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ニュー・クロップ
いつものようで違う朝
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翌朝、また猫のダイブで目を醒ます。今日はご丁寧に爪たててきやがった。
朝食でも作ろうかとは思ったものの、冷蔵庫の中は、つまみしかなく、外で食べる事にした。
週末の朝は二人起きる時間がズレている事もあり一緒に身仕度する事はないが、並んで歯磨きして、初芽が顔を洗っている横で俺が髭剃りをする。なんか不思議な気分である。会話する状況でもないので黙ったまま。どきどき鏡越しで合ってしまう視線がなんか擽ったい。
「なんか髭そっている姿見ると、正秀って男性だなと実感する」
フフと初芽が笑いながらそんな事言ってくる。
「俺って、いつでも男だけど、そんなに男感じない?」
初芽は『うーん』と小さく唸り首を傾げる。
「なんていくのかな、髭剃りって普通だと見れない光景でしょ? それだけにそういう事している正秀をみると『ああ、コレが私の男♪』と実感出来るという感じ?」
イマイチ言わんとしている事が分からず首を傾げると、初芽笑って首を横に振る。
「男には分からない感覚だろうから」
初芽が買ってくれた新品の下ろしたてのシャツを着る。新品のシャツ特有のハリのあるシャツを身につけるとシャキッとした気分になる。買ってもらったネクタイを手にしようとしたら、もう着替えを済ましたら初芽が先にネクタイを奪ってしまう。彼女はニコリと笑い、俺の肩に手を回しネクタイを首にかける。そして向き合ったままの体勢で、器用にネクタイを結んでいく。
「何、ニヤニヤしてんの!」
そりゃこの状況、男だったら、誰もがそういう顔になっても仕方がないと思う。
「だって、なんかこういうのって、良いなと。ゾクゾクする」
手元から俺の顔の方に視線がかわり、その上目遣いにもグッとくるものを感じる。メイクしたてで、凛々しさを増しており、それがかえって色っぽい。
「何、朝から盛ってるの!」
そう言って初芽は、ネクタイをキツメにキュッと締めてきて、少し咽せる。そんな俺に少し笑い、離れようとするので手を伸ばしそのまま抱き寄せキスをした。
「だって、女性がネクタイを外してくるのではなくて、締めてくれるのって別の意味でヤラシク感じない?」
唇を突き出して怒ったような顔をしているけれど、その顔がビジネススーツ姿とのギャップがあり可愛らしい。
「バカ! 唇に口紅ついているわよ! それで会社行く気?」
初芽の指が俺の唇を拭うのをされるままにする。時計を見ると、そろそろ出ないとモーニングを楽しむ時間がなくなるので、巫山戯るのを止めることにした。スーツ姿で玄関を一緒に出るというのは何とも不思議な気分だった。それに初芽が用意したシャツとネクタイを身につけているという事に、何とも言えないムズ痒さも覚える。
とはいえイチャイチャしたのはそこまでで、外ではクールに二人に喫茶店で朝食を楽しみ、それぞれの会社へと向かう。初芽の部屋を離れるにつれ、だんだんと日常モードへと戻っていく。鞄の中に詰め込んでいた昨日着ていた洗濯物をコッソリ出してロッカーに放り込んだら、スッカリいつも会社の俺となっていた。
営業部の角にあるカフェエリアに行くと、鬼熊さんがいて珈琲を楽しんでいた。俺の姿を見てニコリと笑いかけてくるから、俺も笑顔を作り挨拶する。鬼熊さんが珈琲をカップに注いでいる俺を見て首をかしげる。
「今日もしかして、寝坊した?」
そんな注意されるような格好をしてないはずだ。それにシャツとネクタイが昨日と明らかに違う色となっていることでスーツが同じだと気付けないと思う。
「いえ、いつも通り目を覚ましましたが」
そう惚ける俺に、鬼熊さんはハッとしたような顔をしてニヤリとする。
「いやね、コロン珍しくつけてないなと思っただけ。そういうネクタイも似合うわよ」
女の勘って侮れなくて怖い。俺は苦笑するしかない。今日のネクタイは若干派手で俺があまり選ばないデザインだったかもしれない。
その流れで、俺はある事を思い出す。
「それは、どうも。
……あとアイツに余計な事を言うのは止めていただけませんか?」
俺の言葉に鬼熊さんは苦笑する。初芽と鬼熊さんは厄介な事に知り合いである。というより大学時代からの友人。初芽は気恥ずかしさもあり俺と付き合っているのを鬼熊さんに隠していたようだが、ある日バッタリとデート中に会ってバレてしまった。鬼熊さんも驚いたようだが、逆に俺も驚いた。初芽と鬼熊さんが知り合いであることは出身大学が同じである事から顔見知りかもしれないとは思っていたからそこは意外でもなかった。ただ鬼熊さんの相手の男が俺よりも年が若く、少年のようなタイプで、その相手と仲良くラブラブとした雰囲気だった事は衝撃だった。
互いにインパクトを与えた邂逅以降、初芽は俺の事を鬼熊さんと話題にする事もするようになったようで、俺としてはそこが困った所。
「別に何も言ってないわよ、『頑張っている』といっただけよ」
惚ける鬼熊さんを、俺は少し睨む。
「異動なかった事、話したでしょ?」
鬼熊さんは苦笑する。
「『変わりない?』 と聞かれたから、『なんも変わり映えもなし!』と答えただけ
あの子もさ、清酒くんの事心配なのよ。それに貴方も少しは姉さん女房に甘えてみたら? そうして甘い時間過ごすと新しい世界楽しめるかもよ!」
俺は完全に面白がっている鬼熊さんの言葉に溜め息をつく。
「鬼熊さんと、彼氏さんとは違って俺達は対等にクールな関係を楽しんでいるので。
あんまり余計な心配かけたくないので、いらない話はしないで下さい」
鬼熊さんのカップルは、鬼熊さんは彼氏を思いっきり甘やかして、相手の男も甘え上手。だからこそ絶妙に上手くいっているのかもしれない。逆に俺達は年齢差なんて関係なく、対等に互いを尊重しあい大人の恋愛を楽しんでいるといった所だろう。
「恋愛に上下、対等とか言う言葉オカシクナイ? 私はどれだけ深くつきあえるかで決まると思うよ。
……分かっているわよ。他人の恋愛にアレコレ手や口を出す趣味はないから、私は。
アンタも私を通じてあの子の情報聞き出そうとしないことね!
ま、頑張って」
少しムカつかせてしまったようだ、鬼熊さんはそんな言葉を言うだけ言って席にもどってしまった。
そして俺も鬼熊さんに対して、逆の探りを入れていた事を反省する。
「色々、ご迷惑おかけして申し訳ありませんでした」
席に着いたときに、隣の席の鬼熊さんにそう謝罪の言葉をそっとしておく。鬼熊さんはフッと笑い、首を横に振る。
「別に迷惑だとは感じてないから、どちらにしても友人との単なる雑談だしね」
そんな言葉になんかホッとする。
「もしかして俺の事も、友人といってくれていますか?」
鬼熊さんはニヤリと笑う。
「こんだけ、毎日顔合わせて、仕事の事からどうでも良い事まで話していて『単なる知人です』とか、アンタまさか言わないわよね」
俺は首を横に振る。
「まさか! 光栄です。そのように言って貰えた事が嬉しくて確認しただけですから」
二人でフフフと笑いあう。そこである事が頭に浮かぶ。
「あの鬼熊さん、あいつを呑みに誘ってやってくださいません? そういう相手には俺ってまったく役立たないから」
鬼熊さんはフッと笑い、「ハイハイ」といってうなずいた。
業務が始まると鬼熊さんは友人から頼れる上司へと変化する。そしていつもの一日がスタートした。
朝食でも作ろうかとは思ったものの、冷蔵庫の中は、つまみしかなく、外で食べる事にした。
週末の朝は二人起きる時間がズレている事もあり一緒に身仕度する事はないが、並んで歯磨きして、初芽が顔を洗っている横で俺が髭剃りをする。なんか不思議な気分である。会話する状況でもないので黙ったまま。どきどき鏡越しで合ってしまう視線がなんか擽ったい。
「なんか髭そっている姿見ると、正秀って男性だなと実感する」
フフと初芽が笑いながらそんな事言ってくる。
「俺って、いつでも男だけど、そんなに男感じない?」
初芽は『うーん』と小さく唸り首を傾げる。
「なんていくのかな、髭剃りって普通だと見れない光景でしょ? それだけにそういう事している正秀をみると『ああ、コレが私の男♪』と実感出来るという感じ?」
イマイチ言わんとしている事が分からず首を傾げると、初芽笑って首を横に振る。
「男には分からない感覚だろうから」
初芽が買ってくれた新品の下ろしたてのシャツを着る。新品のシャツ特有のハリのあるシャツを身につけるとシャキッとした気分になる。買ってもらったネクタイを手にしようとしたら、もう着替えを済ましたら初芽が先にネクタイを奪ってしまう。彼女はニコリと笑い、俺の肩に手を回しネクタイを首にかける。そして向き合ったままの体勢で、器用にネクタイを結んでいく。
「何、ニヤニヤしてんの!」
そりゃこの状況、男だったら、誰もがそういう顔になっても仕方がないと思う。
「だって、なんかこういうのって、良いなと。ゾクゾクする」
手元から俺の顔の方に視線がかわり、その上目遣いにもグッとくるものを感じる。メイクしたてで、凛々しさを増しており、それがかえって色っぽい。
「何、朝から盛ってるの!」
そう言って初芽は、ネクタイをキツメにキュッと締めてきて、少し咽せる。そんな俺に少し笑い、離れようとするので手を伸ばしそのまま抱き寄せキスをした。
「だって、女性がネクタイを外してくるのではなくて、締めてくれるのって別の意味でヤラシク感じない?」
唇を突き出して怒ったような顔をしているけれど、その顔がビジネススーツ姿とのギャップがあり可愛らしい。
「バカ! 唇に口紅ついているわよ! それで会社行く気?」
初芽の指が俺の唇を拭うのをされるままにする。時計を見ると、そろそろ出ないとモーニングを楽しむ時間がなくなるので、巫山戯るのを止めることにした。スーツ姿で玄関を一緒に出るというのは何とも不思議な気分だった。それに初芽が用意したシャツとネクタイを身につけているという事に、何とも言えないムズ痒さも覚える。
とはいえイチャイチャしたのはそこまでで、外ではクールに二人に喫茶店で朝食を楽しみ、それぞれの会社へと向かう。初芽の部屋を離れるにつれ、だんだんと日常モードへと戻っていく。鞄の中に詰め込んでいた昨日着ていた洗濯物をコッソリ出してロッカーに放り込んだら、スッカリいつも会社の俺となっていた。
営業部の角にあるカフェエリアに行くと、鬼熊さんがいて珈琲を楽しんでいた。俺の姿を見てニコリと笑いかけてくるから、俺も笑顔を作り挨拶する。鬼熊さんが珈琲をカップに注いでいる俺を見て首をかしげる。
「今日もしかして、寝坊した?」
そんな注意されるような格好をしてないはずだ。それにシャツとネクタイが昨日と明らかに違う色となっていることでスーツが同じだと気付けないと思う。
「いえ、いつも通り目を覚ましましたが」
そう惚ける俺に、鬼熊さんはハッとしたような顔をしてニヤリとする。
「いやね、コロン珍しくつけてないなと思っただけ。そういうネクタイも似合うわよ」
女の勘って侮れなくて怖い。俺は苦笑するしかない。今日のネクタイは若干派手で俺があまり選ばないデザインだったかもしれない。
その流れで、俺はある事を思い出す。
「それは、どうも。
……あとアイツに余計な事を言うのは止めていただけませんか?」
俺の言葉に鬼熊さんは苦笑する。初芽と鬼熊さんは厄介な事に知り合いである。というより大学時代からの友人。初芽は気恥ずかしさもあり俺と付き合っているのを鬼熊さんに隠していたようだが、ある日バッタリとデート中に会ってバレてしまった。鬼熊さんも驚いたようだが、逆に俺も驚いた。初芽と鬼熊さんが知り合いであることは出身大学が同じである事から顔見知りかもしれないとは思っていたからそこは意外でもなかった。ただ鬼熊さんの相手の男が俺よりも年が若く、少年のようなタイプで、その相手と仲良くラブラブとした雰囲気だった事は衝撃だった。
互いにインパクトを与えた邂逅以降、初芽は俺の事を鬼熊さんと話題にする事もするようになったようで、俺としてはそこが困った所。
「別に何も言ってないわよ、『頑張っている』といっただけよ」
惚ける鬼熊さんを、俺は少し睨む。
「異動なかった事、話したでしょ?」
鬼熊さんは苦笑する。
「『変わりない?』 と聞かれたから、『なんも変わり映えもなし!』と答えただけ
あの子もさ、清酒くんの事心配なのよ。それに貴方も少しは姉さん女房に甘えてみたら? そうして甘い時間過ごすと新しい世界楽しめるかもよ!」
俺は完全に面白がっている鬼熊さんの言葉に溜め息をつく。
「鬼熊さんと、彼氏さんとは違って俺達は対等にクールな関係を楽しんでいるので。
あんまり余計な心配かけたくないので、いらない話はしないで下さい」
鬼熊さんのカップルは、鬼熊さんは彼氏を思いっきり甘やかして、相手の男も甘え上手。だからこそ絶妙に上手くいっているのかもしれない。逆に俺達は年齢差なんて関係なく、対等に互いを尊重しあい大人の恋愛を楽しんでいるといった所だろう。
「恋愛に上下、対等とか言う言葉オカシクナイ? 私はどれだけ深くつきあえるかで決まると思うよ。
……分かっているわよ。他人の恋愛にアレコレ手や口を出す趣味はないから、私は。
アンタも私を通じてあの子の情報聞き出そうとしないことね!
ま、頑張って」
少しムカつかせてしまったようだ、鬼熊さんはそんな言葉を言うだけ言って席にもどってしまった。
そして俺も鬼熊さんに対して、逆の探りを入れていた事を反省する。
「色々、ご迷惑おかけして申し訳ありませんでした」
席に着いたときに、隣の席の鬼熊さんにそう謝罪の言葉をそっとしておく。鬼熊さんはフッと笑い、首を横に振る。
「別に迷惑だとは感じてないから、どちらにしても友人との単なる雑談だしね」
そんな言葉になんかホッとする。
「もしかして俺の事も、友人といってくれていますか?」
鬼熊さんはニヤリと笑う。
「こんだけ、毎日顔合わせて、仕事の事からどうでも良い事まで話していて『単なる知人です』とか、アンタまさか言わないわよね」
俺は首を横に振る。
「まさか! 光栄です。そのように言って貰えた事が嬉しくて確認しただけですから」
二人でフフフと笑いあう。そこである事が頭に浮かぶ。
「あの鬼熊さん、あいつを呑みに誘ってやってくださいません? そういう相手には俺ってまったく役立たないから」
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