13 / 62
毛の問題
しおりを挟む
夏になり、より困ってきたのは抜け毛の問題。俺の毛ではなくて猫の毛。猫は衣替えをしないようでいて、実は冬は冬用の毛を生やし、夏はその毛が抜けて夏用の毛を生やすという。
その為に柵にいて毛繕いなんかされると、もうそこら中に毛が飛び散るのだ。
猫が去った柵にも毛がアチラコチラについていて、それが風で飛び散って大変な事になっている。掃除機とモップとコロコロがますます手放せないようになった。
公園で他のさくらねこが、ファンにブラッシングして持っているのを見て衝撃をうけた。
サバとモノはあまり人に懐かないというか触られるのを嫌がる為にブラッシングをしてもらえず、散る量も多かったようだ。
しかも先日部屋に泊めたことがいけなかったせいか、俺の部屋も縄張り認定されたようで、気が付くと侵入している事がある。
見つけたらすぐ追い出すのだが、後に飛び散った毛とか、謎の毛の塊が残っている。
そういう状況で毛の被害が深刻なことになっていた。
しかし台風の時などは可愛そうで外に放りだす事も出来ず、許してしまう事が、余計に二匹を付け上がらせてしまったのかもしれない。
そこで俺は決意する。毛が散る前に抜け毛を無くしたらいいだけである。
ネットで検索すると百均のペットコーナーにも猫用のブラシが売っているという。
よく分からないので、スニッカーブラシという金属のブラシとコームを両方買った。
買って次の日に早速手摺に嵌っているモノに使ってみた。怒ると思ったが意外なことに大人しくされるまま。
というか、体勢を変え違う所のブラッシングを要求してくる始末。
流石にお腹とかは嫌がったが、やっていると毛が面白いように取れた。尻尾の上とか首の所とかをブラッシングしていると、目を細め幸せそうにしている様子が、俺の心をキュンとさせる。
ツンの時が多いだけに、こうデレてこられると堪らないものなのだと知る。
いつのまにかサバもやってきて、自分もとブラッシングを要求してくる。
尻尾の上の辺りをブラッシングすると、もう気持ちよくて堪りませんという顔でプルプルしている姿をサバがしてくることにも衝撃だった。モノだけでなくサバまでが俺に心を開いてブラッシングをさせてくれることが、嬉しい。
俺はこの二匹と心が通じあったこの瞬間に感動した。
その後も時間があれば、二匹をブラッシングしてあげる事が日課となっていた。だんだん訪問した時の様子で、『オヤツよこせ!』 『水を飲ませろ!』 『ブラッシングしても良いぞ!』と言っているのか分かるようになってきたような気がする。
その事を部屋にいたシングに自慢してしまう。俺の部屋にいつのまにか入り込んで寛いでいるのは、猫だけでなくシングもそうだったと気がつく。
いつの間にか部屋にいて母から送ってもらった煎餅を棚から出して食べながら漫画を読んでいる。
俺がシングに態々その話をしたのは、このアパートではシングが一番猫と距離というか、溝があるように思えたから。
シングは猫の欲求とは異なった行動をよく返すからだ。
その為に二匹に舌打ちされているような表情を良くされている。シングはマイペースな所があり、猫相手だけでなく、アパートの他の住人にも時々、ズレた言動を返して唖然とさせる事が多い。
それは言葉が少し足りないからではなく天然な性格によるものだと分かってきた。
猫とかなり良い関係になったことを自慢してみたが反応はイマイチだった。
俺の話にシングが羨ましそうな顔をするどころか、冷静で冷めた視線を返される。
「それって、単に立派な下僕とされただけでは?
トラはアイツらに良いように使われているだけに見える」
『それは違う! 信頼関係を築いて仲良くなっただけ』と反論したかったが、コチラの都合なんてまったく気にされず、向こうの要望だけを受けている今の状況。
シングの言葉に少し納得している自分もいて、何も言い返せなかった。
「人間は野生の動物とは適切な距離をもつものだ!」
シングの言葉は続く。近所の猫は野生の動物と言えるのだろうか? 野良と野生の違いってそもそも何なのか?
「もっと人間の威厳をもて!
奴らは甘い顔をすると付け上がるぞ」
その後何故かシングにお叱り言葉を貰った。猫相手に関しては、シングだけが猫に一切媚びない、忖度しない行動をあえてしているのはよく分かった。
しかし人間社会においてはもう少し配慮を覚えた方が良いのにと俺は思う。
その為に柵にいて毛繕いなんかされると、もうそこら中に毛が飛び散るのだ。
猫が去った柵にも毛がアチラコチラについていて、それが風で飛び散って大変な事になっている。掃除機とモップとコロコロがますます手放せないようになった。
公園で他のさくらねこが、ファンにブラッシングして持っているのを見て衝撃をうけた。
サバとモノはあまり人に懐かないというか触られるのを嫌がる為にブラッシングをしてもらえず、散る量も多かったようだ。
しかも先日部屋に泊めたことがいけなかったせいか、俺の部屋も縄張り認定されたようで、気が付くと侵入している事がある。
見つけたらすぐ追い出すのだが、後に飛び散った毛とか、謎の毛の塊が残っている。
そういう状況で毛の被害が深刻なことになっていた。
しかし台風の時などは可愛そうで外に放りだす事も出来ず、許してしまう事が、余計に二匹を付け上がらせてしまったのかもしれない。
そこで俺は決意する。毛が散る前に抜け毛を無くしたらいいだけである。
ネットで検索すると百均のペットコーナーにも猫用のブラシが売っているという。
よく分からないので、スニッカーブラシという金属のブラシとコームを両方買った。
買って次の日に早速手摺に嵌っているモノに使ってみた。怒ると思ったが意外なことに大人しくされるまま。
というか、体勢を変え違う所のブラッシングを要求してくる始末。
流石にお腹とかは嫌がったが、やっていると毛が面白いように取れた。尻尾の上とか首の所とかをブラッシングしていると、目を細め幸せそうにしている様子が、俺の心をキュンとさせる。
ツンの時が多いだけに、こうデレてこられると堪らないものなのだと知る。
いつのまにかサバもやってきて、自分もとブラッシングを要求してくる。
尻尾の上の辺りをブラッシングすると、もう気持ちよくて堪りませんという顔でプルプルしている姿をサバがしてくることにも衝撃だった。モノだけでなくサバまでが俺に心を開いてブラッシングをさせてくれることが、嬉しい。
俺はこの二匹と心が通じあったこの瞬間に感動した。
その後も時間があれば、二匹をブラッシングしてあげる事が日課となっていた。だんだん訪問した時の様子で、『オヤツよこせ!』 『水を飲ませろ!』 『ブラッシングしても良いぞ!』と言っているのか分かるようになってきたような気がする。
その事を部屋にいたシングに自慢してしまう。俺の部屋にいつのまにか入り込んで寛いでいるのは、猫だけでなくシングもそうだったと気がつく。
いつの間にか部屋にいて母から送ってもらった煎餅を棚から出して食べながら漫画を読んでいる。
俺がシングに態々その話をしたのは、このアパートではシングが一番猫と距離というか、溝があるように思えたから。
シングは猫の欲求とは異なった行動をよく返すからだ。
その為に二匹に舌打ちされているような表情を良くされている。シングはマイペースな所があり、猫相手だけでなく、アパートの他の住人にも時々、ズレた言動を返して唖然とさせる事が多い。
それは言葉が少し足りないからではなく天然な性格によるものだと分かってきた。
猫とかなり良い関係になったことを自慢してみたが反応はイマイチだった。
俺の話にシングが羨ましそうな顔をするどころか、冷静で冷めた視線を返される。
「それって、単に立派な下僕とされただけでは?
トラはアイツらに良いように使われているだけに見える」
『それは違う! 信頼関係を築いて仲良くなっただけ』と反論したかったが、コチラの都合なんてまったく気にされず、向こうの要望だけを受けている今の状況。
シングの言葉に少し納得している自分もいて、何も言い返せなかった。
「人間は野生の動物とは適切な距離をもつものだ!」
シングの言葉は続く。近所の猫は野生の動物と言えるのだろうか? 野良と野生の違いってそもそも何なのか?
「もっと人間の威厳をもて!
奴らは甘い顔をすると付け上がるぞ」
その後何故かシングにお叱り言葉を貰った。猫相手に関しては、シングだけが猫に一切媚びない、忖度しない行動をあえてしているのはよく分かった。
しかし人間社会においてはもう少し配慮を覚えた方が良いのにと俺は思う。
0
お気に入りに追加
22
あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

皇太后(おかあ)様におまかせ!〜皇帝陛下の純愛探し〜
菰野るり
キャラ文芸
皇帝陛下はお年頃。
まわりは縁談を持ってくるが、どんな美人にもなびかない。
なんでも、3年前に一度だけ出逢った忘れられない女性がいるのだとか。手がかりはなし。そんな中、皇太后は自ら街に出て息子の嫁探しをすることに!
この物語の皇太后の名は雲泪(ユンレイ)、皇帝の名は堯舜(ヤオシュン)です。つまり【後宮物語〜身代わり宮女は皇帝陛下に溺愛されます⁉︎〜】の続編です。しかし、こちらから読んでも楽しめます‼︎どちらから読んでも違う感覚で楽しめる⁉︎こちらはポジティブなラブコメです。
百合系サキュバスにモテてしまっていると言う話
釧路太郎
キャラ文芸
名門零楼館高校はもともと女子高であったのだが、様々な要因で共学になって数年が経つ。
文武両道を掲げる零楼館高校はスポーツ分野だけではなく進学実績も全国レベルで見ても上位に食い込んでいるのであった。
そんな零楼館高校の歴史において今まで誰一人として選ばれたことのない“特別指名推薦”に選ばれたのが工藤珠希なのである。
工藤珠希は身長こそ平均を超えていたが、運動や学力はいたって平均クラスであり性格の良さはあるものの特筆すべき才能も無いように見られていた。
むしろ、彼女の幼馴染である工藤太郎は様々な部活の助っ人として活躍し、中学生でありながら様々な競技のプロ団体からスカウトが来るほどであった。更に、学力面においても優秀であり国内のみならず海外への進学も不可能ではないと言われるほどであった。
“特別指名推薦”の話が学校に来た時は誰もが相手を間違えているのではないかと疑ったほどであったが、零楼館高校関係者は工藤珠希で間違いないという。
工藤珠希と工藤太郎は血縁関係はなく、複雑な家庭環境であった工藤太郎が幼いころに両親を亡くしたこともあって彼は工藤家の養子として迎えられていた。
兄妹同然に育った二人ではあったが、お互いが相手の事を守ろうとする良き関係であり、恋人ではないがそれ以上に信頼しあっている。二人の関係性は苗字が同じという事もあって夫婦と揶揄されることも多々あったのだ。
工藤太郎は県外にあるスポーツ名門校からの推薦も来ていてほぼ内定していたのだが、工藤珠希が零楼館高校に入学することを決めたことを受けて彼も零楼館高校を受験することとなった。
スポーツ分野でも名をはせている零楼館高校に工藤太郎が入学すること自体は何の違和感もないのだが、本来入学する予定であった高校関係者は落胆の声をあげていたのだ。だが、彼の出自も相まって彼の意志を否定する者は誰もいなかったのである。
二人が入学する零楼館高校には外に出ていない秘密があるのだ。
零楼館高校に通う生徒のみならず、教員職員運営者の多くがサキュバスでありそのサキュバスも一般的に知られているサキュバスと違い女性を対象とした変異種なのである。
かつては“秘密の花園”と呼ばれた零楼館女子高等学校もそういった意味を持っていたのだった。
ちなみに、工藤珠希は工藤太郎の事を好きなのだが、それは誰にも言えない秘密なのである。
この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアッププラス」「ノベルバ」「ノベルピア」にも掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる