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道は同じ 18話
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計画は予定通り進んだ。なんの邪魔も入らず。
ここまで順調に進めば逆に何かあるのではないかと勘繰ってしまう。あとは、専門学校に受かるだけ。調べた限りだと、よっぽどバカとかじゃない限りは専門学校を落ちることはないと書いていたから、多分大丈夫だと思うけど、落ちるのだけは洒落《しゃれ》にならない。
合格発表にここまで緊張感を持てたのは初めてだ。高校受験の時は、先生が夜通し頑張ってくれて高校の人数調整をしてくれていたから落ちる心配は少なかったし。受験ってこんなに不安になるものなのか。全然眠れないんだけど。せっかく平和な仮卒業期間を手に入れたというのに、合格しているのか不安でなんも手につかない。
野本の2次試験が終わったら、また忙しくなるのだから、それまでは楽しく過ごしたいのに。なんで僕の合格発表と野本の2次試験の結果発表の日付が同じなんだ。神はいつでも僕のことを見放す。野本と離れられる時間を今作ってくれてもいいじゃないか。これから離れる時間はできるけど、それまでは我慢しろって。今まで散々我慢してきたから割と限界なのに。
はあー。何か楽しいことでもないかな。
時間を持て余していた僕は、まだ合格が出ていないにも関わらず、引越しの準備を始めた。
野本が忙しい時に引っ越しを済ませると、最後に会いたいとか言われても、断る口実になりそうだし。さっさと済ませてしまおう。
まずは持って行くものの選別だ。漫画なんて今まで描いたことがなかったから、何が必要なのかさえも知らない。とりあえず教科書類はいらないから、物置の奥にもでしまって。漫画はある程度あったほうがそれっぽいから何冊かは持っていこう。イラストを描くための参考書みたいなものも中古で買っておこうか。誰かに見られた時に、そんなの持っていたんだ。ってアピールにもなるし。
合格発表当日。僕は野本に誘われて、ご当地のカフェへとやってきていた。お互いネットでの掲載があるから見ようと。
僕の発表は朝の10時だけど、野本は12時だから暇つぶしが大変だ。
「颯太はどう、受かっていた?」
「それ以前に一応別れたことになっているんだから、軽々しく呼ばないでよ」
「いいじゃんちょっとくらい」
「学校で噂になっているんだから」
「もう学校行かないんだからいいじゃない。噂なんて気にしないでよ」
「気にするよ。いいことは言われてないんだから」
「ケチ」
ケチでもなんでもいいよ。確かにみんなとは離れるけど、最後の最後で変な噂がつくのだけは嫌だから。最後の2日間だけみんなと会うんだから、波風のたたないようにしたいんだ。
というか、別れたって噂どっから出たいんだ。僕は友達少ないから流してないし、野本自分から言うとも思えない。他に誰が……野本だったら、高見さんに言っていたりするのかな。それだったら高見さんだけど、お互い信用していないような関係だから、話しているとも思えない。ってことはあの現場を誰かに見られていたか。あの場の誰か知っている人がいてもおかしくはないんだ。野本騒いでいたし、注目を集めていたからな。絶対これだ。まあ、2日しかないからいいけど。これから会うかもわからない奴らばかりだから。割り切るしかないか。
「やった! 颯太見て! 私も受かっていたよ!」
よかったこれで野本とは離れ離れになれると言うことか。本当によかった。
「おめでとう。引越しとかでこれからまた大変だね」
「うん。颯太は、いつまでこっちにいるの?」
「うーんまだ決めてないけど、3月になる前に荷物だけでも持って行きたいなって思っているよ。結衣は?」
「私もまだ決めてないよ」
合わせてやろうと思ったのに、まだ決めてなかったのか。まあ、早めにしてできるだけ野本との時間を減らすことには変わりないけど。いっそのこと2日とかにしようか。卒業してから次の日。会う時間をわざと作らないようにしようか。それはそれで忙しいから、もう少し後がいいな。野本はまだ準備をしていないだろうし、焦ることはない。
3月1日に僕らは卒業して、僕は引越しの日程を3月6日に決めた。もちろん野本にもそのことは伝えた。引っ越す前に会いたいと言われたが、野本のことだから引越しの準備が進んでないんじゃないかと言ったら図星だったみたいで、会うことはせずに電話で済ませた。それも約1日に及ぶ長電話。そんな時間があるのなら会いたくはないけど会う時間くらい作れたんじゃないか。それと、お風呂の時くらい電話切ってくれ。僕はお風呂場にスマホを持っていなかい派の人間だから、部屋でただ充電を無駄にしただけだったんだから。
いろいろめんどくさかったけど、悪い日々ではなかった。君を再び選ぶことはないだろうけど、今までありがとう。
この場所でいる最後の日となった3月6日。僕は朝早くに親と共に車に乗り込んだ。理由は2つ。1つは知っての通り、野本に合わないためだ。それと、もう1つは、単純に距離が遠すぎることだ。朝早くに出ないと、向こうに着くのが夕方とかになってしまうから。夕方に着いたら、ただでさえ立地とかわからないのに、余計に迷うことになるから。
これで本当にさよならだ。時が経てば、スマホが壊れたことにして、連絡先を削除しよう。そしてこっちでは漫画漬けの日々ではなく、バイト漬けの日々を送ろう。お金に困らないように。専門学校が終わってもこっちでいられるように。
ここまで順調に進めば逆に何かあるのではないかと勘繰ってしまう。あとは、専門学校に受かるだけ。調べた限りだと、よっぽどバカとかじゃない限りは専門学校を落ちることはないと書いていたから、多分大丈夫だと思うけど、落ちるのだけは洒落《しゃれ》にならない。
合格発表にここまで緊張感を持てたのは初めてだ。高校受験の時は、先生が夜通し頑張ってくれて高校の人数調整をしてくれていたから落ちる心配は少なかったし。受験ってこんなに不安になるものなのか。全然眠れないんだけど。せっかく平和な仮卒業期間を手に入れたというのに、合格しているのか不安でなんも手につかない。
野本の2次試験が終わったら、また忙しくなるのだから、それまでは楽しく過ごしたいのに。なんで僕の合格発表と野本の2次試験の結果発表の日付が同じなんだ。神はいつでも僕のことを見放す。野本と離れられる時間を今作ってくれてもいいじゃないか。これから離れる時間はできるけど、それまでは我慢しろって。今まで散々我慢してきたから割と限界なのに。
はあー。何か楽しいことでもないかな。
時間を持て余していた僕は、まだ合格が出ていないにも関わらず、引越しの準備を始めた。
野本が忙しい時に引っ越しを済ませると、最後に会いたいとか言われても、断る口実になりそうだし。さっさと済ませてしまおう。
まずは持って行くものの選別だ。漫画なんて今まで描いたことがなかったから、何が必要なのかさえも知らない。とりあえず教科書類はいらないから、物置の奥にもでしまって。漫画はある程度あったほうがそれっぽいから何冊かは持っていこう。イラストを描くための参考書みたいなものも中古で買っておこうか。誰かに見られた時に、そんなの持っていたんだ。ってアピールにもなるし。
合格発表当日。僕は野本に誘われて、ご当地のカフェへとやってきていた。お互いネットでの掲載があるから見ようと。
僕の発表は朝の10時だけど、野本は12時だから暇つぶしが大変だ。
「颯太はどう、受かっていた?」
「それ以前に一応別れたことになっているんだから、軽々しく呼ばないでよ」
「いいじゃんちょっとくらい」
「学校で噂になっているんだから」
「もう学校行かないんだからいいじゃない。噂なんて気にしないでよ」
「気にするよ。いいことは言われてないんだから」
「ケチ」
ケチでもなんでもいいよ。確かにみんなとは離れるけど、最後の最後で変な噂がつくのだけは嫌だから。最後の2日間だけみんなと会うんだから、波風のたたないようにしたいんだ。
というか、別れたって噂どっから出たいんだ。僕は友達少ないから流してないし、野本自分から言うとも思えない。他に誰が……野本だったら、高見さんに言っていたりするのかな。それだったら高見さんだけど、お互い信用していないような関係だから、話しているとも思えない。ってことはあの現場を誰かに見られていたか。あの場の誰か知っている人がいてもおかしくはないんだ。野本騒いでいたし、注目を集めていたからな。絶対これだ。まあ、2日しかないからいいけど。これから会うかもわからない奴らばかりだから。割り切るしかないか。
「やった! 颯太見て! 私も受かっていたよ!」
よかったこれで野本とは離れ離れになれると言うことか。本当によかった。
「おめでとう。引越しとかでこれからまた大変だね」
「うん。颯太は、いつまでこっちにいるの?」
「うーんまだ決めてないけど、3月になる前に荷物だけでも持って行きたいなって思っているよ。結衣は?」
「私もまだ決めてないよ」
合わせてやろうと思ったのに、まだ決めてなかったのか。まあ、早めにしてできるだけ野本との時間を減らすことには変わりないけど。いっそのこと2日とかにしようか。卒業してから次の日。会う時間をわざと作らないようにしようか。それはそれで忙しいから、もう少し後がいいな。野本はまだ準備をしていないだろうし、焦ることはない。
3月1日に僕らは卒業して、僕は引越しの日程を3月6日に決めた。もちろん野本にもそのことは伝えた。引っ越す前に会いたいと言われたが、野本のことだから引越しの準備が進んでないんじゃないかと言ったら図星だったみたいで、会うことはせずに電話で済ませた。それも約1日に及ぶ長電話。そんな時間があるのなら会いたくはないけど会う時間くらい作れたんじゃないか。それと、お風呂の時くらい電話切ってくれ。僕はお風呂場にスマホを持っていなかい派の人間だから、部屋でただ充電を無駄にしただけだったんだから。
いろいろめんどくさかったけど、悪い日々ではなかった。君を再び選ぶことはないだろうけど、今までありがとう。
この場所でいる最後の日となった3月6日。僕は朝早くに親と共に車に乗り込んだ。理由は2つ。1つは知っての通り、野本に合わないためだ。それと、もう1つは、単純に距離が遠すぎることだ。朝早くに出ないと、向こうに着くのが夕方とかになってしまうから。夕方に着いたら、ただでさえ立地とかわからないのに、余計に迷うことになるから。
これで本当にさよならだ。時が経てば、スマホが壊れたことにして、連絡先を削除しよう。そしてこっちでは漫画漬けの日々ではなく、バイト漬けの日々を送ろう。お金に困らないように。専門学校が終わってもこっちでいられるように。
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