俺の部屋はニャンDK 

白い黒猫

文字の大きさ
上 下
34 / 62

ニャンと言っているの?

しおりを挟む
 朝目を覚ますと見えるのは、二組の見下ろす眼。仰視すると猫ってライオンや虎の仲間だという事が良く分かる。
 如何にも獣といった目が、俺に強く訴えてくる。
『腹減った!』 と。
 俺は起き上がり、ノビをしてから台所へと向かった。サバとモノは俺に纏わりつくかのようについてくる。
 こういった二匹の行動はハッキリ言って困る。悪気がなくても蹴飛ばしたり踏みそうになったりするからだ。
「おい、危ないよ! ご飯欲しいなら邪魔するなよ!」
 甘えるように俺の足にスリスリと絡みついてくる二匹に声をかける。しかしブミャブミャと声を出すだけでやめることはない。
 二つの皿に餌を盛り手にもつとようやく離れ、キラキラした目で俺を見上げてくる。
 この不細工姉妹の顔が、カワイイ顔に見えてしまっている。俺の美的感覚はかなり狂ってしまったようだ。
 二匹は今俺に甘え懐いているように見えるが、ここが猫の油断のならない所。
 ご飯が欲しい時だけこういうカワイイ行動をしてくるのだ。
 まあ、野良の時と違って、撫でても嫌がらなくなった。時々は餌の要求以外で甘えに似た行動をする時もある。
 しかし猫だけに気儘で、俺の状況や都合を考えてくれないのが困った所。

 ブログ【俺の部屋はニャンDK】は猫の事、大学生活の事、一人暮らしの事を書き綴っていたが。
 圧倒的にサバとモノの猫ネタが多い。
 お陰で猫に関する悩みや、ネットの上でも猫仲間が出来て色々教えてもらえるようになった。またネット上にアップしたサバとモノの写真をカワイイと褒めてくれる人が意外に多かった。
 飼い主バカになってきたのか、そのように言われると嬉しい。またそういった言葉が俺の美的感覚を狂わせていった要因なのかもしれない。

 ブニャブニャ言いながら食べている二匹の写真を一枚撮ってから俺食事もして、大学に行く準備をする。
 大学に通ってバイトしながら猫を飼えるのか? と最初は心配だった。
 落ち着いて考えてみたら社会人や学生でペット飼っている人は世の中大勢いる。
 また仔猫ならともかく成人猫は四六時中世話しつづけなければならないような存在ではなかった。

 爪研ぎ問題も解決し、棚のものを落とす事はあっても致命的な問題を起こすことは無い。
 サバも一本足なくても普通に生活出来ており、部屋の中を自由に自然に動きまくっている。
 毛繕いの時や代わりに掻いてやっている時に後ろ脚があるかのような謎の動きをするくらい。
 猫は気儘なので、お留守番させていても能天気で家で楽しく過ごしてくれているようだ。

 養う相手が出来た事で責任感も芽生えた気はする。
 実際問題、二匹のご飯代を頑張って稼がないといけない。その為にバイトと節約を頑張っている。
 サバの見舞金はまだ残っているものの、それで猫の玩具なんて買う事はしなかった。貯金して猫緊急予算としておいてある。
 玩具は買わなくても、何故か部屋に増えていっている。スアさんやシングが遊びにきて置いていったものが溜まってきているようだ。

 大学行くために玄関の所で部屋を振り返る。モノは今の部屋での最高の陽だまりスポットで丸くなっている。寝に入っているようで俺の事なんて気にしてもいない。
 意外な事にサバは、いつも玄関まで見送るようにやって来る。ブミャーの鳴き挨拶してくれる。
 いや……見送りの挨拶してくれていると思うのは俺の勝手な願望かもしれない。
 『邪魔だから早く出ていけ!』とか言っている可能性もなくはない。
 ヤクザ顔で、声が酒焼けしている人のように嗄れているだけに、そのようにも聞こえてくる。

 昨日勢いでインストールしたアプリを思い出す。【ニャンと言っているの?】という名の猫の言葉を翻訳してくれるという夢のようなアプリ。
 試しにブミャッと短く鳴くサバに向けてみた。

『お久しぶり~♪
 髪型変えた? それも超似合ってる~!
 最高にイケてるよ♥』
 画面見るとそんな結果が出てきた。
 
 な、訳ないだろ! 俺は思わず画面にツッコむ。言葉の長さからしてあってない。完全にネタアプリだったようだ。
 まぁ猫が好意的な言葉を話しているとして、仲を深める意図があるのかもしれない。
 現実的な話、サバの言葉は『行ってらっしゃい』の意味の方が近いとは思う。

「サバ、モノ、行ってくるね。
 良い子にしているんだぞ」
 俺は二匹にそう声をかけノブに手をやる。

 ブミッ

 サバから返事のような言葉が帰ってきた。
 多分『分かった』と言ってくれたのだろうと勝手に判断して部屋を出た。
 
 
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

吾輩は野良の猫である

シュンティ
現代文学
野良の猫の吾輩が書いた短編集である。

お昼寝カフェ【BAKU】へようこそ!~夢喰いバクと社畜は美少女アイドルの悪夢を見る~

保月ミヒル
キャラ文芸
人生諦め気味のアラサー営業マン・遠原昭博は、ある日不思議なお昼寝カフェに迷い混む。 迎えてくれたのは、眼鏡をかけた独特の雰囲気の青年――カフェの店長・夢見獏だった。 ゆるふわおっとりなその青年の正体は、なんと悪夢を食べる妖怪のバクだった。 昭博はひょんなことから夢見とダッグを組むことになり、客として来店した人気アイドルの悪夢の中に入ることに……!? 夢という誰にも見せない空間の中で、人々は悩み、試練に立ち向かい、成長する。 ハートフルサイコダイブコメディです。

処理中です...