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正式なお付き合いの申し込み
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九人と二匹の宴は、人種どころか種を超えているのに関わらず平和で穏やかだった。
サバとモノも殆どが顔見知りという事もあるのか意外と落ち着いてはいた。
モノはジローさんやスアさんに甘えたりとしながら、皆の所を周ったりした、
サバは俺と柑子さんの間に置物のように座り込む。俺が撫でて珍しく怒らないところから機嫌は悪くないようだ。
しかし柑子さんが触るとフーという威嚇の声を上げる。ならば俺とスアさんの隣に座れば良かったのにと思う。
とはいえ、サバがこんなに人の輪に紛れているのは珍しい。
俺と柑子さんが未成年なのでお酒は呑むわけにはいかない。
このメンバーはその辺はキッチリしているのでソフトドリンクでこの時間を楽しむ。
そういう意味でも、柑子さんも安心して楽しめる空間。
この時の部屋の空気は素面の俺達も楽しく酔わせてくれるものだったから。
共に話し笑い皆とのこのひとときを楽しんだ。
楽しい酒宴も終わりの時を迎える。酔っぱらいつぶれたキティさんはスアさんの部屋に回収される。
帰るのが面倒だというクロネコさんはジローさん部屋に泊まるらしい。と言うか上の階で大人同士皆で更にジックリ飲み直すのだろう。
そして今、俺は柑子さんと根来山森の町を歩いている。
素面であることと、ホストだから責任もって女の子を家まで送るべきと言われたからだ。
部屋の熱気で火照った頬に、冷たい冬の夜の風が心地よかった。
「ありがとう、部外者の私まで招待して頂いて。今日は本当に楽しかった」
そうお礼を言う柑子さんに俺は首を横に振る。
「いやいや! 部外者どころか中心人物ですよ! 今回の事でどれ程柑子さんという存在に救われたか。
でも……快気祝いパーティーに誘われて驚きましたよね?
身内の集まりに急に誘ってしまい申し訳ありませんでした。
来て頂いて嬉しかったです」
考えてみたら、友達ですらない。顔見知りに近い関係だ。
ホームパーティーへの招待は柑子さんには敷居高かったかもしれない。
「そう言えば不思議ね。乕尾くんとは、かなーり昔からの知り合いのような気がして参加していた。
でも来て良かった楽しかったから」
柑子さんの言葉にホッとする。
「それに私は実家暮らしなので、ああいう下宿の雰囲気は味わえた事も嬉しかった。あの和気藹々とした雰囲気いいな」
俺は笑いながら頷く。
「味わいたくなったら、いつでも遊びにきて! シアさんも皆も喜ぶと思うよ」
柑子さんは嬉しそうに笑う。
「と言っても俺のアパートは、かなり個性的で面白い人ばかりだよな。普通の下宿感は薄いかもしれない」
「確かにグローバルよね~♪」
柑子さんはクスクスと笑いそう返してくる。グローバルでなんかスケールがデカい人が多い気がする。
歓迎会でバーベキューしていた写真を実家に送ったら母親は混乱したようだ。
『アンタ、東京にいるんじゃなかったの? 海外留学していたっけ』
というオカシナ質問が返ってきた。確かに写真だけみるとそう言われても仕方がない絵が出来上がっている。
その事を柑子さんにも話すと吹き出した。
「しかも皆、外国人という事を抜きにしても個性的。
平凡な俺が普通に過ごしていたら会えないような人たちだよね。こんな素敵な人達とこうして会えただけに、
この街に来て良かったと思う」
俺の言葉に柑子さんは頷いて同意していたが、途中でその顔がエッという顔になる。
「乕尾くんも面白いけど。平凡ではないと思う」
「え……? 俺なんて地味だし実際平凡中の平凡て何も……」
柑子さんは戸惑う俺に何故か吹き出す。
「結構商店街でも目立っているよ! 乕尾くんって」
「え!」
思わず俺は聞き返す。そんな人から注目される事をした覚えはない。
「【ねこやまもり】でも、画面に映らなくても結構存在感はあるよ。良い味出しているって。
乕尾くんのファンも多いよ! それにあのプロジェクトに笑顔で一生懸命参加しているの皆見ているから。
オバサマ、オジサマ達から『良い子だ』『可愛い』って大評判よ」
俺は柑子さんの言葉は嬉しいと思うものの戸惑いの方が強い。
確かにあのプロジェクトで商店街の人ともより親しくなれた。しかも可愛いって……。
「乕尾くんは良い意味で面白い!
こうして話をしていてもホッとする感じ。
一緒にいて楽しい気持ちになる不思議な魅力のある人だよ!
会ってすぐLINEのIDを交換したのも、乕尾くんが困っていたからだけではないの。
この人と友達になっても良いと感じたから。でないと連絡先交換までしないよ。
病院のサイトに連絡先や、各種ペット相談に応じてくれるサイトへのリンクも貼ってあるから。普通ならそちらに誘導する」
俺はそんなふうに言われて恥ずかしくて下を向く。そういう意味では、患者家族としてかなり厚かましく頼ってしまった。
俺って情けない男ではないか?
大きく深呼吸して心落ち着かせてから柑子さんに向き直る。
テンパっていた事もあり甘え過ぎた気もする。俺は立ち柑子さんと向き合った。
「俺これからはもっとシッカリしますから! これからまっとうな友達として付き合ってください」
そう言ってから頭を下げた。柑子さんは何故か吹き出して笑うが、直ぐに顔を引き締め真顔をつくる。
「こちらこそ宜しくお願いします。
乕尾くんという友達が出来て嬉しいな」
「俺もこうして柑子さんと友達になれて嬉しいです。引き合わせてくれたサバに感謝しないと。
改めてですが、これからも宜しくお願いします」
そうして二人で向き合いお辞儀する。
友達としてのお付き合いを宜しくお願いしますなんて言った事なんてない。
その為に不思議な気持ちで胸もモゾモゾとした不思議な感じがする。しかし不快ではなく気分は良く楽しかった。
二人とも何かおかしいものを感じたのだろう、同時に吹き出した。
「ほら、やっぱり乕尾くん面白い!」
「かな?」
それからは普通に歩きながら友達らしい猫と関係ない会話を楽しむ。それぞれの学校の事とか、家族の事とか。
柑子さんを家まで送って、薮先生の奥様にご挨拶をしてからアパートに戻る。
スアさんがシングを付き合わせて後片付けをしてくれていた。
他の四人は上で飲んでいるのだろう。
二人は何故か俺を見てニヤニヤ顔。その理由を聞くと、俺がえらくゴキゲンな様子で帰ってきたからだと言う。俺は納得して頷く。
「そうなんですよ! 実は今日ね。柑子さんと正式に……お友達になることになりました!」
俺が理由を話すと、二人は何故かポカンとした不思議な表情を返してきた。
「……まあ、お主らしい。トラオよいではないか。
喉乾いただろ? お茶でも飲むか?」
シングかそう話しかけて来たことで、三人でのプチ飲み会が始まる。
スアさんがいた事もあるのか、話題は何故か恋愛トーク。
シングは同じ日本語の講義にいるモンゴル人の女の子が今好きなだという。
日本語の勉強を手伝うなどしながらアプローチをガンガンして距離を縮めている真っ最中ならしい。
応援したら何故か『お前こそ頑張れ』と怒られた。
スアさんも好きな人の為に衛生管理や調理師免許等の取得を頑張っているようだ。
皆、未来の為に恋に仕事にと頑張っている姿を見ると羨ましくなる。
そんな話をしていると時間もあっという間に進み日付もとっくに変わっていた。
シングが寝落ちしていった事で解散となる。起こしても起きないし、運ぶのも面倒なので俺の部屋にそのまま寝て貰うことにする。
取り敢えずシングの部屋に行き、掛け布団だけ持ってきてシングにかける。隣に布団を敷いて俺も寝る事にした。
楽しすぎた所為かなんか眠れない。好きな人の為に色々してあげて頑張るという二人の話を思い出すとなんかワクワクしてくる。
そういう相手すら居ない自分が少し寂しく感じた。ふと視線を感じて見るとサバが俺の方を見ていることに気がつく。
名前を小さく呼ぶと素直に近付いてくた。掛け布団を持ち上げるようにスリスリしてくる。
寒いから布団の中に潜りたいというのだろうか? 俺は掛け布団を少しあげて入れてやると嬉しそうに入り丸くなる。
なんか懐いてくれてきるようで可愛い。甘えてきているような雰囲気に保護欲も唆る。
「お前という家族が出来たんだから、俺も頑張らないとな」
そうサバに声をかけてその身体をなでる。柔らかい毛並みが心地良い。
サバとシングの寝息と腕の中の温かさで、俺も段々眠くなってくる。一人じゃない夜もなんか良いものなのかもしれない。
サバとモノも殆どが顔見知りという事もあるのか意外と落ち着いてはいた。
モノはジローさんやスアさんに甘えたりとしながら、皆の所を周ったりした、
サバは俺と柑子さんの間に置物のように座り込む。俺が撫でて珍しく怒らないところから機嫌は悪くないようだ。
しかし柑子さんが触るとフーという威嚇の声を上げる。ならば俺とスアさんの隣に座れば良かったのにと思う。
とはいえ、サバがこんなに人の輪に紛れているのは珍しい。
俺と柑子さんが未成年なのでお酒は呑むわけにはいかない。
このメンバーはその辺はキッチリしているのでソフトドリンクでこの時間を楽しむ。
そういう意味でも、柑子さんも安心して楽しめる空間。
この時の部屋の空気は素面の俺達も楽しく酔わせてくれるものだったから。
共に話し笑い皆とのこのひとときを楽しんだ。
楽しい酒宴も終わりの時を迎える。酔っぱらいつぶれたキティさんはスアさんの部屋に回収される。
帰るのが面倒だというクロネコさんはジローさん部屋に泊まるらしい。と言うか上の階で大人同士皆で更にジックリ飲み直すのだろう。
そして今、俺は柑子さんと根来山森の町を歩いている。
素面であることと、ホストだから責任もって女の子を家まで送るべきと言われたからだ。
部屋の熱気で火照った頬に、冷たい冬の夜の風が心地よかった。
「ありがとう、部外者の私まで招待して頂いて。今日は本当に楽しかった」
そうお礼を言う柑子さんに俺は首を横に振る。
「いやいや! 部外者どころか中心人物ですよ! 今回の事でどれ程柑子さんという存在に救われたか。
でも……快気祝いパーティーに誘われて驚きましたよね?
身内の集まりに急に誘ってしまい申し訳ありませんでした。
来て頂いて嬉しかったです」
考えてみたら、友達ですらない。顔見知りに近い関係だ。
ホームパーティーへの招待は柑子さんには敷居高かったかもしれない。
「そう言えば不思議ね。乕尾くんとは、かなーり昔からの知り合いのような気がして参加していた。
でも来て良かった楽しかったから」
柑子さんの言葉にホッとする。
「それに私は実家暮らしなので、ああいう下宿の雰囲気は味わえた事も嬉しかった。あの和気藹々とした雰囲気いいな」
俺は笑いながら頷く。
「味わいたくなったら、いつでも遊びにきて! シアさんも皆も喜ぶと思うよ」
柑子さんは嬉しそうに笑う。
「と言っても俺のアパートは、かなり個性的で面白い人ばかりだよな。普通の下宿感は薄いかもしれない」
「確かにグローバルよね~♪」
柑子さんはクスクスと笑いそう返してくる。グローバルでなんかスケールがデカい人が多い気がする。
歓迎会でバーベキューしていた写真を実家に送ったら母親は混乱したようだ。
『アンタ、東京にいるんじゃなかったの? 海外留学していたっけ』
というオカシナ質問が返ってきた。確かに写真だけみるとそう言われても仕方がない絵が出来上がっている。
その事を柑子さんにも話すと吹き出した。
「しかも皆、外国人という事を抜きにしても個性的。
平凡な俺が普通に過ごしていたら会えないような人たちだよね。こんな素敵な人達とこうして会えただけに、
この街に来て良かったと思う」
俺の言葉に柑子さんは頷いて同意していたが、途中でその顔がエッという顔になる。
「乕尾くんも面白いけど。平凡ではないと思う」
「え……? 俺なんて地味だし実際平凡中の平凡て何も……」
柑子さんは戸惑う俺に何故か吹き出す。
「結構商店街でも目立っているよ! 乕尾くんって」
「え!」
思わず俺は聞き返す。そんな人から注目される事をした覚えはない。
「【ねこやまもり】でも、画面に映らなくても結構存在感はあるよ。良い味出しているって。
乕尾くんのファンも多いよ! それにあのプロジェクトに笑顔で一生懸命参加しているの皆見ているから。
オバサマ、オジサマ達から『良い子だ』『可愛い』って大評判よ」
俺は柑子さんの言葉は嬉しいと思うものの戸惑いの方が強い。
確かにあのプロジェクトで商店街の人ともより親しくなれた。しかも可愛いって……。
「乕尾くんは良い意味で面白い!
こうして話をしていてもホッとする感じ。
一緒にいて楽しい気持ちになる不思議な魅力のある人だよ!
会ってすぐLINEのIDを交換したのも、乕尾くんが困っていたからだけではないの。
この人と友達になっても良いと感じたから。でないと連絡先交換までしないよ。
病院のサイトに連絡先や、各種ペット相談に応じてくれるサイトへのリンクも貼ってあるから。普通ならそちらに誘導する」
俺はそんなふうに言われて恥ずかしくて下を向く。そういう意味では、患者家族としてかなり厚かましく頼ってしまった。
俺って情けない男ではないか?
大きく深呼吸して心落ち着かせてから柑子さんに向き直る。
テンパっていた事もあり甘え過ぎた気もする。俺は立ち柑子さんと向き合った。
「俺これからはもっとシッカリしますから! これからまっとうな友達として付き合ってください」
そう言ってから頭を下げた。柑子さんは何故か吹き出して笑うが、直ぐに顔を引き締め真顔をつくる。
「こちらこそ宜しくお願いします。
乕尾くんという友達が出来て嬉しいな」
「俺もこうして柑子さんと友達になれて嬉しいです。引き合わせてくれたサバに感謝しないと。
改めてですが、これからも宜しくお願いします」
そうして二人で向き合いお辞儀する。
友達としてのお付き合いを宜しくお願いしますなんて言った事なんてない。
その為に不思議な気持ちで胸もモゾモゾとした不思議な感じがする。しかし不快ではなく気分は良く楽しかった。
二人とも何かおかしいものを感じたのだろう、同時に吹き出した。
「ほら、やっぱり乕尾くん面白い!」
「かな?」
それからは普通に歩きながら友達らしい猫と関係ない会話を楽しむ。それぞれの学校の事とか、家族の事とか。
柑子さんを家まで送って、薮先生の奥様にご挨拶をしてからアパートに戻る。
スアさんがシングを付き合わせて後片付けをしてくれていた。
他の四人は上で飲んでいるのだろう。
二人は何故か俺を見てニヤニヤ顔。その理由を聞くと、俺がえらくゴキゲンな様子で帰ってきたからだと言う。俺は納得して頷く。
「そうなんですよ! 実は今日ね。柑子さんと正式に……お友達になることになりました!」
俺が理由を話すと、二人は何故かポカンとした不思議な表情を返してきた。
「……まあ、お主らしい。トラオよいではないか。
喉乾いただろ? お茶でも飲むか?」
シングかそう話しかけて来たことで、三人でのプチ飲み会が始まる。
スアさんがいた事もあるのか、話題は何故か恋愛トーク。
シングは同じ日本語の講義にいるモンゴル人の女の子が今好きなだという。
日本語の勉強を手伝うなどしながらアプローチをガンガンして距離を縮めている真っ最中ならしい。
応援したら何故か『お前こそ頑張れ』と怒られた。
スアさんも好きな人の為に衛生管理や調理師免許等の取得を頑張っているようだ。
皆、未来の為に恋に仕事にと頑張っている姿を見ると羨ましくなる。
そんな話をしていると時間もあっという間に進み日付もとっくに変わっていた。
シングが寝落ちしていった事で解散となる。起こしても起きないし、運ぶのも面倒なので俺の部屋にそのまま寝て貰うことにする。
取り敢えずシングの部屋に行き、掛け布団だけ持ってきてシングにかける。隣に布団を敷いて俺も寝る事にした。
楽しすぎた所為かなんか眠れない。好きな人の為に色々してあげて頑張るという二人の話を思い出すとなんかワクワクしてくる。
そういう相手すら居ない自分が少し寂しく感じた。ふと視線を感じて見るとサバが俺の方を見ていることに気がつく。
名前を小さく呼ぶと素直に近付いてくた。掛け布団を持ち上げるようにスリスリしてくる。
寒いから布団の中に潜りたいというのだろうか? 俺は掛け布団を少しあげて入れてやると嬉しそうに入り丸くなる。
なんか懐いてくれてきるようで可愛い。甘えてきているような雰囲気に保護欲も唆る。
「お前という家族が出来たんだから、俺も頑張らないとな」
そうサバに声をかけてその身体をなでる。柔らかい毛並みが心地良い。
サバとシングの寝息と腕の中の温かさで、俺も段々眠くなってくる。一人じゃない夜もなんか良いものなのかもしれない。
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