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第1章
28話
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取り敢えずリビングまで運んだが、持ち上がらないから悪いけど床に寝かせてもらっている。
この人を運んでいる途中、俺はあるものを見た。俺の視界に、左手で触った時だけハテナマークが3つ並んでいた。
似た現象は前にも見た。薬を触っている時に薬の名前が表示されたことだ。
だけど、ハテナマークは初めてだ。
これは一体なんなのだ?
「吉野川さん、どうしたらいいですか?」
急変患者を対応する医者じゃなかったからどうすればいいと訊かれても、すぐに答えは出ない。
だけど、取り敢えず回復体位でも取ればいいのだろうか?
2人がかりで男を横に向けて回復体位を取った。
「吉野川さん。この人起きませんよ。何をすればいいのですか?」
ムーは焦り過ぎて同じことを何回も訊いていた。
「取り敢えず。俺がこの人を一晩見ておくから、ムーは休んでくれ」
ムーは怒った?
「それだったら吉野川さんが休んでいてください! この人を見つけたのは私ですから私が一晩見ておきます!」
横たわっている男の正面に俺が座っているのを見て、ムーも俺の隣に正座で座っていた。
ここからは専門的なことになるからムーには難しいだろうから、1人でしようと思っていたけど、ムーは本当に責任感が強いな。
本当にいい子だ!
座ったのはいいけれど横で瞼を時々閉ざしながらふらふらしているのが気になるけど……
俺はそんなムーを他所に、全身を軽く圧迫しながら触った。
もし骨折などしていれば触れられた時に痛過ぎて起きるのではないかと思っていた。
だけど、起きることはなかった。
意識低迷状態でも苦悶表情を浮かべるかとも思ったけど、そんなのも全くなかった。
骨折ではない。
頭を悩ましていると男は突然起きた。
「はっ! ここはどこですか!」
驚いた俺は声を出せずにいたが、横で眠りかけていたムーも驚いて起き上がってここまでの経緯を軽く話していた。
「そ、そうだったのですか……。でも、途中から記憶がないのですよ。でももう大丈夫です。ありがとうございました!」
この元気の良さはこいつもしかして熟睡していただけなのか?
「あの、差し支えなければあなたの名前を教えてもらってもいいですか?」
男は“プラノ・バール”と名乗った。
その頃俺の頭の中では渦のように文字が駆け巡っていた。
それと同時に声に出さないように必死に口を押さえて堪えていた。
「それじゃ今日は帰ります」
そう言って男は隠し持っていた”ピンク色のポーション”を一気に飲み干した。
その瞬間から男は、激しい咳をして喉をおさてながらその場に倒れ込んだ。
慌てて2人で駆け寄るが、男は大丈夫だからと足早にこの別荘から出て行った。
俺もムーもその男を見つめるだけで追いかけることはできなかった。
夜も遅くなっていたからムーはこのまま泊まってもらい、俺は部屋で1人考え事をしていた。
あの男の人、どうしてポーションを飲んだ瞬間から咳をしたのか。
単純にむせていた可能性も捨てきれないが、渇いた咳にも聴こえた。
胸を押さえていたのもどちらの可能性も捨てきれない。
ポーションが咳を誘発したのか?
単純な喘息発作かもしれない。
あー、だめだ。可能性が多すぎて答えを導き出せない。
思えば技術の発達した前の世界で当たり前にしていたことが、こちらの世界ではできないことの方が多い。
検証は幾つかできても検査は1つもできない。
頭を悩ましていた俺は気付けば眠っていた。
そして、朝はムーの声で起こされた。
「吉野川さーん。朝ですよー、起きてくださーい!」
無理矢理布団を剥がされて、直射日光を直に浴びれば嫌でも目が覚めた。
ムーは早起きで、もう少しで朝食が仕上がると言うではないか。
すぐさま服を着替えて下に降りると、厄介な人間が1人、リビングで堂々と座っていた。
「やあ、おはよう。昨日の夜はぐっすり眠られたかい?」
この人を運んでいる途中、俺はあるものを見た。俺の視界に、左手で触った時だけハテナマークが3つ並んでいた。
似た現象は前にも見た。薬を触っている時に薬の名前が表示されたことだ。
だけど、ハテナマークは初めてだ。
これは一体なんなのだ?
「吉野川さん、どうしたらいいですか?」
急変患者を対応する医者じゃなかったからどうすればいいと訊かれても、すぐに答えは出ない。
だけど、取り敢えず回復体位でも取ればいいのだろうか?
2人がかりで男を横に向けて回復体位を取った。
「吉野川さん。この人起きませんよ。何をすればいいのですか?」
ムーは焦り過ぎて同じことを何回も訊いていた。
「取り敢えず。俺がこの人を一晩見ておくから、ムーは休んでくれ」
ムーは怒った?
「それだったら吉野川さんが休んでいてください! この人を見つけたのは私ですから私が一晩見ておきます!」
横たわっている男の正面に俺が座っているのを見て、ムーも俺の隣に正座で座っていた。
ここからは専門的なことになるからムーには難しいだろうから、1人でしようと思っていたけど、ムーは本当に責任感が強いな。
本当にいい子だ!
座ったのはいいけれど横で瞼を時々閉ざしながらふらふらしているのが気になるけど……
俺はそんなムーを他所に、全身を軽く圧迫しながら触った。
もし骨折などしていれば触れられた時に痛過ぎて起きるのではないかと思っていた。
だけど、起きることはなかった。
意識低迷状態でも苦悶表情を浮かべるかとも思ったけど、そんなのも全くなかった。
骨折ではない。
頭を悩ましていると男は突然起きた。
「はっ! ここはどこですか!」
驚いた俺は声を出せずにいたが、横で眠りかけていたムーも驚いて起き上がってここまでの経緯を軽く話していた。
「そ、そうだったのですか……。でも、途中から記憶がないのですよ。でももう大丈夫です。ありがとうございました!」
この元気の良さはこいつもしかして熟睡していただけなのか?
「あの、差し支えなければあなたの名前を教えてもらってもいいですか?」
男は“プラノ・バール”と名乗った。
その頃俺の頭の中では渦のように文字が駆け巡っていた。
それと同時に声に出さないように必死に口を押さえて堪えていた。
「それじゃ今日は帰ります」
そう言って男は隠し持っていた”ピンク色のポーション”を一気に飲み干した。
その瞬間から男は、激しい咳をして喉をおさてながらその場に倒れ込んだ。
慌てて2人で駆け寄るが、男は大丈夫だからと足早にこの別荘から出て行った。
俺もムーもその男を見つめるだけで追いかけることはできなかった。
夜も遅くなっていたからムーはこのまま泊まってもらい、俺は部屋で1人考え事をしていた。
あの男の人、どうしてポーションを飲んだ瞬間から咳をしたのか。
単純にむせていた可能性も捨てきれないが、渇いた咳にも聴こえた。
胸を押さえていたのもどちらの可能性も捨てきれない。
ポーションが咳を誘発したのか?
単純な喘息発作かもしれない。
あー、だめだ。可能性が多すぎて答えを導き出せない。
思えば技術の発達した前の世界で当たり前にしていたことが、こちらの世界ではできないことの方が多い。
検証は幾つかできても検査は1つもできない。
頭を悩ましていた俺は気付けば眠っていた。
そして、朝はムーの声で起こされた。
「吉野川さーん。朝ですよー、起きてくださーい!」
無理矢理布団を剥がされて、直射日光を直に浴びれば嫌でも目が覚めた。
ムーは早起きで、もう少しで朝食が仕上がると言うではないか。
すぐさま服を着替えて下に降りると、厄介な人間が1人、リビングで堂々と座っていた。
「やあ、おはよう。昨日の夜はぐっすり眠られたかい?」
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