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15話
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まずは同じ手紙が送られたきた人を探す。この時間だったら、クラスのリーダー的存在のなお君がまだいつもの公園にいるはずだ。
いや、待て。下手したらなお君家に帰ってないかもしれない。もし帰っていないのだったら、手紙の存在も知らないはずだ。
勉強大嫌いななお君のことだ。宿題をしたくなくて家を飛び出しているんじゃないか。帰るに帰れなくなってずっと公園にいるんじゃないか。なら、公園に行っても仕方ないかもしれない。
地道にみんなの家を回っていくしかないか。
僕の家から1番近いの家は女子だ。ここは飛ばして、次の男子の家に行こう。1番近い男子の家は裕介の家だ。
裕介は頭が良くて習い事をいくつもしている。家にいるって保証はないけど、確認するにはもってこいだ。
恐る恐る裕介の家の呼び鈴を鳴らす。「はーい」の声と共に、裕介のお母さんが扉を開ける。
「あの、裕介君いますか?」
「ちょっと待ってね」と言って、階段に向かって大声で「裕介ー! 大輔君がきているよー!」と叫んでいた。ドタバタと駆け足で階段を降りてくる裕介。第一声は「どうした?」だった。
そんな裕介に羽山からの手紙を見せる。
「今日。こんな手紙来なかった?」
裕介は顎に手を当てて考えていた。何かを閃いたかのように大きく口を開け言った。
「そう言えばあった。今朝早くに来ていた」
「本当! 今ある?」
裕介は困った顔を浮かべながら、ぼりぼりと頭を掻いて、申し訳なさそうに言った。
「イタズラだと思って、読んですぐに破って捨ててしまったんだ……」
「そ、そうだよね……」
あんな手紙を見てイタズラだと思わない方がおかしいもんな。僕も初めはイタズラだと思っていたから。
「それで、その手紙が何だって?」
「……そうだった。これ見て!」
裕介に僕の元に届いた手紙と、石榴の本を見せる。
「小説?」
「羽山から借りているの」
「へえーさすが羽山。難しい本読んでいるんだな」
「感心するのはそこじゃなくて。見て! 僕の元に届いた手紙なんだけど、この本の章とページ、行と文字。これを当てはめると、文章になったんだ。だから、僕はこの手紙の送り主は羽山だと思っている」
「なるほど確かに。待ってて、ゴミ箱漁って、同じだったか確認してくるよ」
「手伝うよ」
「いや、それより、大輔は他にも同じ手紙を受け取っている人がいなかい確認して。もしいるのだったら、日吉神社に3時に集合って。うちの電話使って」
その手があった。
わざわざ足を運ばなくても、電話すればよかったんだ。焦って冷静な判断をできていなかった。でも、1番最初に裕介の家に来たことは正解だった。
「そう言えば、僕のうちに来たってことは杉下の家にはもう行ったの?」
「いや、それはまだ……」
寄っていない理由を、あいつを嫌いだからとは言えないな。
「そっか、まあ最悪、最後に直接言いに行けばいいか」
理由を勘づいていそうな物言い。本当にバレていないといいけど。
裕介の家で、連絡網を頼りに羽山と自分と杉下を除く、34人に電話をかけた。そのうち、家でいたのはたったの15人。残りの19人は外にいるようだった。そのほとんどが男子だった。連絡が取れた人で、羽山からの手紙を受け取っていない人はいなかった。
本当に羽山は全員に手紙を送ったのだろうか。残りの19人の確認をしないと何とも言えないけど、今のところ17人が同じ手紙を受け取っている。何でこんなことを。
「大輔できたぞ」
台所から声とともに裕介が現れる。手には、セロハンテープで復元されたつぎはぎの手紙があった。
「どうだった?」
「ほとんど同じだった」
「ほとんど?」
「うん。僕の手紙には、最後の文がなかった」
「と言うことは?」
「うん。『今日の夜。学校で』それだけしか書かれていなかった」
「何で僕の手紙だけ時間を書いていたんだろうか?」
「それよりもっ! 何がどう言うことなのか、先に説明してもらおうか。この手紙とか、大輔だけ違う内容になっていることとか」
裕介は眉間に皺を寄せて、僕に詰め寄ってきていた。
羽山のことは言ってもいいのだろうか。きっとそれを知ったら羽山は怒るよな。でも、みんなに同じ手紙を送っているのなら、いずれバレることだ。話したっていいよな。話さないとこの場を切り抜けられそうにないし。
「……は、羽山……転校するんだって……多分、最後の思い出作りでもしているんだと思う」
ごめん羽山。知られたくなかっただろうに、話してしまった。でも、安心して、裕介は頭がいいから、みんなには広めたりはしないはず。多分……。
「転校? 羽山が?」
「うん。そうなんだ……」
「大輔だけ本をもらったり、手紙の内容が違うのには心当たりはあるの?」
「……うん。ついこの間のことだけどね。羽山と一緒に夜の学校に忍び込んだ」
裕介はこの世の終わりのような絶望とも取れる顔を浮かべていた。
「羽山と一緒に夜の学校に忍び込んだあー! 大輔何しているんだよ」
「羽山に誘われてついて行っちゃったみたいな……」
裕介は大きなため息を吐いた。ため息とともに、大事なものも抜けて行っている気がしたけど、大丈夫か。
「羽山は同じ愚行を行おうとしているってわけか」
「え? ぐ、な、何って?」
羽山のような難しいことを言われても、僕には理解ができない。1人でどうにか解決しようとしている裕介。こんな時は大抵変な方向に進む。
「まずは日吉神社に行こうか。あと20分で3時だし」
「そうだね……」
大丈夫かな。みんなに会って第一声が「羽山が転校する」とかじゃないよな。
いや、待て。下手したらなお君家に帰ってないかもしれない。もし帰っていないのだったら、手紙の存在も知らないはずだ。
勉強大嫌いななお君のことだ。宿題をしたくなくて家を飛び出しているんじゃないか。帰るに帰れなくなってずっと公園にいるんじゃないか。なら、公園に行っても仕方ないかもしれない。
地道にみんなの家を回っていくしかないか。
僕の家から1番近いの家は女子だ。ここは飛ばして、次の男子の家に行こう。1番近い男子の家は裕介の家だ。
裕介は頭が良くて習い事をいくつもしている。家にいるって保証はないけど、確認するにはもってこいだ。
恐る恐る裕介の家の呼び鈴を鳴らす。「はーい」の声と共に、裕介のお母さんが扉を開ける。
「あの、裕介君いますか?」
「ちょっと待ってね」と言って、階段に向かって大声で「裕介ー! 大輔君がきているよー!」と叫んでいた。ドタバタと駆け足で階段を降りてくる裕介。第一声は「どうした?」だった。
そんな裕介に羽山からの手紙を見せる。
「今日。こんな手紙来なかった?」
裕介は顎に手を当てて考えていた。何かを閃いたかのように大きく口を開け言った。
「そう言えばあった。今朝早くに来ていた」
「本当! 今ある?」
裕介は困った顔を浮かべながら、ぼりぼりと頭を掻いて、申し訳なさそうに言った。
「イタズラだと思って、読んですぐに破って捨ててしまったんだ……」
「そ、そうだよね……」
あんな手紙を見てイタズラだと思わない方がおかしいもんな。僕も初めはイタズラだと思っていたから。
「それで、その手紙が何だって?」
「……そうだった。これ見て!」
裕介に僕の元に届いた手紙と、石榴の本を見せる。
「小説?」
「羽山から借りているの」
「へえーさすが羽山。難しい本読んでいるんだな」
「感心するのはそこじゃなくて。見て! 僕の元に届いた手紙なんだけど、この本の章とページ、行と文字。これを当てはめると、文章になったんだ。だから、僕はこの手紙の送り主は羽山だと思っている」
「なるほど確かに。待ってて、ゴミ箱漁って、同じだったか確認してくるよ」
「手伝うよ」
「いや、それより、大輔は他にも同じ手紙を受け取っている人がいなかい確認して。もしいるのだったら、日吉神社に3時に集合って。うちの電話使って」
その手があった。
わざわざ足を運ばなくても、電話すればよかったんだ。焦って冷静な判断をできていなかった。でも、1番最初に裕介の家に来たことは正解だった。
「そう言えば、僕のうちに来たってことは杉下の家にはもう行ったの?」
「いや、それはまだ……」
寄っていない理由を、あいつを嫌いだからとは言えないな。
「そっか、まあ最悪、最後に直接言いに行けばいいか」
理由を勘づいていそうな物言い。本当にバレていないといいけど。
裕介の家で、連絡網を頼りに羽山と自分と杉下を除く、34人に電話をかけた。そのうち、家でいたのはたったの15人。残りの19人は外にいるようだった。そのほとんどが男子だった。連絡が取れた人で、羽山からの手紙を受け取っていない人はいなかった。
本当に羽山は全員に手紙を送ったのだろうか。残りの19人の確認をしないと何とも言えないけど、今のところ17人が同じ手紙を受け取っている。何でこんなことを。
「大輔できたぞ」
台所から声とともに裕介が現れる。手には、セロハンテープで復元されたつぎはぎの手紙があった。
「どうだった?」
「ほとんど同じだった」
「ほとんど?」
「うん。僕の手紙には、最後の文がなかった」
「と言うことは?」
「うん。『今日の夜。学校で』それだけしか書かれていなかった」
「何で僕の手紙だけ時間を書いていたんだろうか?」
「それよりもっ! 何がどう言うことなのか、先に説明してもらおうか。この手紙とか、大輔だけ違う内容になっていることとか」
裕介は眉間に皺を寄せて、僕に詰め寄ってきていた。
羽山のことは言ってもいいのだろうか。きっとそれを知ったら羽山は怒るよな。でも、みんなに同じ手紙を送っているのなら、いずれバレることだ。話したっていいよな。話さないとこの場を切り抜けられそうにないし。
「……は、羽山……転校するんだって……多分、最後の思い出作りでもしているんだと思う」
ごめん羽山。知られたくなかっただろうに、話してしまった。でも、安心して、裕介は頭がいいから、みんなには広めたりはしないはず。多分……。
「転校? 羽山が?」
「うん。そうなんだ……」
「大輔だけ本をもらったり、手紙の内容が違うのには心当たりはあるの?」
「……うん。ついこの間のことだけどね。羽山と一緒に夜の学校に忍び込んだ」
裕介はこの世の終わりのような絶望とも取れる顔を浮かべていた。
「羽山と一緒に夜の学校に忍び込んだあー! 大輔何しているんだよ」
「羽山に誘われてついて行っちゃったみたいな……」
裕介は大きなため息を吐いた。ため息とともに、大事なものも抜けて行っている気がしたけど、大丈夫か。
「羽山は同じ愚行を行おうとしているってわけか」
「え? ぐ、な、何って?」
羽山のような難しいことを言われても、僕には理解ができない。1人でどうにか解決しようとしている裕介。こんな時は大抵変な方向に進む。
「まずは日吉神社に行こうか。あと20分で3時だし」
「そうだね……」
大丈夫かな。みんなに会って第一声が「羽山が転校する」とかじゃないよな。
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