スモークキャットは懐かない?

白い黒猫

文字の大きさ
上 下
105 / 115
青い季節(恋すら始まっていない時代)

ホモ宣言

しおりを挟む
 目の前で友人がそれぞれ用紙をもって妙に盛り上がったテンションで会話をしている。
「俺、ワイルドだったぜ!」
 色黒で体格も良い相沢が自慢気に言い放ち、皆うらやましそうに見る。
「いいな~。俺はヘテロだよ」
  俺は、はしゃいでいる友人らを前に、用紙に再び目をやりため息をつく。別に落ち込んでいるわけではない。検査の結果はうすうす感じていたし、納得はしている。こういう環境だと色んな意味でカミングアウトってしにくいものである。
「清酒! お前は何だったの?」
 黙っていたら、スルーをしてもらえると思ったがしっかりと友人は俺の存在を思い出しそう聞いてくる。
「俺はホモだよ!」
 まさか人生においてこんな宣言をする日がくるとは考えもしなかった。友人らは、目を丸くして、信じられないという顔をする。
「お前がホモ! 冗談だろ?」
 俺はため息をつき、検査結果の用紙を皆に示す。皆はその用紙を回し読みをした後、一斉に笑い出す。友人は俺が同性愛主義者という事で笑ったのではない。
 『清酒』という苗字の俺がアルデヒド分解酵素遺伝子検査の結果『ホモ(お酒がまったく飲めないタイプ)』に分類されたからだ。
 因みに恋愛に関してはヘテロで、彼女もいるし、そういう意味では女性にしか興味がない。
 とはいえ、この検査のお陰で医学的にアルコールが飲めない事を証明はできた。余計な飲み会に誘われる煩わしさからは堂々と逃げられるようになったのは嬉しい。
 だが何故だろう?
【お酒がまったく飲めない清酒】
 その事で他のホモタイプの人以上に注目され笑われてしまうのは納得がいかない。お陰でますます「清酒」という珍名が面倒臭くなった。


 ※   ※   ※

 この検査、アルコールをどのくらい胎内で分解出来るかというものです。 
 大学によっては検査をしてくれてお酒との付き合い方を考えるきっかけを作ってくれる所があります。
 ウワバミをワイルド、普通に呑める人をヘテロ、全く呑めない人をホモと分類しています。
 専門的に言うとこちらどの遺伝子の因子をもつかということで分類されています。
 「お酒をバリバリ分解出来る因子」と「悪酔いする因子」この二種をどのように二つ保有しているかで体質が決まります。
 「お酒を分解する」因子を2つもつウワバミであるホモワイルドとなり、「悪酔い」因子2つ持つ下戸はミュータントホモ、それぞれ1つずつもつヘテロとして分類されています。つまり呑めても呑めなくても同じ因子を2つ持つ人ということでホモになります。そういう意味ではワイルドもホモではあったりします。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

相方募集中!

白い黒猫
キャラ文芸
珈琲豆メーカーのマメゾンの営業部に新人として入った相方友寄(さかたともき)。童顔で女顔の彼が目指すは尊敬する先輩のように仕事の出来る恰好良い男になる事。その為に先輩である清酒さんを見習って頑張るが……。 カワイイ癒し系女の子が好きで頑張っている相方くん。しかし彼は肉食系女子から超モテる男の子。でも自前の明るさと天然なスルー力で頑張ります。 『私はコレで煙草を辞めました?』のスピンオフ作品で、珍名で頑張る人の物語です。一人の社会人奮闘記なだけなので、元の物語を知らなくても問題はまったくありません。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

お父さんのお嫁さんに私はなる

色部耀
恋愛
お父さんのお嫁さんになるという約束……。私は今夜それを叶える――。

好きな人がいるならちゃんと言ってよ

しがと
恋愛
高校1年生から好きだった彼に毎日のようにアピールして、2年の夏にようやく交際を始めることができた。それなのに、彼は私ではない女性が好きみたいで……。 彼目線と彼女目線の両方で話が進みます。*全4話

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

処理中です...