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16話
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「みんなよく集まってくれた。実は話したいことがあって集まってもらったんだ」
集まったのは僕らを入れてせいぜい15人ほど。あとの人は連絡がつかなかった。
公園に行ってもなお君いないし。杉下も家に行ってみたけど結局いなかったし。道中直接訪問できる人の家を周ってみたけど、いなかったり、用事があったり。誘えた人は1人もいなかった。
「みんなの家に届いたこの手紙。実は大輔が解読したんだ。そして、手紙の主が羽山だと言うことが分かった」
口々にあーだこーだ言って、秩序が乱れていた。さすがの裕介でも、この手紙のことを言えばそうなるか。口々に言ってはいるが、いくつかは聞き取れる。僕も実際に思っていることだから。
そう、羽山が何でこんなことをするのか。
僕だってそれを聞きたいよ。でも、今のところ羽山と1番話をしているのも、羽山の内情や本当の性格を知っているのも僕だ。羽山に1番近い存在の僕がわからない問題を誰が解決できるか。誰にもできないだろう。だから、直接聞くしかない。
「よく聞いてくれ。羽山は転校するらしい。それで、最後の思い出作りに僕らを夜の学校に誘っているらしい。この話を信じてくれる者だけこの場に残ってくれ」
ああ、祐介言ってしまったよ。僕が羽山に怒られるのは確定じゃんか。
誰かは誰かも見て、誰かも誰かを見て、見つめ合っているだけで、帰ろうとはしていないけど、乗り気ではない。
ここは1つ僕がサクラを演じよう。裕介と一緒にこの場所に来て、僕が解読した時点で僕らの関係性はバレているだろうから、サクラと呼べるか怪しいけど、羽山のためにならやり切ろうじゃないか。
わざとらしくに手を挙げた。口々に話していたのが急に静かになって、僕が視線を集める。
「羽山との関わりは少ないけど、本当に最後なら、思い出作りにやってもいいんじゃないかなって思う。クラスメイトなのに何もしないなんて、寂しい終わり方はしたくないから」
あれ? 言葉間違えた? 何でみんな静かになっているの。それとそろそろ注目浴びるの嫌なんですけど。手だって挙げたのはいいけど、いつ下ろせばいいの。お願いだから誰か何か言って。裕介、助け舟出して。
「そうだよな」
1番にそう言ったのは、あまり話したことのない一樹。続けて雅也や剛までも「面白そうだし」「夜の学校楽しみ」と賛同した。
一度流れに乗った波は、消えることを知らない。この場にいる15人全員が羽山のために動くと言った。ただ、問題は山積みだ。夜の学校、すなわち、夜に出かけるということになる。今この場ではいいと言っても、親が許可しない限りは来られない。子供である弊害だ。それに僕と裕介は夜の学校で何を行うのか決めていない。羽山も招待している割に、時間と場所以外何も書いていないから、何をするのか分からない。
「最後だったら、羽山の好きなことをしてあげたいな」
「でも、羽山さんの好きなことって何だろう?」
「去年も同じクラスだったけど、話したのだって1、2回だし何が好きとか何も知らないな」
「話しかけても冷たいよね」
「そもそも何で夜の学校なんだろうね」
羽山のために何をするのかを考えているのに、誰1人として意見が出てこない。そんな僕もみんなと同じで意見を出せずにいた。
羽山の好きなこと……運動は昔は好きって言っていた。でも、病気の関係でできなくなったって。それなのに運動をさせるわけにはいかない。夜の学校で運動も危険だから、運動系はなしだ。
「羽山と言えば、本を読んでいるイメージしかないな」
「確かに、じゃあ、夜の図書室で本を読むとか」
「それ夜じゃなくてもできるでしょ」
「そうだよ。羽山さんだって、図書室の本じゃ物足りないと思うよ」
「うん。いつも自分で持ってきていた本を読んでいたから」
「じゃあ、他に何があるって言うんだ」
「あんまりやりたくないけど、肝試しとかどうかな」
肝試し! それだ! 羽山の好きなことからは少し外れるけど、驚かすにはもってこいだ。
「肝試し面白そうだな!」
「俺、お化け役やりたーい」
まとまらない話をどうにかまとめ上げようと苦戦していた裕介に、みんなには聞こえない声で耳元に囁く。
「前に羽山と忍び込んだ時に、七不思議の検証をしたんだ。羽山は幽霊が怖いみたいだったけど、七不思議が一つでも本当にあったら、面白いと思わない」
「いいかも。夜の学校の大定番。なら、驚かすのもいいかもしれないな」
僕が思っている驚かすと、少し意味合いの違う驚かすな気がするけどいいか。
僕が予想した通り、裕介の考えていることはお化け屋敷というところだ。それも羽山に秘密で。計画はこうだ。まずは、僕が羽山とともに学校内に入る。他のみんなはそれぞれ七不思議の場所に合わせて待機する。羽山と僕がきたところで羽山を驚かすって作戦だ。
簡単すぎてこっちが痛いめをみそうだ。
とりあえず僕らは解散した。僕と裕介はそのまま学校に向かった。何でって、先生がいるのなら、使っていいか許可を取るためだ。羽山だってきっと許可を得ているから。羽山を驚かすためだと言えば、通る気がした。特に校長先生なら、事情を知り得ているし、好都合だな。
集まったのは僕らを入れてせいぜい15人ほど。あとの人は連絡がつかなかった。
公園に行ってもなお君いないし。杉下も家に行ってみたけど結局いなかったし。道中直接訪問できる人の家を周ってみたけど、いなかったり、用事があったり。誘えた人は1人もいなかった。
「みんなの家に届いたこの手紙。実は大輔が解読したんだ。そして、手紙の主が羽山だと言うことが分かった」
口々にあーだこーだ言って、秩序が乱れていた。さすがの裕介でも、この手紙のことを言えばそうなるか。口々に言ってはいるが、いくつかは聞き取れる。僕も実際に思っていることだから。
そう、羽山が何でこんなことをするのか。
僕だってそれを聞きたいよ。でも、今のところ羽山と1番話をしているのも、羽山の内情や本当の性格を知っているのも僕だ。羽山に1番近い存在の僕がわからない問題を誰が解決できるか。誰にもできないだろう。だから、直接聞くしかない。
「よく聞いてくれ。羽山は転校するらしい。それで、最後の思い出作りに僕らを夜の学校に誘っているらしい。この話を信じてくれる者だけこの場に残ってくれ」
ああ、祐介言ってしまったよ。僕が羽山に怒られるのは確定じゃんか。
誰かは誰かも見て、誰かも誰かを見て、見つめ合っているだけで、帰ろうとはしていないけど、乗り気ではない。
ここは1つ僕がサクラを演じよう。裕介と一緒にこの場所に来て、僕が解読した時点で僕らの関係性はバレているだろうから、サクラと呼べるか怪しいけど、羽山のためにならやり切ろうじゃないか。
わざとらしくに手を挙げた。口々に話していたのが急に静かになって、僕が視線を集める。
「羽山との関わりは少ないけど、本当に最後なら、思い出作りにやってもいいんじゃないかなって思う。クラスメイトなのに何もしないなんて、寂しい終わり方はしたくないから」
あれ? 言葉間違えた? 何でみんな静かになっているの。それとそろそろ注目浴びるの嫌なんですけど。手だって挙げたのはいいけど、いつ下ろせばいいの。お願いだから誰か何か言って。裕介、助け舟出して。
「そうだよな」
1番にそう言ったのは、あまり話したことのない一樹。続けて雅也や剛までも「面白そうだし」「夜の学校楽しみ」と賛同した。
一度流れに乗った波は、消えることを知らない。この場にいる15人全員が羽山のために動くと言った。ただ、問題は山積みだ。夜の学校、すなわち、夜に出かけるということになる。今この場ではいいと言っても、親が許可しない限りは来られない。子供である弊害だ。それに僕と裕介は夜の学校で何を行うのか決めていない。羽山も招待している割に、時間と場所以外何も書いていないから、何をするのか分からない。
「最後だったら、羽山の好きなことをしてあげたいな」
「でも、羽山さんの好きなことって何だろう?」
「去年も同じクラスだったけど、話したのだって1、2回だし何が好きとか何も知らないな」
「話しかけても冷たいよね」
「そもそも何で夜の学校なんだろうね」
羽山のために何をするのかを考えているのに、誰1人として意見が出てこない。そんな僕もみんなと同じで意見を出せずにいた。
羽山の好きなこと……運動は昔は好きって言っていた。でも、病気の関係でできなくなったって。それなのに運動をさせるわけにはいかない。夜の学校で運動も危険だから、運動系はなしだ。
「羽山と言えば、本を読んでいるイメージしかないな」
「確かに、じゃあ、夜の図書室で本を読むとか」
「それ夜じゃなくてもできるでしょ」
「そうだよ。羽山さんだって、図書室の本じゃ物足りないと思うよ」
「うん。いつも自分で持ってきていた本を読んでいたから」
「じゃあ、他に何があるって言うんだ」
「あんまりやりたくないけど、肝試しとかどうかな」
肝試し! それだ! 羽山の好きなことからは少し外れるけど、驚かすにはもってこいだ。
「肝試し面白そうだな!」
「俺、お化け役やりたーい」
まとまらない話をどうにかまとめ上げようと苦戦していた裕介に、みんなには聞こえない声で耳元に囁く。
「前に羽山と忍び込んだ時に、七不思議の検証をしたんだ。羽山は幽霊が怖いみたいだったけど、七不思議が一つでも本当にあったら、面白いと思わない」
「いいかも。夜の学校の大定番。なら、驚かすのもいいかもしれないな」
僕が思っている驚かすと、少し意味合いの違う驚かすな気がするけどいいか。
僕が予想した通り、裕介の考えていることはお化け屋敷というところだ。それも羽山に秘密で。計画はこうだ。まずは、僕が羽山とともに学校内に入る。他のみんなはそれぞれ七不思議の場所に合わせて待機する。羽山と僕がきたところで羽山を驚かすって作戦だ。
簡単すぎてこっちが痛いめをみそうだ。
とりあえず僕らは解散した。僕と裕介はそのまま学校に向かった。何でって、先生がいるのなら、使っていいか許可を取るためだ。羽山だってきっと許可を得ているから。羽山を驚かすためだと言えば、通る気がした。特に校長先生なら、事情を知り得ているし、好都合だな。
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