15 / 21
道は同じ 15話
しおりを挟む
「な、なんでいるの?」
「なんでって。逆になんで言ってくれなかったの? 私も颯太と旅行に行きたかった」
僕が行きたくなかったから誘わなかったのに。誰から聞いたんだ。クラスの誰にも旅行に行くことは言わなかったのに。SNSにだって見つかると面倒だから上げてないのに。カレンダーやメモにも何も残していない。検索履歴には残っていたかもしれないけど、ここ数日野本は僕のスマホを確認していない。履歴を見た形跡はないのに。どこからその情報を調べ上げた。野本には無理なはずだが。
「2人で行くのはさ。仮卒業とかの期間でもいいじゃない。今は勉強も忙しいし迷惑かけたくなかったから。それに家族旅行だから、恥ずかしいくて言いづらくて」
「2年も付き合っているのだから恥ずかしいものなんてないでしょ。隠しごとはなしって言ったでしょ」
それはずっと言っているがそれだけはできないんだ。自分を殺す犯人に、将来殺されるとは言えない。
「それよりも誰から聞いたの。君こそ、来る
のなら言ってくれればよかったのに」
まさか朝からつけられていたとかじゃないよな。僕が下宿先を回っている後ろをずっとつけていたとか。また1から探さなくなるからやめてくれ。
「颯太のお母さんから聞いたの。今度家族で旅行に行くって。颯太を驚かせようとして黙ってきちゃった」
母さんめ余計なことを。なんで野本に言うのかな。てか、いつの間に連絡先を交換していたの。怖いんだけど。
でも1つだけよかったことがある。やっぱり親に進学先を変更することを言わなくてよかった。野本と繋がりがあるのなら、いつ言われてもおかしくはなかった。これから先も野本に伝える前日くらいがいいのかもしれない。そうなると今度は、親の説得に時間をかけることができないのが問題だな。また面倒なことになった。どうしていつもいつもいい方向へ進まないんだ。
「いつから来ていたの?」
「ついさっきだよ。流石に朝イチの新幹線は取れなくて、2番目の新幹線できたからこの時間になってしまったの。ここ遠いね」
よかった。それなら、僕の下宿先回りは見られていないのか。あれを見られていたら、疑いの目をかけれていたに違いない。
「それで、颯太は何をしてたの? お母さんたちとは一緒にいないんだ」
「ああ、両親は神社巡りをしているよ。姉と妹は2人でどっかに行ったから1人でぶらぶらしていたんだよ。さっきまでそこの科学館を一通り回ってね」
嘘だけど。吐ける嘘がそれくらいしかない。
「へえ、そうなんだ。私も科学館行こうかな」
「僕にまた入れと勘弁してくれよ。結構子供向けの科学館だったから、2回目はないよ」
写真を見ただけだから展示物については何も知らない。だけど、子供が一緒に写っている写真が結構あったから、多分子供向け。
「そっかー。それじゃあ、別の場所にしようかな」
そうしてくれ。できれば全く知らない場所で。
「この辺でのんびりできるとこ知らないかな?」
「知らないよ。僕だって来るのは初めてだから」
「だよねー」
そう思っていたのだったらなぜ訊いた。長くは滞在できないから僕だってある程度しか調べてないぞ。
「この辺の観光スポットはもう閉園時間になっているのが多いね」
そりゃそうだろ。なんたってもう17時に向かっている時間。今から開くお店なんて居酒屋くらいしかない。
「仕方ない。ここで少し話でもしよ」
シンプルに嫌だよ。なんでここまで来て野本と話なんてしないといけないんだ。と言うかなんでここまで来るかな。積もる話もないのに。
「ここ普通のショッピングモールだから、チェーン店しかないよ」
「それでいいよ。颯太と話がしたいだけだから」
そんな含みがあるように言わないでよ。何か良からぬことがありそうじゃないか。
「そっか。わかった。でも、僕もホテルに帰らないといけないから、そんなに時間はないけどね」
さっさと終わらせて、野本のいない場所に行きたい。
「うん。私もチェックインしないといけないし、まあ、ホテルはそこだけど」
ホテルまで一緒じゃなくてよかった。そこまでしたらもはやストーカーだからな。何はともあれ、夜がゆっくりできるってだけでも安心だ。
僕と野本は、ショッピングモール内にある、全国チェーンのカフェに訪れていた。これから晩御飯だと言うのに、野本はサンドウィッチにパフェを頼んで、足りないのか追加でプリンを頼んでいた。
「それで話って何かな?」
「話? 私からしたい話なんてないよ」
だったらなぜこの店に入った。入る必要なかったじゃないか。
「そっか。それじゃあ、僕は行かせてもらってもいいかな。自分の分はきっちり出すから」
「ダメだよ。見知らぬ地に女の子を1人置いていくつもり?」
それが可愛い女の子ならもちろん放ってはおけないよ。でもね。僕は君が死んだって悲しまない。むしろ喜ぶかもしれない。それくらい君のことを恨んでいるんだ。君をこの場に置いていくことになんて躊躇いもないんだよ。まあでも、僕は君の性格をよく知っているから、殺されないように上手く世渡りをすることができるんだ。
「わかった。食べ終わるまでは待っているからさ、どうして来たのか、詳しい理由を教えてもらってもいい?」
「いいけど。理由はさっき言った通りだよ。颯太と一緒に旅行に行きたくてついてきた。本当にそれだけだよ」
同じ答えにもうため息しか出ない。
「わかったよ。そう言うことにしておくよ」
「うん。そう言うことだから」
野本との会話はどうしてこうもつまらないんだろう。僕が広げる努力をしていないからか。どうしてだろうな。野本と楽しい話をしたいと脳が思わないんだ。口を滑らせそうだし、言葉数は少ない方がいい。
結局この後の家族旅行には野本が同伴して観光名所を周り、僕としては何にも休めない家族旅行となった。
目的は果たしたからいいけど、野本め一生恨んでやるからな。
「なんでって。逆になんで言ってくれなかったの? 私も颯太と旅行に行きたかった」
僕が行きたくなかったから誘わなかったのに。誰から聞いたんだ。クラスの誰にも旅行に行くことは言わなかったのに。SNSにだって見つかると面倒だから上げてないのに。カレンダーやメモにも何も残していない。検索履歴には残っていたかもしれないけど、ここ数日野本は僕のスマホを確認していない。履歴を見た形跡はないのに。どこからその情報を調べ上げた。野本には無理なはずだが。
「2人で行くのはさ。仮卒業とかの期間でもいいじゃない。今は勉強も忙しいし迷惑かけたくなかったから。それに家族旅行だから、恥ずかしいくて言いづらくて」
「2年も付き合っているのだから恥ずかしいものなんてないでしょ。隠しごとはなしって言ったでしょ」
それはずっと言っているがそれだけはできないんだ。自分を殺す犯人に、将来殺されるとは言えない。
「それよりも誰から聞いたの。君こそ、来る
のなら言ってくれればよかったのに」
まさか朝からつけられていたとかじゃないよな。僕が下宿先を回っている後ろをずっとつけていたとか。また1から探さなくなるからやめてくれ。
「颯太のお母さんから聞いたの。今度家族で旅行に行くって。颯太を驚かせようとして黙ってきちゃった」
母さんめ余計なことを。なんで野本に言うのかな。てか、いつの間に連絡先を交換していたの。怖いんだけど。
でも1つだけよかったことがある。やっぱり親に進学先を変更することを言わなくてよかった。野本と繋がりがあるのなら、いつ言われてもおかしくはなかった。これから先も野本に伝える前日くらいがいいのかもしれない。そうなると今度は、親の説得に時間をかけることができないのが問題だな。また面倒なことになった。どうしていつもいつもいい方向へ進まないんだ。
「いつから来ていたの?」
「ついさっきだよ。流石に朝イチの新幹線は取れなくて、2番目の新幹線できたからこの時間になってしまったの。ここ遠いね」
よかった。それなら、僕の下宿先回りは見られていないのか。あれを見られていたら、疑いの目をかけれていたに違いない。
「それで、颯太は何をしてたの? お母さんたちとは一緒にいないんだ」
「ああ、両親は神社巡りをしているよ。姉と妹は2人でどっかに行ったから1人でぶらぶらしていたんだよ。さっきまでそこの科学館を一通り回ってね」
嘘だけど。吐ける嘘がそれくらいしかない。
「へえ、そうなんだ。私も科学館行こうかな」
「僕にまた入れと勘弁してくれよ。結構子供向けの科学館だったから、2回目はないよ」
写真を見ただけだから展示物については何も知らない。だけど、子供が一緒に写っている写真が結構あったから、多分子供向け。
「そっかー。それじゃあ、別の場所にしようかな」
そうしてくれ。できれば全く知らない場所で。
「この辺でのんびりできるとこ知らないかな?」
「知らないよ。僕だって来るのは初めてだから」
「だよねー」
そう思っていたのだったらなぜ訊いた。長くは滞在できないから僕だってある程度しか調べてないぞ。
「この辺の観光スポットはもう閉園時間になっているのが多いね」
そりゃそうだろ。なんたってもう17時に向かっている時間。今から開くお店なんて居酒屋くらいしかない。
「仕方ない。ここで少し話でもしよ」
シンプルに嫌だよ。なんでここまで来て野本と話なんてしないといけないんだ。と言うかなんでここまで来るかな。積もる話もないのに。
「ここ普通のショッピングモールだから、チェーン店しかないよ」
「それでいいよ。颯太と話がしたいだけだから」
そんな含みがあるように言わないでよ。何か良からぬことがありそうじゃないか。
「そっか。わかった。でも、僕もホテルに帰らないといけないから、そんなに時間はないけどね」
さっさと終わらせて、野本のいない場所に行きたい。
「うん。私もチェックインしないといけないし、まあ、ホテルはそこだけど」
ホテルまで一緒じゃなくてよかった。そこまでしたらもはやストーカーだからな。何はともあれ、夜がゆっくりできるってだけでも安心だ。
僕と野本は、ショッピングモール内にある、全国チェーンのカフェに訪れていた。これから晩御飯だと言うのに、野本はサンドウィッチにパフェを頼んで、足りないのか追加でプリンを頼んでいた。
「それで話って何かな?」
「話? 私からしたい話なんてないよ」
だったらなぜこの店に入った。入る必要なかったじゃないか。
「そっか。それじゃあ、僕は行かせてもらってもいいかな。自分の分はきっちり出すから」
「ダメだよ。見知らぬ地に女の子を1人置いていくつもり?」
それが可愛い女の子ならもちろん放ってはおけないよ。でもね。僕は君が死んだって悲しまない。むしろ喜ぶかもしれない。それくらい君のことを恨んでいるんだ。君をこの場に置いていくことになんて躊躇いもないんだよ。まあでも、僕は君の性格をよく知っているから、殺されないように上手く世渡りをすることができるんだ。
「わかった。食べ終わるまでは待っているからさ、どうして来たのか、詳しい理由を教えてもらってもいい?」
「いいけど。理由はさっき言った通りだよ。颯太と一緒に旅行に行きたくてついてきた。本当にそれだけだよ」
同じ答えにもうため息しか出ない。
「わかったよ。そう言うことにしておくよ」
「うん。そう言うことだから」
野本との会話はどうしてこうもつまらないんだろう。僕が広げる努力をしていないからか。どうしてだろうな。野本と楽しい話をしたいと脳が思わないんだ。口を滑らせそうだし、言葉数は少ない方がいい。
結局この後の家族旅行には野本が同伴して観光名所を周り、僕としては何にも休めない家族旅行となった。
目的は果たしたからいいけど、野本め一生恨んでやるからな。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
人の目嫌い/人嫌い
木月 くろい
ホラー
ひと気の無くなった放課後の学校で、三谷藤若菜(みやふじわかな)は声を掛けられる。若菜は驚いた。自分の名を呼ばれるなど、有り得ないことだったからだ。
◆2020年4月に小説家になろう様にて玄乃光名義で掲載したホラー短編『Scopophobia』を修正し、続きを書いたものになります。
◆やや残酷描写があります。
◆小説家になろう様に同名の作品を同時掲載しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/horror.png?id=d742d2f035dd0b8efefe)
視える私と視えない君と
赤羽こうじ
ホラー
前作の海の家の事件から数週間後、叶は自室で引越しの準備を進めていた。
「そろそろ連絡ぐらいしないとな」
そう思い、仕事の依頼を受けていた陸奥方志保に連絡を入れる。
「少しは落ち着いたんで」
そう言って叶は斗弥陀《とみだ》グループが買ったいわく付きの廃病院の調査を引き受ける事となった。
しかし「俺達も同行させてもらうから」そう言って叶の調査に斗弥陀の御曹司達も加わり、廃病院の調査は肝試しのような様相を呈してくる。
廃病院の怪異を軽く考える御曹司達に頭を抱える叶だったが、廃病院の怪異は容赦なくその牙を剥く。
一方、恋人である叶から連絡が途絶えた幸太はいても立ってもいられなくなり廃病院のある京都へと向かった。
そこで幸太は陸奥方志穂と出会い、共に叶の捜索に向かう事となる。
やがて叶や幸太達は斗弥陀家で渦巻く不可解な事件へと巻き込まれていく。
前作、『夏の日の出会いと別れ』より今回は美しき霊能者、鬼龍叶を主人公に迎えた作品です。
もちろん前作未読でもお楽しみ頂けます。
※この作品は他にエブリスタ、小説家になろう、でも公開しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/horror.png?id=d742d2f035dd0b8efefe)
正しい道
空道さくら
ホラー
仕事を辞め、AIのサポートを受けながら新たな生活を始めた佐藤。
導かれるままに行動するうち、少しずつ変化が訪れる。
効率的に、無駄なく、最適な生き方へ。
それは、理想的な未来なのか、それとも——。
「あなたの選択は、最適化されています」
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる