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フレンチ・ロースト
お酒の後の煙草は美味しい
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『清酒さん、何か苦手な食べ物ってあります?』
なんてこと恋人から聞かれたら男としては色々な事考えニヤついてしまうものである。
一つは彼女の手料理を食べるという何ともウフフなイベントを楽しめる。初芽だけでなく今まで付き合ってきた相手は、何故か料理が苦手な女性が多かった。加え俺が料理するのが嫌いではない事もあり、作って貰うなんて何年ぶりなのだろうか? という状況なので俺のテンションも上がるってものである。
煙草さんのパソコンを一緒に買ってソレを部屋でセットアップしてあげるという表向きの理由があるにしても、部屋に上がり夕飯までご馳走になるとすると、その続きは明らかだろう。二人共大人だし、先日想いを打ち明けあったばかりである。そこで部屋に招いた相手を夜まで引き留めようとしてくるなんて、煙草さんもシャイなのか大胆なのか分からない子である。
あの酔っ払い事件の後から、平日デートのボディータッチを増やしていたのだが、さり気なく手を繋いでみた所、照れて下を向くものの、ギュッと強く手は握り返してくる。さらに観察を続けると俺の方を見上げ眩しい程無邪気であどけない笑みを向けてくる。そんなの見ていると何も疚しい事していないのに、幼気な子供に不埒な行いを仕掛けようとしているイケナイオジサンになった気持ちになっていた。
しかしそういう戸惑い以上に、身体は煙草さんを求めていた。先日あんな事があっただけに。真っ直ぐそして熱烈に俺を求めてくる煙草さんを見てしまったらそうなってしまっても仕方が無いだろう。
そして煙草さんの家で新しく買ったパソコンのセッティングを俺がしてあげるという口実で上がりこんだ彼女の最大のなわばりともいうべき場所。作業する俺を甲斐甲斐しく珈琲やお菓子を差し出しお世話する煙草さん、食事を作る彼女の背中を眺めながらのマッタリタイムと、ご機嫌の時間を過ごしていた。そして出てきたものがちゃんと手料理な事に俺は密かに感動してきた。カレーとかパスタとか手軽でそれなりにお洒落に見えるものでもなく、如何にもな肉じゃがとかハンバーグとか料理している事をアピールするものでもなく、ボイルした豚肉を綺麗に並べたモノに、白とダークレッドの二種類のソース。それに冬瓜の餡かけに、アボガドやトマトの入ったサラダに、手作りであろうスープ。普通に普段に料理しているのだろう。豚肉もただ茹でたのではなく、ローリエや野菜の風味もついていてそれが、トマトとマヨネーズを合わせたソースとオニオンソースをかけて食べるとなかなか美味しい。スープも味も悪くはなかった。成程このスープは豚を茹でた時に出来たものだろう。俺だったらコレどう味付けるか? 春雨とかいれて韓国風にしても美味しいかも……茹で豚も上に長葱と胡麻油ソースで和風にして食べても旨そうだとか考えていた。
旨い飯を囲み当然、楽しいディナータイムが始ま る。いや、始まっていたはずだった。
それなのに俺は何故床に横たわり、泣いている煙草さんを見上げている状態になっているのだろう。
「清酒さん、死んだら嫌だよ……」
俺の手をとり見下ろし不穏な言葉を呟く煙草さん。目を開けると煙草さんは『あっ』と声を上げ、その見開いた瞳からボロボロと涙を流し出す。俺は慌てて起き上がり頭に感じる鈍い痛みに顔を思わず顰める。
「タバさん! なんで泣いているの!」
そこまでいって俺は思い出す酔っ払って醜態晒した事を。豚肉にかけたオニオンソースに赤ワインがタップリ入っていたらしい。それをかけて食べた結果、酔って寝てしまった。最低である、彼女の料理を食べて卒倒してしまうなんて。そのソースは赤ワインに摺り下ろした玉ねぎと醤油を合わせたもので、つまりほぼワイン。下戸の俺を酔っぱらわせ寝かせるには十分な内容だった。食べているうちに動悸が激しくなりその酔いの前兆を感じ、視界がふらついてきた段階で、煙草さんには寝る事を断ってから意識飛ばしたつもりだけど、インパクトは大きかったようだ。泣きながら煙草さんは俺に抱き付いてくる。
それにしても俺なんで洋服前ボタンが外されていて、しかもズボンの前までも全開なのだろうか? そんな状態だからいままでになく俺の身体に押し付けられる煙草さんの胸を感じる。なんというかすごく柔らかい。
「もう、このまま清酒さんが死んじゃうんじゃないかと思って、怖かったの」
俺は笑ってしまうが、それだけ心配させてしまったという事だろう。俺はなだめるように背中を叩く。
「いや、大丈夫。俺、酒ウッカリ飲んでしまっても一時間くらい寝たらすぐ戻るタイプだから。それに急性アルコール中毒になる程にまでの量も飲めない体質だから」
過去にビールコップ半分で救急車を呼ぶ騒ぎを作り、救急車はこなくても数回119電話して相談してしまう事態を引き起こしている。周りからしてみたらやはりかなり慌てる事らしい。
「そんなの、量ではないかもしれないじゃん。私の所為でこんな事になって」
ぐずりながらそう言う煙草さん。かなり動揺させ心配させたようだ。俺は安心させるように背中をさする。
「いや、恰好悪いな俺。これくらいで潰れるなんて」
煙草さんはまだショックが治らないのか俺に抱きついて泣いたまま。
「タバさん、もう泣かないで、大丈夫だから。それにこの……」
胸に顔を押しつけたまま私は首を横にふる。その刺激がくすぐったい。
「もし、このまま目覚めなかったら一生私が面倒みるという覚悟までしてたんだよ。それくらい心配してたの」
「へえ~一生面倒みてくれるんだ……」
創造力ある人は、思考がどんどん膨らませスゴイ事まで考えるようだ。煙草さんはオレの顔を見てハッとした顔になる。
「で、でも、もう無効だから! ソレは、せ、清酒さんが生還したから!」
そうキリっと言い切り、そしてまた下戸の俺に酒飲ませてしまった事思い出し再び落ち込んだ表情に戻る。
「生還って……でも、タバさん責任は感じて、悩んじゃっているよね? 先日の件で、おあいこってことで良いのに」
意味は違うけど、互いにお酒で迷惑をかけてしまった。しかし煙草さんはブルブル頭を横に振って『どちらも私が悪いですよ』と答える。
「そんな必要ないのに……ならばさ、キスしてくれない? それで今回の件はもう終わり! もう気にしなくていいから。それでいいよね」
俺の言葉に煙草さんは悩む顔をするが、顔を上げ俺を見つめてからやっとニコリと笑ってくれて頷く。俺におずおずと近付きキスをしてくる。てっきり頬へのキスとかで済ましてくると思ったら、ちゃんと唇と唇を合わせたモノ。煙草さんの柔らかく厚みのある唇の感触に痺れに似た快感を覚える。この美味しそうな唇をもっと味わいたくて、チュっとだけして離れようとする煙草さんを抱き寄せるようにして捕えて、その唇を甘噛みしたりしてその感触愉しむ。驚きビクッと身体を震わせる煙草さん。でも拒絶の行動はしてこない。俺のキス受け入れたというより固まっているのに近いかもしれない。それを良いことに唇の感触を愉しむ。
一旦離れ煙草さんを観察すると耳まで真っ赤になっていて、目は先程とは違う感じで潤んでいてなかなか色っぽい表情になっていた。
「あの、清酒さん……ご飯……途中だったよね? お腹すいているよね? 食べない?」
恥ずかしそうに俺から目を下に逸らし、ゴニョゴニョとそんな事聞いてくる。この状況で男が『そうだね、二人で穏やかにメシでも食いますか』とか答えると思っているのだろうか? ニッコリ笑って顔を近づけキスする直前の距離で止める。
「それも悪くないけど、それよりもタバさんが欲しいかな」
答えを聞かずにそのまま赤い美味しそうな唇にキスをする。もっと深く濃いキスを。
煙草さんは手をバタバタして慌てたけれど次第にその動きも鈍くなり、キスを止めるとハァと溜息つきその手を床に下ろす。チラリと上目遣いでコチラを軽く睨んでくるが、そんな目でそういう事されるとカワイイだけである。少し前屈みになっている為に、セーターの胸元から谷間を見えているし……。
「も、もしかして、清酒さん酔っぱらっています?」
確かに酔っているのかもしれない。煙草さんに。
「酔っぱらった勢いでこういう事をするような男に見える?」
酔っ払いの特徴。酔っ払っている事を認めない。それをあえて実行してみる。
俺はニコリと笑いかける。煙草さんは俺の顔を疑わしそうにジッと観察するように見つめ、何故か顔を赤らめ視線だけ逸らす。
前に煙草さんも酔っ払って散々迫ってきたのだから、それを俺がやってもおあいこ。俺は距離を詰める。良かった、後ろにさがったりして逃げることはされない。
「でも……お酒呑んだ後に、煙草が欲しくなるっていうのは本当だったみたいだね。酒も煙草もしないから分からなかったけれど。スゴく煙草が欲しい」
伸ばした手で煙草さんの頬を撫でる。煙草さんの目の周りがジワリと赤らんでくる。その目が俺とあさっての方向を行き来する。
「喉渇きませんか? お水とかいりません?」
そう言って立ち上がろうとするので俺はその身体を引き寄せ抱きしめる。
「顔真っ赤だよ、タバさんが酔っぱらっているみたいだ」
赤味を帯びた耳にキスを落とす。
「私はお酒じゃなくて、清酒さんに赤くなってるの!」
顔がどんどん真っ赤になっていっている。そんな顔でこんな事言われたら、これは誘っているととってもいいだろう。俺が再び顔を近づけると、見上げた体制のまま目を閉じる。俺を待つ体制の煙草さんにキスをする
「俺も酒じゃなくて、タバさんでこういう気分になっている。同じだね?」
返事を待たずに煙草さんの唇を奪う。深く強くキスをしかけていると、おずおずとした様子ではあるが俺のキスに応えてきて、腕が俺に回され強く抱きしめられる。俺が料理に入ったワインでぶっ倒れるというアクシデントはあったものの。他はほぼ予定通り。俺はキスで少しボウっとしている煙草さんにニッコリ微笑んでから、彼女を美味しく頂くことにした。
なんてこと恋人から聞かれたら男としては色々な事考えニヤついてしまうものである。
一つは彼女の手料理を食べるという何ともウフフなイベントを楽しめる。初芽だけでなく今まで付き合ってきた相手は、何故か料理が苦手な女性が多かった。加え俺が料理するのが嫌いではない事もあり、作って貰うなんて何年ぶりなのだろうか? という状況なので俺のテンションも上がるってものである。
煙草さんのパソコンを一緒に買ってソレを部屋でセットアップしてあげるという表向きの理由があるにしても、部屋に上がり夕飯までご馳走になるとすると、その続きは明らかだろう。二人共大人だし、先日想いを打ち明けあったばかりである。そこで部屋に招いた相手を夜まで引き留めようとしてくるなんて、煙草さんもシャイなのか大胆なのか分からない子である。
あの酔っ払い事件の後から、平日デートのボディータッチを増やしていたのだが、さり気なく手を繋いでみた所、照れて下を向くものの、ギュッと強く手は握り返してくる。さらに観察を続けると俺の方を見上げ眩しい程無邪気であどけない笑みを向けてくる。そんなの見ていると何も疚しい事していないのに、幼気な子供に不埒な行いを仕掛けようとしているイケナイオジサンになった気持ちになっていた。
しかしそういう戸惑い以上に、身体は煙草さんを求めていた。先日あんな事があっただけに。真っ直ぐそして熱烈に俺を求めてくる煙草さんを見てしまったらそうなってしまっても仕方が無いだろう。
そして煙草さんの家で新しく買ったパソコンのセッティングを俺がしてあげるという口実で上がりこんだ彼女の最大のなわばりともいうべき場所。作業する俺を甲斐甲斐しく珈琲やお菓子を差し出しお世話する煙草さん、食事を作る彼女の背中を眺めながらのマッタリタイムと、ご機嫌の時間を過ごしていた。そして出てきたものがちゃんと手料理な事に俺は密かに感動してきた。カレーとかパスタとか手軽でそれなりにお洒落に見えるものでもなく、如何にもな肉じゃがとかハンバーグとか料理している事をアピールするものでもなく、ボイルした豚肉を綺麗に並べたモノに、白とダークレッドの二種類のソース。それに冬瓜の餡かけに、アボガドやトマトの入ったサラダに、手作りであろうスープ。普通に普段に料理しているのだろう。豚肉もただ茹でたのではなく、ローリエや野菜の風味もついていてそれが、トマトとマヨネーズを合わせたソースとオニオンソースをかけて食べるとなかなか美味しい。スープも味も悪くはなかった。成程このスープは豚を茹でた時に出来たものだろう。俺だったらコレどう味付けるか? 春雨とかいれて韓国風にしても美味しいかも……茹で豚も上に長葱と胡麻油ソースで和風にして食べても旨そうだとか考えていた。
旨い飯を囲み当然、楽しいディナータイムが始ま る。いや、始まっていたはずだった。
それなのに俺は何故床に横たわり、泣いている煙草さんを見上げている状態になっているのだろう。
「清酒さん、死んだら嫌だよ……」
俺の手をとり見下ろし不穏な言葉を呟く煙草さん。目を開けると煙草さんは『あっ』と声を上げ、その見開いた瞳からボロボロと涙を流し出す。俺は慌てて起き上がり頭に感じる鈍い痛みに顔を思わず顰める。
「タバさん! なんで泣いているの!」
そこまでいって俺は思い出す酔っ払って醜態晒した事を。豚肉にかけたオニオンソースに赤ワインがタップリ入っていたらしい。それをかけて食べた結果、酔って寝てしまった。最低である、彼女の料理を食べて卒倒してしまうなんて。そのソースは赤ワインに摺り下ろした玉ねぎと醤油を合わせたもので、つまりほぼワイン。下戸の俺を酔っぱらわせ寝かせるには十分な内容だった。食べているうちに動悸が激しくなりその酔いの前兆を感じ、視界がふらついてきた段階で、煙草さんには寝る事を断ってから意識飛ばしたつもりだけど、インパクトは大きかったようだ。泣きながら煙草さんは俺に抱き付いてくる。
それにしても俺なんで洋服前ボタンが外されていて、しかもズボンの前までも全開なのだろうか? そんな状態だからいままでになく俺の身体に押し付けられる煙草さんの胸を感じる。なんというかすごく柔らかい。
「もう、このまま清酒さんが死んじゃうんじゃないかと思って、怖かったの」
俺は笑ってしまうが、それだけ心配させてしまったという事だろう。俺はなだめるように背中を叩く。
「いや、大丈夫。俺、酒ウッカリ飲んでしまっても一時間くらい寝たらすぐ戻るタイプだから。それに急性アルコール中毒になる程にまでの量も飲めない体質だから」
過去にビールコップ半分で救急車を呼ぶ騒ぎを作り、救急車はこなくても数回119電話して相談してしまう事態を引き起こしている。周りからしてみたらやはりかなり慌てる事らしい。
「そんなの、量ではないかもしれないじゃん。私の所為でこんな事になって」
ぐずりながらそう言う煙草さん。かなり動揺させ心配させたようだ。俺は安心させるように背中をさする。
「いや、恰好悪いな俺。これくらいで潰れるなんて」
煙草さんはまだショックが治らないのか俺に抱きついて泣いたまま。
「タバさん、もう泣かないで、大丈夫だから。それにこの……」
胸に顔を押しつけたまま私は首を横にふる。その刺激がくすぐったい。
「もし、このまま目覚めなかったら一生私が面倒みるという覚悟までしてたんだよ。それくらい心配してたの」
「へえ~一生面倒みてくれるんだ……」
創造力ある人は、思考がどんどん膨らませスゴイ事まで考えるようだ。煙草さんはオレの顔を見てハッとした顔になる。
「で、でも、もう無効だから! ソレは、せ、清酒さんが生還したから!」
そうキリっと言い切り、そしてまた下戸の俺に酒飲ませてしまった事思い出し再び落ち込んだ表情に戻る。
「生還って……でも、タバさん責任は感じて、悩んじゃっているよね? 先日の件で、おあいこってことで良いのに」
意味は違うけど、互いにお酒で迷惑をかけてしまった。しかし煙草さんはブルブル頭を横に振って『どちらも私が悪いですよ』と答える。
「そんな必要ないのに……ならばさ、キスしてくれない? それで今回の件はもう終わり! もう気にしなくていいから。それでいいよね」
俺の言葉に煙草さんは悩む顔をするが、顔を上げ俺を見つめてからやっとニコリと笑ってくれて頷く。俺におずおずと近付きキスをしてくる。てっきり頬へのキスとかで済ましてくると思ったら、ちゃんと唇と唇を合わせたモノ。煙草さんの柔らかく厚みのある唇の感触に痺れに似た快感を覚える。この美味しそうな唇をもっと味わいたくて、チュっとだけして離れようとする煙草さんを抱き寄せるようにして捕えて、その唇を甘噛みしたりしてその感触愉しむ。驚きビクッと身体を震わせる煙草さん。でも拒絶の行動はしてこない。俺のキス受け入れたというより固まっているのに近いかもしれない。それを良いことに唇の感触を愉しむ。
一旦離れ煙草さんを観察すると耳まで真っ赤になっていて、目は先程とは違う感じで潤んでいてなかなか色っぽい表情になっていた。
「あの、清酒さん……ご飯……途中だったよね? お腹すいているよね? 食べない?」
恥ずかしそうに俺から目を下に逸らし、ゴニョゴニョとそんな事聞いてくる。この状況で男が『そうだね、二人で穏やかにメシでも食いますか』とか答えると思っているのだろうか? ニッコリ笑って顔を近づけキスする直前の距離で止める。
「それも悪くないけど、それよりもタバさんが欲しいかな」
答えを聞かずにそのまま赤い美味しそうな唇にキスをする。もっと深く濃いキスを。
煙草さんは手をバタバタして慌てたけれど次第にその動きも鈍くなり、キスを止めるとハァと溜息つきその手を床に下ろす。チラリと上目遣いでコチラを軽く睨んでくるが、そんな目でそういう事されるとカワイイだけである。少し前屈みになっている為に、セーターの胸元から谷間を見えているし……。
「も、もしかして、清酒さん酔っぱらっています?」
確かに酔っているのかもしれない。煙草さんに。
「酔っぱらった勢いでこういう事をするような男に見える?」
酔っ払いの特徴。酔っ払っている事を認めない。それをあえて実行してみる。
俺はニコリと笑いかける。煙草さんは俺の顔を疑わしそうにジッと観察するように見つめ、何故か顔を赤らめ視線だけ逸らす。
前に煙草さんも酔っ払って散々迫ってきたのだから、それを俺がやってもおあいこ。俺は距離を詰める。良かった、後ろにさがったりして逃げることはされない。
「でも……お酒呑んだ後に、煙草が欲しくなるっていうのは本当だったみたいだね。酒も煙草もしないから分からなかったけれど。スゴく煙草が欲しい」
伸ばした手で煙草さんの頬を撫でる。煙草さんの目の周りがジワリと赤らんでくる。その目が俺とあさっての方向を行き来する。
「喉渇きませんか? お水とかいりません?」
そう言って立ち上がろうとするので俺はその身体を引き寄せ抱きしめる。
「顔真っ赤だよ、タバさんが酔っぱらっているみたいだ」
赤味を帯びた耳にキスを落とす。
「私はお酒じゃなくて、清酒さんに赤くなってるの!」
顔がどんどん真っ赤になっていっている。そんな顔でこんな事言われたら、これは誘っているととってもいいだろう。俺が再び顔を近づけると、見上げた体制のまま目を閉じる。俺を待つ体制の煙草さんにキスをする
「俺も酒じゃなくて、タバさんでこういう気分になっている。同じだね?」
返事を待たずに煙草さんの唇を奪う。深く強くキスをしかけていると、おずおずとした様子ではあるが俺のキスに応えてきて、腕が俺に回され強く抱きしめられる。俺が料理に入ったワインでぶっ倒れるというアクシデントはあったものの。他はほぼ予定通り。俺はキスで少しボウっとしている煙草さんにニッコリ微笑んでから、彼女を美味しく頂くことにした。
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