか気になった。
【いや、コチラの方が近い。俺が確認してくる】
そう返し俺は階段を使い歩道橋に上がる。そうしてエレベーターを見て首を傾げてしまう。何故か中が見えない。中は真っ白になっていて、ウッスラと人影が動くのが見えた。
煙?
意味が分からず、一歩近づいた時に扉が開き、真っ白になった人物が白いモヤのようなものを纏って出てくる。消火器を撒いた訳でもないようで、変な匂いはしない。テレビ番組などで粉まみれになっているお笑い芸人のような人物を見てどうしろというのだろうか?
「どうかしましたか?」
思わずそう声をかけてしまうのも仕方がないとは思う。
ドグゥワッァァァ
白く染まった人間の背後がオレンジ色に染まる。圧倒的な熱と圧が俺にぶつかり俺は背後に吹き飛ばされるのを感じた。
息苦しくて吸った空気が恐ろしく熱い。俺は文字通り口内、喉、胸が焼けるような苦痛に口を開けるが、声をあげる事も出来ず身を捩る。
目もやられたのか何も見えない。何が起こっているのかも分からない。前回どころでは無い痛みと苦しみに悶えるが次第に身体がいう事をきかなくなり重くなっていく。痛いとかの音も聞こえなくなっていき俺は意識を完全に手放した。
アラームの音がする。俺はゆっくり目を開けると見慣れた俺の部屋の天井。俺は首を横に向けるがそこには明日香はいない。アラームも鳴りっぱなしのスマフォを手に取る。手には包帯どころか火傷もない。一瞬前まで俺を苦しめていた身体中の痛みはどこにもない。気持ちを落ち着かせるためにしばらくそこで深呼吸する。
アラームを止めてディスプレイを見ると【7/11 06:03】の文字。
モンドの交差点の破壊が事態を変えてくれていたのでないかという期待と、やはり変わらずまた七月十一日が来るという予感。半々の気持ちだった為に衝撃も半分。かといって虚しさは変わらない。
スズタンのTwitterを調べると存在していた。昨日の呟きまではいつも通りあり、今日の動きはない。
すっかり覚えてしまった高橋のスマフォに電話をかける。
「もしもし……佐藤さん……」
何故か遠慮しがちな高橋の声。
「高橋、おはよう。調子はどうだ?」
「……いつも通りです。変わらない十一日の朝。佐藤さんは身体の具合は如何ですか? 火傷は……残っていませんか? 痛みとか……」
「治ったみたいだ。というかリセットされて火傷なんてしてなかった事にされたというのかな。だから元気だ。ピンピンしている」
フーと溜息が聞こえる。
「良かったです……今……お一人ですか?」
「あぁ。
朝起きたら一人さ。彼女は自分の部屋に戻ってしまったようだ」
「そうですか……」
今日彼女がいつものようにかけて来なかったのは、明日香に遠慮しての事だったようだ。
「どうしますか? 今日は」
「鈴木天史の動きを探る」
俺の言葉に高橋は悩むように黙り込む。
『どうやって? あの人がどう動くか読めませんよ。それにマトモじゃない!
あんな事をしでかしてから平然と珈琲なんて飲んでられます?!
狂ってますよ!』
「しかし、アイツのする事を放っておけない」
高橋は黙り込む。
「だから君には、今日は午前中のメビウスライフさんとの打ち合わせの方を頼む! もう散々打ち合わせしているから、一人でも問題なく出来るだろ?」
『チョット待って下さい。あの男と接触するのは危険です!
あの男は繰り返す今日の記憶を恐らく持っています』
「大丈夫だ。現場を見て怪しい動きしていたら警察に通報する。直には関わらない」
平気にあんな事を起こした人間だけに、さすがに俺も声をかけるのは躊躇うものがある。
「私も行きます!」
「君は仕事をしろ!」
俺はキツめの口調でそう返しておく。
「佐藤さんはズル休みするじゃないですか!」
「溜まっている代休をそのままにしておくと人事が煩い。
だから半休と細かく消化して行かないといけない。午後からちゃんと仕事をするから」
あえて軽い感じで答える。
何が原因で起こったのか分からないだけに、何が原因で戻るかも分からない。だからこそ今日という日を疎かに出来ない。高橋にはシッカリ日常を過ごして貰わないといけない。
「また後で連絡する。
メビウスライフの事は頼んだぞ!」『あっ』
俺はそう言って電話を切る。
テレビを試しに付けてみるが、一言一句変わらず同じ内容を流し続けている。少しは変わったのかと思うが何も変わってないようだ。
スマフォには変わらないメッセージが送られて来ており俺は変わらない返事を返す。初日と変わったのは母親にもちゃんと返事を返している事。
俺としては、真面目に彼女との関係を考えている。今は二人とも大変な状況だから落ち着いたらちゃんと進めるつもりだと返事をしている。
毎日同じ内容を送るのは面倒だと言えばそうだが、母親にはきちんと気持ちを伝えなければならない。繰り返しの日々のなかでそう感じた。
それと、俺たちとは違って明日に辿り着けているであろう親しい人との繋がりを感じたい。
そんな気持ちからこのルーティンを繰り返していた。
さて、どう鈴木を見張るのが良いのか?
離れたホテルのスカイラウンジから見張るのが一番安全なのだろうが死角があり一部見えない場所がある。また歩道橋の下の部分もよく見えない。
やはりモンド周辺に行く方が確実なようだ。
地下鉄で向かいながらネットでモンド付近を検索する。モンドのタワーマンションの関係で本当上手く見張れる場所というのは少ない。
モンドの店は殆どが十一時オープンで高橋とよく行った喫茶店だけが八時半オープン。
あの周辺ではタクシー運転手が利用しているあの喫茶店windlessだけが七時にオープン。
モンドのマンションは空き部屋が無いために中に見学で入ることも出来ない。そもそもそういう見学するには時間が早すぎる。
windlessは交差点から少し離れていることと間口は狭いので外を見張るには向いていない。モンドの喫茶店は歩道橋の様子はよく見えるが下の状況は全く見えない。
もし鈴木が同じ方法を取るのならモンドの喫茶店で見張れば作業を始める段階で直ぐに気が付け、警察に通報出来る。直ぐに捕らえてもらえるだろう。
しかし他の方法を取ればどうする? 悩ましい。
鈴木は繰り返す今日をどう認識しているのかは謎だが、自由に動ける。それだけに行動も思考も読めない。ただ分かるのはMedio Del Mondoという場所に執着しているということ。
地下鉄の駅からモンドに1番近い【B11】出口から階段上り外に出ると、七時半だと言うのにギラついた太陽に襲われ思わず目を瞑る。この後あのゲリラ豪雨がきて、更に竜巻が来るようには見えない天気。
辺りを見渡したが鈴木の姿は確認出来なかったのでモンドに向かう。
今日お世話になった医療施設のある棟から入り消火器の場所等を確認する。消火器と書かれた棚がありそこに赤い消火器が普通にある。二階に階段を使い登るとその廊下にも当たり前のように消火器が隅に置かれたている。なんで前回の時コレに気が付かなかったのか……俺は溜息をつく。建物から外に出る時一瞬身体が竦む。しかしそこには灼熱地獄ではあるものの平和な歩道橋があるのみ。燃えているサラリーマンは今日はいない。
見渡すが鈴木の姿は見えなかった。その事にもホッとする。
深呼吸して歩道橋へと踏み出す。異常がないか調べるが手摺に何が挟まれているということはない。一周してみてふと道路を見下ろし俺は舌打ちをする。
地下鉄の出口から出てくる人物を見えたからだ。それを見て俺は階段を駆け下りる。俺を見て相手はヘラりと笑ってきた。
「こんな時間にここで何している!」
高橋に、俺はそうキツめの言葉で声をかける。
時間は八時二十七分。会社はもう始まっている。
「お休みしちゃいました! 部長も今日休めって勧めてくれましたし」
「休めと言ったのは明日のことだろ! 今日では無い」
高橋は俺の叱りなどまるで気にならないといった様子で笑っている。
今日アレだけ大変な目にあった。ここに来るのは怖かった筈。なのに何故こんなに明るく笑っているのか? いやいつも以上につよい感情を秘めた目で察する。無理しているのだと。
高橋は俺の顔を見て目を細め微笑む。
「よかったです。佐藤さん怪我が治って。元気そうな姿見て安心しました」
その言葉で、高橋が俺をどれ程心配してきたのか察してそれ以上何も言えなくなる。
「もう遅いです! 休みにしてしまいましたので! 今日は何します?」
「お前な~ 俺に午後一人で仕事をしろと?」
その言葉に高橋はハッとした顔をする。
「午後、情報収集お願いして良いか? 午後お前の分も俺が仕事するから」
高橋は『了解です』と何故か敬礼して答える。任務のようなノリになっているのだろう。
さて、高橋に何処にいてもらうのが一番安全なのか?
「あと三分で上のカフェがオープンする。そこで見張ってくれないか? ここの構造だと上と下を同時に見張るのは難しい」
高橋は真面目な顔で頷く。そしてLINEとアドレス交換することにする。声を出さずに連絡取り合うためだ。
「席はいつもの場所ではなく内側に座ってくれ。万が一何かが爆発するような事になったらガラスの側にいるのは危険だ。
何かあった時は、自分で動くな。警備の人呼んでもらうか、警察に連絡しろ」
そう注意を促してから別行動をすることにする。高橋を怪我させる訳にはいかない。
俺はクリニックが開くの待つ人のふりをして、地上部分を見張ることにする。
【高橋、定位置に着きました! 奥めの観葉植物の後ろ辺りにて待機】
スマフォに高橋から、連絡か入る。
敬礼している、よく分からないゆるい感じの猫のスタンプに少し気が抜ける。しかし、次のコメントで笑えなくなる。
【スズタンのTwitterが消えました! 退会したみたいです】
見てみるとさっきまであったアカウントが消滅していた。鈴木の動きがコレで全く見えなくなった。
ゆっくりと進む時間。もう少しで九時という時に俺は北側の道路の地下鉄の出口から上がってきた男を見て緊張する。鈴木だ。無地の黒いTシャツとチノパンという格好で、大きなリュックをしょっている。
俺はスマフォを見ているふりをして鈴木を観察する。
最近モンドの調査をしていた時と格好そのものは変わらないが、一つ違っていたのはリュックにガチャガチャついていたアイドルグッズが全て取り払われていた事。
Twitterのアカウントの消去。彼の個性でもあった装飾の排除。特定されにくくする為?
【アイツがきた!
地下鉄の【B17】出口、北の出口からモンドに向かってる】
高橋に連絡を入れる。そうしている間に鈴木は俺の近くを通りタワー前にあるエレベーターに乗り込んだ。
【北東タワー前のエレベーターに乗った!】
鈴木がエレベーターに乗り込むのを見て俺は更に送信する。
【了解です】
【あら? エレベーター二階に昇って来たみたいですが降りて来ません。様子見にいきましょうか?】
エレベーターのボタンは二階で停止しているのに鈴木はうごいていないようだ。
俺は鈴木が、何をしているのか気になった。
【いや、コチラの方が近い。俺が確認してくる】
そう返し俺は階段を使い歩道橋に上がる。そうしてエレベーターを見て首を傾げてしまう。何故か中が見えない。中は真っ白になっていて、ウッスラと人影が動くのが見えた。
煙?
意味が分からず、一歩近づいた時に扉が開き、真っ白になった人物が白いモヤのようなものを纏って出てくる。消火器を撒いた訳でもないようで、変な匂いはしない。テレビ番組などで粉まみれになっているお笑い芸人のような人物を見てどうしろというのだろうか?
「どうかしましたか?」
思わずそう声をかけてしまうのも仕方がないとは思う。
ドグゥワッァァァ
白く染まった人間の背後がオレンジ色に染まる。圧倒的な熱と圧が俺にぶつかり俺は背後に吹き飛ばされるのを感じた。
息苦しくて吸った空気が恐ろしく熱い。俺は文字通り口内、喉、胸が焼けるような苦痛に口を開けるが、声をあげる事も出来ず身を捩る。
目もやられたのか何も見えない。何が起こっているのかも分からない。前回どころでは無い痛みと苦しみに悶えるが次第に身体がいう事をきかなくなり重くなっていく。痛いとかの音も聞こえなくなっていき俺は意識を完全に手放した。
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